| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

黒崎一護の異世界物語

作者:幻想花札
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
< 前ページ 目次
 

転移する一護

 
前書き
後書きにアンケート有り 

 
●●県空座町

其処に二人の異形が存在した。

1人は茶色の長い髪をオールバックにして一房だけ垂らした白い衣に胸の中心には黒い宝玉が埋め込まれ、背に畳んだ六対十二翼の翼を生やした右腕を刀と融合させた男。

それに相対するは、少し長めに伸ばしたオレンジ色の髪にブラウンの瞳を持ち、黒いロングコートと着物を合わせた服に胸元を大きく開け、右腕だけを肩から破け、その右腕に黒い鎖を巻き付けて黒い革のようなベルトのような物で雁字搦めにした異形の男と同じく右腕と漆黒の刀を融合させた青年が立つ。

白い異形“藍染 惣右介”が口を開く。

「………黒崎一護。本当に君は黒崎一護か?」

藍染の言葉に黒い異形“黒崎 一護”は興味を示さず、瓦礫に倒れる男に目を向ける。

血を吐き倒れ伏す男“市丸 銀”を見詰めて藍染に目を戻す。

「………どういう意味だ?」

「本当に黒崎一護なら落胆した。今の君からは霊圧を全く感じない」

藍染はまるで虫けらを見るかのような目で一護を見る。

「霊圧を抑えていたとしても全く感じない事などあり得ない」

そこで一度言葉を止め、呟く。

「君は進化に失敗した。私の与えた最後の機会を、君は取り零したのだ」

そう言い藍染は一護に手を向ける。

「――残念だ。黒崎」

「藍染」

が、その言葉は一護に途中で止められる。止められた事に藍染の目は自然と細まる。

「場所を移そうぜ。空座町(ここ)では俺は戦いたくねぇ」

だが、そんな一護の提案を受ける藍染ではない。

「………無意味な提案だな。それは“私と戦う事のできる力を持つ者のみが”口にできる言葉だ。案ずる事は無い、空座町が破壊される迄も無く君は――――」

そこで藍染の言葉は一護により遮られる。藍染の顔を掴んだ一護は普通に藍染を音速をゆうに突破した速度で空座町の外れまで押し出す。

「な………に………!?」

そのまま一護は藍染を地面に押し落とす。地面が吹き飛ぶ程の力で叩き落とされた藍染は自身の顔を押さえながらあり得ないように呟く。

「…馬鹿な………私が………力だけで………」

一護も地面に降り、藍染へ目を向ける。

「………始めようぜ藍染。一瞬で終わらせてやる」









「……一護で終わらせてやる………」

藍染はその言葉をなぞる。そして馬鹿にするように語る。

「―――成程、理解したよ黒崎一護。君が霊圧を失った理由を」

その言葉にも一護は眉すら動かさない。藍染の独白が続く。

「君は“霊圧を失くした”んじゃない、“霊圧を棄てた”のだ。どういう術を使ったのかは知らないが、君は全ての霊圧を自身の霊体の膂力に変えた。それは腕力であり、脚力であり、握力であり、投力であり、走力。君は身体能力の全てを飛躍的に上昇させる代償として霊圧を棄てたのだ。私と霊圧同士で戦う事を諦めたが故に」藍染は笑う。

「だが、絶望するが良い。教えよう……その頼みの綱の膂力ですらこの私のそれには遠く及ばないという事を」

藍染は畳んでいた翼を開ける。その光景に一護は目を細める。

「―――……何だ……?」

次の瞬間藍染が消えた。それに一瞬で対応する一護。

後方に移動した藍染が横に刀を振るう。それを一護も刀をぶつける事で横へ弾く。

ボッ!!!!

