仮面ライダーAP
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暗闘編 ヘレン・アーヴィングという女 前編
前書き
◆今話の登場ヒロイン
◆ヘレン・アーヴィング
ノバシェード対策室の若き特務捜査官であり、真凛・S・スチュワートの跡を引き継いだ新進気鋭のアメリカ人美女。元同僚であり師でもあった真凛の分まで、ノバシェードを追い続けている才媛。使用銃器はワルサーPPK。当時の年齢は20歳。
スリーサイズはバスト106cm、ウエスト61cm、ヒップ98cm。カップサイズはJ。
北欧某国の東部に位置するギルエード山地。首都の近くであるその山に隠されていたノバシェードの怪人研究所が、真凛・S・スチュワートによって爆破されてから、すでに数時間が経過していた。
夜明けを迎えた森林地帯には現地警察や消防隊が駆け付け、辺り一帯は完全に封鎖されている。朝陽に照らされた現場に立つ警察官や消防官達は、緊張を隠し切れない様子で周囲の調査を進めていた。
幸い、山地のアジト入り口から噴き出していた炎による火災は、僅か1時間程度で消し止めることが出来た。だが、アジトの入り口は落石で塞がってしまったため、何も知らずに来た警察官達はまだ事態の真相に辿り着けずにいる。
山地を揺るがし、人々を混乱に陥れた謎の大爆発。その真相が判明していない内は、緊張を途切れさせるわけには行かないのだ。現場の最前線に立つ名も無きプロフェッショナル達は皆、固唾を飲んで辺りを見渡している。
そんな現場の状況に変化が現れたのは――漆黒のスーツに袖を通した、1人の特務捜査官が合流して来た時だった。真紅のレーサーバイク「マシンGチェイサー」に跨り、この現場に颯爽と駆け付けて来た絶世の美女。それが「噂の美人捜査官」であると知った男達は、早速彼女の美貌に釘付けになっていた。
ショートに切り揃えられた豪奢な金髪。凛とした眼差しに色白の柔肌。気高さに満ちた蒼い瞳と怜悧な美貌は、超一流の女性捜査官としての気品に満ち溢れている。一方で、その肉体は豊穣という言葉では足りないほどにグラマラスであった。雪のように白い柔肌から滲み出る甘いフェロモンは多くの警察官達の鼻腔を狂わせており、ぷっくりとした艶やかな唇も彼らの劣情を強烈に煽っている。
内側から黒スーツを押し上げ、今にもはち切れそうになっている超弩級の爆乳と爆尻。その特大の果実は引き締まった腰に反してあまりに豊満であり、警察官達はその極上のボディラインに思わず生唾を飲み込んでいた。
僅かに身動ぎするだけでぶるんっと揺れ動き、106cmのJカップという圧倒的なサイズをその弾みで主張する、張りのある大きな乳房。妊娠・出産に適したラインがくっきりと浮き出ており、丈夫な子を産める肉体であることを周囲に見せ付けている、むっちりと膨らんだ安産型の桃尻。雄の欲望を叶えるために生まれて来たようなその肉体は、捜査関係者達の注目を余計に集めていた。
「……現場から発見された、このネジ。これは生身の箇所と機械の箇所を結合する際に使われる、改造人間の部品の一つだわ」
現場の警察官や消防官達の視線を惹き付けていた彼女の名は――ヘレン・アーヴィング。ノバシェード対策室の新人特務捜査官であり、後に「エンデバーランドの英雄」と呼ばれることになる若き女傑であった。彼女の美貌と色香に男達はたまらず鼻の下を伸ばし、その豊満な肉体を隅々まで舐め回すかのような粘ついた視線を注いでいる。
そんな彼女が現場から発見した、1本のネジ。それがノバシェードの関与を裏付けているのだという彼女の主張に、屈強な黒人である現地警察の警部は眉を顰めている。ヘレンの唇や胸元に不躾な視線を向けながら、彼は訝しむように目を細めていた。
「つまり……この事態にはノバシェードが噛んでるって言うのかい。対策室の特務捜査官殿」
「現場の焼け跡から発見されたこの型は、1980年代まで徳川清山が改造人間に使用していたモノだわ」
「1980年代だと? 奴が旧シェードを創設したのは確か、11年前の2009年だろう。そんな昔に使っていたネジなんて使い物になるわけ……おい、まさか」
「察しの通りよ、警部。このネジは確かに黎明期の頃から、改造人間の部品として重宝されて来た。それでも2000年代以降においてはさすがに型が古過ぎて、簡素な量産型にしか使われなくなって行った……」
