仮面ライダーカブト 明日のその先へ
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第十九章
「やはり貴女も」
「はい」
彼女は風間に顔を向けてきた。そのうえで彼の言葉に頷いてきた。
「戻って来ました」
「また貴女と出会える」
風間はそのことにまずは笑顔を向けた。しかしすぐにその笑顔は悲しみと共に消えた。
「しかし貴女は」
「ええ」
女は悲しい顔でこくりと頷いた。
「あの時のままです」
「時間というのは時としてあまりにも残酷です」
風間は噛み締めるようにして述べた。
「戻って来たというのにどうして」
「私の心までも一緒になっていたから」
それが答えであった。間宮麗奈はウカワームと同じになってしまっていた。だからこそ今ワームとして蘇ってしまっていたのだ。
「だから。貴女とは一緒になれません」
「わかりました」
風間は彼女のその言葉に俯いて答えた。
「それなら」
「はい、ですがここでは」
「わかっています」
風間は沈痛な顔で言葉を返す。
「もう一度御会いしましょう。そしてその時に」
「はい、その時に」
「永遠のお別れです」
「けれど麗奈さん」
風間は麗奈を見詰めて言った。
「俺は貴女を忘れません、絶対に」
「私もです」
麗奈もそれに応えて言う。
「風間さん、貴方を」
「だから。今度で」
だからこそだった。二人は言葉を交あわせる。同時にその心もまた。
「永遠に」
「さようなら」
麗奈はそっと姿を消した。風間はそれを見届けてから劇場を後にする。後ろ髪は引かれなかった。だがそこにある悲しみはどうしようもなかった。それを胸に隠したまま彼は一人その場を後にするのであった。
天道は一人でそこに立っていた。何もない橋の上で。そこで誰かを待っているようであった。
その彼の前に一人の男が姿を現わした。それは彼自身であった。
「やはり生きていたか」
「わかっていたんだ」
「当然だ」
天道はもう一人の自分に語る。
「あの程度で死ぬとは思ってはいなかった。死んでもあの青年か女神の力で蘇るとな」
「どうしてそう思えたんだい?」
「御前は生きる資格があるからだ」
もう一人の自分に対して語った。
「その心が人間だからだ」
「そう、人間だから」
影の天道はその言葉に目を向けた。決して悪い輝きを持った目ではなかった。
「生きる資格はあるんだ」
「人間を人間にしているのは心だ」
天道は言う。
「姿は関係ない。心こそが大事なのだ」
「それで僕はここに生きているんだね」
「その通りだ。だが」
しかしここで天道は言葉の調子を少し変えてきた。
「御前に一つ頼みたいことがある」
「わかってるよ」
影の天道も笑って彼に応えてきた。
「これだよね」
彼のところにダークカブトゼクターが姿を現わしてきた。空を舞ってやって来た。
「これに用があるんだよね」
「その通りだ」
天道はまた答える。
「その力、欲しい。ひよりを護る為に」
「ひよりをだね」
「そうだ、またワームが蘇った」
天道は語る。
「ネイティブも。奴等はひよりもまた狙っている」
「その為に僕の力を」
「そうだ。いいか」
じっと影の目を見詰める。影もまた彼を見ている。
「御前の力を俺に」
「嫌だとは言えないみたいだね」
「御前は必ず俺にその力を渡す」
天道は断言してきた。
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