ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル
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第113話 引き離されたイッセーと小猫!砂漠の大迷宮グルメピラミッド!!
side:小猫
「う、う~ん……ここは?」
私はザラザラした感触を感じながら目を覚ましました、そこには砂の山が築かれていて私はその中にいたんです。
「あっそうだ、アーシアさんは!?」
私は流砂に飲み込まれたことを思い出して一緒にいたアーシアさんを探しました、運よく彼女も私の側に倒れていて私はアーシアさんに駆け寄ります。
「アーシアさん、しっかりしてください!」
「……小猫ちゃん?」
私はアーシアさんを抱き起して声をかけます、するとアーシアさんが反応してくれました。
「良かった……体は痛くないですか?異常は無いですか?」
「はい、特には……ここは何処なんですか?」
「分かりません、砂漠の地下だと思うのですが……」
アーシアさんはどうやら異常無いようですね、ここがどこなのかと彼女に聞かれたので私は憶測で答えました。
「とにかくイッセー先輩達に連絡をしないと……」
私はそう言って連絡器を使いましたが反応しませんでした」
「駄目ですね、繋がりません……」
「通信魔法も繋がらないですね、多分かなり皆さんと引き離されてしまったのでしょう」
通信機も通信魔法も駄目でした、こうなったら自力で脱出するしかないですね。
「アーシアさん、とにかく進みましょう。この広大な砂漠で待っていても出会える可能性は少ないでしょう、それなら目的地を目指した方が良いと思います」
「以前サニーさんが教えてくれた事ですね」
リーガル諸島でイッセー先輩達とはぐれた時、あえて目的の場所を目指す事で皆との合流に成功しました。なら私達も皆を闇雲に探すよりグルメピラミッドを目指した方が良いと思います。
「じゃあ先を進みましょうか」
「はい、行きましょう」
私とアーシアさんは砂漠の地下の洞窟を進み始めました。中は荒れていて流砂もある危険な場所でしたが暑さは感じませんでした。
「地下だからかさっきまでの暑さが嘘のように感じませんね」
「はい、正直この冷気が出るフードがあっても耐えられなかったかもしれません」
「なるほど、地下に空洞があったことといい私達は運が良かったんですね」
私は兎も角アーシアさんではあの暑さには耐えられなかったかもしれません、そう考えると運が良いのかもしれませんね。
しばらく先を進んでいると一頭のラクダを発見しました。
「あっ小猫ちゃん見てください!あれって私達が乗っていたラクダさんじゃないですか?」
「確かにそうですね、無事で良かったです……」
ラクダを貸してくれたお婆さんは返さなくても良いと言っていましたが、折角生きているのなら保護するべきですね。
私はそう思いラクダに近寄ろうとしましたがその時地面から何か振動を感じて足を止めました。
「……っ!?っアーシアさん!」
「きゃあっ!?」
私は咄嗟にアーシアさんを抱きかかえてその場を離れました、すると砂の中から大きな装甲をつけたミミズのような生物が襲い掛かってきたんです。
私は間一髪その生物の攻撃を回避しましたがラクダが食べられてしまいました。
「この……!」
私はグルメスティックセンサーでその生物を調べました、その生物は『トライデントワーム』という名前で捕獲レベル18の強敵でした。
確かに頭の装甲がトライデントみたいになっていますね。
そう思ってると更に砂の中からトライデントワームが姿を現しました、もしかしたらここは奴らの巣なのかもしれません。
「アーシアさん、逃げますよ!」
「は、はい!」
私はアーシアさんを連れて逃げだしました、数が多くてとてもじゃないけど戦っていられないからです。味は美味しいみたいですが今は我慢です。
「はっ!よっ!ほっ!」
私は砂の中から襲い掛かってくるトライデントワームをジャンプしたりスライディングしながら回避していきます、この砂場ではどこからでも襲われてしまうので圧倒的に不利です。
「早く外に出ないと……!」
必死に逃げる私達でしたが前がしっかり見えておらずまた流砂に足を踏み入れてしまいました。
「はわわっ!流されますぅ!?」
「と、止まりません!?」
幸い体は飲まれませんでしたが砂の流れが強くどんどん元居た場所から引き離されてしまいます!
