ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル
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第112話 突入、デザートラビリンス!連れ去られた小猫とアーシア!
前書き
今回ワンピースネタがありますのでお願いします。
side;小猫
「お待たせいたしました、ゼブラさん。ヤマタノサソリの尻尾のから揚げです」
私はゼブラさんに作った料理を渡しました。ゼブラさんは無言でそれを口に入れるとムシャムシャと食べていきます。
「お味の方はどうですか?」
「……もっとよこせ」
「はい、今作りますね」
私は空になったお皿を受け取って追加の料理を作っていきます。不味いって言われないから気に入ってはくれているんですよね?
「はい、今度は『化石アワビ』とヤマタノサソリの尻尾を『アチアチハーブ』などの香辛料で味付けしたスープです」
「……」
今度はスープを渡しますがそれも無言で飲んでいきます。
「……あの、ゼブラさん」
「あん?」
「さっきはごめんなさい、酷い事を言ってしまって……」
私はサンドガーデンに着いた際にゼブラさんに酷い事を言ってしまった事をお詫びしました。
私はゼブラさんを血も涙もない悪鬼だと思っていました、でも町の人たちを助けたのを見た事でそうじゃないと分かったんです。
「はっ、やっぱりさっきのはチョーシにのってたって事か?」
「はい、あの時の私はチョーシにのってました……」
あの時は心の何処かでイッセー先輩が守ってくれると思っていたのも事実です。それってチョーシにのってるって事ですよね……
「俺を前にして堂々とチョーシにのってましただと……?久しぶりだな、こんなにド直球に言いやがった奴は」
「えっ……?」
ゼブラさんは怒るどころか豪快に笑いました。
「いいか小娘、世の中で最もチョーシにのった行為はな、嘘をつくことだ。人前では煽てたりして蔭で悪口を言う……そうやってバレなければいいと舐めた態度を取ってる奴だ」
「は、はぁ……」
「俺はそういう奴を見るとぶちのめしたくてしょうがなくなるんだ。だがなお前は違う、他のガキ共もだ。この俺を前にあんなにボロクソに言いやがって……しかも俺の目の前でチョーシにのったと堂々と言う始末……こんな馬鹿正直な奴らは久しぶりだぜ!あまりに正直すぎるから『少しくらい気ィ遣って嘘つけよコラ』って感じでもある」
「えぇ……」
豪快に笑っていたゼブラさんは急に真顔になって私を睨んできました。もしかして意外と繊細な心を持っているのでしょうか?
「まあ俺は優しいから条件を飲むなら許してやる」
「条件ですか?」
「ああ、その条件は小娘、お前が俺のコ……」
「ヤダヤダヤダー!ラクダに乗るのだけは絶対に嫌なのー!!」
「リアスさん、落ち着いてください……」
「ヤダー!絶対に嫌なの!ラクダだけは勘弁してー!!」
「……」
遠くからリアス部長の泣き叫ぶ声が聞こえました。
「おい、あの茶番はいつ終わるんだ?」
「も、もうちょっと待ってください!今おかわりを作りますので!」
「早くしろ」
ゼブラさんがイラついた声でそう言いますが私はなんとか落ち着いてもらう事に成功しました。でもゼブラさんは何を言おうとしていたのでしょうか?
「イッセー先輩、リアス部長の様子はどうですか?」
「まったく首を縦に振らない、まさかあそこまでラクダが嫌いだったとは……」
私は近くに来たイッセー先輩に状況を聞きますが先輩は溜息を吐きました。
今何が起きているのかと言うとラクダに乗らないといけないと知った部長が発狂してしまったんです、そして電柱のてっぺんによじ登って泣きながら叫んでいます。
……えっ?意味が分からないって?でもこう言うしか説明できません。
「なんでリアスさんはあんなにもラクダが嫌いなんだ?」
「どうも幼いころにグレモリー領内にいたラクダに好奇心でちょっかいを出したところ怒らせてしまい群れに追いかけまわされたことがあるらしいですわ」
「なるほど、その時の体験がトラウマになってるのか……」
イッセー先輩の疑問に部長と付き合いの長い朱乃先輩が説明しました。
悪魔グレモリーは古くからラクダと強い繋がりを持っています、なので部長の実家であるグレモリー領内ではラクダが飼育されており近衛兵もラクダに乗っています。
しかしリアス部長は幼い時の経験からラクダに対して強いトラウマを持ってしまったようで今でもラクダだけは駄目みたいです。
「しかし幼児みたいに泣きわめくとはな、意外だけど結構可愛いな……」
「先輩?部長には想い人がいるんですから惚れちゃ駄目ですよ?」
「いや別にそう言う意味で言ったんじゃなくてだな……」
頬を緩ませた先輩に圧をかけます。部長にはもう心に決めた相手がいるんですからね?流石に節操なしになりますよ?私達がいるんですから相手はいくらでもしますよ?
