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ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ

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船上試験、2日目昼。

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ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ   作:コーラを愛する弁当屋さん

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船上試験、2日目昼。

 

—— 船上試験1日目、夜。 BARにて ——

 

「……それで、何でこの船に乗っているんですか?」

「つれないねぇ……10年ぶりの再会だと言うのにぃ」

「感動の再会が出来るほど、深い付き合いはなかったと思いますがね」

「かぁ〜! クールさを拗らせてるねぇ〜!」

 

 カクテルを優雅に飲んでいる茶柱に、家光がビールを飲みながら絡んでいる。

 

「……この感じ、なんか懐かしいな」

「そうね〜。10年前も絡んでくる家光先生をサエちゃんが軽〜く、あしらってたよねぇ♪」

 

 そんな2人を懐かしそうに見ているのは、Aクラス担任の真嶋とBクラス担任の星乃宮だ。

 

「息子さんの様子が気になって来た。……そんな感じじゃなさそうですね」

「……ふふ。戯れはこのぐらいにして、そろそろ本題に入ろうか」

『!』

 

 茶柱の一言で、今までと雰囲気が別物になった家光。

 そんな家光に3人は思わず緊張してしまう。

 

(……家光先生がこの感じの時って、ガチで大切な事を言う時だよな)

(……この家光先生は結構好きだったなぁ〜♪)

(ふっ、相変わらずオンオフの切り替えがはっきりした人だ)

 

 昔の事を思い出している3人に、家光はゆっくりと話始める。

 

「……遊園地を襲撃して来た奴らの事、何か聞いてるかい?」

「……息子さんを狙って来たマフィア、とだけ」

「……そうか」

 

 家光はグラスに残ったビールを一気に飲み干し、3人の顔を見た。

 

「あれは、ジョーコファミリーと言うマフィアでね。最近影響力を持ち始めた中堅所だよ」

「ジョーコ……」

「そう。で、そのジョーコファミリーがツナを消すために襲撃して来たわけだ」

「……大変ですね。権力のあるマフィアのトップというのは」

「おお、息子の心配をしてくれるのかい?」

「……もちろん。担任ですからね」

「うんうん、ツナの担任がサエちゃんでよかった」

「……」

 

 ニコニコしながら茶柱を褒める家光。そんな茶柱を、星乃宮はどこか冷めた目で見つめていた。

 

「で、ツナが相手をした襲撃者について俺が調べてたんだ。そしたら、昔の教え子達に伝えなければ! って情報を掴んだんだよ」

「……では、それを伝える為にこの船に乗船を?」

「そうだぜ。もちろん愛しの息子にも会いたいが、『卒業か退学するまで外界との接触は禁止』って決まりがあるからなぁ〜泣」 

 

 息子とお話できない事を悲しんで、急にホロホロと涙を流す家光。

 そんな家光を教師3人は残念なものを見る目で見ていた。

 

「ぐすっ……はぁ」

 

 少し泣いたらスッキリしたのか、家光はキリッとした表情で話を再開する。

 

「……で、肝心の君達に伝えたい情報だが……」

『……』

 

 茶柱達は無言のまま家光の言葉を待った。

 

「ツナと同じ学年。つまり1年生だが……1年の中に、裏社会の人間が数名紛れている」

『!』

「そいつらはもちろんマフィア関係者だ。……ツナをこの学校に入学させる際、理事長には学校を戦場にはしないようにと言われていたんだがな。……申し訳ないんだが、もしかしたら学校内でマフィア同士の戦闘が起きる可能性がある」

 

 家光の話に、星乃宮がほっぺを膨らませながら抗議する。

 

「え〜! 私はマフィアの抗争に巻き込まれるなんて嫌ですよ〜!」

「そりゃそうだ。……学校内にいる裏社会の人間だが、もちろん全員がツナと同じ高校生1年生だ。セキュリティばっちりのこの学校に大人を潜伏させる事はできないはずだからな。あ、ボンゴレならできるけど」

「……でしょうね。10年前に臨時教員としてあなたを赴任させるくらいですし」

「だよなぁ〜。あ、全員とは言わないがその中にはツナの命を狙っている奴らもいる。学校内で一番起こりえる戦闘は、その刺客とツナとの戦闘だ。……まぁこれは息子が問題なく対処するだろうから、学校に被害は出さないと思う。問題は、遊園地で起きた様な外部から刺客が送られて来た場合だ。そいつらの実力が分からない以上、ツナが本気を出さないと対処できない可能性がある。その時の対応策として……ボンゴレ寄りの裏社会の人間を何人か敷地内に送り込もうと思う」

