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八条学園騒動記

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第七百八話 連合の狼その五

「吸血鬼の話もな」
「多いですね」
「だがエウロパの様にはな」
「嫌われていないですね」
「狼人間なぞ何が怖いのかとな」
 その様にというのだ。
「思われている位だ」
「むしろ恰好いい存在ですね」
「連合の狼は人を襲わない」
「やはり畑を荒らす獣を食べてくれる生きものですね」
「連合の狼人間もな」
 彼等もというのだ。
「むしろ農地にいてな」
「畑を守る妖怪ですね」
「また狼は満腹ならな」
 その状態ならというのだ。
「もう満足する」
「そうした習性であることもわかっていて」
「しっかりと餌付けをしているとな」
 それならというのだ。
「家畜を絶対にだ」
「襲わないです」
「だからだ」
 それ故にというのだ。
「番も出来る」
「狼人間も然りですね」
「むしろ狼人間になるとな」
 連合の彼等はというのだ。
「畑を守る」
「人を襲うのではなく」
「そして牧場もな」
「番犬ならぬ番狼となり」
「中にはだ」
 大尉は真剣な顔で話していった。
「自分達を狼の子孫という者達もいるな」
「モンゴル人ですね」
 自分達を狼の子孫という者達と聞いてだ、上等兵はすぐに答えた。そのうえで大尉に対してさらに話した。
「青き狼と白き雌鹿ですね」
「自分達はその子孫と言っているな」
「トーテミズムですね」
「それだ」
 まさにとだ、大尉は答えた。
「その信仰による考えだ」
「左様ですね」
「元朝秘史の最初の文にある言葉だ」
 この言葉はというのだ。
「モンゴル人のはじまりはな」
「青き狼と白き雌鹿が結婚し」
「そしてだ」
「彼等が生まれたのですね」
「そうある」
「まさに狼の子孫ですね」 
 上等兵も言った。
「左様ですね」
「そしてもっと言えばな」
「鹿の子孫ですね」
「そうでもある」
 狼の子孫であると同時にというのだ。
「これがな」
「そうですね」
「この様に連合ではな」
「狼は特にですね」
「恐れられ憎まれていない」
「むしろ有り難く思われている」
「そういうことだ、それとだ」 
 大尉は今はくつろいでいる狼を見てさらに話した。
「この狼についてどう思う」
「どうといいますと」
「大きさや外見についてな」
「只の狼では」
「実は違うのだ」
 大尉は上等兵に狼を見つつ話した。 
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