イベリス
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第百話 夏の終わりその九
「安く済むしね」
「それでいいのね」
「事実ブックオフとか駿河屋も利用するし」
そうした店もというのだ。
「最近じゃオンラインでもね」
「それでなのね」
「アルバイトしててお金もあるし」
「だから余計になの」
「充分よ」
「そうなのね」
「ええ、本当にね」
「咲は無欲ね、けれどそうした無欲はね」
母も笑ってだ、娘に話した。
「いいことよ」
「いいの」
「ええ、文明の進歩とか発展に貪欲でないと」
「文明が止まるわね」
「そうなるけれど」
「やっぱり文明が止まったら」
「生活はよくならないわ」
今以上にというのだ。
「テレビや携帯電話もね」
「出なかったわね」
「キッチンだってよ」
これもというのだ。
「今は電気であっためられるけれど」
「昔はガスコンロね」
「その昔は竈だったわよ」
「進歩してるわね」
「電子レンジも冷蔵庫もなかったしね」
「今はどっちもないとね」
それこそとだ、咲は言った。
「どうにもならないわ」
「そうでしょ」
「もうね」
「だからね」
「文明の進歩には貪欲でなの」
「今よりいい生活がしたくて」
そしてというのだ。
「便利でいたいならね」
「ううん、そうした気持ちはね」
それはとだ、咲も答えた。
「私もね」
「あるでしょ」
「ええ」
そうだというのだった。
「やっぱりね」
「そう思うならよ」
「文明の進歩については」
「貪欲でないとね」
満足せずにというのだ。
「そうでないとね」
「駄目ね」
「そうよ、ただ個人で今の状況で満足しているなら」
それならとだ、母はあらためて話した。
「それでね」
「いいのね」
「不平不満がないならね」
「何か不平不満ばかり言う人を見てたら」
咲は今度は眉を曇らせて話した。
「どうもね」
「いい気持ちしないみたいね」
「ええ」
母に実際にと答えた。
「もうね」
「そう思うならね」
「いいのね」
「不平不満ばかり言ってもよ」
「仕方ないわよね」
「若しそれがあったらもっとよくしよう」
その様にというのだ。
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