 

 裏社会の人間が送られて来るという話に、星乃宮は顔をしかめた。

 

「ええ〜。家光先生みたいに臨時教員としてですか?」

「いや、普段は学校には関与せずに、非常事態にのみ息子に手を貸すようにさせる。息子の家庭教師同様に、敷地内に潜伏してもらうのさ」

「……まぁ、生徒達に迷惑がかからないなら問題はありませんね」

「お? 真嶋ぁ〜、立派な教師になったなぁ〜」

 

 冷静に意見を言った真嶋の頭を、家光はグリグリと撫でまわした。

 

「ちょっ! 頭を撫でないで下さい!」

「ははは! ……ま、伝えたい事はこれだけだから」

 

 真嶋の頭を撫でるのを止めると、家光は席を立った。

 そのままBARから出て行こうとするが、途中で足を止めて3人の方へ振り返る。

 

「……先生方、息子の事を宜しく頼みます。こちらも学校に危険が及ばないように尽力しますので、どうかよろしくお願いします」

 

 深々と頭を下げると、家光はBARを出て行った。

 

 そして、家光がいなくなったBARには再び静けさが戻っていた。

 3人はお酒を一口飲むと、同時に苦笑する。

 

「ふふっ、相変わらず騒がしい人だったなぁ」

「そうね〜。でも、なんか憎めないのよねぇ」

「……親バカなのも変わってなかったな」

 

 その後もしばらく3人はBARで酒を飲み交わしたそうだ。

 

 

 一方。BARを去った家光は、船内の地下施設にやって来ていた。

 

 —— 船内地下施設 ——

 

 家光が地下施設に行くと、リボーンとコロネロが待ち構えていた。

 

「ちゃおっす」

「よお」

「おお。我が友達よ」

 

 家光はコロネロとリボーンの前に立った。

 

「それで? 懐かしの顔には会えたのか?」

「ああ。3人とも立派な大人になってて安心したぜ」

「そうか。……それで、ジョーコについての情報は掴めたか?」

「まだ全然だ。ジョーコに関係する1年生については把握したが、それはそっちもだろう?」

「ああ。3名はいるな」

「その通り。ジョーコの次期ボスと、2名のschiavo Giapponeだ。……この事はツナは?」

「王小狼と美雨については知っている。もう1人の山内ってschiavo Giapponeの事は知らないがな」

「そうか。……それで本題だが、今日はお前に頼まれた件についての返答をしに来た」

 

 家光が本題を切り出すと、コロネロが待ってましたとばかりに喰いついた。

 

「9代目は依頼を受けてくれたのか? コラ!」

「もちろんだ。とあるコンビを王美雨の自宅へと向かわせてくれた」

「……とあるコンビ? 誰の事だ?」

「良平と雲雀だ」

「! あいつらか。というか雲雀も動いてくれたのか?」

「おう。動いてくれたら並盛高校に欲しい施設や機材を調達する、って交換条件を出したからな」

 

 ボンゴレⅩ世の晴の守護者である笹川良平、そして雲の守護者の雲雀恭弥。

 9代目はツナの依頼をこの2名に任せたらしい。

 

「はっ、相変わらずの並盛愛だな」

「良平はまだ他県の高校に通ってんのか? コラ!」

「いや? あいつは去年に高校ボクシングで全国制覇してよ。世界レベルの相手と戦う為にその高校は中退して、今はイタリアのボクシングクラブに所属してるぞ。一応ボンゴレ本部のメンバーにもなっている」

「そうか。相変わらずのボクシングバカだな、コラ!」

「2人はすでにミッションを遂行している。完了し次第に俺に報告が入る事になっているんだが……」

 

 ——ピピピ。

 

 と、ここで家光のスマホが着信音が鳴った。

 ビデオ通話がかかって来たらしい。

 

 家光がスマホを見てると、かけて来たのは雲雀恭弥だった。

 

 ——ピッ。

 

「おう。どうした?」

「……沢田家光。依頼されたミッションは達成したよ」

「お、そうか! 早かったな!」

「当然だよ……それで、王美雨の両親はボンゴレの警護チームに預けたから」

「わかった。ご苦労だったな。……あれ、良平はどうした?」

「警護チームと一緒に行ってしまったよ。笹川良平も警護に当たるそうだ」

「了解した。じゃあお前は……」

 

