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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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第114話 摩訶不思議な迷路、グルメピラミッド!イッセーよ、強敵たちを打ち倒せ!

 
前書き
  

 
side:イッセー


デザートラビリンスを抜けて遂にグルメピラミッドに到着した俺達、ここにメロウコーラと小猫ちゃん達がいるんだな。


「す、凄い大きさだね。これってなん百メートルはあるんだろう」
「ざっと見て高さは500メートルくらいじゃないか?」
「とんでもない大きさですわね……」


 祐斗は目の前に聳え立つ巨大な建築物に圧巻されていた、俺は目即で500メートルの高さがあるんじゃないのかと話すと朱乃が驚きながらそう呟いた。


「ふん、こんなのは氷山の一角だ」
「どういうことだ、ゼブラ兄?」
「俺も正直驚いたがこのピラミッドに見える部分は屋根だ、この下に完全に把握しきれないほどの巨大な宮殿が埋まってやがる」
「なんですって!?」


 ゼブラ兄が言った言葉にリアスさんは大層驚いた、だがそれは俺達も同じだ。


「嘘でしょ!?こんな巨大なピラミッドが氷山の一角だなんて!?……ところで氷山の一角って何?」
「イリナ、しっかりしろ。氷山の一角とはかき氷が沢山食べられるという事だ。何せ氷山ほどの大きさだ、相当な量が作れるはずだ」
「そっか!氷山くらいの大きさなら百人前のかき氷を作れそうね!この暑さだしかき氷は最高ね!」
「あはは……氷山の一角というのは物事のごく一部が外に現れているって意味ですよ~」


 イリナとゼノヴィアがコントを始めてしまいルフェイが苦笑しながら言葉の意味を説明していた。


「ゼブラ兄の反響マップでも把握しきれないとはどれだけ大きな建物が砂の中に埋もれているんだよ!?二人は何処にいるんだ……?」
「かなり下の方にいるな。それに宮殿内は小娘達だけじゃなく猛獣どもがウヨウヨいやがる、俺の『吠え弾』が効かねえ奴が出たらアウトだぜ」
「あの二人は簡単には死なないさ、直ぐに合流しよう」


 ここが危険地帯なんて百も承知さ、俺は小猫ちゃんとアーシアが生き残ることを信じて先を進む事を決めた。


「ふん、だったらさっさとあの小娘達と合流するぞ。いざとなったら『サウンドアーマー』も飛ばしてやるよ」
「なんか今日のゼブラ兄やたらと協力的だな、変なモノでも食べたか?」
「殺すぞ。まああの小娘は俺の報酬だからな、その為だ」
「えっ……」


 俺はやけに協力的なゼブラ兄にからかいを含んだ質問をするがゼブラ兄は小猫ちゃんを報酬と言った。飯を作ってもらう約束でもしたのかな?


 気にはなったが今はそれどころじゃないので思考を切り替えた。


「そうだ、オブは一足先に帰っていてくれ。この辺りも暑いし待ってる間に死んでしまうかもしれないからな」
「ゴァ……」
「気にすんな、メロウコーラを手に入れたらまた呼ぶからその時一緒に宴会でもしようぜ」
「オブ、ここまで連れて来てくれてありがとう。後は私達に任せて頂戴」
「……ガァ!」


 オブの体格ではグルメピラミッドには入れないだろう、外で待っていてもこの暑さでは命が危険だ。だから俺はオブは一旦帰ってもらうことを提案した。


 忠誠心の強いオブは申し訳なさそうな顔をするが俺とリアスさんはフォローすると笑顔で頷いてくれた。そしてオブはルフェイのフロルの風でスイーツハウスに戻っていった。


「お前はどうする?村までなら戻せるけど」
「……」
「そうか、付いてくるか。なら好きにしな」
「うふふ、マツゲちゃんはわたくしが守って差し上げますわ」


 俺はラクダにそう言うとコイツは首を横に振った。というか朱乃いつの間に名前を付けていたんだ?


