FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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タイムラグバトル
前書き
今日大雨で予定がなくなったので更新できました。
最近暑くて創作意欲が湧かないので雨の時は気持ちやる気が起きてくる(*・ω・)イイワケ
シリルside
医務室へとナツさんを連れてきた俺たち。そこには大魔闘演武に参加しているメンバーはもちろん、彼を心配して駆け付けたギルドの仲間が多くいた。ただ、あまりにも人数が多くてグランディーネ・・・ポーリュシカさんに追い出されていたけど。
「あんたたちもとっとと帰りな。これからバトルパートに入るんだろ?」
人が減ったことは減ったけど彼女は明らかに怒っているのがわかる。人間嫌いだからというのもあるけど、ボロボロになっているナツさんを見て思うところがあるのかもしれない。
「ここは私たちが見てるから」
「お前らは何にも心配すんな」
リサーナさんとエルフマンさんにもそう言われ、俺たちは彼を任せて医務室から出る。通路を歩いている間、重苦しい雰囲気に包まれていた。
「どう思う?あいつら」
「大会中の出来事と言われればそれまでだが・・・何か気になるんだよなぁ」
「気になるって・・・何がですか?」
ラクサスさんは何か引っ掛かるところがあるみたい。ただ、それが何なのかは彼自身もわかっていないようで、俺の問いには答えてくれなかった。
「何にしても、ここからのバトルパートは要注意だな」
「そうですね。前回も色々ありましたし」
以前の大会では大鴉の尻尾が様々なルール違反を犯してこちら側を潰しに来ていた。今回の相手はそんなことは今のところないけど、普通のギルドとは異なる狙いを持っているのは言うまでもない。
「もしあいつらと戦うことになったら、俺が出る」
様々な憶測が飛び交う中、先程まで口を閉ざしていたギルダーツさんが不意にそんなことを言う。その目は昨日の夜と同じ、苛立ちを隠しきれないものになっていた。
「昨日何かあったんですか?」
「ギルダーツさん・・・めっちゃ怒ってますけど」
「ちょっと色々あってね」
昨日の夜行動を共にしていたカナさんに聞いてみたけど、彼女にもはぐらかされてしまい結局わからず終いになってしまう。その後俺たちはそれぞれの待機場所へと戻ると、ちょうどバトルパートの開始時間になったのかチャパティさんの声が響き渡った。
『大変お待たせいたしました!!これより本日のバトルパート・タッグバトルのルールを説明します!!』
今日のバトルパートは二人参加のタッグバトルになるらしい。ここまでは昨年もあったため驚きではなかったが、次に説明されたルールに会場はざわつくことになる。
『本日のタッグバトルは《タイムラグバトル》となっております!!』
「「「「「タイムラグバトル?」」」」」
聞き慣れない単語に全員が顔を見合わせる。タイムラグって時間差があるってことだけど、それがバトルとどう繋がると言うのだろうか?
『タイムラグバトルではまず最初に各ギルド一名ずつ選手を出していただき、その後10分ごとに選手を闘技場に設置されている檻から放出、参加していただく形式のバトルとなります』
「だから時間差ってわけね」
納得したように頷くミラさん。妙にひっかかるルールの説明だけど、最終的にはタッグバトルになるわけだし特に問題ないかと思ったが、すぐにそれが幻想であるとわからされることになる。
『制限時間は30分。まず最初に一名ずつのバトルとなり、続いてランダムに選出された未参加の選手が一人、またその10分後に最後の選手が放出となります』
「「「「「!?」」」」」
それを聞いて会場にいた全ての人間が目を見開いた。それもそうだ。だってそのルールでは明らかに問題があるからだ。
「それは最後の一人が参加できるのは開始から20分後と言うわけか?」
『そういうことになります』
これを聞いて会場はざわつく。それもそうだ、このルールは明らかに不平等であるのだから。
「つまりタッグバトルになるのは開始から20分後からの10分間だけってことですよね?」
「いや、そもそもタッグバトルまで持っていけるかが問題ですよ」
ジュビアさんの言うことは間違ってはいないのだが、その前に大きな関門がある。それは先に二人を放出できるギルドがあるということは、相手は味方が出てくるまでの10分間1対2の状況で戦わなければならないということ。それを凌ぎきらなければ味方と合流することができないのだから。
