FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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シナリオ
前書き
金神竜だから錬金術なのかな?と今週の100年クエスト読んで考えてました。
シリルside
開幕の銅鑼が鳴り響く。まず対峙しているのはラクサスさんとスカイシーを名乗る人物。その二人の後ろにはそれぞれの仲間が檻の中へと入れられて出番を待っている状態。
ダッ
何か作戦を張り巡らせていくのかはたまた純粋な力勝負に持ち込むのか、そこも注目していくべきだと思われる第一試合。最初に動いたのはスカイシーだった。
「速ッ!!」
隣にいたカナさんが思わずそんな言葉を口走った。スカイシーはその言葉通り目にも止まらぬ速さでラクサスさんの間合いに入ると彼の腹部へと肘打ちを入れる。
「がっ!!」
その攻撃はラクサスさんの反応速度を上回っていた。速い上に威力も十分な一撃に尻餅を付くラクサスさんだったが、相手はそれを好機とばかりに脚を振り上げる。
「この・・・」
しかしそれを黙って受けるような彼ではない。ラクサスさんはそのままの姿勢のまま相手の軸足を払いにかかる。しかし、これは読まれていたのかスカイシーは高くジャンプすると、その勢いをうまく使いラクサスさんの顔面へと飛び蹴りを入れてきた。
『あぁっと!?狩猟豹の頭のスカイシー怒涛の攻撃だぁ!!妖精の尻尾のラクサスが手も脚も出ない!!』
『スカイスーくんは一つ一つの動きがとにかく速いねぇ』
実況席もこれには驚かされるばかり。ラクサスさんの実力がわかっている彼らこその反応なのだが、その中で一人だけ違う思考をしている人がいた。
『えぇ?でもラッくんもそう簡単にはやられないでしょ?』
『ラッくん?』
本日のゲストであるリュシーさん。ただ、彼女の言葉には俺たちも同意だ。ラクサスさんがこのままやられっぱなしで終わるわけがない。
「雷竜方天戟!!」
雷を槍のような形へと変えての一撃を打ち込むラクサスさん。スカイシーが近距離型の戦いをしてくることもありすぐ目の前にいたため、その一撃は彼に見事にヒットした。
『今度はラクサスからの反撃だぁ!!ラクサスの渾身の一撃がスカイシーを捉えたぁ!!』
以前の大魔闘演武での活躍や妖精の尻尾解散時に青い天馬に所属していたことも相まって女性の歓声がやたら大きい気がする。ただ、彼のその攻撃は起点になるだろうと全員が思っていたための大歓声とも考えられた。だが、煙が晴れた時の敵の姿に会場は静まり返ってしまった。
「こんなものか」
全くの無傷・・・わずかなよろめきも傷も与えられることができていないのか、スカイシーは何食わぬ顔で平然と仁王立ちしている。いや、仮面で顔が隠れてるからもしかしたら苦痛に顔を歪めているのかもしれないけど、あの態度から察するにそんな雰囲気は一切ない。
「ラクサスの攻撃をあの距離で受けて無傷って・・・」
「何者なんですか?あの人」
ルーシィさんもジュビアさんも予想できるわけがない展開に言葉が出てこない。しかし、ミラさんだけは今の状況がラクサスさんに不利なことにすぐに気が付いていた。
「まずいわ」
「「「え?」」」
「相手はあの攻撃を全く苦にしていない。しかも二人の距離は近いまま」
「あ!!」
至近距離からの攻撃なためラクサスさんの一撃をスカイシーは回避することができなかった。もし今の一撃で相手がよろめいたり倒れたりしてくれればラクサスさんは間合いを空けることもできたのだが今回はそれが全くなかった。つまり彼はいまだに敵の攻撃範囲内。
「ふんっ」
「がはっ!!」
カウンターといわんばかりの膝蹴りをラクサスさんの腹部へと打ち込むスカイシー。攻撃直後だったこともありラクサスさんは回避行動が取れずにこれを受け、後方へと倒れそうになる。
ガシッ
そのまま倒れられればその方が楽だったのかもしれない。しかし相手はそれを許すことはしない。スカイシーはラクサスさんの手を掴むと後方へと倒れているその身体を前方へと引っ張り、追撃の膝蹴りを先程と全く同じ場所へと打ち込んだ。
「ラクサスさん!!」
「何?あいつ・・・」
「さっきからなんでお腹周りを中心に?」
もっと急所になりそうな場所を攻めればいいものの、なぜかスカイシーは腹部ばかりを攻撃してくる。その攻撃の意図がわからず、俺たちは困惑するばかりだった。
第三者side
「嘘だろ?」
「ラクサスがこんなに一方的に・・・」
次々に打ち付けられる攻撃。闘技場で戦う仲間はそれに対抗するためになんとか動こうとするが、相手のそれはあまりにも激しく、彼が対処できる許容量を優に越えてしまっていた。
「何者なんだ?あいつ」
以前の大魔闘演武でも似たような光景を見たことがあったが、その時と今とでは状況がまるで違うことも彼らはわかっていた。前回は相手の幻影魔法によりラクサスが一方的に押されている幻を見せられていたが今回は違う。明らかに仲間である彼がサンドバックにされているものが本物だとわかる。