「よし、皆行くぞ」
『おうっ!』


 そして俺達は意を決して内部に入るのだった。


「これは……!?」


 ピラミッドの中には人間の死体が複数あった、恐らくデザートラビリンスを運よく乗り越えた美食屋だろう。


「死体……白骨化してるわね」
「うん、ここに来れたのは良いけど帰れなくなってしまったんだろうね。そして食料も尽きて……」
「僕達も気を付けないとこうなりそうですぅ……」


 リアスさんは白骨化した死体を見て唾を飲み祐斗はこうなってしまった経緯を憶測で話す、それを聞いたギャスパーは油断したら自分達もこうなると怯えていた。


「それにしても複雑な迷路だし。リン、アンタ何か見つけても勝手に移動したりしないで……」
「ああ―――っ!?」
「ど、どうしたんだし!?」
「ビデオカメラが壊れてる!高かったのにー!!」
「ビックリさせるなし!!」


 ティナが壊れたカメラを持って泣いていた、恐らく高温で機械であるビデオカメラが故障してしまったのだろう。急に大きな声を出したティナにリン姉が怒っていた。


「まったく……今はこの迷路みたいなピラミッドの先に進まないといけないのに呑気だな」
「まあまあ、イッセー。彼女らしいじゃない」


 溜息を吐く俺にリアスさんがティナのフォローを入れる。


「でも実際何処から進めばいいのでしょうか?これだけ道があると正解が分からないですね」
「おいおい、何を言ってるんだ。さっきゼブラの奴がなんて言ってたか思い出してみろよ」
「えーっと……」


 ルフェイが何処から先に進もうか迷っているとアザゼル先生が小バカにしたような笑みを浮かべてゼブラ兄の言葉を思い出せと言う。


「確か小猫ちゃんが報酬とか言っていたな」
「それじゃねえよ」
「あっ分かった!氷山の一角ね!」
「違う違う、いつまでソレ引っ張るんだ……」


 俺とイリナの回答にアザゼル先生は頭を抑えた。し、仕方ないじゃないか、気になるんだから……


「はぁ、お前らなァ……ゼブラはさっきこのピラミッドは砂の中に埋もれた宮殿の一部だって言っていただろう?つまりここは上の方なんだ、それなら向かうのは……」
「下への道って事ね」


 アザゼル先生の問いかけにリアスさんが答える。流石は何百年も生きた年長者、頭の回転が速いな。


「おい、なに勝手に人のセリフ取ってんだ、殺すぞジジイ」
「なんでだよ!?あっぶねぇ!!」


 そしてなにか気に入らなかったのかアザゼル先生にゼブラ兄が殴りかかった。


「でも下へ向かう道が見当たらなくない?」
「うん、見た感じでは見当たらないね」


 ティナは辺りを見渡して下への道を探すが見当たらないと言う、祐斗も注意深く探るがやはり見つけられないようだ。


 その時だった、テリーが端にある床を掘ろうとしていたのを俺は見つけた。


「どうしたテリー、そこに何かあるのか」
「ガウ」


 俺はテリーが掘ろうとしていた床を注意深く触ってみる……


「これは鎖か?」


 床の一部が外れて鎖が出てきた、俺はそれを手に取って引っ張ってみる。すると……


「ああ、階段が現れたわ!」


 すると床から階段が現れた、こういうギミックだったのか。


「お手柄だぞ、テリー」


 俺はテリーの頭を撫でながら抱きしめた。良い子だなぁ、本当に。


「ふん、道が見つかったのならさっさと先に進むぞ」
「おう。というかゼブラ兄なら反響マップでここに道があるって知っていたんじゃないのか?」
「その犬っころに出番をやったんだよ、俺は優しいからな」
「ははっ、そうかよ」


