ナポレオンの柳
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第三章
「そうなっていますので」
「そうなのですね」
「それはいいことです」
「あの方も喜ばれます」
「きっと」
「はい、やがてです」
青年は話を続けた。
「欧州の至るところにです」
「あの方の柳が生えて」
「そして飾られますか」
「あの地を」
「そうなります」
こう言うのだった。
「必ず」
「そうです、そうなりますと」
「あの方も喜んでくれます」
「柳がお好きで」
「この島でも毎日その傍におられたので」
「はい、あの方は志を断たれましたが」
それでもというのだ。
「必ずです」
「あの方が愛された柳は欧州に戻り」
「そして広まっていく」
「そうなりますね」
「そうなればあの方も喜んでくれるでしょう」
青年は島の者達にその柳を見つつ言った、そして彼もまた柳の枝を一本取ってそのうえで水の中に入れて持って帰った。島の者達はその彼を見送った。
彼もまた欧州にナポレオンの柳を伝えた、そうした者はさらに出て。
欧州ではこの柳があちこちに見られる様になった、ナポレオンを愛する人達はその柳達を見て言った。
「あの方も喜んでおられるだろう」
「ご自身の傍の柳が欧州全体に広まっているのだ」
「そしてあちこちに立っているのだ」
「こんな素晴らしいことはない」
「それで喜ばずにおられるか」
こう話してだ、このことを喜んでだった。
柳の木を見ていった、今もナポレオンの柳は欧州全体に広く立っている。遠い孤島に流された英雄が愛した木は今はそうなっている。
ナポレオンの柳 完
2023・5・14
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