「10分経つ前にバトルができなくなったらどうなるんだ?」
『その場合は続行不能なギルドの選手をその時点で放出し、次の選手の放出はそこから10分後と変更されます。また、続行不能な選手が急に目覚めても参加を出来ないようにするため対象選手は闘技場から魔法陣にて皆様の控え場所へと転送となりますのでご注意ください』
わざと気絶したフリをして味方と合流して戦うということは出来ないように対策されているらしい。ただ、それがあろうとなかろうとこのバトルは難しいものになっている。
『まずは本日のバトルパートの対戦表を表示します。試合の順番は表示されている対戦表の上から順番となりますので、そこも踏まえて参加する選手の登録をお願いします』
魔水晶ビジョンに表示される対戦表。それが表示された瞬間、会場のボルテージが最高潮に達した。
「なっ・・・」
「これは・・・」
対戦表の中で観客がどのバトルに沸いているのかすぐにわかった。この大魔闘演武一日目バトルパートの先人を切る第一試合。それは先ほどの競技パートで苦汁を舐めさせられた妖精の尻尾と狩猟豹の頭の組み合わせになっていたのだから。
グレイside
「マジかよ・・・」
「やってくれるじゃねぇか、ギヒッ」
表示された対戦表に思わず頭を抱える。いきなりさっきの競技パートで因縁が出来てしまった相手ということにタメ息が漏れ出る。
「どうする?エルザ」
「選出方法のやり方は大きく分けて二通りだな」
「なんだ?そりゃ」
ガジルの問いに指を一本立ててまずは一つ目の考え方を述べるエルザ。
「2対1になる最悪の状況を想定して一人でも二人を相手にできるほどの強力な魔導士を選出し、最後の10分で体力が万全なもう一人が一気に二人を倒しにいくような選出方法が一つ目だ」
言われてみれば30分間戦いっぱなしの奴より最後に出てこれる奴の方が体力は残っている。最初に出る奴には頑張ってもらわなければならないが、それさえ乗り切れれば逆に一気に形勢が逆転するって訳か。
「二つ目はこちらが先に二人になることを信じてコンビネーションがいいメンバーを出すことだが・・・」
それを聞いた瞬間、俺とエルザは全員の顔を見回してすぐに察した。今回のメンバー選出は強い奴を優先してしまっていることでコンビネーションという概念がうちにはない。そもそもチーム分けをしたのが運営なのだから、これは仕方ないことではあるのだが。
「こうなると向こうのチームが羨ましいな」
「あぁ。タッグバトルになれば、あっちはどんな組み合わせもできる」
俺たちはジュビアたちの方を見ながらそんな話をする。あっちは何よりシリルとウェンディで合体魔法が使える。それにシリルはルーシィともミラちゃんとも共闘したことがあるし、ジュビアとも相性が良い。
ウェンディもカナとなんやかんや仲が良いから相性は良いし、カナはルーシィとも組める。それにジュビアとルーシィも合体魔法を発動したことがあるからはっきり言って誰が出てきても良い状態。今のこちらの状況を考えると、羨ましい限りだぜ。
「ジュビアかシリルをこっちに入れておけば良かったな」
「なんだ?ジュビアだけじゃ満足できねぇのか」
「んなこと言ってねぇだろ!!」
ジュビアとシリルはどっちも水の魔法を使うから俺と相性が良い。だから組むならどっちでもいいってだけでそこに深い意味はないんだが、ガジルはイヤらしい笑みを浮かべておりすっげぇ腹が立つ。
「俺が行ってもいいか」
どうするべきか悩んでいたところ、突然そんな申し出をしてきたのはギルダーツ。予想外の彼の名乗りに俺たち三人は顔を見合わせた。
「ギルダーツにはもっと大事な場面で行ってほしいんだが・・・」
「今がその大事なところじゃねぇのか?」
普段は温厚な彼の表情が般若に近いものになっており、俺もエルザも固まってしまう。相当ナツのことで怒っているようではあるが、どうやらそれだけではないようだ。
「となるともう一人はどうするか・・・」
「俺だ」
誰がペアを組むのか話し合おうとしたところ、これまた名乗りを上げる人物が現れる。それはギルダーツと並ぶといって差し支えがないであろう化け物の一人、ラクサスだ。
「いや・・・それはさすがにやべぇだろ」
「あいつら・・・跡形もなく消し飛ぶんじゃねぇの?」
これにはさすがのガジルも笑ってられないようで、憐れみの視線を対戦相手である狩猟豹の頭の方へと送っている。
「あいつらはナツを傷付けやがったからな。その落とし前はキッチリつけてやる」
