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母親の髪型を

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第二章

「お母さんも髪の毛伸ばしていたのを」
「短くしたの」
「だって長いとね」
 髪の毛がというのだ。
「どうしてもね」
「洗う手間があるし乾かすにも時間がかかるから」
「それでよ」
 まさにその為にというのだ。
「お母さん髪の毛短くしたのよ」
「そういうことね」
「子供出来たらね」
「本当に時間がなくて」
「そうしたのよ」
「成程ね。今になってわかったわ」
 子供を抱きつつだ。公佳はあらためて言った。
「お母さんがずっと髪の毛短い理由が」
「今は時間あるけれどね」
「そのままなのね」
「お父さんも何も言わないしね」
 ずっと消防署で働いていて今は定年している父もというのだ。
「だからね」
「そのままなのね」
「そうよ、髪型を変えるにもよ」
「訳があるのね」
「好き嫌いや流行でそうする場合とね」
「お母さんみたいになのね」
「忙しいからね」
 だからだというのだ。
「切る人もいるのよ」
「そういうことよね、いやしかしね」
 娘はさらに言った。
「時間ないわ、忙しくてね」
「ちゃんと寝られてる?」
「何とかね」
「じゃあまだ大丈夫ね、寝ないとね」
 母はこのことは真面目に言った。
「駄目よ」
「育児の時もよね」
「人間寝ないとどうしようもないからね」
「そのうち倒れるわね」
「そうなるからね」
 だからだというのだ。
「寝ることはちゃんとしていてね」
「そうするわね」
「それでその暇がない位ならよ」
「髪の毛もなのね」
「考えなさいね」
「そうするわね」
 実際にとだ、こう答えてだった。
 公佳は育児をしていった、彼女は髪は切らなかった。だが母にもう髪の毛のことで言うことはなくなった。短くする理由がわかったので。



母親の髪型を   完


                  2023・7・25 
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