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黒崎一護の異世界物語

作者:幻想花札
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弾き出された一護

次元流に飲み込まれた一護。無月は不発に終わったからか解除され、何時もの一護の姿に戻っている。

「『黒腔(ガルガンタ)』じゃねぇみてぇだな」

飲み込まれた一護は、周りを見て顔をしかめている。

それも仕方無いだろう。黒腔ならまだ帰還できる可能性が高かっただろうが、この空間は見た事の無い空間。運良く出れたとして、元居た場所へ出れる確率は極めて低い。

「くそっ!!なにかいい方法はねぇのか?」

頭を掻きむしりながら思考を回転させる。戦いの中で自然と身に付いた並列思考(マルチタスク)をフルに回転させる。

「あぁ!!俺は鬼道は使えねぇし、どうする?」

斬月を振り回しながら溜め息を吐く。

「はぁ~~」

すると、突如空間に亀裂が走る。その亀裂からは光が漏れている。

「出口か!?」

その亀裂に触れようと手を伸ばした。

バチンッ!!!!

触れた指先が電撃に焼かれたような火傷傷が付いた。

「痛っ!!」

急いで指を引っ込め、火傷傷に息を吹き掛ける。霊体と言えど、純粋なエネルギーのせいか傷付く。

「直に触れられねぇなら触れずに壊すまでだ!!」

一護は始解に戻った斬月を背から放って両手でしっかりと握り締め、上段に構える。

すると、青白い霊力が斬月の刀身にまとわりつく。

「【月牙天衝】!!」

斬月を思いっきり振り下ろすと同時に巨大な斬撃が放たれ、亀裂に激突。

甲高い轟音と共に亀裂が吹き飛び、その出来上がった穴に吸い込まれる一護。

「蛇が出るか鬼が出るか………思しれぇじゃねぇか」

一護は不謹慎ながらも口をニヒルに上げながら笑う。

例え知らない世界だろうと、自分と同じくこれに巻き込まれた藍染を見付け出す。

「いくか」

その穴に飛び込む一護。









SIED:月村

第97管理外世界『地球』が海鳴の豪邸の1つ月村家。その家は俗に吸血鬼と呼ばれる一族『夜の一族』が住まう場所。

その夜の一族が当主“月村 忍”とその妹“月村 すずか”に2人のメイド………過去に造られたオーパーツの1つでもある自動人形の姉“ノエル”と妹“ファリン”の四人が、庭に出て、ノエルとファリンが肩で息をしている。

「はぁはぁはぁい、いったい何なんですかぁあれは!!」

ファリンが涙目で叫ぶと、その言葉に頷くノエル。

「ですね。銃火器では傷一つ与えられず、熱線等のエネルギー系統ですら無効化する。まさしく本当の化物です」

自動人形二人が束になっても勝てない敵。

四人の前にいるのは骸骨のような白い仮面に5mはあるだろう白い巨体に胸の中心に空いた黒い穴。

一護の世界にしかいない筈の悪霊『虚(ホロウ)』が月村の二人を喰らおうと襲っている。

月村の吸血種の血は虚に取って死神や異能者の次に好む混血に属する血である。
そのため、一般人の魂を喰らうよりより力が増すためである。

振り下ろされる腕を忍とファリンは横へ、ノエルはすずかを抱え込んで後ろへ飛んで躱す。

だが、忍やファリンにノエルはまだしもたった6歳で戦いというモノを知らないすずかに取っては死の空気等味わった事がまず無い。

だから泣いてしまうのは仕方がない。

「ひっ!……ぐすっこわ、こわいよぉぉぉ………!!」

すずかの泣き声にノエルとファリンはAK-47アサルトライフルを構え、目の前の虚に向けて連射する。

鉄板だろうと穴だらけにする鉛の雨。だが、霊子で構成されている虚には毛筋程のダメージも無い。

ダメージが無いのに二人は撃つのを止めない。

それは護るため。

自身が仕え、愛している二人を護るために。

二人に毛筋程の傷も付けてはいけない。

例え。

自分達が壊れようとも。

だが二人は………いや、三人は甘かった。虚が目の前にしか現れていない為に虚は一体しかいないと錯覚していた。

「グオォォォォッ!!!」

ドスンッ!!!

四人の後ろにさっきのと同じ虚が咆哮しながら二体も現れた。

さらに、空には翼を生やした鳥のような虚も飛んでいる。

「う………そ……。流石にヤバいわよ?あんなのがさらに二体」

「そして、空にも一体いますね」

「ふぇぇぇぇん!!誰か助けてくださいぃぃぃ!!」
ファリンの泣き言も理解できる。一体でも勝ち目が無かったのに、さらに同じ奴が二体と例え逃げようが空から奇襲可能な空にいる虚。