ノバシェードの構成員達の多くは、旧シェードの改造被験者であるとされている。そして彼らは皆、旧シェードの要求スペックに満たない「失敗作」ばかりであった。
改造人間にも、ただの人間にもなり切れない最も中途半端で不安定な存在。そのような「異物」を受け入れられるゆとりを持たない人間社会との衝突、差別、迫害は必至であった。その結果が招いた悲劇の数は、対策室の人間でなくとも肌で理解している。
旧型の部品だという改造人間のネジが、この場で発見された。それが意味するものに辿り着いた警部は、救いようのないこの世界への諦観を胸に、朝陽の空を仰ぐ。手元のネジに視線を落としているヘレンもまた、そんな彼の胸中を声色から察していた。
「そんな旧型をあてがわれた挙句、『失敗作』としてお払い箱にされた。……ここに居たのは、そういう奴らだったってことか」
「ノバシェード構成員の遺体からは、95%以上の確率でこのネジが検出されている。どんな経緯でこんなことが起きてしまったのかはまだ分からないけれど……ノバシェード絡みであることだけは間違いなさそうね」
「となると……例の『仮面ライダー』って奴らがノバシェードを山ごとブッ飛ばした……ってところか? 救世主だか何だか知らねぇが、他所様の国でヒーロー面して好き勝手暴れ回りやがって……」
この山地にはノバシェードが潜伏していた。ならば、ここがアジト諸共吹き飛ばされた原因は何なのか。そこに思いを巡らせる警部の脳裏には、世界各地を転戦しているという「仮面ライダー」の存在が過っていた。
首領格が倒れてからも世界中で散発的にテロを起こしているノバシェード。そんな彼らを打倒するべく、全世界を駆け巡っているのだという22人の新世代ライダー。その者達がこの地に現れていたのではないかと勘繰る警部は、忌々しげに焼け焦げた地表を睨み付けている。
世界各地からヒーローと称賛されている新世代ライダー達だが、彼らに対して懐疑的な視点を持っている人々も決して少なくはない。ライダーの力を信用しない現地警察が協力を拒んだ結果、被害が余計に拡大してしまったケースもある。
「いいえ、彼らはこの件には関わっていないわ。現在活動している22名の新世代ライダーのうち、この某国に滞在していた者は1人も居なかった」
だが。ぷっくりとした桜色の唇を開き、ヘレンは警部の推測を否定していた。現地入りする前から対策室本部と連絡を取っていた彼女は、新世代ライダーが今回の件に関与していないことを予め確認していたのだ。
「仮面ライダーの仕業じゃねぇとしたら……残る線は構成員同士の仲間割れかぁ? 何もかもが吹き飛んじまった今となっては、迷宮入りかも知れねぇが……何にせよ、傍迷惑なモンだぜ。あのジークフリート・マルコシアン大佐さえ健在だったらなぁ……」
扇情的で艶やかな唇から紡がれる彼女の言葉にため息を吐き、警部は力無き人々の嘆きを代弁するかのようにぼやくと、独り踵を返して行く。かつて旧シェードの侵略からこの国を守り抜いた「英雄」の名を呟く彼は、諦念を露わに空を仰いでいた。
(ジークフリート・マルコシアン……11年前、旧シェードの侵攻を防いだと言われている救国の英雄……か。確かに彼が居なくなってから、この国の情勢は不安定な時期が長く続いていた。きっと、そこをノバシェードに付け入られたのね)
11年前の2009年に起きた、旧シェードによる軍事侵攻。その脅威からこの国を救った伝説の英雄――ジークフリート・マルコシアン大佐は、消息を絶った今もこの国の象徴的な存在として祭り上げられている。
首都・エンデバーランドの国立中央公園に聳え立つ銅像をはじめ、ヘレンは至るところで彼の勇姿を描いた作品を目にして来た。政府官邸の壁に大きく描かれた肖像やポスターのデザイン、さらには教科書の表紙にまで彼の姿が題材として使われている。ここまで来ると、見ない方が難しい。それほどまでに、ジークフリートの存在感は絶対的であった。
灰色の野戦服を纏う筋骨逞しい肉体。猛獣を想起させる暗い茶髪に、右眼を覆う黒い眼帯。勇ましく精悍な顔立ち。そんな屈強な軍人だったというジークフリートの雄々しい姿は、この国における「正義」の象徴として民衆に広く知られている。
それほどのカリスマ性を持っていたジークフリートが姿を消してから、すでに11年。消息を絶って間もない頃よりは情勢も安定化しつつあるようだが、それでも彼が健在だった頃と比べて治安が芳しくないことには違いない。
