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おっちょこちょいのかよちゃん

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284 吸収による強化

 
前書き
《前回》
藤木を追い続ける大野達だが、まる子と友蔵が疲れたと言ってへたり込んでしまい、大野達は呆れて二人を置いていく。かよ子は藤木を目前にして妲己と紂王の妨害を受けるが、あり達にその場を任せてかよ子は次郎長と共に追走するが、多く遊女達が藤木を守ろうとする為、なかなか追いつけない。そして妲己と紂王はかよ子の杖の白魔術によって能力が行使できない状態の為、ありや悠一には好機だったが、その場にレーニンが現れ!? 

 
 あり達はレーニンがその場に現れて怖気づいてしまった。
(このレーニン、前に会った時も恐ろしさを感じるようになったのは何で・・・?)
 ありには見聞の能力(ちから)は所持していない。なのに、なぜか威圧感や悍ましさを覚える。
「護符の所有者の姉貴か。この私が恐ろしいか?」
「そ、そりゃそうよ」
「レーニン、お前は一体何をしたんだ!?」
「俺が説明してやるよ」
 レーニンが杉山の姿に変わった。
「さっき会った三人の高校生達の道具の能力(ちから)を吸い取らせて貰ったんだよ」
「奏子ちゃん達の・・・!!」
「それだけじゃねえ。その前にも戦争主義の世界の本部にアンタの従弟が剣を取り返しに来た時もそいつの能力全部吸収して俺の能力(ちから)とさせて貰ったんだよ」
「健ちゃんの能力(ちから)まで・・・!!」
 ありは恐ろしくなった。以前異能の能力(ちから)を複製した機械で苦戦した事は幾度もあるが、吸収したとなるとどうあっても無力化はできないだろう。
「それからこいつを取り返してえんだろ?」
 杉山は一人の少女をあり達に見せた。自分達が探している安藤りえだった。
「りえちゃん・・・!!」
「おい、りえちゃんを返してくれ!」
 悠一はりえの返還を要求した。
「そうしたいところだが・・・」
「もう話はよいだろう。さっさと行く。この杯の所有者は連れて行く」
「連れて行って何するつもりなのよ!?殺す気?」
「本来ならそうするつもりだったが、この少年が殺すのはまずいとの事だからな。あえてそのままにしておく」
 レーニンはあり達に攻撃を仕掛けて来た。電撃が放たれる。ありもアイヌラックルで応戦した。アイヌラックルが電撃をすべて鎮める。
「神の力だから簡単には倒せないはずよ!」
「そうか、是非神の力も吸収したいところではあるがな・・・」
 レーニンは吸収の術を発動させた。
「う、うおおお・・・!!」
 アイヌラックルが吸い取られそうになる。
「わ、私はこれでは簡単にやられん・・・!!」
 アイヌラックルが弓矢を出現させた。そしてレーニンを射抜いた。
「ああ!!」
 レーニンは苦しがった。これは流石に武装の能力(ちから)でもってしても防ぎきれなかったようである。
「お、おのれ、覚えていろ・・・!!」
 レーニンは苦しみながらその場を撤退した。
「待て!」
 悠一のテクンカネが発動され、シャクシャイン、景勝、兼続がレーニンに纏めてかかろうとした。
「レーニン、覚悟!」
「う・・・!!」
 だがレーニンも別の能力(ちから)で追撃を振り切った。そして妲己と紂王も連れて行った。
「今回は貴様らの勝ちという事にしておこう。だが、貴様のように神を操る能力、何としても我が物にさせて貰うからな・・・」
「レ、レーニン様・・・!!」
「く、りえちゃんを取り返し損ねたか・・・。景勝、兼続、ありがとう、協力してくれて」
「ああ、だが、これから先は大丈夫なのか?」
「ああ、また何かあったらこいつで呼ぶよ」
「では、また会おう」
 景勝、兼続はその場から去った。
「あり、もしかしたら次レーニンに会った時は神の力を使えるようになっているかもしれないな・・・」
「うん、それまでに何とかしないと・・・」
 あり達はかよ子の元へ合流を急いだ。

 レーニンは妲己、紂王と共に撤退していく。
「あ、レーニン様、その前に私は藤木茂坊の回収をさせてください」
「解った、気を付けて行くが良い」
「妲己よ、私も行こう」
 妲己、紂王がレーニンから離脱した。

 かよ子は次郎長と共に鳳凰で飛び去った藤木を追う。
「藤木くーん!!」
「山田かよ子、白魔術を駆使して藤木茂を捜索するのだ!!」
「うん!」
 かよ子は杖の白魔術の能力(ちから)を行使した。その時、先程藤木の場所を示していた緑色の光がかよ子の杖に取り込まれたようにその光が糸のように伸びて行くのだった。
「向こうに藤木君がいるって事なの?」
「ああ、そのようだ」
 かよ子は光を頼りに目的地へと急いだ。
「次郎長、また私、藤木君を捕まえられなくておっちょこちょいかな・・・?」
「そんな事はない。あれだけ逃げてばかりいて匿われていたのだ。それに妲己や紂王の妨害もあった。お主だけのせいではない」
「うん・・・!!」

