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ハッピークローバー

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第八十七話 妹の受験その七

「何があってもね」
「串カツの二度漬けはしない」
「一度だけで」
 ソースに漬けることはというのだ。
「それで食べて」
「まただよね」
「漬けて食べるのよ」
 次に食べる串カツをというのだ。
「そうすることよ」
「その通りだよ、幾ら悪い人でも」
「それはね」
「したらね」
 その時点でというのだ。
「悪人どころか」
「人でなくなるわね」
「人の道ってあるよ」 
 古田は強い声で言った。
「やっぱりね」
「悪人でもね」
「人は人で」
「人の道はね」
「踏み外してないってね」
 その様にというのだ。
「言えるよ」
「そうよね」
「けれどね」
「人の道を外れたら」
「もうそれは外道であって」 
 そう呼ばれる存在だというのだ。
「外道になったらね」
「人じゃなくなるわね」
「それでソースへの二度漬けはね」
 串カツのそれはというのだ、大阪はおおらかさもウリであるが厳密なルールも存在している街であるのだ。
「もう絶対にだよ」
「したらいけないわね」
「あれだよ」
 古田はこうも言った。
「食べた後のお茶碗に痰吐くみたいな」
「それやる人いるの?」 
 古田の今の話にだ、理虹は顔をこれ以上はないまでに顰めさせて問うた。
「幾ら何でもね」
「酷過ぎるよね」
「それ最低っていうかね」
「人としてね」
「外道よ」
 こう言うのだった、ここで。
「まさにね」
「そうだよね、僕もこうしたお話聞いてね」
「ないって思ったわね」
「絶対にしたら駄目だって思ったよ」
 古田はいつもの軽い調子を消して答えた。
「心からね」
「そうよね」
「お話してくれた人もこんなことしたら駄目だってね」
「言ったの」
「そうだったよ」
 実際にというのだ。
「その人見てその瞬間に顔を顰めさせたそうだから」
「それはなるわね」 
 理虹も当然だと返した。
「いや、串カツの二度漬けも酷いけれど」
「これも酷いね」
「私も色々な人見て来て今のアルバイトでもね」 
 海の家そしてプールサイドでのアイス売りである。
「流石にね」
「そんなことする人見たことないね」
「ないわよ」
 首を強く短く横に振って答えた。
「一人もね」
「僕も見たことないよ」
 かく言う古田もだった。 
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