 そんな軽口を言い合いながら俺達は現れた階段を降りていく。


「ん、どうやらお出ましのようだぜ」


 階段の下から頭に蛇を生やした一つ目の猛獣が現れた、小猫ちゃんがいないからグルメスティックセンサーが使えないな。


「イッセー、変わりならここにあるし」


 リン姉は腕に付けた装置から何か光のような物を出すと猛獣に当てる。


「コイツはゴルゴロプス、捕獲レベル42の哺乳獣類だね。毒とかないから食べても平気だし」
「そりゃ嬉しいね」


 俺とゼブラ兄はニヤリと笑った、丁度腹も減っていたんだ。


「ガァァァァッ!!」


 ゴルゴロプスは大きな口を開けて俺達を食おうとする、だがそれよりも早くゼブラ兄が奴の首元に噛みついた。


「ガァァッ!?」


 あまりの速さにゴルゴロプスはゼブラ兄を認識できなかったようだ、だが自分が攻撃を受けていると判断したゴルゴロプスは頭の蛇をゼブラ兄に噛ませようとした。


「おっと、俺を忘れんなよ」


 俺は蛇をナイフですべて切り落として奴の背後に回り込んだ。


「ジュル……」
「この世の全ての食材に感謝を込めて……いただきます」
「ガ……ガァ……」


 俺達を見て恐怖に固まるゴルゴロプス、だが悪いがその命を頂くぞ。


 そして俺とゼブラ兄はゴルゴロプスを食すのだった。


「あー、腹が満たされていく~……贅沢を言えば炎のブレスで焼きたかったんだけどカロリー消費してしまうからできないんだよなぁ。ルフェイの魔力を消費するのもアレだし生食で我慢だな」
「おいおい、あいつら生で食っちまったぞ……」
「顔も血だらけだし殺人現場にしか見えないわね」
「イッセーとゼブラの悪魔も出てきていたし最早地獄絵図だし」


 ゴルゴロプスの肉を貪る俺とゼブラ兄を見てアザゼル先生とリアスさんが呆れた様子を見せていた、リン姉はいつもの事と慣れた様子だ。


「そういえばリン姉、さっきの装置から出た光は一体何だったんだ?」
「あれは今IGOが開発している装置でグルメ界の生物のレベルを正確に測るものらしいよ、ウチがイッセー達と冒険するって言ったらブルマさんが試作品のデータを取ってきてほしいって言って貸してくれたの」
「グルメ界の?もしそれが完成したら強い味方になってくれそうだな」
「そうだね。まあ今は人間界の猛獣しか調べられないけど何れはそうなるだろうね」


 リン姉は自身が使った装置について教えてくれた、いつかグルメ界にも行く日が来るだろうがその時までには装置が完成していると良いな。


 そんな事を思いながら最後に残ったゴルゴロプスの目玉を一気食いした。


「ふう、食った食った」
「イッセー君、カロリーは取れたかい?」
「ああ、多少はな」


 祐斗がそう聞いてきたので俺も少しはカロリーが取れたと返した。砂漠での猛暑に耐えるため体に負担を与えちまったからな、少しでも回復しておきたい。


(それにゼブラ兄もキツそうだしな……)


 本人は絶対に認めないだろうがかなり消耗しているはずだ。なにせ反響マップは最大まで広げると毎秒200キロカロリーを消耗する、それを5分維持するだけで6万キロカロリーも使ってしまう。


 ゼブラ兄は四天王の中でもトップクラスのスタミナとエネルギーを持っているが反響マップを最大まで使って既に5時間は経過している、その負担は尋常なものではないはずだ。


(さっきも少し声が枯れかけていたからな、この先の戦いでは俺がメインになっていかないと……)


 まだまだこの先強い猛獣が出てくるはずだ、皆もいるとはいえ俺が気合を入れて行かないといけないな。


「なあイッセー、このピラミッドに使われている材質ってなんだ?この石の壁に使われている鉱石はこの世界特有の物なのか?」
「えっ……?いや、俺も初めて見ましたね」


 アザゼル先生にそう言われて俺は壁に触れてみる、G×Gに住んでそれなりに長いがこの石の素材は見た事がないな。


「微かに匂うリン酸の匂い……後は俺も嗅いだことのない匂いですね。多分グルメ界の素材であるとは思うんですけど……」
「イッセー、今ウチのこと呼んだ?」
「いや呼んでないよ」