『おい小娘、生きてるか?』
「えっ、ゼブラさん!?」
その時でした、私の耳にゼブラさんの声が聞こえたんです。これは音弾?
『てめぇらは今砂の中を高速で移動している、猛獣もウヨウヨいる場所だ』
「そ、そうなんですか!因みに助けには……」
『直には行けねえな、その間はてめぇらで生き残れ。いいか、お前は俺の報酬だ。勝手に死んだらあの世までぶっとばしに行くからな?』
「は、はい!」
恐ろしい事を言われましたがこれもゼブラさんなりの激励だと分かった私は気合を入れなおしました。
「アーシアさん、しっかり捕まっていてくださいね!」
「はい!信じていますね、小猫ちゃん!」
私はアーシアさんをしっかりと抱きしめながら襲い掛かってきた猛獣達を回避していきます。
「イッセー先輩、ゼブラさん、皆……貴方達も無事でいてくださいね……!」
―――――――――
――――――
―――
「うらぁっ!」
俺は遅いかかかってきた爆発するドロの体で出来た猛獣『バクヘドロ』を赤龍帝の籠手を纏った手でぶん殴った。
『イッセー!』
「くっ!」
手に付着したドロが爆発するが赤龍帝の籠手が防いでくれた、できれば神器には頼りたくないんだけど今はそんな事を言ってられないからな!
「はあっ!」
「喰らいなさい!」
リアスさんの魔力弾が砂で出来た猛獣『砂魔人』の頭を吹っ飛ばした、直ぐに再生しようとするが朱乃が追撃に放った雷が奴のコアに当たり動きを止めた。
砂魔人はコアを攻撃しないと幾らでも再生するからな、見事な連携だ。
「斬るっ!」
「遅いぞ!」
祐斗の高速の斬撃が『ゾンビドーベル』の意識を狩り絶ちゼノヴィアの力強い上段からの振り下ろしが『カラカラコング』を吹き飛ばした。
「せりゃあっ!」
「ガウッ!」
テリーが『一ツ目スナヘビ』を錯乱している内にイリナが強烈な蹴りで顎を蹴り上げた、殺さないように威力を調整しているのは流石だな。
「師匠、あらかた倒しましたね。回復しておきますよ」
「ふう、疲れました……」
「フラグレンスめっちゃ使ったし……」
「皆、お疲れさん」
ルフェイが倒れた猛獣達に回復の魔法『ホイミ』をかけていく、アーシアと比べると回復量は圧倒的に劣るがそれでも死なせないように回復してくれるのはありがたい。
こいつらはあまり美味くないから食べたくないからな。
ギャスパーも慣れてきたのか手慣れた様子で猛獣と戦いリン姉と一息ついていた、コイツも頼もしくなったな。
「イッセー、お疲れ様」
「黒歌も残ったラクダやティナ達を守ってくれてありがとうな」
「これくらいはしないとね」
黒歌は運よく生き残ったラクダとティナ、オブを猛獣から守ってくれていた。しかし生き残ったのが俺に唾を吐きかけてきた奴だとはな、運のいい奴だぜ。
「なあイッセー、そんなのんびりしていていいのかよ。小猫とアーシアが流砂に飲まれたんだぞ?」
「ええ、だから今ゼブラ兄に二人の居場所を探ってもらっています」
アザゼル先生が呆れたようにそう聞いてきた。
そう、小猫ちゃんとアーシアは流砂に飲まれてしまい離れ離れになってしまったんだ。