「部長!降りてください!危ないです!」
「リアス落ち着け!意外と人懐っこくて可愛いぞ!」
「イヤァァァァッ!側に来させないでぇぇぇぇ!!」
祐斗先輩がリアス部長を電柱から下ろそうとしてゼノヴィアさんが一頭のラクダを連れてきました。それを見た部長は更に泣いてしまいます。
「きゃっ!?」
「ど、どうしたのアーシア!?」
「い、今この子にお尻を舐められました……」
可愛い悲鳴が聞こえたのでそちらを見るとアーシアさんがお尻を抑えていました、その後ろにはラクダがいてイリナさんがアーシアさんから遠ざけていますね。
「どうした、アーシア?」
「イッセーさん、この子私のお尻を舐めようとしてくるんです……」
「なに……?」
そこにイッセー先輩が向かうとアーシアさんが先輩の背中に隠れました。
「女好きなのか?それになんかまつげが長いな」
「変な子だねー、でも長いまつげはキュートにゃん」
イッセー先輩の横に姉さまが移動してその豊満な胸で先輩の右腕を挟みました。それを見たラクダは先輩を睨みつけます。
「な、なんだ……?コイツ、俺を睨んでるぞ?」
「羨ましいんじゃないかな?だって雄が雌を沢山引き連れているんだよ?たとえ種族は違えど女好きなら気に入らないって思うのも無理ないにゃん」
姉さまがそう言うとラクダはイッセー先輩に唾を吐きかけました。
「きったねぇっ!コイツ、絞めるぞ!」
イッセー先輩は怒りましたがラクダはその殺気を浴びても冷や汗をかきながらも先輩を睨みます。
「ほう、根性あるじゃねえか」
イッセー先輩はそう言って笑みを浮かべました。先輩の殺気を浴びても怖気つかないとはエッチだけど根性のあるラクダですね。
「あらあら、元気な子ですわね。ねえイッセー、この子はわたくしが調教してもいいかしら?」
「ん、ああいいぞ」
「うふふ、良い子にしつけてさしあげますわね」
朱乃先輩はそう言ってSっぽい笑みを浮かべました。
「しかしこのままじゃ話が進まないな……仕方ない、オブを呼ぶか」
「オブをですか?」
「ああ、この砂漠はオブには少し危険かもしれないがこの悪路はテリーでもキツいからな」
イッセー先輩はオブサウルスのオブを呼ぶかと言いました。確かにオブなら砂漠でも早く移動できそうですね。
ルフェイさんが魔法でオブを呼び出すと魔法陣にオブが現れました。オブは私達を見つけると嬉しそうによってきて顔を舐めてきました。
「ふふっ、久しぶりですね」
「ガァァ」
私はオブの頭を撫でながら再会を喜びました。他の皆の顔も舐めていきますがギャーくんはちょっとビビっていました。
「おい、何で俺の顔は舐めないんだ?」
「ガァ」
「おいこら!そっぽ向くな!」
アザゼル先生だけ舐められないことを指摘しましたがオブは興味なさそうにそっぽを向きました。まあおじさんは舐めたくないですよね。
「オブ―――ッ!!来てくれてありがとう!!大好きよ!!」
「ガァ?」
リアス部長は嬉しそうにオブに駆け寄って抱き着きました。オブは部長が何でこんなに喜んでいるのか分からずに首を傾げていました。
「普通の人ならオブを怖がるもんなんだがな……」
「あはは、まあ仕方ないよ。部長からしたらラクダは心から怖いんだろうしね」
「そうだな、トラウマなら仕方ないよな」
イッセー先輩と祐斗先輩はリアス部長の喜びようを見て苦笑していました。町の人もオブを見て怖がっていますし価値観なんて人それぞれですよね。
でもこれでようやくデザートラビリンスに向かえそうですね。
「あのゼブラ様……」
「あん?なんだ」
「本当にデザートラビリンスに向かわれるのですか?あそこは危険な場所です、どうかお考え直しください……」
「うるせぇ、俺が行くって言ってんだ。指図すんじゃねえ」
レンタルラクダのお婆さんがゼブラさんにデザートラビリンスに行かない方が良いと言いました。ゼブラさんはガン無視してますが……
「あの、そんなに危険な場所なんですか?デザートラビリンスやグルメピラミッドって……」
