チートゲーマーへの反抗〜虹と明星〜
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16話 Turning point 【分かれる道】
遠い遠い神世の時代。
現在の地球とは異なりまだ大陸が1つしかなかった頃の話。
ユエルとナンナエルが神の下に聖婚したことに激しく怒り、絶望したアユムエル。彼女はユエル以外の全ての抹殺を行おうとした。
しかしそれは神々が巨大な障壁によって2人の住む世界を2つに分けて、未然に防いだ。
この神々の決定にさらに怒り狂ったアユムエルは愛憎のままに、ユエルに呪詛をかけた。
「あなたがこんな酷い仕打ちをするなら…私は怪物をあなたの国に送り込んで毎日1000人私の国に攫って来させるんだから!そしていつか、私があなたを……!」
ユエルはこの呪詛に恐れ慄いた。
呪詛通りに、アユムエルは怒りのままにユエルの人類を駆逐するために新たな人類として、爬虫類型人類———レプティリアンを創造した。彼らは人間と天使の肉を好物とする人種だった。
そしてその他醜い怪物たちを生み出した。吸血鬼や巨人などもいた———まさに現存する神話に出てくる神々に敵対する怪物たちだ。
彼らが立ち上げた新しい大陸……超テクノロジーを持った完全な階級と闘争の文明 アトランティス。そこに住むのは異形の姿をした怪物たち、その創造主たる太陽のエル アユムエル。
そしてユエルとナンナエルが作り上げたユートピアである大陸……超魔術を行使する文明 ムー。そこに居るのは土から作られた純粋な人間、そして人間に似た天使たち、創造主たる生命のエルであるユエル。
その全てが相反する2つの大陸……争う理由しかなかった。ましてや自らの創造主が愛憎に囚われているのだから。
怪物たちはムー大陸に人間に化けて潜伏し、秘密裏に喰ったり、アトランティスに連れ去った……ムーの人間はこれに対抗するように小競り合いが起こった。
この状況を高次元から見た神々は兄弟たるエルロード2人を地上に派遣した。
彼らの兄に位置する月のエル ミハエル。そして弟である叡智のエル サタエル。
2人の最高位天使は怪物の母と化したアユムエルを説得に向かった。
ミハエルは彼女に言い放った。
「畏れ多くも最高神の御腹から生まれ、ユオス様に恩寵を与えられた被造物が宇宙の秩序を乱すとは、恥を知れ!!」
するとアユムエルは感情のない声で、首を傾げて聞き返す。
「酷いなぁお兄さまは。いつもそうです…自分が美しく生まれたからって、誕生の時から穢れていた私を見下すんです————ねぇお兄さま、私そんなに悪い子ですか?」
彼女は誕生の際、父であるハイパーロードMに悪の性質を持った精神と純粋な肉体を切り離されている———その歪みを穢れと言わずしてなんと言う。
聞かれたミハエルはキッパリと断言した。
「あぁ、貴様は救いようのないほどの大悪魔だ。何せあの純粋なユエルを誘惑して、神々に叛逆させたのだからな。お前はユエルのためなどと言いながら、骨抜きにして惑わした。お前はそのユエルすら不幸にしようとしているとは……愚かしい。」
「……」
冷たく言い放ったミハエル———アユムエルは愛憎に囚われて数々の禁忌を犯している。本当なら神々に消滅させられてもおかしくないはず。
しかしここでミハエルは妥協案を提案する。
「だが情け深いユオス様は天界に戻れば罪を許すとおっしゃった。だから……」
その妥協の言葉にアユムエルは一斉に不機嫌になる。
「だから?ユーちゃんと永遠に離れたまま、そんな地獄を過ごせと?ふふっ……面白くない冗談ですね♪」
そこで今度は弟のサタエルが強硬派のミハエルを押しのける。
「姉さんの愛憎はわからぬでもないが、この一件に父のハイパーロード様はひどくお怒りだ。このままでは天界とも大きな争いになる。まずは落ち着いて話し合いを……」
その理性的な話をアユムエルはその言葉をシャットアウトする。
「いいえ。私はそんな話はしたくないし、あなた達の言い分も聞きたくない。喋るのは私だけでいいの。
お兄さまもサタエルも、神様も、優しかった母上様も、恐ろしい父上様も…もう誰も私に口を出させないんだから。」
闇に落ちた太陽の力が地面を侵食する。その邪悪な力に天使の中で最強のミハエルすら戦慄した。
しかしサタエルは冷酷に彼女に警告する。
「あなたは神に見放されている。そんなあなたがどれだけ足掻こうが、待っているのは更なる不幸だけだ。俺にはその未来が見えますが……」
だがアユムエルは聞く耳を持たない。その紅潮した顔に手を当てる。
「うるさいなぁ。私はユーちゃんを手に入れてこの宇宙を滅ぼす……それだけなの♡あぁ……待っててね———
ユーちゃん♡」
〜〜〜〜〜〜