 まる子と友蔵は場違いな休憩をしていたが、また別の兵士達が襲って来た。
「なんと!?」
「もう勘弁してよ~」
 まる子は炎の石で奮戦した。だが兵士達は耐火金属でできた楯を使用している為、炎の攻撃が全く効かない。
「ひええ、終わりじゃあ~!!」
「おじいじちゃ~ん!!」
 友蔵とまる子は抱き合って泣いた。もうここで二人は死ぬ運命と覚悟した。
(まる子と死ぬなら儂は一緒に天国へ行く!まる子、ずっと一緒じゃぞ・・)
(おじいちゃん、アタシは9年しか生きてないけど、おじいちゃんと一緒だった事、嬉しく思うよ・・・)
 と、その時、兵士が薙ぎ払われた。その場に別の人物が着地した。杖の所有者の知り合いの高校生男子だった。払われた兵士達を鎖鉄球で倒していく。だが、別の兵士が襲い掛かるが、上空から木の枝が槍のように兵士に突き刺さった。
「おお、凄いぞお~!」
「ありがとう~」
「さくらさあん、大丈夫う?」
 上空から冬田と湘木が飛来した。
「あ、冬田さん・・・」
「おお、皆の者、ありがとう!ありがとう~」
 友蔵は感謝の土下座をした。
「ところでさくらさあん、大野君達はあ?」
「ああ、先行ったよ、アタシ達は疲れたから休憩~」
「そんな危ない所で休憩してたのか、この馬鹿垂れが」
 三河口は睨んでいた。
(こ、この少年、怖いぞ・・・!)
 友蔵はこの高校生に自分の孫が制裁を喰らうのではないかと恐れた。現に彼は全員が出発する日にフローレンスに我儘を言っていた冬田に激しく叱責している。
「た、頼む、儂が命を張ってまる子を守る!どうか、まる子を許してやってくれ~!」
 友蔵は土下座のまま許しを求めた。三河口は友蔵の方を見る。
「・・・、自分の立場を考えろ、アホジジイ」
「・・・な!?」
「アンタは選ばれて来たわけじゃない。フローレンスとイマヌエルの恩情でこの世界に入れて貰えただけだ。自分は引率の役目すらなっていないし、何もできていないだろうが」
「儂は、その、まる子を守る為にいるんじゃ!!」
 三河口は友蔵と話が全く噛み合っておらずこれ以上話しても無駄だと思った。
「ちょっと、さくらさん達を大野君達の所へ連れて行きましょうよお」
「そんな暇はない。じいさん」
 三河口は友蔵の胸ぐらを掴んだ。
「アンタは自分がこの世界での戦いを終わらせるために、それから日本が戦争への道に行かせない為に何ができるのかを全くわかっていない。そんな奴はこの戦いに関わるな。孫と一緒に元の世界に帰った方が身の為だぜ」
 三河口は友蔵を離した。
「冬田さん、藤木を連れてった女を探して追うぞ」
「え?あ、うん・・・」
 冬田は命令されるがまま三河口と湘木を乗せて羽根に飛び立った。
「あ、待って、連れてってよお~」
 まる子は止める間もなく、冬田達は行ってしまった。

 藤木は必死で走った。
(誰も来ないでくれ・・・!!)
 そう思いながら逃げた。何しろ今の自分にはこれしかできなかった。だがもうこれ以上走れなかった。
「もう、ダメだ・・・」
 藤木はその場で疲れて座り込んでしまった。そして今までの事を振り返る。一緒に遊んでいた遊女や兵士達は殺され、自分を連れて返そうとする輩が乗り込んできた。そしてりえからは急に嫌われた。楽園は一気に地獄と化した。
(う・・・、何だよ、笹山さん達まで帰ろう、帰ろうだなんて・・・!!いなくなってせいぜいしてるんじゃないのか・・・!?)
 その時、何かが飛来した。
「ひっ・・・!」
 藤木は慌てて逃げようとしたが、逃げ切れなかった。その場に着地したのは一人の高校生の男子だった。 
 

 
後書き
次回は・・・
「ならば強くなれ」
遊女や兵士達の妨害を受けながらも藤木を追い続けるかよ子達。藤木の目の前には三河口が現れ、三河口は藤木を捕まえに来たのではないと言いつつ、藤木が戦争主義の世界にいる事で日本が大変な状況に陥っていると説明する。そして今の藤木が無力である事を伝え・・・!? 
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