混乱期の尾を引いているこの小国は、ノバシェードの潜伏先としてはうってつけだったのだろう。英雄の喪失による国の不安に付け込まれた結果、このような事態に繋がってしまったのだとヘレンは推測する。
(……「仮面ライダー」の仕業、か……)
かつての英雄の名を呟きながら、この場から立ち去って行く警部。そんな彼の背中を見送ったヘレンは、何か思うところがあったのか――数少ない遺留品であるネジに視線を落とし、独り目を細めている。
彼女の脳裏には新世代ライダー達ではなく、その枠に居ない「悪魔の力を持つ仮面ライダー」達の存在が過っていた。
(「仮面ライダーオルバス」こと、忠義・ウェルフリット。彼と同じ「悪魔」の力を持ったジャスティアライダー達なら、アジト一つを潰すことなんて容易いのかも知れない。けど、彼らがこの国に入国していた形跡も見つかっていない……)
自我を持つ「コア」を搭載した、特殊な変身ベルト「ジャスティアドライバー」。そのベルトに選ばれた適合者は、新世代ライダーの一員である「仮面ライダーオルバス」こと忠義・ウェルフリット独りではない。ソロモンの悪魔に近しい名を冠した仮面ライダーは、彼の他に何人も居る。
22名の新世代ライダー達とは異なる枠組みで活動している適合者達――「ジャスティアライダー」。彼らは忠義とは違い、各国政府や警察機関との連携を前提にしておらず、「独自のやり方」でノバシェードを追撃している。さらに目的はおろか、ライダーになる前の素性すら不明な者もいるらしい。
大衆からヒーローとして称賛されている新世代ライダー達とは違い、アウトローな手段も辞さない「影」のライダー。そんな彼らの詳細な動向はノバシェード対策室ですら完全には掴めておらず、ヘレン達は毎度のように彼らが戦った後の事後処理に追われているのだ。
そのため対策室本部の室長達からは、ある意味ノバシェード以上に厄介な存在だとも言われていた。番場惣太の管轄下ではないジャスティアライダー達の動きは非常に読みづらく、彼らにとっても悩みの種なのだろう。
天才女性科学者・一光博士によって開発された72機のうち、幾つかのドライバーはすでに適合者達の手に渡っており、彼らは各々の「やり方」で各地のノバシェードを打倒している。決して清廉とは言えない彼らの「やり方」を危険視する各国政府からは苦情の声が絶えないようだが、光はその悉くをのらりくらりとかわしているようだ。
彼女としてはドライバーの運用データ収集が最優先であり、ジャスティアライダー達の素行を制御するつもりなどないのだろう。新世代ライダー以上に活動内容を疑問視されやすい彼らのうちの誰かなら、この山地をアジトごと吹き飛ばすくらいのことはしていても不思議ではない。
だが、2020年現在の時点で存在が確認されているジャスティアライダー達が、この国に入国していた可能性に繋がる痕跡は残っていなかった。オルバスこと忠義を含む、悪魔の力を秘めた影のライダー達ですら、今回の爆発事件には関与していなかったのである。
であれば、警部の言う通り構成員同士の内紛が原因だったのか。3名の首領格を欠き、彼らに代わる指導者も確立されていない今のノバシェードならば、それもあり得るのかも知れない。
だが、ヘレンの胸中には未だに強い違和感が残されている。それが真相だと断じるには、まだ早い。そんな根拠のない直感が、彼女の胸の内に強く引っ掛かっている。
「う、うわぁあぁぁあっ! な、なんだこいつぅううっ!?」
「……!?」
――その時だった。警部が踵を返し、歩き去った方向から悲鳴と怒号、そして銃声が響いて来る。ヘレンはハッと顔を上げると腰のホルスターから拳銃を引き抜き、素早くその場から駆け出していた。緊張に汗ばむ肉体から淫らな雌の匂いが漂い、特大の乳房と桃尻がばるんばるんと揺れ動く。
「ウグァ、アァッ、アァオオオッ……!」
「ひ、ひぃいっ! こ、こいつ明らかにイカれてるっ! 間違いねぇ、こいつ怪人だぞっ!」
「まっ……まさか、本当にここはノバシェードのアジトだったのかぁあ!」
この現場で起きた異変の発生源。それは、瓦礫で塞がっていたアジトの入り口であった。
崩れた岩石の隙間から這い出て来た瀕死の戦闘員が、改造人間としての最後の力を振り絞り、警察官達に襲い掛かっていたのである。地獄の底から甦った悪魔のような唸り声が、その一帯に響き渡っていた。
「ヨクモ、ヨクモオレタチヲ……! コロシ、テヤル……! コロシテヤルゥウッ……!」
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