黒崎一護の異世界物語
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◇初の戦闘
SIDE:月村
突如上空から降ってきた黒い和服に身の丈に迫る長刀を持った少年。
すずかを庇う忍に巨腕を伸ばす虚を回し蹴りで吹き飛ばす。
「「「なっ!?」」」
「え?」
数多の銃火器を受けても怯みもしなかった虚が、すずかと同年代と思われる少年に簡単に蹴り飛ばされた光景に、唖然とする三人と何が起こったのか解らないすずか。
身を捻って地面に着地する一護。
「大丈夫か!!」
一護が忍に訊いた。
「え、えぇ。て、それより!!」
「説明は後だ!こいつらは俺に任せて下がっててくれ」
「ちょっ!?私より下の子を戦わせる訳には―――」
「こいつらは俺にしか倒せねぇ。充分見に染みたんじゃねぇのか?」
一護の言葉に唸る忍。そう確かに自分達では傷ひとつ付けることは出来なかった。
だが、自分の妹と同年代の子供に戦わせる何てそれこそ論外だ。
自分にも出来る事があるばず―――。
「あんたはその子に着いていてやれ」
一護の言葉にハッと気付いて慌ててすずかを見ると、体を震わせていた。
「(この子に言われるまですずかの事を忘れていた?っ!!)判ったわ」
「忍お嬢様!!」
忍の言葉に驚きを隠せないファリンとノエル。
だが一護はその言葉に頷いて忍とすずかとファリンを肩と脇に担ぐ。
「は?ちょっ君何やって―――」
一護はノエルの前まで瞬歩を使って移動した。
「「「は?」」」
「すご~~い!!」
瞬間移動したかのようにいきなりノエルの目の前まで移動したその速度に目が点となる三人。
すずかだけは純粋に今の速度に手を叩いている。未来では大物になれるだろう。
「俺の後ろにいてくれ。毛筋程の霊圧すら届かせねぇ」
「霊………圧?」
訊いた事の無い単語に傾げる忍。
その名前通りなら幽霊の放つ圧力のように聞こえる。
だが幽霊?この怪物達が?何処からどう見ても悪魔と言われたほうが信じられる。
「私もお手伝いします………」
赤い液体を流しながら立ち上がろうと踏ん張るノエル。メイドとして、何より年上として子供一人に任せて下がっていられる程出来ていない。
だが
「いや。下がっていてくれ。虚には物理攻撃は通用しないから」
鞘から刀を抜き放つ。隊長陣は皆膨大な霊力がありすぎる為に刀の大きさをコントロールしている。じゃないと全員がビルみたいな長さの斬魄刀を振り回すことになるからだ。
なら一護は?隊長陣の数人分もの霊力を誇る一護は?
コントロールしてこの長さなのだ。昔の霊子が籠っていない飾りではなく、いまの一護の斬魄刀は極限まで精錬された代物である。
「んじゃ、行くぜ」
一護が刀を構えるのを合図にしたのか三体の虚が襲い掛かって来る。
ノエルに襲ったようなゆっくりじゃない。車並の速度で突進してくる虚達。
だがそれが何だというのだろうか。
たかが下級虚風情三体が、破面の根城の『虚圏』にたったの三人で乗り込んだ一護に勝てる?
否、断じて否。
「はぁっ!!」
一護を捕えようと伸ばされる巨腕。だが、その速度は忍に伸ばされた時の数倍のスピードがある。
一護はその巨腕を飛んで躱し、伸ばしきった腕に着地してそのまま疾走する。
乗っている虚の頭を踏み台に一番後ろの虚の背後に跳んだ。
家と同じ高さまで跳躍する一護。
重力と落下速度を加算した斬撃は虚を脳天から真っ二つに両断した。
真っ二つにされた虚は左右に半身が倒れ、霊子へと戻り消えていく。
「ガアァァァァァァッ!!」
咆哮する残りの二体の虚。仲間が殺られたからか、霊圧が上昇していく。
だが、所詮下級虚の霊圧が上昇しようが脅威にはならない。
「ウルセェよ。さっさと倒れやがれ」
一護は斬魄刀を………投擲した。
矢の如く。槍の如く投擲された刀は虚の頭に見事突き刺さり、仮面を砕いた。
斬魄刀を手放した一護を隙だと認識した虚は、突進する。
だがそれは大きな間違いである。
「……残念だったな」
斬魄刀を持たない一護。だが、刀を失って戦えなくなる死神など必要だろうか?