『これは過去の出来事です……しかし歴史は時計が一周するように、繰り返します。』
「(誰……?)」
『高咲侑、君この世界に息を潜めている邪悪の権化を倒すことができますか?』
「(邪悪の権化……何なのそれ?)」
ーーー
「……!」
侑は開眼する……夢から覚めたその場所は、見覚えのないベッドだった。
そして目を覚ました刹那————
「侑ちゃん……侑ちゃん!!」
「あ、あゆ…む!」
ギュッと抱きつく歩夢。普通女同士とはいえ、人に抱きつくには理性的には抵抗があるはず……しかし、大好きな人の命の危機にそんな恥じらいすらも気にする余裕はないのだろう。
しかし侑はそうではなかった。先ほどの夢……歩夢と同じ顔の人物が怪物達の母になり、自分を欲しがっていた———恐怖しないわけがない。
侑は歩夢を突き放してしまう。
「え……侑ちゃん?」
「あ、あ、ご、ごめん……」
目のハイライトが一瞬消えたことに、夢での恐怖が重なって、本能的に謝る侑。
すると歩夢は微笑して返す。
「ううん、こっちこそごめんね?急に抱きついちゃったりして……このまま侑ちゃんが死んじゃったらって思ったら不安で不安で————だから今、本当に嬉しかったから……」
「死ぬ…?」
「侑ちゃん、毒のせいでもうちょっと治療が遅れてたら死ぬところだったんだよ?」
「そう…なんだ。」
先ほどの夢の印象が強すぎていまだに自分の置かれた状況が理解できない侑。
その時、病室の扉が開く。
「侑さん!!起きましたか!?!?」
「ナナ……せつ菜ちゃん!」
「よかった…その様子だと大丈夫そうですね!」
一安心したせつ菜。その様は歩夢とは対照的に、若干オーバーリアクションでありながら、元気溢れるもの。侑の心も癒される。
侑は思い出したようにせつ菜に尋ねる。
「そういえばイベントの結果は……」
「それはですね…」
せつ菜は————左手で腰に隠していた「トロフィー」を取り出す。
「こういうことです!!」
「わぁ!!優勝!?おめでとう!!!」
「ありがとうございます!——ですがこれは通過点ですよ!ラブライブは……今年のラブライブは近づいてますから!!その大舞台を同好会のみんなで歌うんですから!!」
「うん…!」
侑は少し神妙な顔でせつ菜に相槌するが……その眼差しが徐々に歪む。
「でも……本当にそれだけでいいのかな?」
「どういうこと?」
歩夢の質問に侑はこう返す。
「『僕』は同好会の1人1人が好きなことを追求できるような場所にしたいんだ。そう考えた時、ラブライブに出ることだけが本当に正しいのかなって……」
「「侑ちゃん(さん)……」」
—————※—————
少し時は遡る……ちょうど結果発表が行われてすぐの話だ。
緊張の糸が切れたのか、速人の呼吸が一気に荒くなり、一気に膝をついた。
「速人くん!?」
「大丈夫、千砂都……疲れが溜まってるだけ…だ。」
言葉とは裏腹に火炎剣を杖代わりにしてようやく膝立ちできているくらいだ。大丈夫とはとても言えない。
「(流石にあの技がキツかったか……!)」
速人が受けたダークキバの【絶滅・ザンバット斬】———そのダメージがようやく芽を出した……というより速人がやせ我慢していたのだ。
速人の目はピントがボケて、外界が歪んで見えた。
「速人くんしっかりして!速人くん!!」
「(……千砂都?)」
側に寄った千砂都...彼女の姿に速人は別のモノを感じ取っていた。
千砂都の胸あたりに渦巻く緑のオーラ……それはまさに竜巻と形容するにふさわしいか———しかしそんなことを考える余裕はなかった。
速人は徐々に衰弱して意識が朦朧とし始めた———そんな時。
視界が急にクリアになった。
「うっ……!」
「速人くん!?」
「えっ。」
速人本人すらも困惑する事態……疲れが一気に吹き飛び、体もいつでも戦闘可能な状態へと戻ったと彼は自覚した。
考えうるのは———いやそんなはずはない。
速人はパッと立ち上がって、千砂都に礼を言う。
「ありがとう千砂都。もう大丈夫……ばっちしだ。」
「無理しないでよ速人くん。あなたの身に何かあったら……私、ううん、かのんちゃんが心配するの!」
「……あぁ、そうかな。」
「そうかなって…そうに決まってるよ!!」
速人は首を傾けて否定気味な反応を示す———それに千砂都の眉はクッと上がる。速人のその態度に不満なのは言うまでもなかった。
そこに……
「速人(くん)!!」
「かのん…可可…!」
ばっと2人に抱きつかれた速人。
「見てクダサイ、ハヤト!!」
「あぁ……お前らの想いが通じた証だ。」
新人特別賞を獲得した———優勝こそ逃したが、俺の言葉に出したことが全て。想いが通じたというだけで最高だった。
「デスが…」
可可は少し目を逸らす。そんな彼女に隣にいたかのんは自信に満ち溢れた声で言い放つ。