「はい、そうです。グルメピラミッドは世界の『グルメ七不思議』の一つと言われる場所で未だに世界中の考古学者たちが何一つ解明できていない謎だらけの場所です。そしてそのグルメピラミッドを取り囲む広大な赤い砂漠の迷宮が『デザートラビリンス』なのです!今まで数々の美食屋達がそこに向かいましたが誰一人として生きて帰ってきた者はいませんでした、その為別名『美食屋の墓場』とも言われています……」
私はお婆さんにグルメピラミッドやデザートラビリンスの情報を聞きましたが顔を青ざめて話すお婆さんにそこが余程過酷な場所なのだと唾を飲みました。
「かっかっか!」
「ゼブラ様……?」
「美食屋の墓場か、随分とチョーシにのった場所だな。俺が何度も往復してやろうか?」
ゼブラさんはどう猛な笑みを浮かべてそう答えました。それを見たお婆さんは決意したような表情を浮かべました。
「分かりました、ならラクダは返していただかなくても結構です。どうかご無事で……」
お婆さんはそう言って私達を見送ってくれました。
―――――――――
――――――
―――
私達は現在デザートラビリンスを目指してラクダに乗って砂漠を渡っています。
「にゃはは、イッセーの背中にくっ付いちゃうにゃーん♪」
「お、おい黒歌!」
姉さまはイッセー先輩と一緒のラクダに乗っています、じゃんけんに勝った報酬ですね。
でも姉さま、強い日差しで分かりにくいですが顔が真っ赤なのでかなり照れていますね。普段先輩に中々会えないから体を張ってアピールしてるのでしょうね。
我が姉ながら初々しいです。
「くっ、あの時パーを出していれば……」
「黒歌さんが羨ましいわ……」
ゼノヴィアさんとイリナさんが悔しそうにそう呟きました。
私たちはそれぞれ二組になってラクダに乗っています。イッセー先輩と姉さま、私とアーシアさん、祐斗先輩にリンさん、朱乃先輩にルフェイさん、アザゼル先生にティナさん、その膝にギャー君を乗せたトリオですね。
ゼブラさんは色が違うラクダに一人で乗っていてリアス部長とテリーはオブに乗って移動しています。
オブの方が大きいのでギャーくんもそっちに乗った方が良いと思ったのですが、本人がまだオブをちょっと怖がってしまいティナさんがギャーくんを抱っこしたいと言ったので彼女に任せました。
「イッセー先輩、そのラクダに蛇口が付いていますが普通のラクダじゃないんですか?」
「ああ、こいつは『貯水ラクダ』っていう希少種だ。背中のコブに約2000ℓの水を蓄えている巨大ラクダでこの蛇口から自由に水を出せるんだ」
「へぇ、砂漠の旅には持って来いのラクダですね」
私はイッセー先輩と姉さまの乗っているラクダが私達のとは違うのに気が付いて聞いてみました、すると貯水ラクダだと教えてくれます。
「紛争などであの町に一頭しかいない希少なラクダだけどゼブラ兄が助けてくれたこともあって貸してくれたんだ」
「なるほど。じゃあゼブラさんの乗っているラクダも種類が違うんですか?色が違いますけど」
「あれは『ワインキャメル』だ。水の代わりに高級ワインが入ってる」
ゼブラさんの乗っているラクダも私たちと違うようでワインキャメルという種類みたいですね。
「かっかっか、俺ぁお前らと違って大人だからな。ワインを飲みながら優雅に旅をさせてもらうぜ」
「よく言うよ、親父と同じくらい酒に弱いくせに」
ゼブラさんの発言にイッセー先輩は呆れた様子でそう言いました。ゼブラさんってお酒に弱いんですね。
「なんだ、俺もアレが良かったな」
「ならゼブラの後ろに乗せてもらえばいいんじゃないの?そうすればギャスパー君も楽でしょ?」
「はっ俺は臆病なんでね、自分から危険な場所には近づかないのさ」
アザゼル先生がワインキャメルを羨ましそうに見つめてティナさんがあちらに乗ったらどうだと言います。それを聞いたアザゼル先生は首を横に振りました。
「言ってくれるじゃねえか、ジジイ。てめぇも強いんだろう?俺と喧嘩しろよ」
「嫌だね。サーゼクスよりはマシだがそれでも五体満足ではいられないだろうし最悪死ぬじゃねえか、俺は無駄な戦いはしねえんだよ」
「つまらねえジジイだ」