否。斬魄刀を何らかにより失っても自衛は出来るように白打と言うモノを習得している。
確かに一護は純粋な死神ではなく死神代行だ。だからこそ、ルキアや一角に白打を教わっている。
だからこそ………この光景は頷けるだろう。
殴る為に突きだされた腕。その腕を合気道のように受け流し………強烈な霊力を込めたパンチを虚の腹に叩き込んだ。
簡単に中までめり込み、その体内で霊力を爆発させた。
指向性を持たない只の霊力の爆発は虚を破裂させる。
自分達では毛筋の傷すら負わせる事が出来なかった虚を、子供がまるで赤子の腕を捻るかのように倒すこの光景を忍とノエルは夢でも見ているかのように呆然とし。
すずかとファリンは拍手していることから………ファリンの感性は6歳のすずかと同じレベル?
地上の全ての虚を倒し終えた一護。地面に落ちている斬魄刀を拾う。
後は上空に飛んでいる虚だけなのだが、降りては一蹴されると理解している虚は降りてはこない。
「あれは………どうするのかしら?」
忍が一護に尋ねる。もし虚に銃等が効くのであれば撃ち落とせるが、効かないのだ。
「ん?どうするって、普通に斬るだけだが?」
「斬るって………具体的にはどうするの?」
ファリンが気になったのか聞き返すが、一護は当然かのように普通の人間達が聞いたら首を振ることを言い出した。
「だから普通に跳んだ斬り落とすだけだけど?」
「「…………………」」
「「あんな所まで飛べるんだ~~」」
黙る忍とノエル。純粋に驚くすずかとファリン。
「……届くのですか?」
「ん?まぁな。普通にビルの屋上くらいまでなら跳べるぞ」
ノエルの疑問もさらに突拍子もない答えに言葉を失う。
「んじゃああいつを倒したら説明する。それでいいか?」
「えぇ」
一護は空から霊力の弾幕を放つ虚へ向かって跳躍。四人に当たる霊弾は一護が刀を振るった時に発生する剣圧で相殺される。
翼を広げ回避行動を取ろうとする虚だが、少しばかり遅かった。
さっきの虚と戦っている時に逃げ出していれば死ぬことは無かっただろう。
刀を上段で構えた一護は虚を脳天から股下までを一気に真っ二つにした。
霊子になって消えていく虚。
一護は背中の鞘を外して刀を納める。
「無事か?あんた達」
一護は地面に着地して四人に歩み寄る。
四人は現実離れした先の光景に言葉を失っていたが、一護に声を掛けられた事で意識を取り戻す。
「え、えぇ。てっそうじゃないわよ!!何よ今の化物は!?君は何なの!?」
ガオーッと吼える忍はさておいてノエルとファリンとすずかがお礼を言ってくる。
「あの………助けていただきましてありがとうございました」
「あ、あの!!私達が不甲斐ないばっかりに!!ご、ごめんなさい!!」
「たすけてくれて……その……ありがとう」
「いや。そもそも虚に対抗出来ないのが普通何だからよ」
「そう!!それよ!!君、その虚って奴の事を教えてもらうわよ!!」
一護に掴みかかって来る忍。本来なら霊体である一護に触れることは出来ないが、虚が視認できたということは一定以上の霊力を持っているということになる。
つまりどういう事かと言うと………ガクガクと胸ぐらを掴まれ頭がシェイクされる。
「わわわわ、分かった!!分かったから少し落ち着けぇ!!!!」
夜の月村邸に一護の悲鳴が響き渡った。
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