| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

イベリス

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百一話 残暑を感じてその四

「されどです」
「そうなりますね」
「失恋で地獄を見た人もいますし」
「自殺した人もですね」
「いますので」
 だからだというのだ。
「決してです」
「軽く思わないことですね」
「はい」
 そうだというのだ。
「ですから」
「恋愛はですね」
「軽く見ないで向かい合って」
「正面からですか」
「はい、どうなってもいいと」
 その様にというのだ。
「覚悟を決めてです」
「やるものですか」
「はい、ですから」
 それでというのだ。
「小山さんもです」
「その恋愛の逆ですね」
「まず絶対にです」
「軽く考えないですね」
「正面から全力で、です」
「向かい合うものですか」
「そして幸せになれば喜んで」 
 速水は言葉を続けた。
「転んでもです」
「あっ、泣くなですね」
「はい、そうです」
 まさにというのだ。
「そこが大事です」
「そうなんですね」
「どうなってもですね」
「己を保つことです」
「幸せになっても失恋しても」
「そうです、喜んでも我を忘れず」 
 咲にさらに話した。
「特に失恋しても」
「泣かないことですか」
「それが大事なんですね」
「そうです、覚えておいて下さい」
「そうします」
 咲は速水に真面目な顔と声で頷いて応えた。
「本当に」
「いや、まことに失恋はです」
 これはというのだった。
「トラウマになりかねないので」
「だからこちらにもよく来られるんですね」
「恋愛のことを占ってもらい」
「それで、ですね」
「中には失恋の後で」
 まさにその後でというのだ。
「どうしたらいいかとです」
「占ってもらいたい人も来られますね」
「失恋で性格が一変した人もいれば」 
 そのショックでだ。
「トラウマになった人もいて自殺もです」
「そうした人もですね」
「実際にいます、ゲーテの作品で」
 ドイツ文学にその名を残す巨人である、小説だけでなく詩も残しかつ政治家としても知られた人物である。
「若きウェルテルの悩みはです」
「あっ、失恋して」
「自殺するお話ですね」
「そうですね」
「ああしてですか」
「本当にそうした人がいますので」
 失恋のショックで自殺する人がというのだ。
「決してです」
「軽く見られないですね」
「はい」
 まさにという返事だった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