ゼブラさんがアザゼル先生にケンカを売りましたが先生はそれを跳ねのけました、堕天使総督である先生も覚悟しないといけないとは……やはりゼブラさんは強いですね。
「でも先輩、どうしてラクダを貸してくれたお婆さんはラクダを返さなくても良いって言ったんでしょうか?大事な商品のはずなのに……」
「俺達がデザートラビリンスに向かうって分かったからだろう。つまりラクダが生きて帰ってくる保証が無いから無理をしないで自分たちの命を優先してくれって気遣ってくれたんだよ」
「本当に良い人ですね……」
先輩の話を聞いて私はラクダをレンタルしてくれたお婆さんに感謝をしました。
「さてと……皆そろそろ水を飲むんだ」
「えっまだ喉は乾いていないよ、イッセー君」
「喉が渇いてなくてもだ。この辺りは日中平均気温が60度を超える猛暑だ、極端に湿度が低いから汗をかいていないように見えるが実は相当な水分を消費しているんだ。喉が渇いたって思った時には手遅れになってることもある、だから水は定期的にとっておけ」
「分かったわ」
先輩は皆に水を飲めと言ってイリナさんが首を傾げます。イッセー先輩は砂漠の恐ろしさを丁寧に教えてくれたので水の重要性を理解した私達は部長が代表して返事をしました。
私も言われたとおりに水を飲んで水筒をアーシアさんに渡しました。
「おいイッセー、早速御出でなすったぜ」
「なに……!?」
ゼブラさんの指摘に先輩は遠くの砂丘を見ます。すると砂から何かが出てきてこちらに高速で接近してきました。
「あれはヒレ!?」
「砂漠を泳ぐ鮫『砂漠鮫』だ、捕獲レベル8の獰猛な奴だな」
部長は砂漠から出ている物が魚のヒレだと言い次の瞬間砂の中から大きなサメが姿を現して先輩が説明してくれました。
「かなり早いよ!迎撃しよう!」
「いや待て祐斗」
祐斗先輩が武器を構えようとしますがイッセー先輩が止めました。
「ゼブラ兄、あいつら追い払えるか?」
「食えねぇのか?」
「砂漠鮫の肉は固くて不味い、とても食えたもんじゃねえ。戦うのも面倒だし頼むよ」
「しょうがねえな」
イッセー先輩がゼブラさんに砂漠鮫を追い払ってくれと言いました。砂漠鮫たちは一斉に私達に襲い掛かろうと飛び跳ねてきます。
「ウィークポイントボイス」
ゼブラさんが口を開きますが何も聞こえません。しかし砂漠鮫たちは体をビクっと震わせるとあっという間に逃げて行ってしまいました。
「えっ……」
「何が起きたの?」
「余程こたえたみたいだな、ゼブラ兄のウィークポイントボイスが……」
ティナさんやリアス部長が何が起きたのか分からないと言いますが先輩とリンさんだけは何が起こったのか分かっているみたいです。
「ゼブラ兄は今超音波を放ったんだ、それもあの鮫たちが不快に感じる周波数でな」
「嫌いな周波数ですか?」
「ああ、俺達人間も黒板やガラスを鋭い物で引っかいたときに出る音を不快に感じるだろう?まあ悪魔はどうか分からないけど」
「あれは悪魔でも嫌いよ」
部長が嫌そうな顔でそう言います、確かにあの音は人間も悪魔も関係なく嫌ですね。
「すべての生物には嫌いな音、つまり周波数があるんだ。ゼブラ兄はその生物の嫌いな音を的確に把握して超音波を叩き込むことが出来るんだ」
「凄いですね……」
「因みにゼブラ兄の声による技は音の振動によって破壊するダメージもあるがそれ以上にそういった不快な周波数によるストレスでショックを与えるダメージの方が大きいんだ。俺もサンダーノイズをフォークシールドで防いだがアレは振動をガードしただけでショックはまともに受けちまったからな、危うくショック死するところだったぜ……」
先輩はげんなりとした表情でそう言いました。ゼブラさんの攻撃は音の振動による破壊と不快な音によるストレスでのショックが合わさっているんですね、絶対に受けたくないですね。
(しかしゼブラ兄がすんなりと俺の指示に従ってくれるなんてな。機嫌がいいとは思っていたが俺が知る中で過去最大級の上機嫌だ、余程嬉しい事があったんだな……)
「イッセー、どうかしたにゃん?」
「いや、なんでもないよ」
先輩が何かを考えているようでしたがどうしたのでしょうか?
