神々の塔
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第二十一話 六歌仙その九
彼女も退き最後の在原業平もだ。
彼が和歌から放つ波をかわしてそうしてだった。
攻めていってだ、遂に彼も倒したが。
「よくやったね」
「いや、六歌仙全員倒せたな」
「そやな」
芥川も中里も業平に言われて言った。
「大変やったけど」
「今回も勝てたな」
「見事だったよ、じゃあ先に行くといいよ」
業平は美声で明るく言った。
「これからね」
「はい、しかし」
ここで中里は言った。
「和歌の力も」
「凄いね」
「言霊のそれも」
「それはね」
業平は中里にまさにという声で話した。
「とてもね」
「強いもので」
「それを紡ぎ出して放つ和歌もね」
これもというのだ。
「かなりね」
「強いもんですか」
「そうだよ」
まさにというのだ。
「これがね」
「そういうことですね」
「だからね」
「神霊の方々も使われる」
「和歌だけじゃないよ」
業平は上品でかつ優雅で気さくな笑顔で述べた、顔立ちが極めて整っているだけにそれがかなり映えている。
「漢詩も他の詩もね」
「力を持っていますか」
「そうだよ、そして音楽もね」
こちらもというのだ。
「やはりね」
「力があるのですね」
「そのことを覚えておいてね、確かに詠うと」
そうすればというのだ。
「かなりのね」
「力がある」
「そうだよ、ではこれからの戦でも」
「そのことを頭に入れて」
「そしてね」
そのうえでというのだ。
「戦っていってね」
「そうさせてもらいます」
中里は強い声で応えた。
「僕はそういうのは苦手ですが」
「ははは、苦手でも詠えばいいよ」
業平は中里の今の言葉に笑って返した。
「気の赴くままにね」
「そうですか」
「詩は上手下手じゃないんだ」
詠うそれのというのだ。
「大切なのは心だよ」
「詠う時の」
「そうだよ、詠いたいと思って」
そしてというのだ。
「心を込めて詠うならね」
「それでええんですか」
「そうだよ、ではね」
「はい、これからも」
「そのことを忘れないで」
そしてというのだ。
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