 家光が雲雀に指示を出そうとすると、リボーンが家光に話しかけた。

 

「家光。俺にも話させてくれ」

「? わかった。……雲雀。リボーンに変わるぞ」

 

 家光からスマホを受け取ったリボーンは雲雀と通話をし始めた。

 

「……雲雀。久しぶりだな」

「あれ、赤ん坊かい? 僕に何か用?」

「ああ。今回のミッション中に、死ぬ気の炎を使用している敵と遭遇しなかったか?」

「死ぬ気の炎? ……ああ、そう言えば1人いたね」

「! 本当か? 何の炎を使っていた?」

「……あれは雷の炎だったかな。多分」

「多分だと?」

「色はグリーンだったから、雷の炎には間違い無いんだけどね。少し変な炎だったんだよ」

「変? どんな所がだ?」

「炎が常に強風に吹かれているかの様に揺らいでいたんだ。だからかは分からないけど、雷の炎にしては一撃の威力が低く感じたよ」

「……他に何か気づいた事は?」

「……その炎を使っていた敵は、胸の部分に変な機械を付けていてね。そこから全身に雷を纏わせての肉体戦を得意とする様だった。でも雷の炎にしては威力が弱いから、思わず『それでも雷の炎なの?』って煽ったら、その敵は怒り狂って反論してきたよ」

「何てだ?」

「『俺の嫉妬の炎はこんなもんじゃねぇ。いずれお前達を一撃で焼き殺してやる!』……とさ」

「……嫉妬の炎?」

 

 初めて聞くその単語に、リボーンは家光とコロネロに確認を取る。

 

「おい、『嫉妬の炎』って聞いたことあるか?」

「……ないな。ボンゴレ本部にもそんな記録は残っていないはずだ」

「俺もないぜ、コラ!」

「……やっぱりそうだよな」

 

 自分だけが知らないのではないと知ったリボーンは、再び通話に戻る。

 

「雲雀、その敵の名前は聞いたか?」

「ああ。聞いてもないのに、やられそうになって逃げていく時に自分から名乗って行ったよ」

「なんて名前だった?」

「……確か、『嫉妬のジェラス』って言ってた」

「嫉妬のジェラスか……」

 

 リボーンはコロネロに問いかける。

 

「王美雨の家には、ナイトの1人がいたらしいな」

「嫉妬の二つ名が付いてるんだ。間違いないぜ、コラ!」

 

 コロネロの言葉に頷いたリボーンはスマホを家光に返した。

 

「家光、もう十分だ」

「そうか? ……じゃあ雲雀。ご苦労様だった。これで今回のミッションは終了だ」

「……わかったよ。あ、約束は忘れないでよね?」

「もちろんだ。並盛まで送ってもらえるように手配しているから、運転手に欲しい物を伝えておいてくれ」

「……わかった」

 

 ——ピッ。

 

 雲雀とのビデオ通話が終了すると、家光はスマホをポケットにしまった。

 

 

「……家光。嫉妬の炎についても調査を頼む」

「分かった。同時並行で調査しよう。……俺もイタリアに戻るわ」

「お、息子には合わなくていいのか? コラ!」

 

 コロネロのその言葉に、家光はニヤッと笑って答えた。

 

「ふっ。高度育成高等学校の生徒は、退学か卒業するまで外界との接触はできない。生徒の親もルールは守らないとな」

「そうかよ、じゃあ調べ物は頼んだぜ。……あ。ラルもしばらくCEDEFに合流するらしいぞ。コラ!」

「ああ。俺と入れ違いでイタリアに着いたそうだな。……じゃあ、我が友達よ。またな」

 

 家光はリボーンとコロネロに手を振りながら地下施設から去って行った。

 

 残された2人は静かに会話を続ける。

 

「……とりあえず、後でツナに美雨の両親を保護した事を伝えないとな」

「だな。……『嫉妬の炎』についてはどうする?」

「……もう少し情報が集まってから伝える。ツナは今、特別課題の真っ最中だからな」

 

 そして、リボーンとコロネロも秘密の通路へと消えて行った……

 

 

 —— 船上試験2日目、午前中 ——

 

 —— ツナside ——

 

 

 船上試験は2日目に突入した。

 その午前中に、俺はとある客室を尋ねていた。

 

「え〜と、040号室だったよな。……あ、ここだ」

 

 客室の040号室のドアの前に立ち、ドアをノックした。

 