 俺は壁に使われている石から僅かにリン酸の匂いがすると先生に話す、名前を呼ばれたと思ったリン姉が返事をしてきたが違うと答えた。


 いや確かに『リンさん』って聞こえなくもないけど……


「ふぅん、お前も知らない素材なのか。興味が出てきたな」
「まあこのピラミッドは作られた年を計算しても当時の技術では建築は出来ないはずなのにと言われている謎だらけの遺跡ですからね。過去に栄えた古代文明に作られた物じゃないかとも言われています」
「いいねぇ、そういうロマンあふれる話は大好きだ。もしかしたらすげぇ宝も眠ってるかもしれないな」
「言っておきますけど優先するのは小猫ちゃんとアーシア、そしてメロウコーラですからね。お宝探しは後にしてください」
「分かってるよ」


 ヘラヘラと笑うアザゼル先生に溜息を吐きながらも先を進む、すると広い部屋に足を踏み入れた。


「なんだか不思議な場所ね、壁にブロックみたいなモノが沢山付けられているわ」
「ふむ、出入り口は私達が通ってきた場所以外には見当たらないな」


 リアスさんが部屋の特徴を話した、彼女の言う通りこの部屋は壁にブロックのような物が埋められた不思議な部屋だった。


 ゼノヴィアが出入口は俺達が通ってきた場所にしかないと見渡しながら話す、確かに一見通れる場所はなさそうだが……


「な、なに!?地震!?」
「ち、違うし!壁が動いてる!」


 突然の地響きにティナがうろたえる、しかしその地震はリン姉が言った通り壁のブロックなどが動いて起こったモノだ。


 壁が開きそこから3つの首を持った猛獣が現れた、初めて見るがコイツは強いぞ……!


