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イベリス

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第百三話 夏休みの宿題その三

「そう思ったから」
「それじゃあ」
「ええ、読書感想文にね」
 まさにそれにとだ、同級生は咲に答えた。
「その作品にするわ」
「そうなのね」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「早速部活終わったらね」
「読むの」
「学校の図書館にもあるわよね」
「あるわよ、全集に入ってるわよ」
「そうなの」
「太宰の全集にね、うちの学校の図書館にも太宰の全集あるから」
 それでとだ、咲は答えた。
「よかったらね」
「そっちでなのね」
「うちの図書館夏休みも開いててよかったわね」
「ええ、じゃあね」
「部活終わったら」
「早速読んで」
 そうしてというのだ。
「感想文書いちゃうわね」
「そうしてね」
「しかしお話聞いたらその兎って」  
 太宰のかちかち山の兎の話をした。
「サイコね」
「ああ、聞いてたらそう思う?」
「だって自分を好きになった相手をでしょ」
「ああした風にしてね」
「殺すのよね」
「そうよ、タイプじゃないから」
「タイプじゃないからってそこまでして殺すって」
 それはというのだ。
「もうね」
「サイコパスだっていうのね」
「ええ」 
 まさにと言うのだった。
「それって」
「私もね」
 咲もこう答えた。
「そう思うわ、それで読んだら」
「実際に」
「そうしたらね」
「わかるのね」
「よくね」
「じゃあ尚更読んでみるわ」
 確かな声でだ、同級生は答えた。
「楽しみにしてね」
「そうしてね」
「それじゃあね」
 咲に笑顔で応えてだった。
 同級生は部活の後で図書館に行った、そして翌日咲に朝部活に来て早速こんなことを言ったのだった。
「いや、本当にあの兎はね」
「サイコパスでしょ」
「狸をあんな風に殺して」
 それでというのだ。
「汗かいちゃったで終わりだから」
「酷いでしょ」
「あの作品で狸悪いことしてないじゃない」
「全くね」
「兎好きになっただけで」
 本当にそれだけでというのだ。
「他にはね」
「何もないでしょ」
「それだけの相手にね」
「タイプじゃないから」
「それだけで」
 まさにそれだけの理由でというのだ。
「あそこまでするなんて」
「酷いでしょ」
「惚れたが悪い?」
 狸のこの言葉も出した。
「それって悪いの?」
「悪いって思わないでしょ」
「まさか」
 同級生は眉を顰めさせて言葉を返した。 
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