その後私達は広大な砂漠をゆっくりと先に進んでいきます。しかし日差しが強いですね、用意していた水もドンドン消費してしまいますし貯水ラクダがいるとはいえこのペースで持つのでしょうか?
「あら……ねえイッセー!あれを見て!水があるわ!」
リアス部長が指を刺した方角に巨大な蛇口のようなサボテンがあって大量の水を垂らしていました。
「あの水を補充すればまだまだ持つわよ!」
「よしイリナ、早速汲みに行くぞ!」
「ええ、いっぱい貰っちゃいましょう!」
リアス部長やゼノヴィアさん達が一斉に水を求めてサボテンに近寄っていきます。
「皆、そいつの周りをよく見てみな」
「えっ……ひッ!」
イッセー先輩は皆にサボテンの周りを見ろといったので注視してみます、すると部長が悲鳴を上げました。
なぜならそのサボテンの周りには動物や人間の白骨化した死体が砂の中から見えたのです。恐らく砂に埋もれて見えないだけで大量の骨が埋まっているのでしょう。
「そいつは『蛇口サボテン』といって毒入りの水を垂らしてこの猛暑で水を求めてきた猛獣を毒殺してその死体から養分を得ているサボテンだ」
「じゃあこの水を飲んだら……!」
「悪魔や堕天使でも即あの世行きでしたね」
イッセー先輩は蛇口サボテンの声帯について話してくれて毒入りの水と聞いてリアス部長が顔を青ざめました。この猛暑では毒と分かっていても飲んでしまいそうなのでみんな急いでサボテンから離れました。
「騒々しいガキ共だな、飛ばされねえようにさっさとラクダに戻れ」
「えっ飛ばされるって……」
「皆、砂嵐が来るぞ!ラクダにしっかり捕まっていろ!」
ゼブラさんの言葉に私が聞き返そうとするとイッセー先輩が砂嵐が来ると叫びました。すると凄まじい勢いの砂嵐が巻き起こって私達を襲ってきました。
「ぐうぅ!凄まじい風だ!」
「目に砂が入っちゃったわ!」
「わぁぁぁぁっ!」
アザゼル先生は引き飛ばされないように踏ん張っておりティナさんは目に砂が入ったのか目を抑えていました。ギャーくんはティナさんが吹き飛ばされないようにスタンドで押さえています。
「魔剣よ、壁となれ!」
すると祐斗先輩が大量の魔剣でかまくらのような物体を作りました。
「イッセー君!みんな!この中に入るんだ!」
「でかした祐斗!」
私達はその中に入って砂嵐をやり過ごしました。暫くすると砂嵐が去っていき穏やかな空気に戻りました。
「……ふう、どうやら過ぎ去ったみたいだな。ナイスだ、祐斗」
「あはは、流石に疲れちゃったけどね……」
大量の魔剣を出したからか祐斗先輩が疲れた様子を見せます。
「あ、イッセーさん!あそこを見てください!鳥さん達が倒れています!」
アーシアさんの視線の先には複数の鳥が地面に横たわっている光景でした。
「先程の砂嵐に巻き込まれたのか?大量だな!」
「やった!今夜は鳥料理よ!」
「もう!ゼノヴィアさん!イリナさん!食べたら可哀想です!食料は十分にあるんだから助けてあげないと……」
喜ぶゼノヴィアさんとイリナさんにアーシアさんはぷんすかと怒りました、そして倒れている鳥たちに駆け寄っていきます。
(しかしあの鳥何処かで見たような……)
「グルル……」
「あっそうか!あいつらは……!」
するとテリーが鳥たちに警戒の唸りを上げます、それを見た先輩はその鳥たちの正体に気が付いて叫びました!