 ——コンコン。

 

「はーい?」

「沢田です」

「! すぐに開けます!」

 

 ——ガチャ。

 

 040号室のドアが開かれると、中からアルロが顔を出した。

 

 

「ボス! わざわざあたし達の部屋に来て下さったんですか?」

「うん。あ、ビアンカとカルメンもいる?」

「はい! どうぞどうぞ、お入り下さい!」

 

 404号室は、アルロ・ビアンカ・カルメンの客室だ。

 少し用があるからと、今朝に獄寺君に聞いておいたんだ。

 

「……あら? ボスじゃありませんの」

「ええっ!? 本当だ! あっ……ボス、ようこそいらっしゃいました」

「急に来てごめんね。2人に少しお願いしたい事があってさ」

 

 ビアンカとカルメンは紅茶を飲んでいたみたいだ。

 紅茶のいい匂いが漂ってくる。

 

「お願いですか? 何でしょう?」

「……なんなりとお申し付け下さい」

「ありがとう」

 

 無人島試験じゃないし、お願いを聴いてくれるか少し不安だったけど、普通に聞いてくれるみたいで安心した。 

 

「実はね、2人にはCクラスの情報収集して欲しいんだ」

「Cクラス……あの龍園とかいう男のいる?」

「そう。その龍園君が今回の試験にとって重要な情報を掴んでるらしいんだ。だから、ビアンカにはCクラスの生徒になりすましてもらってCクラスの生徒達から情報を集めて欲しい。カルメンはどこかに隠れながら龍園君の会話を盗み聞きしてもらいたいんだ」

「なるほど……」

 

 ビアンカを少し考えると、笑顔で頷いてくれた。

 

「分りましたわ。そのお役目引き受けます」

「……無論、私もです」

 

 カルメンも静かに頷いてくれた。

 

「ありがとう。じゃあ何か分かったら報告をお願い。あ、電話番号とメルアドを交換してくれる?」

 

 そう言えばまだ連絡先を知らないので、俺は自分の学生証端末を取り出した。

 

「もちろんですわ。光栄です」

「御心のままに。……やったっ!」

「2人だけずるい! あたしとも交換してください!」

 

 アルロを含めて3人と連絡先を交換した俺は、040号室を後にした。

 

 

 —— 船上試験2日目、午後1時。巳部屋 ——

 

 午後1時、俺は再び巳部屋にやって来た。

 これから3回目のグループディスカッションだ。

 

 B・C・Dの3クラスは所定の椅子に座っているが、Aクラスは相変わらず少し離れたソファーに座っている。

 

 一応確認する為か、進行役のひよりちゃんが小狼君に声をかけた。

 

「……Aクラスは、今回も話し合い放棄ですか?」

「当然だ。話したいなら、お前らだけで話し合え」

「はぁ……分かりました」

 

 小さくため息を吐いたひよりちゃんは、ブレザーのポケットから何かを取り出した。

 

「……トランプ?」

「ええ。昨日の内に話し合える事は話し合ったと思うので、時間を有効に使う為にトランプで遊んで親交を深めませんか?」

 

 皆を見回しながらそう聞くひよりちゃん。

 ほとんどのメンバーが頷く中、石崎君だけは「俺はパス」と言って椅子ごと少し離れて行ってしまった。

 

「じゃあ、残りの9人でやりましょうか。そうですね……まずは定番のババ抜きでもやりましょうか」

 

 結局それから1時間、ババ抜きを何回かやって過ごした。

 

 (ん〜。膠着状態だなぁ。優待者側からすると嬉しい状況だけど、結果4を狙うにはよろしくないよなぁ)

 

 

 午後2時になり続々と巳部屋から退出していく。

 今回も最後に巳部屋から出ると、ドアの前にいたひよりちゃんに声をかけられた。

 

「ツナ君」

「? ひよりちゃん、どうかした?」

「はい。実は、今日のお昼時に変な事があったんです」

「変な事?」

「ええ。クラスメイトの女子に話しかけられたんですが、その女子が変なんですよ」

「何が変なの?」

「どこからどう見ても本人なんですけど、なんか別人の様な気がするんですよね」

 

 どう見ても本人なのに別人。……1つだけ心当たりがあるな。

 

「別人? どういう事?」

「……もしかしたら変装なんじゃないかって思ったんです」

「変装? あはは、まさかぁw」

「でも、私の予想通りに変装でしたよ?」

「え?」

 

 変装だったと言い切るひよりちゃん。

 まさか、ビアンカの変装が見破られたのか?