二人の横にあった巨大な山がただの剣圧で消し飛んだ。

その光景に藍染ですら驚きを隠せない。が、一護は相変わらず感情を出さない。それを驚きで呆然としていると思う藍染。

「……良く躱した。だが驚いているのだろう、刀の一振りで地形が変わる。それが今の私の力だ……正直私も自身の能力がここまで上昇しているとは思っていなかった。嬉しいよ黒崎一護。君のお陰で虚も死神も超越したこの力を、私も存分に試す事ができる」

一護に突っ込む藍染。それを横に一護は弾き、弾く度に山が、大地が消滅する。

「はっ」

鍔迫り合いに持ち込む二人。

「………奇しくも我々は右腕と斬魄刀が融合するという似通った姿に進化の帰着を見出だした様だ。もしかするとこの姿こそが斬魄刀の本来の姿なのかも知れんな………だが今の斬撃の応酬で判った。やはり君と私の進化は次元を異にしている。私がその気になれば、君の刀は一振りで破片となる!」

そう言って藍染は刀を振るう。

が、一護は何と!左掌で軽々と藍染の刀を受け止めてしまった。

その藍染の刀の威力に一護の後ろの大地が衝撃に耐えきれず吹き飛ぶが、一護自身には全くのダメージも無い。

「………馬鹿な」

そのあまりにも理解し難い光景に動きを止める藍染。それも仕方無いだろう。必殺と思っていた斬撃は、雑魚と思っていた一護に簡単に受け止められたのだから。

「(躱したのなら解る。いや…本来なら躱せる速度ですら無い筈だが、それでも躱したというならまだ解る。だが“受け止めた”!?この私の一撃を―――)」

「何を驚いてんだ?」

突如発した一護の言葉に反応する藍染。

「俺があんたの刀を受け止めた事がそんなに信じられねぇか?怖いか?自分の前で自分の理解できねぇ事が起こるのが」

そこまで言った瞬間。藍染は後方に距離を取る。

「勝ち誇った様な口を利くなよ………今のは君の膂力が瞬間的に私を上回っただけのこと。ならばそんな奇跡など起こらぬよう、鬼道で微塵に押し潰すだけだ!!」

そう叫んだ藍染は人差し指を天へと向け、鬼道の詠唱へ入る。

「『滲み出す混濁の紋章 不遜なる狂気の器 沸き上がり・否定し・痺れ・瞬き・眠りを妨げる 爬行する鉄の王女 絶えず自壊する泥の人形 結合せよ 反発せよ 地に満ち己の無力を知れ』破道の九十【黒棺】!!!!」