「アーシア近づくな!そいつらは……!」
だが少し遅かったらしくその鳥たちはアーシアさんが背負っていたリュックを器用に奪うと走って逃げていきました。
「なっ!早いわ!?」
「こんな悪路でなんて奴らだし!」
砂の上なのに信じられない速さで逃げようとする鳥たちにリアス部長とリンさんが驚きの声を上げます。
このままでは逃げられる、そう思ったその時でした。
「サンダーノイズ!!」
「クエエッ!?」
上から降り注いだ声の落雷が鳥たちに直撃しました、あれは致命傷ですね……
「ゼブラ兄済まねぇ、助かった!」
「どんくせぇガキ共だな。まあ情けを踏みにじって盗みを働くチョーシにのった奴は死んで当然だがな」
ゼブラさんにお礼を言った先輩がアーシアさんに駆け寄りました。
「アーシア、大丈夫か?そいつらは捕獲レベル5の『ワルサギ』、砂漠で死んだフリをして油断して近づいてきた人間から食料を奪う狡猾な奴らだ」
「そうだったんですか、迷惑をかけてごめんなさい……」
「気にすんな、アーシアの優しさを踏みにじったアイツらが悪い」
アーシアさんが落ち込んだ顔をしますが先輩はフォローします。アーシアさんは底抜けが無いほど優しいからいいんですよ、そうじゃなかったらもうアーシアさんじゃないですからね。だから気にしないでほしいです。
その時でした、イッセー先輩とアーシアさんのいた砂地が盛り上がって二人を飲み込もうとしました。先輩はアーシアさんを抱きかかえるとその場から離れます、すると巨大な口が現れて二人を食べようとしますが先輩はそれを回避します。
「わわっ!砂から何か出てきましたよ!?」
「コイツは捕獲レベル11の『サンドラ大トカゲ』!砂の中に隠れて獲物を襲う獰猛なトカゲだし!」
ギャーくんは突然現れたトカゲに驚きリンさんがその生物の情報を教えてくれました。
「この野郎、俺の仕留めた獲物を横取りしやがって……チョーシにのってやがるな」
「ラッキー!サンドラ大トカゲはステーキが美味いって聞くぜ!」
ワルサギの死体を食べられたゼブラさんは怒りの表情を浮かべてイッセー先輩は涎を垂らして笑みを浮かべました。対照的ですね。
「おいイッセー、コイツは俺が殺す。引っ込んでろ」
「えー、俺だって食われかけたんだぜ?仕返ししたっていいだろうが」
「にゃはは、面白そうだね。私も混ぜてー♪」
ゼブラさんは引っ込めと言いますが先輩のゼブラさんにしか起きない『負けず嫌い』が発動して張り合います。そこに姉さまも加わりました。
「ふん、どうせ俺が殺すんだ。とろくせぇ奴らは後ろで見てろ」
「おもしれぇ!マグマトータスの件では決着がつかなかったからな、ここで白黒はっきりさせてやる!」
「誰が一番に狩るのか競争だね♪」
ゼブラさんは口を開きイッセー先輩は拳を握り姉さまは手のひらにエネルギーの球体を生み出しました。
「シャアアッ!」
サンドラ大トカゲは大きな声を上げて3人に向かっていきました。しかし私には見えます、あのサンドラ大トカゲを取り囲む赤い鬼、大きな耳をした黒い巨人、そして4本の腕に包丁を持った女性のシルエットが……
「ボイスショット!」
「3連釘パンチ!」
「螺旋丸!」
そして三人の必殺技を喰らったサンドラ大トカゲは一瞬にして絶命してしまいました。
「あんまりよ!サンドラ大トカゲが可哀想だわ……!」
「いくら自然の摂理とはいえ完全にオーバーキルだな……」
「私砂漠なのに背筋が寒くなってきたわ……」
それを見ていたリアス部長、アザゼル先生、ティナさんは完全に引いていました。
「よっしゃ!今度こそ俺の勝ちィ!」
「寝ぼけたこと言ってんじゃねえ、俺が早かっただろうが」
「にゃはは、身が引き締まっていて美味しそうだねぇ♪」
絶対にあの3人の攻撃を一斉に喰らうような立場にはなりたくないと私達は強く思いました。
その後サンドラ大トカゲはステーキに、死体のお腹から回収したワルサギはフライドチキンにしてみんなで食べました。
サンドラ大トカゲのステーキは肉厚でジューシィなお肉で最高でしたね、まるで石切り場から切り取った大きな石材のような大きい肉は食べ応えも抜群でした。
ワルサギのフライドチキンはお世辞にも美味しい物ではありませんでした、でも綺麗に骨まで食べちゃいましたけどね。