「このままじゃあ・・・」
「いや。まだだ」
なす術のない仲間の姿に表情を歪めるグレイだったが、その隣に立つ緋色の剣士は諦めてはいなかった。彼女の視線の先にあるのはタイマー。そこには二つの時間が表示されている。
「ギルダーツが合流することができれば・・・」
試合の残り時間と共に次に闘技場へと放出される魔導士の決定までのカウントダウンも行われている。その放出でギルダーツが放出されれば流れは一変すると彼女は考えた。
「だが次がギルダーツの保証はねぇ」
「それでもだ。私たちはそれを信じる以外にやるべきことがない」
距離を取らせることもわずかな反撃の余地も与えないほどの怒涛の攻撃を繰り出すスカイシー。次の参加者が決まるまで残り5分ほど。そのタイマーが早く過ぎることを三人は祈るばかりだった。
「やはり格が違うな、あやつは」
ドムス・フラウにある一室にてこの様子を観戦している聖十大魔道たち。ジュラはかつて自身をも打ち負かした人物を圧倒する存在に険しい表情を浮かべていた。
「しかも当初の予定通りに動いている。ラクサスくん相手にあんな無茶を聞き入れるとは・・・」
ハイベリオンはこの戦いを先頭で見ている赤髪の青年の方を見てからそう言うと、彼はニヤリと笑みを浮かべて答えた。
「むしろこんなことをやれるのはあいつしかいない。そしてこれができなければ俺たちに未来はない」
悪者のような表情から今度は真剣に・・・遊び心など微塵もないことが伺えるものへと変化する。それを受け他のものたちはこれ以上何も言わない。いや、言えなかった。それほどまでにこれから起こりうることが信じがたいことだからだ。
「おいおいマジかよ・・・」
「ワイルド・・・」
試合開始前は熱狂の渦に包まれていたドムス・フラウ。しかし今は異様な雰囲気に観客たちは飲み込まれているのか、歓声は一切ない。隣のものとこの光景について話すものがいることにより生み出されるわずかなざわつきしかないのだ。
「ごはっ・・・」
防戦一方・・・いや、その言葉すらも釣り合わない。完全なサンドバッグ状態になっていたラクサスは口から血を吐くと耐えきれなくなったのかその場に倒れてしまう。
「ラクサス!!」
「「ラクサスさん!!」」
一切手を緩めることなく攻撃を続けたスカイシー。そんな彼の目の前で倒れたラクサスはすぐさま立ち上がろうとするが、相当なダメージが溜まっているのかまたすぐに尻餅をついてしまう。
「これは決まったか」
「次でトドメを・・・ミャア!?」
試合を観戦していた全ての人間が勝敗が決したことを悟った。これでスカイシーが彼を気絶させれば戦闘不能扱いとなり、残り一人となる妖精はギルダーツが放出される。そこから最後の一人の放出までのカウントダウンが開始されると誰もが考えたが、またしても予想外の事態に会場中が驚愕した。
『なんだ!?狩猟豹の頭のスカイシー、なぜかラクサスに最後の一撃を放たないぞ!?』
『どうスたのかね?』
『さぁ?』
倒れている敵を前にただ見下ろすだけの人物。それが何を意味しているかは分からなかったが、一人の男のプライドは大きく刺激されていた。
「ナメてんじゃ・・・ねぇぞ!!」
余裕の現れなのかはたまた自身のことを敵と認識していなかったのか分からない。しかし、実力者であるラクサスにとって敵の行動は侮辱以外の何ものでもなかった。
『すごっ!!まだ全然動けるじゃん!!』
ゲストのリュシーも驚くほどの勢いで立ち上がりそのまま体当たりするラクサス。スカイシーはそれを正面から受け止めるが、彼の勢いの方が勝っていたらしく押し込まれている。
『ラクサスが息を吹き返したぁ!!ここから反撃となるのかぁ!?』
期待の注目選手であるラクサスが圧倒される姿に言葉を失うしかない観客たちだったが、ここに来て状況が変わろうとしていることに沸き上がる。ただ、その中心にいるこの男はなおも余裕の笑みを浮かべていた。
「そうだ」
「??」
「もっと本気で来い。そうじゃなければ、悔いが残るだろう?」
押し込まれているにも関わらず耳元で囁いてくる男。その声に聞き覚えのあったラクサスは思わず目を見開いた。
「お前の大会はここで終わるのだから」
「お前・・・まさか・・・」
仮面の男が何者なのかわかったラクサスの顔から血の気が引く。そのタイミングを待っていたのか、男は彼を振り払うとその勢いを生かしての回転蹴りを彼へと打ち出す。それを受けたことによりラクサスは身体がよろめいたもののなんとか踏み留まった。
「そうだ。俺はお前たちを潰すためにここにいる」
仮面をつけていることによりその表情はわからない。だが、その声のトーンから推測することは可能だ。
「どういうことだ?これは」
敵の正体に気が付いたラクサス。しかし、なぜ彼がこの場にいるのか理解できなかったことでその頭の中は混乱へと陥っていた。
シリルside
「やっぱり強いですよ、あの人」
