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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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別世界より⑥

<グランバニア>

のどかな昼下がり、グランバニアの城下町を1人の少女と1体のアークデーモンが歩いている。
他の町でアークデーモンが闊歩していれば、皆が恐れ逃げ出すであろうが、この国の城下でそれはない。
むしろ一緒に居る少女にこそ、周囲の人々は興味があるのだ。

何故ならば…似ているからである!
紫のターバンを巻きマントを羽織り、その瞳は全ての者を魅了する…
リュカ国王陛下とそっくりなのだ!


今でこそ彼女の事を知らぬ者はこの城下に居ないのだが、初めて彼女の事を見た時の人々の反応は凄い物だった。
遠慮がちに近付き、躊躇いがちに尋ねる…
「あ、あの…貴女はリュカ様と…その…ご関係がおありで?」
良く考えれば失礼な質問なのだが、少女は気分を害した風もなく答えた。
「はい、私はリュリュ。リュカ陛下の娘です!」
人々の間に響きが沸き起こり、瞬く間にリュリュを中心とした人集りが出来る。

そしてリュリュは、周囲の状況を気にすることなく、更なる言葉を続ける。
「父のリュカ陛下が現在行方不明の為、私が代理で女王をやってます。国民の皆様には色々とご迷惑をお掛けしますが、一生懸命頑張りますので、お父さんが戻るまで間よろしくお願いします!」
他の国ではあり得ない事だ!
王族が…それも女王が国民の前に姿を晒し、自身の非力さを認め、向上を誓い、頭を下げるなどという事は!

この場にいた人々の心に、リュリュは信頼を植え付ける事が出来たのだ。
リュカの様に大きく生活レベルの向上が出来なくとも…
リュカの様に明確な未来のグランバニアを示せなくとも…
リュリュは人々から歓喜の声で迎えられるのだ!


その日の内にリュリュの事は、広大な城下中に知れ渡った。
数週間後には、グランバニアの僻地にある片田舎にまで噂は届いた。
その事を聞いたポピーは呟いた…
「人々を惑わす魔性の女…お父さんの様にワザとふざけて見せて、『自分は欠点のある人間』と知らせないと、世界中が妄信的に平伏す事になるわ…」
何故リュリュが人々の前に姿を晒したのかを説明しよう。
最大の要因はポピーの一言なのだから…


リュリュは自他共に認める『お飾り女王』だ。
王族としての教育は受けておらず、政に対しても無知であり、リュカ似という圧倒的なカリスマ性のみが彼女を女王へと押し上げているのだ。

そんなワケで午前の謁見が終了すると、城内にいてもやる事がない…
ポピーは王族としての教育を受けており、宰相として政務を行うし、オジロンも国務大臣としてだけでなく、政のスペシャリストとして政務に明け暮れる。
臨時女王に就いて最初の内は、城内の探索やピピン・ピエール等との剣術稽古で時間を潰せたのだが、数ヶ月という長期に渡ってやる事もなくなり、ピピン・ピエールの実力を凌駕してし、時間を持て余し始めたのだ。

そうなると父親と違って真面目なリュリュは、共に国を支える相方ポピーが忙しいのに、自分が何もしていない事に負い目を感じ、事ある毎に「ねぇポピーちゃん…私も何か手伝うわ。私に出来る事はない?」と、ポピーの手を煩わせ始めた。
最初の内はポピーもリュリュの性格を分かっており、気を使ってくれる事を嬉しく思っていたのだが、回数を重ねる毎に、忙しい自分を煩わせる事に苛つきを感じ『うるせー!お人形さんは黙って座ってろ!』と言いそうになっていたのだ。
しかし暴言をグッと飲み込み、リュリュに出来る事を考える優しいポピー。

素人に仕事を教えるには、教える側もある程度時間が空いてないと教える事も出来ない。
しかしながら現状でポピーは、オジロンに次ぐ忙しさを維持しており、政務について基本から教える事など出来る状況ではない!
臨時の女王ではなく、正式に王位を継ぐのであれば、皆が協力して教育に時間を割くのだが、明日にでも臨時女王が不要になるかもしれない今、その為に時間を割くのは惜しいのだ。
そこでポピーは考えた。
尊敬する父(リュカ)ならどうするのか…
偉大なる父(リュカ)はどうしてたのか…


「リュリュ…貴女に重要な仕事を任せるわ。お父さんと同じ事をしてちょうだい」
「お父さんと…同じ事…?浮気をしろって事?」
真面目な表情のポピーを前に、小首を傾げて尋ねるリュリュ。
ポピーは思う…自分が男だったら、間違いなく押し倒してる…

「そうじゃないわよ!アンタお父さんの事そういう風に見ていたのね!?」
「だ、だって…お父さんと同じ事って言われたら…一番最初に思うのが、愛人の多さでしょ!」
「力一杯否定出来ないのが腹立つ親父ね………そうじゃなくて、リュリュにも城下を見回って欲しいの!」

「城下を?……お父さんってそんな事をしてたんだ!?」
リュカの新たな一面を垣間見て、更なる尊敬を心に宿すリュリュ。
ポピーには、父の事を全て知らないのに、変態的なまでのファザコンになれるリュリュが不思議でしょうがない。
とは言え、暇を持て余すリュリュに役目を宛え、カリスマ性を最大限に活用する事が出来た。

こうして代理女王に就いたリュリュは、ほぼ毎日城下町を散策する事で、国民の信頼を得る事が出来たのだ。
リュカの様に改革を行う事が出来なくとも、リュカの様に民を幸せにする事が出来なくとも、国民と共に歩むという姿勢を見せる事で、人々は安心して国家に身を委ねるのだ。

そして初めて城下散策してから数ヶ月が過ぎたある日…
その日も夕方まで城下を散策していたリュリュが、城へ帰るなりポピーとマーサに呼び止められる。
「リュリュ、お父さんの執務室まで来て!」
マーサの瞳に絶望が漂い、ポピーの顔にも困惑が見える。
「ど、どうしたの2人とも…何か問題でも…?」
質問しても答えは返らず、ただ執務室まで…マーサが研究の為に使用している、リュカの執務してまで促されるだけだった。

「お父さんの世界に新たな展開が…」
そう言うとポピーは執務室の扉をロックし、別世界へ飛ばされたリュカ達の物語が描かれた本を指差し、疲れ切った声で読む事を薦める。
リュリュは促されるまま本を読み進めていく…
彼女はバラモス城突入前までしか読んでおらず、更なる続きが出来上がっている事に驚きながらも、続きを読み進めた。
順調に読み進み、バラモスを倒した所で一息つく…
「遂に悲願達成ね!これでお父さんも解放されるのかな?」
妙に暗い雰囲気を、少しでも明るくしようと声をかけたのだが…
「リュリュ…ともかく続きを読んで…まだ話はあるから…」
マーサの言葉に促され、更にページを捲り読み続ける。



「そ、そんな…こんなのって…じゃぁお父さんは!?」



 
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