八条学園騒動記
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第七百一話 潜入前にその六
「生きていくことだ」
「それが絶対ですね」
「そうだ、しかしな」
「しかしといいますと」
「君は頭の中で何語で考えている」
大尉は上等兵に鋭い声で問うた。
「一体」
「何語、ですか」
「そうだ、何語で考えている」
「スコットランド語です」
この言語でとだ、上等兵は答えた。
「数時間前までラテン語でしたが」
「そうか、私は今はラテン語だ」
「そちらの言語ですか」
「いいか、頭の中でその言語を使って考えているとな」
そうしていると、というのだ。
「口に出る言語もだ」
「そうなりやすいですね」
「私は今ドイツ語を喋っているが」
プロイセン訛のそれをだ。
「だがな」
「それでもですね」
「ラテン語で考えてな」
「そうしてですね」
「そこから口でドイツ語に変換してな」
そうしてというのだ、つまり脳内で思考するにはラテン語を用い口に出す時点でドイツ語に翻訳して話しているのだ。
「君と会話しているが」
「それもですか」
「その訓練も受けたな」
上等兵に言った。
「脳内で使用する言語もな」
「気をつけることですね」
「自分の中で翻訳してもな」
「口に出る恐れがありますね」
「脳内で使用されている言語がな」
まさにそれがというのだ。
「出るからな」
「外に出ればですね」
「脳内で使用される言語は銀河語にだ」
「することですね」
「そうだ」
こう言うのだった。
「訓練通りな」
「それは絶対ですね」
「そして銀河語は標準だが」
「日本語もですね」
「使うことだ」
脳内の思考にというのだ。
「我々は今日本にいるからな」
「それで、ですね」
「それもな」
「必要ですね」
「読むだけで嫌になる言語だが」
大尉は顔を顰めさせて言った。
「どうしてもな」
「難解ですからね、本当に」
「しかも嫌いな国の言語だからな」
「大尉にとっては特に」
「そうだからな」
そうした事情があってというのだ。
「使いたくないが」
「これも必要ですね」
「工作員ならな」
この任務に就いているならというのだ。
「それも必要だ」
「だからですね」
「今はだ」
「日本語もですね」
「使う、それにだ」
大尉はさらに話した。
「方言もな」
「使うべきですか」
「どの国にも方言があるが」
「日本語は特にですね」
「その個性が強いからな」
それでというのだ。
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