俺だってすぐに探しに行きたいと思っている、だがこの広大な砂漠を闇雲に探しても二人を見つけられる可能性はゼロに近いだろう。
だからまずゼブラ兄の『反響マップ』で二人を探してもらっているんだ。
「ゼブラ兄は『エコーロケーション』によって辺りの地形を完全に把握できるんですよ」
「確か『反響定位』って奴か、超音波などの反響によって周囲の状況を知る……アイツそんなことも出来るのかよ」
アザゼル先生は感心した様子でそう呟いた。
ゼブラ兄の反響マップはその気になれば週十㎞先にある物体の距離や大きさを正確に把握することが出来るんだ、当然地面の中や水の中も範囲内だ。
「ただ反響マップを恐ろしいほどの集中力が必要なんだ、使ってる最中はゼブラ兄はそれ以外の行動が出来なくなってしまう」
「だからゼブラさんは動かなかったのね」
「戦わないなんて珍しいとは思っていたけど戦いたくてもできなかったんだね」
俺の捕捉にリアスさんとイリナは納得した様子を見せる、戦いを俺達に任せた時にすごく驚いていたからな。
「ゼブラ兄、二人は見つかったか!?」
「騒ぐな……見つけたがかなり遠いな。音弾を飛ばしておいたからこっちが無事なのは分かっただろうがこのままだと俺のマップからも出ちまうぞ」
俺はゼブラ兄に声をかけるが彼は凄く小さな声でそう呟いた。
「ゼブラ兄……まさか能力をフルで使ってるのか?」
ゼブラ兄が声を小さくするのは決まって無理をしている場合だ、つまりゼブラ兄は全力でマップを広げてそれを維持しているという事だ。
あくまで憶測だがハニープリズンから黄泉への門までの間で音弾を飛ばしてきた距離を計算するとゼブラ兄は最長で約70㎞まで音を飛ばせるはずだ。
そのゼブラ兄が無理をしてるって事は二人は俺が予想してるよりも遠くに行ってしまったようだ、早すぎるぞ……!
「白音……アーシアちゃん……」
黒歌は悔しそうにそう呟いた。
本当なら黒歌は二人を助けに行きたいはずなんだ、小猫ちゃんはたった一人の妹だしアーシアも黒歌に懐いている、彼女からすれば可愛い妹分が増えたようなものだ。
だがここで黒歌が動けば俺達の成長の機会を奪う事になってしまう、だから彼女は動けないんだ。
黒歌の為にも何としても二人を助け出さないといけない、直ぐに行動しよう。
「ゼブラ兄、この砂漠の迷宮の地形は把握できたのか?」
「当然だ」
「なら直ぐに動こう。二人も覚悟してこの世界に来ているとはいえ俺の大切な恋人だ、絶対に助けたい!」
「……ふん、ならしっかりと見ておけ。お前の油断でこうなったんだからな」
「ぐっ……」
ゼブラ兄の指摘に俺は何も言い返せなかった、事実だからな……
「そんなザマであの小娘をこの先も守っていけるのか?お前がコンビじゃ小娘も実力を持てあましちまうかもな」
「ず、随分と言ってくれるな。そんなに他人に興味持つ人だったか、アンタ?」
「さあな」
やけに小猫ちゃんを気にするセリフを言うゼブラ兄に俺は首を傾げてしまう、飯を食べていた様子から小猫ちゃんの料理を気に入ったのは間違いないだろうがここまで他人を意識したことを言うような人だったかな?