「確かにこれからスクールアイドルを続けられるかはわからない……でも私、全然後悔してない!!だって!可可ちゃんと———速人くんたちのおかげで最高のライブができたから!!!」
「かのん…!」
「あぁ———今なら『アイツ』の言葉、分かる気がする。」
【本気でスクールアイドル活動がしたいなら、別に誰かに認めてもらう必要はない】
小原魁が言い放った暴論……この意味が何となく理解できた。
なぜならスクールアイドルを1番体感できるのは本人たちであって、その高まりを誰かに認めてもらう必要はない———当然のことだ。
この高まりを阻害するのは他ならぬ敵———これを排除することこそ、自分の使命。
速人は使命を真に理解した。
「そういえば可可、さっきに俺の名前……」
「はい。ハヤト———そう呼ばせてクダサイ♪」
「———おう。」
上目遣いで聞いてきた可可に、速人はサムズアップで返す。
可愛らしい仕草の可可の顔は少し紅潮していて、かのんに向ける友情とは…「どこか違う」ようにも見受けられた。
当然、それを側の幼馴染2人も本能的に察した。
〜〜〜〜〜
そのステージの陰で……
【Say the password.】
「Monarch……0」
【あぁ君か…どうした?】
黒ずくめのラバースーツを身に纏う女性……いや、かなり若いか。ガラケーで流暢な日本語を話す外国人の男と会話する。
「No.99を発見しました。」
【何だと…?】
「捕獲しますか?」
【いや……それは
「危険すぎるなぁ。」
「!!」
陰に潜んでいた彼女らを見つけ出した男は———伊口ファウンデーション会長 伊口イフトその人だ。
女はものすごいスピードで彼に銃口を向ける……しかし彼はびくともしない。
「やめておけ。君では私には勝てない…それどころか、ヘマをして正体がバレたら色々とマズイことになりそうだ。」
「……何が言いたい?」
「警告だ——そのNo.99に手を出すのはやめた方がいい。これは脅しじゃない……君たちの身を案じて言っているのさ。」
「何だと?」
「彼女の後ろには…君たちが最も恐れる『死』を確実にもたらすとんでもない男が付いている———そうとだけ言っておこうか。」
イフトは彼女に背を向けたながら続ける。
「今回は侑くんへの仕打ちをコレでお相子としておくが……余計な野望は抱かぬことだ———自らを滅ぼしたくなければな。」
「……」
「あと、君の正体は言わないよ『プロト0』……ま、言っても信じないだろうな。なんせ君は———『君』ではないのだからな。」
「………」
そう言ってイフトは去っていった。
「いかがします?」
【致し方ない……今は待つしかあるまい。しかし奴は必ず捕える———何せ、『偶然の完成品』なのだからな。】
「では……しばらく潜入続行ということで。」
【あぁ。ところで、『モロック様』への生贄は調達したな?】
「はい。抜かりなく……♡」
後書き
M『ふぅ……ようやくひと段落みたいだな。』
A『えっ、そうなの作者さん?』
「まぁ、一応ここから新章みたいな感じになります。」
A『最後のNo.99って何ですか?プロト0って?モロック様って?あとあの話してた男の人は?速人くんは何で突然回復したの?というか侑ちゃんが何で回復したか説明されてないし
M『あー!くどい!うるさい!やかましい!!それをこっから解き明かすんだろうが!』
A『だってだって気になるじゃーん。』プクーッ
M『まぁとりあえず次回予告聞いとけ…』
『次章予告——優勝を手にした優木せつ菜所属するスクールアイドル同好会、新人特別賞を受賞した結ヶ丘スクールアイドル部。新メンバーも入る中、次の舞台は合同合宿!?その舞台はなんと…!?謎が謎を呼ぶ神話ミステリー……さぁどうなる!?』
M『……っぽい予告にしてるけどさぁ、合宿の舞台決め切れてないんだろクソ陰キャ作者。』
「まぁ…その…」
A『まぁまぁ、こんな愚かな作者さんにも慈悲の心をかけるのも神の役目ずら。』
「擁護してるようでめちゃくちゃ言ってますがな。」
M『はっ。こんなクソ雑魚ナメクジに情けをかける謂れはねーよ。忘れた頃に「ズラズラ」言いあがって。」
A『まぁ酷い。これだからサイコパスは…冷酷無慈悲な夫を持つと困っちゃうよ。』
M『包丁を常備してるヤンデレ女に言われたくねぇわ。』
A『全ての母になるには、あなたを殺して私のモノにする……そのためにはこれしかないって前々から思ってたんだよね♡』スッ
M『うわヤンデレ発言キツすぎ……ほんと、誰が喜ぶんだよこんなめんどくさい2000億歳越えの若作り地雷女見て———』
「……とりあえず、お疲れ様です(血涙)」
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