仮面ライダーカブト 明日のその先へ
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第二章
ノルウェーの首都オスロ。そこに一人の東洋人の若者があてもなく歩いていた。荒んだ顔で白夜の街を歩いていく。夜だというのに淡い光に包まれている。それが彼を照らしているがそれを見ようともせず一人歩いていた。
彼は街を離れ港の方に向かった。倉庫の列の中を一人進む。
「おい」
彼は気配を察して足を止めた。そして声を出してきた。
「出て来い。いるのはわかっている」
「あら、やっぱり」
倉庫の影から一人の女が出て来た。黒いショートカットに青い服の東洋人の女であった。受ける感じが尋常ではない。矢車はそれを察していたのだ。
「わかっちゃってたの。鋭いわね」
「ふざけているのか?」
「きゃっ、こわぁ~~い」
「ワームではないな。一体何者だ」
「ただの人間よ」
「嘘をつけ」
矢車はその言葉を否定してきた。
「その気配、唯の人間ではないな」
「安心して、貴方の敵じゃないから」
女はにこりと笑って彼、矢車想に述べる。仮面ライダーキックホッパーにだ。
「私はスマートレディよ」
「スマートレディだと!?」
矢車はその名を聞いて目を鋭くさせてきた。
「スマートブレインの社長秘書だった女だな」
「あらっ、私って有名なのね」
「そして正義の女神アストレイアだったな。バトルファイトのことは知っている」
「ゼクトで勉強したのね」
「ゼクトでもそれを知っている者は少なかった」
最高幹部達と初期のライダー資格者達だけが知っていることだった。矢車はその中の一人だったから知っていたのだ。スマートレディのことをだ。
「その俺の前に出て来るとは。何かあるんだな」
「日本に行ってもらいたいの」
右の頬に右の人差し指をやってにこりと笑ってきた。
「二人でね」
「二人!?馬鹿を言え」
矢車はその言葉に俯き首を横に振った。
「俺はもう」
「馬鹿ね、ライダーなのよ」
スマートブレインは笑って彼に告げる。
「貴方達は永遠に戦わなくてはならないのに」
「どういうことだ、それは」
「あら、バトルファイトのことは全部知っているんじゃ」
「モノリスが四人のライダー達に破壊されたのは知っている」
矢車はそれは知っていた。
「剣崎一真と相川始がオルフェノク達の協力で人間になれたこと、オルフェノクが消え去ったこと。そして御前のことをな」
「あら、肝心なところは知らないのね」
「肝心なところだと」
「それは日本に行ってからのお楽しみ」
スマートレディはまた彼に告げる。
「折角光をまた見つけたんだから。光のところに向かえばいいのよ」
「光・・・・・・」
「ほら、あそこに」
右手で右の方を指し示す。するとそこには。
「馬鹿な、御前は」
「ライダーはね、皆運命の中にいるのよ」
スマートレディは彼女が指し示した方を見て呆然とする矢車にまた述べる。
「その中にある限り貴方達全ての力が必要だから」
そう告げる。彼等もまた運命の戦いの中に戻っていくのだった。
テレビ局。そこの楽屋で洒落た服装と顔立ちの男が美しい女の顔にメイクアップをしていた。バイオリンケースの中に入れた様々な化粧品を少女が出して彼に手渡していた。
「ゴン、次は」
「これね、大介」
「そうそう、それそれ」
ゴンと呼んだ少女に応えて化粧品を受け取る。その化粧品で女性をさらに美しくしていく。気付けばそこには絶世の美女がいた。
「終わりです」
彼は女に対して微笑んで述べてきた。
「これで。さあ」
「まあ」
鏡に映る自分の顔を見せると彼女はそれを見て晴れやかに笑う。彼もまたそれを見て笑うのであった。
「今の貴女は」
褒め言葉を言おうとする。
「貴女は・・・・・・ええと」
「月夜に輝く白い花のようだ」
「そうそう、それそれ」
ゴンの方に顔を向けて頷く。
「花のようです」
「有り難うございます、風間さん」
女はにこりと笑って彼に述べる。
「それでは今から」
「はい、どうぞ」
楽屋を出てそのまま舞台へ向かう。彼女は天才メイクアップアーチスト風間大介のメイクアップを受けて晴れやかに楽屋を後にしたのであった。
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