まあでも今は二人の安否の方が優先だ、俺はそう思い思考を切り替えた。
「でも本当にこの先を進めるの?僕未だに目の前の光景が信じられないんだけど……」
「あれが全部蜃気楼だって分かっていてもリアルに映ってくるからな」
祐斗は不安そうに目の前の砂漠を指差した、そこには空中に浮かぶ砂の階段や通路、巨大な迷路に砂の化け物が辺りを飛び回り砂地獄に消えていく……そんな異常な光景があった。
だが当然この異常な光景は現実ではない、コレは全て砂漠の蜃気楼が見せる幻だ。
蜃気楼とは大気中の温度差などに屈折・反射することで見える幻影の事だ、しかも砂漠の迷宮の圧倒的な温度差と砂の中に含まれる大量の不純物によって摩訶不思議な光景を作り出している。
ゼブラ兄の反響マップはそんな蜃気楼すら打ち破れるんだ、だから今回の旅に誘った訳だ。
「行くぞ、一度しか案内しないからしっかりついてこい。少しでも遅れたら置いていくからな」
ゼブラ兄はそう言って砂漠の迷宮に足を踏み入れた。
「皆、ここからはゼブラ兄の後をしっかりついていってくれ。何があってもゼブラ兄の後ろを離れるなよ」
「分かったわ」
俺は皆の一番後ろに並んで後に続いた、ゼブラ兄はまず砂の階段を上り空中通路を歩き始めた。
「これが幻影だなんて思えないわね……」
「マジでリアルにしか見えないし」
ティナとリン姉はあまりのリアルさにこれが幻影だと信じられないと話している。するとゼブラ兄は道の無い所を歩こうとした。
「えっ、そっちは空中……」
「黙ってろ」
リアスさんの指摘を黙らせたゼブラ兄は何もない空中を歩き出した。
「こんなの分かるわけ無いじゃないの……」
リアスさんは溜息を吐きながらそう呟く、彼女の言う通り反響マップが使えるゼブラ兄がいなければここの突破は不可能だっただろう。
その後空中を歩き続けると今度は宙に浮いた巨大な迷路にたどり着いた。ゼブラ兄は迷路の入り口に進み中を歩き始める。
「あれ、この壁触れられるわよ?」
「多分今は谷を通ってるんでしょうね」
リアスさんは迷路の壁に触れられることに驚いていた、俺は多分谷の中を通っているんだと話す。
全部が幻影ではなく時折現実の物が混じってくるのがイヤらしいな、俺にはまったく分からないぜ。
「おっ、ここは壁じゃないんだな」
「しっかりゼブラさんの後を付いていかないと置いていかれちゃいますよ」
アザゼル先生は壁の中に消えていったゼブラ兄を見て面白そうにそう答えるがルフェイが早く行こうと彼を押した。置いていかれたらマジで詰むからな。
その後もいろんな幻影が俺達を欺こうとしてきた。例えば……
「わわっ!?地面が逆転しました!?」
「実際は何も変わっていないんだろうが本当に逆転したように感じて頭に血が上ってきてるぞ……クラクラするな」
天地が逆転した砂漠を見てルフェイが驚きアザゼル先生が頭を抑えている。思い込みで本当に頭に血が上ってきているみたいだ、恐ろしいな。
「きゃああっ!猛獣が襲い掛かってきたわ!」
「このっ……!コレは幻影?……うわっ!」
「祐斗君!?このっ!フラグレンスバズーカ!」
猛獣に襲われそうになったティナを祐斗が守るがその猛獣が幻影で背後から本物の猛獣が祐斗に襲い掛かった。慌ててリン姉がフォローに入る。
「流砂の上を歩けるなんて不思議な体験ですわね」
「実際はほんの一部が歩けるだけで後はマジの流砂だからな。朱乃、足を踏み外すなよ」
広大な流砂の川を歩いて渡っている。一部に狭い道があるだけで後は本物の流砂だ、ちょっとでも足を取られれば一気に沈んでしまう。慎重に行かないとな。
「うおー!私は無敵だー!!」
「イッセー君!ゼノヴィアがサボテンを食べたらおかしくなっちゃった!」
「とにかく取り押さえろ!あと勝手に変なモンを食うなっての!」
ゼノヴィアが幻覚剤の材料になるサボテン『メスカルサボテン』を食べてしまい錯乱してしまう、俺はイリナと一緒にゼノヴィアを取り押さえた。