 

 少しの不安を覚えていると、なぜかひよりちゃんは微笑んだ。

 

「あ、それと……龍園君の周りをコソコソしている姉妹校の女子もいましたね」

「!」

 

 間違いなくひよりちゃんが言っているのはカルメンの事だろう。

 その事に気付いてから、ひよりちゃんの目に何らかの確信がある様に感じられた。

 

「ふふっ、大丈夫ですよ。気づいてるのは私だけです。……でも、Cクラスが不利になりそうな事をみすみすやらせる事は出来ません。だから、彼女達の邪魔をさせてもらいました」

「……」

 

 ひよりちゃんは、俺がビアンカとカルメンを動かしていると気付いているようだ。

 

「あ、でも安心してください? 私はツナ君の敵ではありません。今回の行動はCクラスの為に行った事ですから」

「……ひよりちゃん、君は何者なの?」

「ふふっ。ツナ君が私の親友を本当に救い出してくれたら、教えてあげます」

「……親友?」

「シンキングです、ツナ君。何でも答えを教えてもらえると思ってちゃダメですよ」

 

 そう言うと、ひよりちゃんはどこかに行ってしまった。

 

(……親友を救ったら? それって……)

 ——ブブブ。

(!)

 

 ひよりちゃんの言葉の意味を考えていると、学生証端末から着信音が鳴った。

 

(誰だろう……あ、ビアンカだ)

 

 通話をかけて来たのはビアンカだった。

 俺はすぐに通話に応答した。

 

 ——ピッ。

 

「もしもし?」

「ビアンカです。ボス、申し訳ありません。実は……」

「Cクラスの女子に妨害された?」

「! そうです。ご存知でしたか?」

「ちょうど今、その女子からビアンカとカルメンの妨害をしたって話をされた所だったんだよ」

「そうでしたか……申し訳ありません」

「いいよ、気にしないで。Cクラスにすごい観察眼を持った人が混じってたってだけさ」

「……ボス。あの女子は何者ですか?」

「それがまだ分からないんだ。いつかは教えてもらえると思うんだけどね」

「そうですか……分かりました」

「何者か分かったら、俺から報告するよ」

「はい。ありがとうございます」

 

 ビアンカとの通話を切った俺は、自分の客室に向かって歩き出した……

 

 

 —— 午後4時。船内にある歌劇場の裏 ——

 

 午後4時。山内は考え事をしながら船内をうろついていた。

 

(……もう1人のschiavo Giappone。一体誰だよ)

 

 考えても考えても出ない答えの出ない問題に、山内は苛立っている。

 それもあり、山内は気づかぬ内に大きな声で独り言ちていた。

 

「あ〜、大体ヒントなしでもう1人のschiavo Giapponeを見つけろってのがそもそも無茶なんだよ! 適当な奴に『お前って奴隷?』とでも聞けってのかよ!」

 

 すると……急に背後から山内は肩を掴まれた。

 

「……おい」

「ああ? なんだよてめぇ」

「……今、schiavo Giapponeと言ったか?」

「だったらなんだよ!」

「なぜお前がその名を知っている?」

「あ!? ……お前、schiavo Giapponeの意味が分かるのか?」

「……こっちに来い」

「っ、何だよ!」

 

 今度は腕を掴まれて、山内は人気のない物陰に連れ込まれた。

 

「っ痛ぇなぁ! なんだよいきなり!」

「……お前、名前は?」

「おいおい、人に名前を尋ねるならまずは自分から名乗る……」

「いいから名乗れ!」

 

 いきなり迫力を増した相手に、山内は少し怖気付いてしまった。

 

「……Dクラスの山内春樹だよ」

「山内……。ああ、聞いたことあるぞ。お前が山内家の長男か」

「! 何で分かるんだよ」

「知ってるに決まってんだろ? 親父の奴隷は俺の奴隷だからな」

「はぁ? 親父の奴隷? どういう意味だよ!」

「……さすがはDクラスの奴隷だな。理解力のない」

「はあ!?」

「よく考えろ。お前の所有権は誰が持ってる?」

「あ? そんなのキングに決まってんだろ?」

「そうだな。じゃあそのキングを親父って言う俺はどうなる?」

「はぁ? 親父がキングだったら……え?」

 

 ある事に思い至った山内はハッとした表情になる。

 