「やっぱ肉には水晶コーラだな、メロウコーラはこれよりも遥かに美味いんだろう?一体どんな味だろうな」
「コーラにはジャンクフードも合うよ、ハンバーガーとかピザと一緒に食べたらきっと最高だろうね」
「はい、私も楽しみです」
イッセー先輩は水晶コーラを飲みながらメロウコーラの味を想像していました。姉さまと私は料理人らしくコーラに合う食べ物を考えています。
「さあ、腹も膨れたし先を目指すぜ!」
『応っ!!』
先輩の号令にゼブラさん以外の皆が息を合わせて答えまた砂漠の旅を開始しました。
―――――――――
――――――
―――
その後日が暮れて夜になりました。日中は地獄の窯のような暑さでしたが夜は極寒地獄の様に寒くなりました。
「ううっ、凄い温度差ね……」
「砂漠を旅するうえで気を付けなければいけないのがこの気温の変化なんですよ、この急激な温度差に身体が適応しきれなくて体調を崩してしまうんです」
「なるほど、瞬時に環境に適応できないといけないのですね」
「そういう事だな」
リアス部長が毛布にくるまりながら体を震わせて温度差の激しさを話すとイッセー先輩が砂漠で気を付けなければならないことの一つがこの温度差だと言います。
私は瞬時に環境に体を合わせないと砂漠では旅が出来ないと理解しました。
「今日は暖かくして早めに寝よう、見張りは俺がするよ」
「イッセー、今日は俺が変わってやる。お前は先に寝てろ」
「えっ……マジで?ゼブラ兄がこういう事を手伝ってくれるなんて思ってなかったんだけど……」
「嫌なら別にいいさ、てめぇが一晩中起きていたいのならな」
「ごめんごめん、冗談だって……是非お願いするよ」
「ふん、最初から素直に頷いていりゃいいんだよ」
見張りをすると言ったゼブラさんに先輩が目を丸くしてそう言いました。そして私は姉さまやみんなと一緒にテントの中で眠ったのですが……
『おい小娘』
「……ふえっ?」
私は耳元で何か声が聞こえたので目を覚ましました。辺りを見渡すと皆寝ています、誰が声をかけたんでしょうか?
『小娘、聞こえてんのか?俺を待たせるな、起きてるならさっさと来い』
「ゼブラさん……?」
また耳に声が聞こえて目がさえてきた私はその声の主がゼブラさんだと分かりました。もしかして音弾という技なのかな?
のそのそと寝巻の上にフードを被って外に出ました。すると焚火の近くでゼブラさんが座っているのが見えました。
「ゼブラさん、私に何か用ですか?もしかして夜食の料理が足りなかったですか?」
「それは後でいい、今は座れ」
「は、はい……」
てっきりお腹が空いたのかなって思ったのですがそれ以外にも私に用があるみたいです。私は言われたように焚火の近くに置かれていた椅子に座りました。
「小娘、お前俺がレンタルラクダの町で何か言いかけていたのを覚えているか?」
「はい、部長の声でかき消されちゃいましたけど……何が言いたかったんですか?」
「単刀直入に言う、お前俺とコンビを組め」
「……えっ?」
私はゼブラさんが言った言葉が一瞬理解できませんでしたが次第に言葉の意味が理解できていき叫びそうになりました。
「騒ぐな、鬱陶しい」
「うっ……」
しかしゼブラさんに圧をかけられて叫ぶことが出来ませんでした。
「で、でもどうして私なんですか?ゼブラさんならもっと腕のいい料理人が見つかりますよ。そもそも私はイッセー先輩とコンビを組んでいるんですが……」
「そんなこと関係ねぇ、俺がてめぇが良いって言ってんだ。グダグダ言うな」
な、なんというストレートな発言……
「俺は今までコンビなんざくだらねぇと思っていた。だがお前となら間違いなく良いコンビが組める、お前なら俺に適応できると思ったんだ」
「そ、そこまで言ってくださるのは光栄です」
まさかここまで褒められるとは思っていなかったのでびっくりしました。
「しかし私はイッセー先輩と恋人という関係を抜いてもコンビを組みたいんです」
「なんだと、俺よりアイツのほうが良いって言うのか?」
「はい、そもそも私はイッセー先輩のフルコースの完成を見たいという夢があります。そのフルコースを私の手で料理したいんです」
私はゼブラさんにそうハッキリと告げました。
「ゼブラさんのフルコースはなんですか?」