「ここは気を付けろ、平坦に見えるが実際は一本道だ。足を踏み外したら流砂に真っ逆さまだ、しっかり付いてきな」
「砂の中から蠢く猛獣の匂いを感じるな、多分さっき襲ってきた音に敏感なタイプの猛獣がウヨウヨいるんだろう。羽根で飛ぼうとしてはばたかせたらその音で一斉に襲い掛かってくるぞ、皆しっかりゼブラ兄について行けよ」
「この世界って飛べる種族に厳しすぎないかしら……?」
平坦だけど実際は細長い一本道を慎重に進んでいく、砂の中から先程足音に反応して襲い掛かってきたミミズのような猛獣の匂いがするので皆に飛ばないように注意するとリアスさんが飛べないことに不満を言っていた。
俺達は様々な幻影を対処しながら先を進んでいく、今のところはゼブラ兄のお蔭で問題はない。
だがこの砂漠の恐ろしさは幻影だけではない、どんどん気温が上がり俺達を干上がらせようとする異常な高温が容赦なく襲い掛かってくるんだ。
「はぁはぁ……水……」
「ティナ、俺の分も飲んでいいからな。とにかく水分を切らすな」
ティナはラクダに乗って移動してるがやはり辛そうだ。俺は自分の分の水も彼女に渡すが俺自身も体内から水分が急速に失われていきヤバイ状態だ。
あとギャスパーも吸血鬼ゆえか強い日光に耐え切れなくなりダウンしてオブに乗っている、ラクダが男を乗せようとしないからなんだ。
見た目は可愛い女の子なのに拘りなのか絶対にギャスパーを乗せなかった、この野郎……
最初オブを怖がっていたギャスパーも今はそんな事を気にしている余裕もなくなってしまい今はオブの上で横たわっている。今はルフェイの魔法で日差しを抑えているがこのままではギャスパーも危険だ。
(クソッ、貯水ラクダを失ったのは辛いな。何とかして水分を得ないと……)
早くに貯水ラクダが流砂に飲まれたのは不味かった。この砂漠に出てくる猛獣は食えなかったり血が無いタイプが多い、せめて猛獣の血でも飲めればな……
「なんだイッセー、もうへばったのか?相変わらず根性の無ぇ奴だな」
俺はなんとか水分を得ないといけないと思いながら進んでいるとゼブラ兄がそう言ってきた。
「はっ、このくらいでヘタれるわけねぇだろう。俺は今まで氷の大地や天空の野菜畑、更には地球の重力を何倍も強く感じる地底に潜ったんだ。ゼブラ兄こそ長い間刑務所暮らしだったんだ、こんな暑さには慣れてねぇんじゃねえのか?」
「こんな暑さはグルメ刑務所のマグマシーズンで経験済みだ」
「なっ!ゼブラ兄もマグマシーズンを味わっていたのか!?というか何勝手に外に出てるんだよ、大騒ぎになったんじゃねえのか?」
「唯の散歩だ」
しかしまさかゼブラ兄がシーズンに外に出てるとはな、まあジッとしてるタイプでもないし納得なんだが……ラブ所長たちは慌てただろうな。
「じゃあまさか他のシーズンも外に出たのか?」
「ああ」
「良く生きていたな、アンタ……モンスターシーズンやフリーズシーズンはまだしもミストシーズンは死ぬだろう」
「あんなもん俺に適応させてやったさ」
「相変わらずの負けず嫌いだな……」
ゼブラ兄は嘘をつかない、つまりミストシーズンの猛毒の霧も適応したんだろう。だが実際は死にかけたはずだ、ココ兄ならまだしもゼブラ兄は毒に耐性があるわけじゃないからな。
だが本人は死んでもそれを言わないし認めないだろう、出会った頃から決して弱音を吐かない人だった。
(とはいえ流石にゼブラ兄も限界だろう、俺と同じで持ってきた水には一切手を付けていないからな)
俺と同じようにゼブラ兄は皆に水を分けていた、本人はワインじゃなきゃ飲む気にならないと言っていたが……素直じゃねぇよな。
ゼブラ兄は気に入った相手にはある程度はやさしいんだ、そこにいくまでかなりの道のりなんだけど。
だがやせ我慢も限界がある、なんとか水分を取らないと……
するとその時だった、砂漠に不自然に生えていた一輪の花……その花が俺達が近づくとピクリと反応して動き出したんだ。
そして砂中からその本体を表した。
