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八条学園騒動記

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第七百八話 連合の狼その十

「実はな」
「そうなのですね」
「尚頭はいい」
 柴犬はというのだ。
「犬の中でもな」
「だから余計に人気がありますね」
「そうだ、そしてニホンオオカミも餌付けされると」
「犬と変わらないですね」
「我々を前にしても警戒しないな」
「寝たままです」
 まさにというのだ。
「先程から」
「これが狼の実際の姿だ」
「恐ろしい存在ではなく」
「人に懐いてな」
「普段は穏やかですね」
「食べる時は素早く頭もいいが」 
 しかしというのだ。
「そうでない時はな」
「くつろいでいますね」
「そうだ、そしてだ」
 ここでだった、大尉は。
 上等兵と共にニホンオオカミのところにつがいと思われる狼と子供と思われる小さな狼達が来てだった。
 その場で一緒に丸くなりだしたのを見た、大尉はその光景を見てまた言った。
「家族にもだ」
「優しいのですね」
「狼と言えば群れだが」
「それを構成して生きますね」
「だがどうもここではな」
「群れはないですか」
「家族単位だな、だがその家族をな」
 仲良く丸くなって集まって寝ている彼等を見つつの言葉だ。
「こうしてだ」
「仲良く過ごし」
「大事にしている」
「そうだ、そうした生きものだ」
「残忍で狡猾ではないですね」
「連合では狼は残忍とはだ」
 そうとはというのだ。
「これまで話した通りだ」
「考えられてないですね」
「そして狡猾ともな」
 そうともというのだ。
「考えられていない、家族や群れを大事にして頭のいい」
「そうした生きものですか」
「そう考えられているのだ」
「そういうことですね」
「連合とエウロパの違いの一つだ」
「狼に対する認識の違いも」
「だから連合では生きものを使った処刑が多いが」
 これがあまりにも残酷だとエウロパでは常に批判されている。
「狼はない」
「狼は人を襲わないので」
「ピラニアや恐竜や大蛇に襲わせることはあるが」
 そして喰わせて処刑するのだ。
「狼はな」
「ないのですね」
「ただ狼が持っていることのある狂犬病だが」
 この時代でも恐れられている感染症である。
「これを死刑囚に感染させてだ」
「死刑にすることはありますか」
「あの感染症は感染すると苦しんで死ぬが」
 その致死率はこの時代でも極めて高い、助かる様にはなったが危険な病気であることには変わりがないのだ。
「その苦しむ様を公開してショーにしてだ」
「連合では楽しんでいますね」
「そうしている」
「そこは連合ですね」
 上等兵も忌々し気に述べた。 
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