ラクサスさんが優勢に立てるかと思った場面ですぐさま反撃をしてくるスカイシーを見てウェンディがそう言う。彼女の言葉は間違いないだろう、このまま行けばラクサスさんがやられてしまうのは時間の問題だ。
「でも、もう少しで状況が変わる」
タイマーへと目をやると次の参加者が出てくるまでの時間まで残り1分を切ろうとしている。もし次にギルダーツさんが出てくることができれば、それで一気に状況が変わるはずだ。
「タイマーは残り少し・・・でも、問題が二つ・・・」
「うん。このタイマーが0になるまでラクサスが耐え抜けるか、そしてギルダーツが放出できるのかどうか・・・だよね」
ラクサスさんの生き残り・・・これについては問題ないような気がする。スカイシーの攻撃は今のところ緩んでいるように見える。恐らく彼もここから次の選手が放出されるまでは余計な力を使わない方向にシフトしたのだろう。ただ、それは果たして正解なのかと問われると首を縦には振れない。なぜなら次に戦いに参加できる選手が相手のチームの人間だった場合、わずかな体力の消耗を防いだところで微々たるものだからだ。
「あたしたちにできるのは祈ることくらいだよね」
「そうですね。ギルダーツさんが参加できることを祈りましょう」
今はチームが違うとは言え同じギルドの仲間だ。俺たちは両手を握り合わせながら試合を見守る。なんとかこちら側の劣勢をなんとかできる展開になることを祈りながら。
第三者side
大魔闘演武に参加しているものたちも選手には選ばれなかったものの同じギルドの一員として応援しているものたちも全員が祈るように手を握り合わせている妖精の尻尾。その様子を見ていた仮面の女性は嘲笑いながら口を開いた。
「見て、あいつら。あんな顔しながら祈ってるよ」
「うむ。実に滑稽だな」
ケラケラと笑っている女性と同調する大男。しかし、そんな二人の方を見ながらもう一人の長い髪をしている女性は鼻で笑っていた。
「あら?人間みがあっていいじゃない。私にもわかるわよ、その気持ち」
そう言った女性の方を振り向いた二人だったが、彼女の言葉に不快感は持っていない様子。ただ、女性の方はなおも笑いが止まらない様子だったが。
「いやいや。私が言いたいのはそう言うことじゃない。あいつらが祈ってることが面白いんだよ」
「??何が違うのかしら?」
彼女が何を言いたいのかわからず首をかしげる女性。それに対し彼女は嬉々として答える。
「あいつら、きっと仲間の放出を祈って手を合わせてるんだぜ?それが面白くて面白くて」
「あぁ。なるほど」
彼女が何を言いたいのかようやく理解した女性も小さくではあるが笑みを浮かべていた。それから三人の視線は戦っている・・・正確には蹂躙されている金髪の青年の方へと向けられる。
「滑稽だよなぁ、この試合に関してはすでに誰が放出されるか順番が決まってるのに」
なおも止まらない笑いを彼女はそう言いながら口を抑えている。それを聞いていた二人も頷いた後、言葉を紡ぎ続けている実況席へと視線を向けていた。
「あの女も演技派だな。この試合の意味をわかっているはずなのに、あそこまで盛り上がれるとは」
男が言ったのはゲストとして参加しているリュシー。彼女のことも知っている彼らはまるで初めて自分たちを見るかのように振る舞っている彼女の姿がこれまた笑いを増幅させていた。
「この試合の結果も過程ももう全て決まっている。それを実現するために行動するのが私たちの役割」
全員が神に祈りを捧げるように手を合わせている対戦相手。その祈りが無意味なものであることを知っている彼らはまもなく0になるカウントを見ながら次にバトルへの参加となる人物の方へと視線を向ける。
「この試合のシナリオは圧倒的な強者たちと無名の魔導士たちによる期待度が違う戦い。会場の全ての人間が強者の勝利を望むそんな中・・・」
減っていくカウント。そしてついにタイマーが0になった瞬間、一人の男の檻が開かれると同時に彼は最速で二人の元へと向かい・・・
「クラッシュ!!」
渾身の一撃を放つ。だが、それをスカイシーは読みきっていたようで身体を屈めてあっさりと回避していた。
『ギルダーツだぁ!!妖精の尻尾最強と称されるギルダーツが間に合ったぁ!!』
一方的だった二人の戦いに割って入ることができたギルダーツ。彼の登場により会場は大いに沸き上がり、二人の名前と妖精の尻尾コールが鳴り響く。
「ギルドのトップ2を繰り出した上に2対1の絶対的に有利な状況。それにも関わらず敗北する王者。それがこの試合のシナリオだよ」
形勢逆転を許しかねない状況になったにも関わらず余裕綽々な狩猟豹の頭の面々。2対1となったスカイシーも同様の考えなのか、不敵な笑みで二人の強者を見据えていた。
後書き
いかがだったでしょうか。
文字数がいつもより少なくなりましたがいいところまで来たのでここで一回切ろうと思います。
次でこのバトルの決着はつくかなと思います。
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