「しめた!あれは『サンドフラワーフィッシュ』!アイツなら食えるぞ!」
「絶対に仕留めろよ、イッセー」
「おうっ!!」
俺は天からの助けだと思いサンドフラワーフィッシュを仕留めた、そしてまずその体から血を抜き取って器に注いでいく。
「よし、これだけあればいいな」
俺とゼブラ兄は大量の血液を飲み干していく。決して美味い物ではないが貴重な水分だ、一滴たりとも無駄には出来ねぇんだ。
「おいおい、生の血なんか飲んで大丈夫なのか?」
「毒持ってるタイプじゃないし俺達なら大丈夫ですよ。ギャスパー、お前も飲むか?」
「僕は遠慮しておきますぅ、イッセー先輩の血なら飲みたいですが」
「ははっ、今お前に血を吸われたら本当にミイラになっちまうよ」
アザゼル先生が生の血を飲んでいいのかと聞いてくるが俺達には問題ない、一応ギャスパーにも血を飲むか聞いてみるが断られた。
俺の血を飲みたいとギャスパーが生唾を飲むが今そんなことされたらマジで死ぬから断った。
それから何とか水分を取ることが出来た俺達は先を進み続ける。後で知ったんだがこの時俺の体に変化が起きていたんだ。
なんとラクダのように血液中に水分を蓄えることが出来るようになったんだ、普通なら赤血球が破裂してしまうのだがグルメ細胞の進化でそれが出来るようになった。
更に大量の鼻水を出す事で灼熱の空気を冷却して肺が焼けるのを防いでいく、祐斗や朱乃も出来るようになったようで俺に鼻水が止まらないと言ってきた。
ただイケメンの祐斗と美女の朱乃が鼻水垂らしてるから見栄えは最悪なんだけど鼻水は一瞬で蒸発するからまあいいだろう。
「しかし小猫ちゃんとアーシアが流砂に飲まれたのはある意味運が良かったのかもな」
「ちょっとイッセー、変なこと言わないでよ」
「ああすみません、ただ不謹慎で言ったんじゃなくて状況が状況ですのでついそう思ってしまったんです」
俺の呟きにリアスさんが咎めてくるが俺は慌てて訂正する。
「どういうことなの、イッセー?」
「この灼熱の砂漠は俺が想定していたより苦しい環境で持ってきた水ももうギリギリしか残っていなかった、もし二人がいたら水が底をついて犠牲者が出ていたはずだ」
「なるほど、そう考えると二人が分断されたのは私達にとっても運が良かったのね」
「ああ、砂漠の地下なら暑さはないだろうしな」
貯水ラクダを早期に失い水はもう無くなる寸前だった、もし二人もこの場にいたら水が底をついていたはずだ。そうなれば一般人の体力しかないティナやアーシアが死んでいた可能性が高い。
「あのガキどもの運、本物かもしれないぜ」
「どういうことだ?」
「あの小娘ら、最初からそこに向かっていたかのように……食材によっていく才能でもあんのか?あいつらの後を追っていたら着いちまったよ」
「それって……!」
ゼブラ兄の言葉に俺は急いで目の前の大きな砂丘を登っていく、そして上に着いた俺が見たのは……
「これが……グルメピラミッドか!!」
俺の眼前には巨大な赤い砂漠に佇む大きな三角形の建物があったんだ。
「ここに小猫ちゃんとアーシアが……」
美食屋の感という奴なのか、俺は目の前のピラミッドから濃厚な死の匂いを感じ取った。間違いなくとんでもない危険地帯なんだろう。
「上等だ、小猫ちゃんとアーシアを助け出して必ずメロウコーラをゲットしてやる!」
俺はそう決意を込めて皆と一緒に砂丘を降りていった。
後書き
リンだし。いよいよグルメピラミッドに突入だね、小猫ちゃんとアーシアちゃんを助け出さないといけないんだけど獰猛な猛獣や危険な罠がいっぱいでめっちゃ危険だし……
でもあたしも頑張らないとね、未来の義理の妹たちの為にもフラグレンスを駆使して戦うんだから!
次回第114話『摩訶不思議な迷路、グルメピラミッド!イッセーよ、強敵たちを打ち倒せ!』で会おうね。
次回も美味しくいただきます……だし♪
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