「……キングとクイーンの息子!?」

「そうだ。俺はジョーコの次期ボス。キングを継ぐ者だ」 

「おお! じゃあお前がもう1人のschiavo Giapponeか!」

 

 笑顔でそう言った山内は、腹を思い切り殴られる。

 

「ぐふっ!」

 

 あまりの痛みに、山内は殴られた相手の前に跪いた。

 

「……奴隷の分際で俺にタメ口を聞くだけでなく、俺の事まで奴隷扱いするとはな」

「ぐ……す、すみませんでした」

「ふん、二度目はないぞ」

 

 痛みが薄れてくると、山内は立ち上がった。

 そして、遠慮気味にキングの息子に話しかける。

 

「あの……ジョーコの本部から、もう1人のschiavo Giapponeを見つけて本部と連絡を取らせろと言われてるんです。そして、そのもう1人はキングとクイーンの子供で次期ボスの可能性があるとも言ってたんですけど……」

「……それを言ったのは誰だ?」

「プライド様です」

 

 プライドという名前を聞いた途端、キングの息子は嫌そうな顔をしながら舌打ちをした。

 

「ちっ……あの野郎か」

「……あの、どうかしましたか?」

 

 山内がそう聞くと、キングの息子は首を振って壁にもたれかかる。

 

「お前が聞いた事は99%正解で1%間違ってる」

「え?」

「まず、この学校にschiavo Giapponeがもう1人いるのは合ってる。そいつがキングとクイーンの子供である事もな」

「はぁ……」

「だが。そいつは次期ボスじゃない、次期ボスはこの俺だからな」

「……えーと。つまり?」

「お前の探しているもう1人のschiavo Giapponeは、俺の双子の妹だ」

「え!? 双子!?」

「……俺の名前は王小狼ワン・シャオラン。妹の名前は王美雨ワン・メイユイだ」

「! 王ちゃんが、schiavo Giappone!?」

 

 クラスメイトの1人がもう1人のschiavo Giapponeだった事に驚く山内。

 そして、それを上回る程に強く黒い願望が湧き上がって来る。

 

(こいつがジョーコの次期ボスなら、こいつに気に入られれば正式にファミリーに加入できるかもしれない。だったら偉そうなこいつにへーこらするのも悪くはないか)

 

 山内は、今度は自分から小狼の前に跪いた。

 

「……小狼様」

「ん? なんだ?」

「是非とも、私をあなた様専用の奴隷にしていただけないでしょうか」

「あ? 俺専用?」

「そうです。貴方の手足として働きますので、どうかお願い致します」

「……目的は何だ?」

 

 山内に目論みがある事はすぐに見抜かれた。

 しかし、山内はそれでもいいのか懇願を続ける。

 

「……小狼様がジョーコのトップに立った時。私をファミリーの末席に加えて頂きたいのです」

「ふっ……お前、ジョーコに入りたいのか?」

「その通りでございます。それも、小狼様がボスになったジョーコに入りたいのです」

 

 小狼は少し考え混むと、意味深な笑みを浮かべながら首を立てに振った。

 

「よし、いいだろう。その代わり、きちんと役に立てよ?」

「! ありがとうございます!」

 

 山内は目論みが上手くいって嬉しそうに立ち上がる。

 そんな山内に向けて、小狼は最初の命令を与えるのであった。

 

「さっそく仕事をやるよ。山内、美雨と協力して沢田綱吉を海に突き落として溺死させろ」

「わかりました! ……はっ?」

「はっ? じゃねぇ。分かりました、だろうが」

「す、すみません。ですが、俺の力では沢田を海に落とす事なんて……」

「大丈夫だ。沢田は学校内で本気を出す事はできない。学校行事であるこの行事でも同じ事だろ」

「……ですが」

「グダグダ言わずにやれ! お前がこの学校に入ったのも、学校内では本気を出せない沢田を狙う為だろうが!」

「は、はい……」 

「よし。じゃあ成功したら伝えに来い。……あ、美雨はお前と同じ奴隷だから。あいつに平伏する必要はないぜ。あいつは忌み捨て子。一般家庭のお前よりも奴隷に近い女だからな」

「……はぁ。(忌み捨て子?)」

 

 その後、小狼はどこかに行ってしまい山内1人が残された。

 

(……沢田を溺死させるとか、そんな事出来んのか? ……とりあえず、王ちゃんに相談するか)

 

 そして、山内もその場から去って行ったのであった…… 



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