「フルコースなんざ無えよ」
「じゃあ論外ですね、ゼブラさんとはコンビは組めません。イッセー先輩のフルコースは世界一のモノになるって思っていますから」
「……なら俺がイッセーなんぞ足元にも及ばない凄いフルコースを作ったら俺とコンビを組むんだな?」
「へっ……?」
私はどや顔でそう言うとゼブラさんはニヤッと笑ってそう言いました。
「お前はイッセーのフルコースに惚れ込んでいるからコンビを組んでいるって事だろう?なら俺がお前が認めるフルコースを見せてイッセー以上なら俺とコンビを組んでくれるんだろう?それともその場しのぎで適当な事を言ったのか?」
「そんなことありません!私はイッセー先輩のフルコースを信じています!もしゼブラさんの方が上だと私が思ったなら喜んでゼブラさんとコンビを組みますよ!」
「言ったな、なら俺と約束だ」
「望むところです!」
私はムッとしてしまい売り言葉に買い言葉で思わずそう言ってしまいました。でもイッセー先輩のフルコースが負けるなんて思っていませんし問題ありませんよ。
「なら話は終わりだ、夜食を作れ」
「はーい」
私とゼブラさんの話はそれで終わりました。あっそうだ、先輩にもこの事は言っておかないといけませんね。
「今の話はお前からイッセーには言うな、その方が面白そうだ」
「えぇ……」
ゼブラさんは悪い笑みを浮かべて私は呆れて苦笑してしまいました。なんだかんだ言ってゼブラさんはイッセー先輩の事が好きなんですね、弟をからかうお兄ちゃんです。
そして私は夜食を作り始めました、匂いで先輩や皆も起きてしまいプチ夜食会になってしまいました。
―――――――――
――――――
―――
そして翌日になり私達はまた灼熱の砂漠を進んでいきます。ここでアーシアさんとティナさんはデザートラビリンスに適応できるようにと黒歌さんが持ってきてくれた冷気を放出するフードを付けてもらっています。
「見えたぞ、みんな!あれがデザートラビリンスだ!」
イッセー先輩の視線の先にはなんと赤く染まった砂漠がありました。
「どうして砂漠が赤く染まってるんですか?」
「砂に含まれる鉄分が太陽の光で酸化して赤く見えるんだ」
私は何故砂漠が赤く見えるのかと呟くと先輩が理由を教えてくれました。
「それだけじゃねーぜ」
「えっ?」
「あれは猛獣や人間……多くの生物の血を吸った赤い砂だ。ここからが楽しいデスサバイバルの始まりだ」
ゼブラさんはあの赤い砂には沢山の生物の血がしみ込んでいると言い、なんだか死神のようなモノが見えてきました。
ここからは気を引き締めて行かないといけませんね……!
そして私達が赤い砂に足を踏み入れると……
「ぐっ!?なんなのこれは!?」
「さっきまでとは比べ物にならない暑さだ!」
ティナさんはさっきまでとはまるで別世界かと思う程の気温の上昇に顔を歪め祐斗先輩はさっきの砂漠が比べ物にならない暑さだと叫びます。
(なんて暑さだ、体内の水分が見る見るうちに消耗していってる……)
イッセー先輩の顔から水分が急激に失われていき皮膚にヒビが走っていきます。それは私達も同じです。
「先輩、どうしますか……ッ!?」
その時でした、目の前にいたイッセー先輩と姉さまの乗っていたラクダが姿を消してしまったんです。それどころか皆の姿も消えてしまいました。
「こ、小猫ちゃん!足元が……!」
「なっ!?」
いつの間にか足元に大きな流砂が生まれており私とアーシアさんはラクダごとそこに飲まれてしまいました。
「は、早く脱出しないと……!」
私は砂から体を出そうとしますが砂の上では力を入れても腕が沈んでしまい上がれません。
「せ、先輩……!」
そして私とアーシアさんの意識は砂の中に飲み込まれていきました……
後書き
ルフェイです。大変!小猫ちゃんとアーシアさんが流砂に飲まれてしまいました!追いかけようにも蜃気楼で作られた迷宮が私達を惑わします……
ここはゼブラさんの出番です!必ず二人を助け出しましょう!
次回第113話『引き離されたイッセーと小猫!砂漠の大迷宮グルメピラミッド!!』でお会いしましょうね。
次回も美味しく頂きます♪
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