ラクサスの昔を知っている俺たちからすれば本当に変わった彼のそんな言葉を聞いて止めれるわけがない。それに相手はナツをあそこまでできるほどの実力者がいる。他にも同格の奴がいるとすれば、二人に任せるのは何も間違ってはいないだろう。
「わかった。任せるぞ」
「このボタンを押せばいいんだよな」
俺たちの待機場所の前にはバトルパートに参加する選手の登録を行える魔水晶通信機がある。ウォーレンが作った奴っぽいけど、あいつこれを作ったおかげで一生遊んで暮らせるって言ってたからな。よくギルドに戻ってきてくれたと思うぜ。そんなことを考えながら、俺二人の名前を打ち込み登録を行った。
第三者side
ここは狩猟豹の頭の医務室。そこには四人の男が集まっていた。
「次のバトルパートは間違いなくギルダーツとラクサスが出てくるぜ、お前のおかげでな」
ベッドに横たわっている男の方へと笑みを見せる黒いフードをま深く被っている男。そんな彼に対し包帯だらけの男は何も答えない。
「どうした?ナツに借りを返せて満足じゃねぇの?」
「・・・俺の力で倒したかったと思って・・・な」
そう言って握り締められた拳には力が入っていない。それを見ていた仮面の青年はギュッと奥歯を噛み締める。
「今回の件でお前には恩赦が与えられるはずだ。そうすりゃ外に出れる。いくらでも戦えるぜ?」
「・・・本当に大丈夫なんだろうな?」
「あぁ。そっちはな」
意味深な言葉を述べた彼だったが、事情を理解していた三人は何も突っ込まない。黒装束の男は次の準備をしている二人・・・いや、正確には片方の男にのみ視線を向けていた。
「こいつは役割を果たした。次はお前の番だ」
「強いのか?ギルダーツという男」
「あぁ。お前が満足するかは知らねぇけど」
その問いに男の頬が緩む。だが、彼の隣にいる青年は不安げな雰囲気を隠す素振りもない。
「俺は何をすればいい」
「お前の役割は今日じゃねぇ。檻の中で寝ててくれても構わねぇ」
「・・・わかった」
それだけ言って二人は部屋を後にする。残された二人のうち、黒装束の男はベッドに横たわる男へと向き直った。
「お前も今はゆっくり休め。水をできるだけ飲むのも忘れるなよ」
「あぁ。わかった」
そう言って仮面を取った男はそのまま静かに寝息を立てて目を閉じる。それを確認した黒装束の男は扉の方へと歩いていく。
「薬の効果もあれだが、副作用もでけぇみたいだな。思ったよりシビアな戦いになるかもしれねぇ」
まるで死んでいるかのように眠っている男の方へと視線を向けた後、息がしっかりとしていることを確認して安堵の息を漏らす。彼はすでに夢の中にいる男へと言葉を贈り、この場を後にする。
「ご苦労だったな、エリゴール」
仮面を付けていたその男はかつてナツやシリルと対峙したことのある鉄の森の魔導士、エリゴールだった。静かに寝息を立てている彼の表情は晴れやかなように見えたが、その頬は異様なまでに痩け落ちており、何かを隠しているのは明確だったが、それを知ることができるものはこの場にはいなかった。
シリルside
『各ギルドメンバーの選出が決定いたしましたので、これより一日目バトルパート第一試合を行って参ります!!』
チャパティさんのそのアナウンスですでに準備をしていたのであろう四人が闘技場へと姿を現す。それを見た俺とウェンディは驚きすぎて開いた口が塞がらない状態になっていた。
「これは・・・ずいぶん思いきりましたね」
「こんなのいいの?」
「ルール上問題はないけど・・・」
ジュビアさんたちも現れた四人のうちの二人を指さして驚きが止まらない。それもそうだ。だって今闘技場に姿を現しているのはギルド一・・・いや、フィオーレ一の魔力を持っているコンビといっても差し支えないほどの二人なのだから。
『妖精の尻尾からはラクサス・ドレア-&ギルダーツ・クライヴ!!』
前回の大魔闘演武での活躍を知っている皆さんはラクサスさんへと盛大な拍手を送り、その魔力で世界を渡り歩きながら人々を救ってきたギルダーツさんへは彼に恩義のある人たちが大きな声援を送っていた。
『VS!!狩猟豹の頭・スカイシー&スペーサ-!!』
対する二人は背の高い男とそれよりは若干劣るものの、一般的な成人男性ほどの体格はしている男。ただ、ラクサスさんとギルダーツさんに注目が集まりすぎていて二人のことを気にしている人はほとんどいない。
「大丈夫かな?二人とも」
ラクサスさんとギルダーツさんは強い。でも、これから戦うあの人はそれ以上に強いと思う・・・ナツさんのこともあるし二人が大丈夫なのかと不安に思っていると、ウェンディが顔を覗き込んでいたことに気が付いた。