周囲一体を漆黒が包み込む。それは漆黒に染まる棺。

「虚も死神も超越した私の放つ完全詠唱の黒棺だ!!時空が歪む程の重力の奔流だ!!君如きでは理解する事すらできまい黒崎一護!!!!」

漆黒に閉じ込められた一護。理すら捻り曲げる重力の世界。

だが、一護はさらにレベルが違った。何と空間を左腕を振るっただけで完膚無きまで破壊した。

その光景に唖然とするしかない藍染。

「……気がついてねぇみたいだな。今のあんたの力より、俺の力の方が上だ。あの岩山を消し飛ばしたのはあんたの刀じゃねぇ……俺の刀だ」

そう言って一護は藍染を漆黒の刀で斬り裂いた。









後方の岩山の頂に下がった藍染。そんな藍染に一護が不思議でならないのか聞いた。

「……妙な気分だな。俺が距離を取った時に理由を訊いてたあんたが自分から距離を取るなんて、今度は俺から訊こうか?今、何で距離を取った?」

『崩玉』の力により再生する傷。藍染は呟く。

「………そうか。私の剣を止めた事が嬉しいか?私の鬼道を打ち砕いた事が嬉しいか?私の体に傷を付けた事が嬉しいか……?」

そこで一度止め………憎悪に満ちた声で叫んだ。

「思い上がるなよ人間が!!!!」

藍染の額にある目が縦に開き、そこから黒い液体が流れる。それに比例して顔に次々と罅が入っていき、体が膨張して本当の異形へと姿を変える。

赤い長い髪。漆黒の虚の仮面。白い体に翼の先に付いた虚の仮面。

『崩玉』が藍染の憎悪に反応して力になった姿だ。

その姿に相対しても、一護の顔には絶望が浮かばない。

藍染はこの姿へ変わった事に意味を見出だした。

「……そうか……やはり許せないか崩玉よ。………私が人間如きに後れを取るのは」

翼の虚の仮面の口が開き、その口に尋常ではない程の霊力が収束する。

収束された霊力が球状に圧縮され、その霊力が一護へと放たれ―――――数十間の大地を光の柱が呑み込む。

その光の柱の中から左腕を大火傷した一護が見える。

「……成程。今のを受けてその程度か。だが、その左腕はもう使いものになるまい」

一護へ突進する藍染。普通の突進の筈なのに簡単にソニックブームが発生し、その突進をまともに受ける一護。

立ち上がる土煙の中から一護の首を掴んだ藍染は、翼の計六の仮面の口を開き霊力を吐き出す。

霊力は一護の頭上に三つの輪を形取る。

「……聞こえるか黒崎一護。君は確かに一時は死神と虚の境界を破壊し超越者となった。だが今は手にした力を失い見る影も無い。今の君には取り込み理解する程の価値も無いのだ。君は超越者たる私の手による死を迎える。私は君を打ち殺す事で、死神と虚という低劣な存在から完全に訣別する。終わりだ!!黒崎一護!!」

咆哮する藍染。そんな藍染に一護は静かに呟く。

「………終わりだと?」
藍染を睨み付ける一護。

「こんなもんかよ?」

ただ刀を振るっただけで頭上に展開していた霊力は破壊され、その光景に理解出来ずに一歩後方へ下がる藍染。

一護はそんな藍染に言う。

「……止めにしようぜ藍染……あんたの理屈はもううんざりだ……」

そう言って一護は、右腕と融合している刀に左腕を翳す。

すると、右肩から漆黒の霊力が炎のように昇る。

「見せてやるよ。最後の月牙天衝だ」









一護を中心に、世界全てを閉ざすかのよいな黒い………黒い漆黒の闇が包み込む。その闇の中にいる一護に呟く藍染。

「―――何だ、その姿は―――――」

「“最後の月牙天衝”ってのは、俺自身が月牙になる事だ」

鼻上から体全身を黒い布のような仮面で覆い、右腕から噴き出すかのように漆黒の闇が意思を持っているかの如く動く。

「この技を使えば俺は死神の力の全てを失う。“最後”ってのはそういう意味だ」

姿も力も変わった筈の一護を前にしても何も感じることのできない藍染。その意味にありえないと首をふる。

「(まだ………何も感じない。まさか、私は死神とは別次元へと進化を遂げる事で二次元の存在が三次元の存在に干渉できぬように、自ら意図的にレベルを下げて干渉させぬ限り死神にも人間にも私の霊圧を感じ取る事はできなくなった。まさ………まさか……奴は……奴は私よりも、更に上の次元に立っているというのか――――――)」

その意味に咆哮する藍染。

「馬鹿な!!そんな筈がある!!人間如きがこの私を超えるなど!!そんな事が――――」

一護はそんな藍染に構うことなく、右手を広げその先に漆黒の霊力が線になった何かを握る。

「【無月】」

漆黒が世界を染め上げた。









その時突如発生した次元を揺るがす空間の乱れ。

「っ!何だいったい」

無月を放つ寸前故に霊力が掻き消える。

突如空間が割れ、その中から発生する次元流に捕らわれる一護。

「逃げ―――きれねぇ!!」

逃げきれないと悟った一護は抵抗を止め、流れに身を任す。

「すまねぇみんな。俺は………ここまでだ」

一護は仲間にそう告げて………消えた。









藍染もその次元に巻き込まれて。
 
 

 
後書き
アンケート

アリシアの斬魄刀を募集しております。始解・卍解・能力諸々を募集しております。 
< 前ページ 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