| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ハッピークローバー

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第八十五話 兄に言われてその三

「そうなる」
「あの国に生まれなくてよかったわ」
「そう思うな」
「いつも思うわ」
 北朝鮮の話を聞く度にというのだ。
「つくづくね」
「俺もだ、八条学園にもあの国の人だけいないしな」 
 雅之も八条学園に通っている、もっと言えば小学校からこの学園に通っている。
「世界中から人が集まってもな」
「それでもね」
「あの国だけがな」
「人がいないのよね」
「国交ないからな」
 そもそもというのだ。
「日本とは」
「そうよね」
「それに全く違うけれどな」
 こう前置きしてさらに言うのだった。
「あそこ共産主義だしな」
「封建主義じゃなくてよね」
「本当に全く違うけれどな」
 共産主義とはというのだ。
「そう言っていてな」
「企業が経営してるからねうちの学校」
「八条グループがな」
 世界的な企業グループであるこのグループがというのだ。
「それでな」
「資本主義だしね」
「もうな」
「あっちから避けるわね」
「ああ、だからな」
「北朝鮮の人だけいないのね」
「工作員送り込もうとしてもな」
 北朝鮮がというのだ。
「あの国の得意技だけどな」
「採用とか入学の時点でね」
「チェックするからな」
「それで弾くわね」
「ああ、そうでもあるからな」
 だからだというのだ。
「うちの学校にはな」
「あの国の人だけいないのね」
「そうだ、しかし本当にあの国にいたら」
 兄はあらためて言った。
「確かなもの食ってトレーニングなんてな」
「それどころじゃないわね」
「それが出来るだけでな」
「違うわね」
「食いものがない、それにな」
 雅之はさらに言った。
「トレーニングするのも趣味だが」
「その趣味をなの」
「出来るだけの自由もな」
 これもというのだ。
「必要だからな」
「趣味を自由に出来ることも」
「あの国にはそんな自由もな」
 それもというのだ。
「あると思うか」
「自由とは全く無縁よね」
 留奈もこう返した。
「やっぱり」
「わかるな」
「どう見てもね」
 それこそというのだ。
「あそこはね」
「そんな自由はないな」
「軍隊の訓練か働くか」
「学校で洗脳教育だ」
「趣味なんてね」
「そんな話なぞだ」
 兄は言い切った。
「あるとは思えないな」
「餓えていて趣味に励む元気もなさそうね」
 留奈はこうも思った。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