「大丈夫?シリル」
「う・・・うん、大丈夫だよ」
かなりの至近距離に顔があったことで思わず倒れそうになったのをなんとか堪える。上目遣いになっていたこともあり心臓がバクバクいっているのを感じながらそれを沈めようとしていると、隣にいるジュビアさんから問いが入った。
「そういえばシリルはあの人と知り合いなんですか?」
彼女が指をさしているのはスカイシーと名乗る男。その問いに俺は困ってしまうが、すぐにいい返答を思い付いたのでそれで答えることにした。
「内緒です」
さっきのミラさんのように口の前に人差し指を立ててウインクしてみせる。すると、それを見ていたウェンディに後頭部をひっぱたかれた。
「いったぁ!!何するのウェンディ!!」
「それ、私以外には今後やらないこと」
「なんで!?」
「やらないでね?」
「はい・・・」
ウェンディの鬼のような形相にシュンとしながら答える。なぜか顔を赤くしているジュビアさんやルーシィさんたちはそれ以上は追求しないでくれたので、これでよしとしておこう。
「あ、始まるみたいですよ」
そんな話をしているともう準備が整っていたようで試合が始まろうとしていた。そのため、俺たちはこの変則ルールの中でどのような戦いを繰り広げるのかを見るためにそちらへと視線を向けた。
レオンside
「ギルダーツさんって強いの?」
現在中央にいるのはラクサスさんとスカイシーを名乗る男。その他の二人はルール説明にあった通り闘技場の隅にある檻上の箱の中にいるが、その中にいるオーラ全開の人物を見て気になったことを問いかけていた。
「あぁ。なんたって妖精の尻尾最強と言われれば真っ先に名前が上がる男だからな。ラクサスよりも強いとすら言われている」
「ラクサスより強いって・・・イメージできないなぁ」
リオンくんの答えに対してのシェリアの言葉は同意する。ジュラさんに奇跡と言われつつも勝利を上げたラクサスさんよりも強いと言われてしまうと、もう強さの次元がよく分からなくなってしまう。というよりなんでそんな強い人が聖十大魔道にいないのか疑問に感じる。
「そんな二人相手にどんな戦いをするか、見物だな」
ただ、俺が気になっているのは他の誰でもなくあいつだ。まもなく鳴らされるであろう銅鑼により開始されるバトル。それを受けてすでに戦う準備ができている仮面の男に注目する。
「狩猟豹の頭の一人目はあいつか」
「どんな魔法を使うんでしょうね」
「おおーん」
ユウカさんたちもその人物に注目を寄せている。それに俺たちはこのバトルパートの戦い方も見ておきたいところがある。
「しかし全チームの条件を同じにするためとは言え、まさか事前に選手登録をしなければならないとはな」
「確かに。この変則バトルじゃ後半のチームの方が戦いやすいのは言うまでもないからね」
このタイムラグバトルに参加する選手はこれから始まる第一試合の前に登録を完了させている。組み合わせが事前に知らされているとはいえ、どんなバトルになるか予想もできない戦いを観察することもできないとなると、相当厳しいものになる。
「そのせいでまた様子見にしちまったしな」
「まだ初日だからね。慌てる必要はないよ」
俺たちは第二試合で剣咬の虎とのバトルになっているが、参加回数が限られている今回の大魔闘演武では下手な人選をすると追い付けなくなる可能性がある。そのため次のタッグバトルもリオンくんの提案によりユウカさんとトビーの二人に任せることになってしまった。
『それではこれより!!大魔闘演武一日目バトルパート第一試合!!妖精の尻尾vs狩猟豹の頭の試合を行います!!』
このアナウンスにより会場は熱気に包まれる。無理もない、この二人が共闘する姿なんて早々あるわけがないのだから。
『それでは第一試合!!スタートです!!』
その声により鳴り響く銅鑼の音。未知数の戦いとなる変則バトルをどのように使っていくのかを静かに見つめることにした俺たち。しかしこれから十数分後、俺たちは予想だにしなかった結末に驚かされることになることをこの時は知るよしもなかった。
後書き
いかがだったでしょうか。
一日目のバトルパートは時間差により参加者が増えていくシステムを採用してます。構想はできてるのでうまくできるとは思ってますが、わかりづらかったらすみません(*・ω・)
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