「イッセー!囲まれたわ!」
「かなりマズいな……」


 しかも一体だけでなく後ろから数体出てきやがった。


「来るぞ!」


 猛獣達が一斉に襲い掛かってきたので俺達はバラバラになって回避した。その隙にリン姉が装置の光を猛獣の一体に当てる。


「……出た!コイツは『ユニコーンケルベロス』!捕獲レベル63の強敵だよ!」
「一気に捕獲レベルが跳ね上がったな……!」


 さっき戦ったゴルゴロプスは捕獲レベル42に対して一気に20近くも跳ね上がったことに俺は驚きを隠せなかった。どうやら下に降りれば降りる程強い猛獣がいるみたいだな。


「皆、一人で挑まずにフォローしながら複数で相手をしろ!」
『了解!』


 俺は皆にそう言って一体のユニコーンケルベロスを相手にする。


「喰らえ!」


 俺は先制攻撃でナイフを放つがその巨体からは似つかわしく無い速度で攻撃を回避した。


「ガァァッ!!」


 俺の攻撃を回避したユニコーンケルベロスは上から踏みつけてきた、俺はそれをバックステップで回避する。


 するとユニコーンケルベロスは頭の一本角を俺に突き刺そうとする、俺はその角を横に飛んで回避するが3つの頭を巧みに使い隙の無い攻撃を放ってきた。


「くっ、回避が駄目なら防御だ!」


 俺はフォークシールドで角の一つを防いだ、そして動きの止まった角を掴み奴を投げ飛ばす。


「喰らえ!15×2で30!ブーステッド・釘パンチ!」


 そして俺は奴の胴体にブーステッド・釘パンチを叩き込んだ。胴体に風穴を開けられたユニコーンケルベロスはフラフラとよろめきながらその巨体を地面に横たわらせる。


「はぁ……はぁ……いきなりブーステッド・釘パンチを使っちまったな……」


 一気にカロリーを持っていかれた俺は息を荒くしていた、加減のできる相手じゃなかったがこれじゃ少しの間動けないぞ……


「はぁ!滅びなさい!」


 リアスさんは滅びの魔力を放つがユニコーンケルベロスはそれを回避した。


「ルフェイ!」
「はい!」


 だがジャンプした隙をついてルフェイがマヒャドを放つ、その冷気は奴の首の一つを完全に凍らせた。


「ゴアァァァッ!!」


 怒り狂ったユニコーンケルベロスはルフェイに飛び掛かるが髪を金に染めたリアスさんが奴の首の一つを捕まえて抑え込んでしまった。


 止められると思っていなかったユニコーンケルベロスは驚くが直ぐに前足を使いリアスさんを押しつぶそうとする、しかしそこに雷の矢が前足に刺さり動きを止めた。


「リアス、今よ!」
「ありがとう、朱乃!」


 リアスさんは力を振り絞るとなんとユニコーンケルベロスの首の一つを千切り取ってしまった、残った最後の頭が反撃しようとするが……


「そこです!」


 上空からスタンドを構えて落下してきたギャスパーに重い一撃を喰らわされて脳天を潰された。頭を凍らされ千切られて叩き潰されたユニコーンケルベロスは成すすべも無く絶命した。


「アウ!」
「グルル……!」


 テリーが素早い動きをいかしてユニコーンケルベロスを翻弄している、奴自身もかなりの速さだがテリーは速度においては完全に圧倒していた。


「はぁっ!」
「喰らうし!」


 そしてテリーが作った隙をついて祐斗が痺れ効果のある魔剣で斬り付ける、だが驚いたのはリン姉も接近戦をしていた事だ。


 腕にはいつの間にか何かの装置が新たに付けられておりそこからフラグレンスが剣のような形になっていてユニコーンケルベロスを斬り付けていく。


 切り傷が増えていくにつれてユニコーンケルベロスの動きが鈍くなっていった、祐斗の痺れ毒とリン姉のフラグレンスが効いてきたんだ。


「ガァァッ!」
「龍鎚閃!!」
「フラグレンスソード!」


 テリーの鋭い牙がユニコーンケルベロスの首の動脈を噛み切って祐斗の一撃がもう一つの首を斬り落とした。そしてトドメにリン姉が剣を奴の残った頭の眉間に突き刺すと眠るように目を閉じた。


「さあ、新兵器のお披露目だぜ!禁手化!!」


 アザゼル先生は短剣を取り出すとその短剣が光に包まれた、そしてパーツが湧かれて形を変えていく。


 まばゆい光が収まるとアザゼル先生の全身が黄金の鎧に包まれていた、その手には巨大な光の槍が持たれている。


「あれは禁手化!?アザゼル、貴方神器を持っていたの!?」
「コイツは人工神器さ、その名も『駄天龍の閃光槍』、そしてそいつを禁手化させたのがこの『堕天龍の鎧』だ!イッセー、お前の赤龍帝の鎧から取ったデータと前に入手した『メルクの星屑』で磨き上げた宝玉を使って遂に完成した俺の自慢の一品さ!」


 リアスさんはアザゼル先生が神器を持っていたことに驚くがどうやら先生の作った人工の神器らしい、しかし人口の神器が禁手化するなんて思わなかったぞ。


『あれは唯の禁手化ではないな、神器を暴走させて無理やり覚醒させているようだ。あれでは戦闘後に神器が壊れてしまうぞ』
「心配ご無用!メルクの星屑で鍛え上げたからな、そんなに簡単には壊れないさ。さあコイツの力、とくとご覧あれ!」


