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ドリトル先生と桜島

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第四幕その八

「実はね」
「ああ、そうなんだ」
「ハワイのカメハメハ大王像もそうだったらしいけれど」
「あの銅像は兵士の人で一番男前の人をモデルにしたそうだけれど」
「西郷さんは弟さんがモデルになったんだ」
 この人の場合はというのです。
「肖像画でもね」
「西郷従道さん?」
「明治の政治家さんだった」
「それで元老のお一人にもなった」
「あの人がなんだ」
「弟さん、近い親戚の人ってことでね」
 それでというのです。
「似てるだろうということでモデルになったけれど」
「実は似ていなかったんだ」
「西郷さんとは」
「そうだったんだ」
「どうもね、奥さんが銅像を見てね」 
 西郷さんのというのです。
「あまり似てないって言われたそうだし」
「奥さんがそう言うならね」
「実際にあまり似てなかったんだね」
「西郷さんの銅像は」
「この銅像にしても」
「実は西郷さんは写真を撮られることが嫌いだったんだ」
 ここで先生はこのこともお話しました。
「昔の人でね」
「ああ、昔の人ってね」
「写真撮られると魂取られるって」
「そうしたお話があってね」
「それでよね」
「明治天皇もそうであられたし」
 この方もというのです。
「ひいてはね」
「西郷さんもそうで」
「写真撮られたくなくて」
「それでだったんだ」
「写真から銅像造れなかったんだ」
「だからあまり似ていなかったんだ」
「銅像も肖像画も西郷さん死後のものでね」
 それから造られたものでというのです。
「弟さんをモデルにしていてだったんだ」
「成程ね」
「だからあまり似てないんだ」
「上野の西郷さんの像も」
「それでこちらの像も」
「また同じ人の銅像でもそうした事情があってかね」
 それでというのです。
「上野のものとこの銅像はね」
「また違うんだ」
「そうした感じなんだ」
「これが」
「そうだったんだ、ただね」
 先生は皆に笑ってこうもお話しました。
「西郷さんのお写真もあるにはあるよ」
「あっ、そうなんだ」
「ちゃんとあるんだ」
「そうなんだ」
「幕末の志士の人達が集まったものがあってね」
 それでというのだ。
「その中にまず間違いなく西郷さんだって人が映っていて」
「それでなんだ」
「西郷さんのお写真もあるんだ」
「そうなんだね」
「大久保さんも一緒に映っていてね」
 西郷さんの無二の盟友だったこの人もというのです。 
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