三人は中心にすずかを置いて円陣を作る。

そう。自分達が死んでもすずかだけは助ける。

「ターゲットロック。発射」

ノエルの腕がさっきまで戦っていた虚の腹へ飛ぶ。

それはロボットには欠かせないロケットパンチ。

が、腹に当たった瞬間まるで鉄に当たったかのような手応えを感じ弾かれる。

「それがどうしました!!」

スカートの裾からナイフを抜き放ち、虚の顔の仮面に投げる。

ノエル達は知らなくてたまたまだったのだろうが、虚の弱点はその仮面である。

破面ではない虚が仮面を壊されれば霊子を持ってすら存在することは出来ない。

そう。今のナイフに少しでも霊力が込もっていれば倒せただろう。

霊力の籠っていないナイフは簡単に弾かれ、空から降ってきた霊力の弾丸を察知できずにノエルは吹き飛んだ。

虚に熱源があれば察知できた。だが、霊力には熱源なんぞない。故に、直撃したのだ。

だが、四人は知らない。

虚とは悪霊。霊力を持たない者には認識出来ない存在。

四人共しっかりと認識できている。自動人形であるノエルとファリンの二人にも。

つまりは一定の霊力を四人は所持している。

せめて、霊力を操る技術を持っていれば撃退は出来ていただろう。

「ノエル!!」

「お姉さま!!」

「のえる!!」

忍、ファリン、すずかが悲鳴をあげる。

吹き飛んだノエルは、震える足をしっかりと押さえながら立ち上がる。

痛い。

自動人形であろうと、忍とすずかは人間として接し愛している。

故に二人にも心が、魂がある。

だから痛い。

「(私が怪我等をしてしまったからに忍お嬢様とすずかお嬢様を悲しませてしまった………まだ、倒れる訳にはいきません!!)」

必死に立ち上がろうとするノエル。ノエルを助けようと三人が動くが、空から霊力の弾丸が降り落ち行動を阻害する。

三体の虚は三人にその巨大な腕を伸ばす。喰らう為に。

「誰でも………誰でもいい………ですから………助けて………助けてください!!!!」

ノエルが涙を流し叫んだ。

叶う訳が無い。

そう………普通なら。

「やらせるかぁぁぁ!!」

上空から小さなオレンジ色の髪に、黒い和服を着て、長い刀を持った少年が現れて………三体の虚を弾き飛ばした。









SIDE:一護

空間の亀裂から飛び出した一護。目の前には真っ白な雲が広がっていた。

そう。雲に届く程の上空に出たのだ。

流石の一護もこの状況には驚きを隠せない。

「危ねぇぇぇぇ!!!」

すぐに空気中の霊子をかき集めて、その上に着地する一護。

「で?何処だここは…………」

一護は下を見下ろす。

見えるのは海。広い海。街がある。けど、一護にとって見たことのない街である。

「海があるってことは空座町じゃねぇな………ってことはどっかの町か」

そもそも情報が少な過ぎるのだ。こんだけの情報ではまず現在地すら分からない。

「取り敢えず町で情報でも調べてみるか―――――――――っ!!!」

町に降りようとした瞬間………一護は虚の霊圧を感じた。

「この感覚は虚!!ってことは、ここは俺がいた世界か!!」

異世界に跳んでしまったと思っていた一護は間違いだったのかと思った。だが、それは錯覚だ。

「………マジぃ!!四人程虚に襲われてやがる!!」

急いで向かおうとした一護。だが気付いた。

「な!?俺の姿が始解前に戻ってやがる!!」

そう戻っているのだ。本来の死神なら驚くような事ではない。だが、一護の斬魄刀は常時解放型のタイプの為にありえないのだ。

斬魄刀は前のような霊子が込もっていないナマクラ刀ではなく、一護の身長程もある長く薄い斬魄刀になっている事から霊力の使い方が上達したという事だ。

「ちっ、今は考えている場合じゃねぇな。早く行かねぇと!!」

一護は死神にしか使えない高等歩法術『瞬歩』を使って、まるで瞬間移動したかのようにその姿がその場から掻き消える。

ビルの屋上に着地した一護は、其処から一気に跳ぼうと力んだ瞬間――――体が重くなった。

「なん………だと………!」

そう。死神状態だった筈が、ビルに、いや……地面に触れた途端に元の人間の体になったのだ。

まるで、元の体が自分のいた世界から弾き出されたかのように。

意味が解らなかった。今さっきまでの自分は確かに霊体だった。だが、今はどうだ?肉体がある。しかも………小さな6歳だった頃の自身の体に。

義骸でも無い正真正銘自身の子供時代の肉体。

「くそがっ!!」

今は考えている場合ではない。一刻も早く虚を昇華させて、襲われている人達を助けねば。

一護はポケットに括り付けられている骸骨を象った板のような物『死神代行許可証』を掴むと、幽体離脱したように元の体から黒い和服……死覇装に身を包み、背に自身と同じ長さの長刀(大人から見れば短い)を背負った一護が現れる。

普通の白いシャツにジーパンの一護の肉体は、力尽きたように倒れた。のを、一護は抱え、ビルの屋上から虚のいる方向へ向けて移動する。









虚の気配のすぐ近くで極力霊圧を下げた一護は、安全な場所に自分の肉体を置いて其処から跳ぶ。

上空に飛び上がった一護の目に写ったのは………虚の手から小さな女の子を護る為に腕を広げた、女の子に良く似た少女。

その光景を見て一護の脳裏に浮かぶ場面。

自分が………自分の不注意のせいで虚から自分を庇って死んだ母の姿が浮かび上がった。

「………もう誰にも」

自分が父や妹から母を奪ってしまった。あの時の光景が嫌でも浮かぶ。

「もう誰にも………あんな思いを………」

死にたかった。大好きな母を殺してしまった自分を許せなかったから。

「もう誰にも………あんな思いを………させてたまるかあぁぁぁぁぁ!!!!」

あんな小さな女の子に、自分のような思いをさせる訳にはいかない。

だから。

「やらせるかぁぁぁ!!!!!」

一護は、小さな女の子を護る少女に手を伸ばしていた虚を鞘に収まったままの斬魄刀で吹っ飛ばした。









 
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