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イベリス

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第百話 夏の終わりその四

「言われるしね」
「咲にはあまり関係ないけれどスポーツもでしょ」
「スポーツの秋ね」
「それもあるでしょ」
「そうよね」
 咲もそれはと頷いた。
「私は確かにあまりスポーツは縁がないけれど」
「そうでしょ」
「観る位だからね」
「ヤクルトの試合とかね」
「けれど他はね」
 これといってというのだ。
「あまりね」
「しないわね」
「ええ」
 そうだとだ、咲は母に答えた。
「実際にね」
「そうよね、あんたは」
「けれどスポーツの秋とも言うわね」
「それで恋愛の秋とも言うけれどね」
「それね、あるかしら」 
 どうもという顔でだ、咲は母に応えた。
「店長さんの占いでちょこっと言われたけれど」
「そうなの」
「ええ、けれどね」
 それでもと言うのだった。
「私としては」
「誰か好きになるとかはないのね」
「ピンとこないわ」
 こう言うのだった。
「どうもね」
「そうなのね」
「ええ、恋愛はね」
 母にさらに話した。
「私にとってはね」
「実感ないのね」
「誰か好きになるとか」
 そうしたことはというのだ。
「あるかしら」
「そのうちあるわよ」
 母は娘に笑って答えた。
「あんたもね」
「そうかしら」
「お母さんもそう思ってたわよ」
「そうだったの」
「あんた位の頃にね」
 笑って言うのだった。
「そうだったのよ。けれどね」
「お父さんとよね」
「付き合ってね」
 それでというのだ。
「結婚してよ」
「私が生まれたのよね」
「お父さんと付き合う前もね」
 母はその頃のことも話した。
「やっぱりね」
「誰かとお付き合いしてたの」
「そうだったのよ」
「お母さんも恋愛経験豊富?」
「普通でしょ」
 娘に少し考えてから答えた。
「三人だしね」
「お父さん入れて?」
「少ない方かもね」
「三人でなの」
「ええ、それでもね」
「そんなものなのね」
「まあ凄い人になると」
 それならとだ、母は咲に話した。
「何十人とかね」
「あるのね」
「そうみたいだけれどね」
「何十人って」
 そう聞いてだ、咲はまさかという顔になって言った。 
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