 ドライグの指摘にアザゼル先生は得意げに話す、そして光の槍を構えて動き出す。


「ギャンッ!?」
「遅ぇよ」


 ユニコーンケルベロスの角が3つとも切り落とされた、速度もかなり向上してやがるな。


「ガァァッ!!」
「はぁっ!」


 アザゼル先生に噛みつこうとしたユニコーンケルベロスだったが死角から現れたイリナの蹴りで体が宙に浮いた。


「アザゼル先生ばっかり目立ってズルいわ!私達だってやってやるんだから!」


 イリナは空中に蹴り上げたユニコーンケルベロスの全身を閃光の速度で蹴りまくっていく。


「奥義『流星』!!ゼノヴィア、トドメよ!」
「任せろ!」


 イリナはゼノヴィアの方にユニコーンケルベロスを蹴り飛ばした、そしてゼノヴィアはデュランダルを上段に構える。


「見せてやろう、ルキに研いでもらい更に鋭さを増したデュランダルの一撃を!月牙天衝!!」



 ゼノヴィアの振り下ろした一撃はユニコーンケルベロスごと部屋を貫き斬撃がグルメピラミッドを突き進んでいった。


「どうだイッセー!私の一撃は!惚れなおしただろう!」
「いやまあ一撃は凄いんだけどさ、グルメピラミッドが崩れたらどうするんだよ」
「あっ……」


 どや顔でそう言うゼノヴィアだったが俺は問題点を言う、偶々崩れなかったから良かったがヘタをしたら俺達は生き埋めになっていたぞ。


「す、すまない……つい調子に乗ってしまった……」


 自分がやりかけた事を理解してしょんぼりと落ち込んでしまうゼノヴィア、テンションの差が激しすぎるだろう……


「まあ今の一撃は良かったよ、すごかった」
「あ……うん、ありがとう」


 俺はゼノヴィアの頭に手を置いて撫でてやった、するとゼノヴィアは大型犬のように嬉しそうに笑みを浮かべた。


「あーっ!ずるいずるい!イッセー君、私も撫でてよー!」
「分かった分かった」
「むふ~」


 イリナが怒ってきたので彼女の頭も撫でてやると満足そうな顔をした。どっちも尻尾や獣耳があったら高速で動かしていそうな感じがする、まるでワンコだな。


「ははっ戦いの後に女のケアとは大変だな、イッセー」
「まあ貴方には縁はないでしょうね」
「嫌味かよ、コラ」


 すると禁手化を解除したアザゼル先生が声をかけてきた。


「それにしてもビックリしましたよ、そんな凄い人工神器を作っていたとは……しかもその神器に宿っている力の源、あの五大龍王の一角『黄金龍君』ファーブニルですよね?」
「流石ドラゴンを宿しているだけあって詳しいな、その通りだ」
「ドライグが教えてくれたんですよ、懐かしい気配を感じたって」


 俺はアザゼル先生に人工神器の力の源がファーブニルだと言った、それに対してアザゼル先生は悪い笑みを浮かべて答える。


「ファーブニルは自己中でどう猛な事で知られるドラゴンでありながら対価さえ渡せば力を貸してくれる話の分かる奴だからな、グルメ界の珍しい素材を渡したら快く封印されてくれたぜ」
「なるほど……」


 五大龍王ともなれば相当な力を持っている、人工神器のコアとしてはこれ以上ないくらいうってつけだろう。


「まあまだまだ試作段階だがもっと性能を向上させてお前の力になってやるから期待していな、イッセー」
「はい、頼りにしていますね」


 普段はそこそこ雑に対応してしまってるが実際堕天使の総督ともなればかなり強いし心強い、俺は期待も込めてそう答えた。


「イッセー、ウチには質問ないの?新しい武器を使ったんだよ」
「ああそうだったな、その装置もブルマさんが?」
「そうだし!新兵器『フラグレンスソード』!!気体を凝固する汁を出す生物『テラナメクジ』の体液を使ったエキスでフラグレンスを鋼鉄のように固めて刃物にするんだ、それで切傷とフラグレンスの効能を直接体に染み込ませるんだし!」


