遅れそうな時は訳を話せ
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第一章
遅れそうな時は訳を話せ
小林茂はサラリーマンである、すらりとした長身で卵型の顔できりっとした顔立ちであり黒髪をショートにしている。
彼は今取引先に徒歩で向かっていた、だがその途中で。
前を歩いていた老婆が急に倒れた、それで咄嗟にだ。
その老婆を抱えて介抱しつつ一一九番をした、だが。
ここで携帯が鳴ってだ、彼の常時で課長である久保宏昌中年で眼鏡をかけて鼠の様な顔で黒髪を左で分けた一七〇位の痩せた彼が言ってきた。
「小林君、今何処だね?」
「ええと、今はですね」
小林は現在地と思われる番地を話した。
「杜甫です」
「待て、そこから歩いてだと取引先の時間に間に合わないぞ」
久保は小林の言葉を聞いて眉を顰めさせた。
「どうしたんだ、早く出たのに」
「実は今」
小林は老婆が倒れ介抱し一一九番をし救急車が来るまでその場に留まっていたことをありのまま話した。
「そうでして」
「わかった、取引先には私から連絡しておく」
久保はすぐに言った。
「後は出来るだけ、タクシーが通ったらな」
「それを拾ってですね」
「急いでくれ、いいな」
「わかりました、そうします」
「そうな」
「取引先にも行ってくれるとは」
「遅れるかも知れない理由があるならいい」
それならというのだ。
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