ありきたりのものを書くにも
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第一章
ありきたりのものを書くにも
ネット小説界では異世界転生ものが人気である、死んだり何かしらの展開で異世界に転生してという話が星の数程ある。
そうしたものを読んでいてだ、大学生でサークルは漫画研究会の速水潮路は友人の村上悟に対して言った。
「異世界ものはな」
「ありきたりか?」
「同じ様な作品ばかりでな」
面長で顎の先が尖った顔で言う、目は細く黒髪は短く癖がありあちこちはねている、背は一六九位である。
「他にないのかってな」
「思うか」
「ああ、書籍化アニメ化される作品なんてな」
ネット小説からというのだ。
「最近七割は確実にな」
「そうした作品だっていうんだな」
「そうだろ」
「そうだよな」
村上も否定しなかった、賽子の様な顔の形で体格も同じだ、鳥の巣の様な黒髪で丸眼鏡をかけていて鼻は丸い。
「僕だってな」
「そう思うよな」
「うん、もう誰でもだよ」
それこそというのだ。
「書ける様な」
「無敵主人公ものも」
速水はさらに言った。
「もうな」
「誰でもか」
「書けるだろ、こんなの書いて」
そしてと言うのだった。
「人気が出て書籍化アニメ化とか」
「そんな作品が巷に溢れていることが」
「どうかしてるよ」
こう村上に言った。
「最近は」
「まあ人気が出たら色々あるのはだよ」
村上は眉を顰めさせてぼやく速水に話した。
「世の中の摂理だよ」
「売れるならお金になる」
「それで色々あるのがね」
「結局全部はお金かな」
「お金がないと皆食べていけないからね」
「それで異世界ものばかりになっているんだ」
「それが流行だしね」
速水に達観した様に言った。
「それこそ誰が書けるものでも」
「ありきたりの雨後の筍みたいなのでもかい」
「それでもう一つ無敵主人公でもだよ」
これは異世界転生ものと重なる場合もある、転生した先で主人公が縦横の活躍をするものも二人は無敵主人公だと認識しているのだ。
「そうなることはだよ」
「この世の摂理かい」
「そうだよ、世の中そんなものだよ」
「それが嫌なら共産主義かい」
「今僕が言う摂理は資本主義のことだからね」
「誰がソ連や北朝鮮になりたいんだ」
速水は即座に否定した。
「一体」
「それが答えだね」
「うん、それは論外だよ」
「だったらだよ」
「誰でも書ける小説が持て囃されることも」
「仕方ないと言えばね」
そう言えばというのだ。
「それもだよ」
「仕方ないんだ」
「純粋な共産主義になったらネット小説どころじゃないよ」
自由が全くない社会ではというのだ。
「かつてのソ連や今の北朝鮮みたいに」
「そうなるか」
「そうだよ、誰が書けるものでもね」
こうした話をだった。
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