 なるほど、確かに普通にフラグレンスを発射してもかき消されたり回避されることが多くなってきたから接近戦が出来るようになり斬撃と状態異常を同時に与えられるって事か。


「祐斗君とのコンビネーションもバッチリだし!ウチこれから一杯頑張るね、祐斗君!」
「はい、頼りにしていますね。リンさん」


 そう言ってハグをするリン姉と祐斗、二人とも息の合った動きをしていたし今後も更に強くなっていくだろう。


「はぁ……はぁ……」
「リアスさん、大丈夫ですか?」
「ええ、前と比べて少しだけマシになったわ。それでも辛いけど……」


 あの力を使ったリアスさんはかなり消耗していた、相変わらず燃費が悪いな。


 だがその瞬間的な戦闘力の跳ね上がりは凄すぎるとしか言えないな、なにせ一瞬なら俺より強くなっているからだ。


「無理はしないでくださいね、その力を使った後は食材を食べても体力が回復しないみたいですし」
「ええ、分かってるわ。ここからは少しの間だけ戦いは任せるわね……」
「はい、貴方は休んでてください」


 少しの間リアスさんは戦えないな、彼女のフォローにも回らないと。


 そしてリアスさんが歩き出そうとしたその時だった、足場の端からユニコーンケルベロスが現れて彼女に襲い掛かったんだ。


「しまった!もう一体いたのか!?」


 どうやらもう一体のユニコーンケルベロスが俺達が立っている足場の下に潜んでいたようだった。


 体力を消耗しているのとピラミッドの材質に使われている石の慣れない匂いに紛れていたから気が付くのが遅れてしまった!


「リアスさん!」


 俺は直ぐに彼女を守ろうとするが間に合わない!そしてユニコーンケルベロスが振るった腕がリアスさんを……


「……えっ?」


 引き裂くことはなかった、代わりに間に割って入ったゼブラ兄の腕に鋭い傷が走り鮮血が宙を舞った。


「ゼブラさん、私を庇ってくれたの?」
「勘違いすんな、てめーを助けたわけじゃねえ。手っ取り早くエネルギーを生産する方法を思いついただけだ」


 ぶっきらぼうに掠れた声でそう言ったゼブラ兄、だが次の瞬間その顔は怒りに染まった。


「簡単な話だ、エネルギーを生み出すには怒ればいいんだよ……!!」


 そしてまるでキレた猛獣のようにユニコーンケルベロスに向かっていった、頭の一つをパンチで砕くと噛みつこうとしてきたもう一体の頭も片手で止め凄まじい馬鹿力でその頭をアイアンクローで粉砕した。


「うらぁぁぁっ!!」


 残った頭に膝で打ち付けて角をへし折る、そして首を掴んで勢いよく投げ飛ばした。そしてトドメにへし折った角を奴の心臓に突き刺した。


「すげぇ、純粋な暴力だけで殺しちまった」
「声なんざ使うまでもねえんだよ……」


 ゼブラ兄はかすれた声でそう言うが最後の方はほとんど聞こえなかった、そして自身の喉を触ると自分の腕から流れていた血を指に付けてマントになにかを書き始めた。


『イッセー、小娘達に声を預けた。そのかわりマップは閉じて小娘達を見失った』
「なんだって……!?」


 ゼブラ兄はどうやら小猫ちゃん達に何か危険が迫ったことを知りマップを閉じてでも二人の援護の為に声を飛ばしたんだ。


「小猫ちゃん、アーシア……」


 二人の身に危険が迫ってるのは確かだ、だがここで焦っても意味はない。


「二人は必ず生き残る、その為にもまずはエネルギーの回復だ……!」


 俺はユニコーンケルベロスの死体から肉をはぎ取って勢いよく食べ始めた。


 待ってろよ、二人とも!

 
 

 
後書き
 小猫です。イッセー先輩達と離れ離れになってしまいましたがゼブラさんの声がここがグルメピラミッドだと教えてくれました。


 なら先輩達と合流しないといけませんね、そう思った私はアーシアさんを守りながらピラミッドを進んでいきますがそこである本を見つけました。


 この本は一体……


 次回第115話『罠だらけのグルメピラミッドを進め!隠された謎の本と謎の襲撃者!?』でお会いしましょう。


 次回も美味しく……!?そ、そんな……コイツはまさか……!? 
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