チートゲーマーへの反抗〜虹と明星〜
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14話 Emperors【王者たる者たち】
前書き
〜〜〜〜〜裏ライダー設定集〜〜〜〜〜
⚪︎仮面ライダーダークキバ
変身者 小原魁
パンチ力 不明
キック力 不明
ジャンプ力 不明(ひと跳び)
走力 不明
核爆弾で傷一つ付かぬ鎧の数百倍頑丈なそれを装着。変身者の魔皇力を受け入れる器や精神力が膨大であるほどにその基礎スペックはどこまでも上昇してゆく。
実際小原魁の器により通常時でも桁違いのスペックを叩き出しており、場合によってはより恐ろしい数値に化ける可能性が高い。
万が一攻撃によって鎧を破られた際は、その攻撃を2度と通さぬようにさらに鎧の強度が強固なものとなる。
またキバの紋章を象った結界を自由自在に動かすことで対象を拘束したり、苦痛を与えたり、盾としても扱える。
変身者の戦闘センスも抜群であり、まさしく魔王と呼ぶに相応しい仮面ライダーである。
さらに詳しい情報はライダー設定へ。
ブゥゥン………
「送ってくれてアリガトウゴザイマス!」
「なんのなんの。」
俺 伊口才は自家用車で今宵のフェスに出場するクーカーこと、可可とかのん、そして千砂都をステージまで送り届ける。
「しかし連絡がつかんとは……あのバカどもが。」
「何かあったのかな———」
真剣な面持ちで速人たちを心配するかのん。俺はそんな彼女に一言かける。
「心配すんな。ステージに上がればお前はもうスター……アイドルってのは偶像、自分以外の詳しい願望なんてなんて考えなくていい。」
「相変わらず才さんは冷たいなぁ……!」
「あぁ。男は案外、つれなくなって一人前だ。」
千砂都の批判混じりの言葉を俺は堂々と受け止める。しかし彼女は続け様にこんなことを言う。
「あんまり冷たすぎると奥さんに嫌われちゃいますよ?」
「俺は女と遊ぶタチじゃねーよw」
「—————本当にそうなんですか?」
「………ま、想像に任せるよ。」
嘘をついている……そう言われればそれまでだが、一応俺の中では吐いていない。
だがおそらく俺の最愛の妻なら俺は嘘吐きと断言するのだろう。そしてこの千砂都もおそらく嘘吐きだと思ったはずだ。
女は男の嘘を見抜くのが本能的に上手い……そして一番嫌いなモノだ。ましてや【あの女】の血を一身に受け継いでいるのだからそれも当然か。
そんな言葉の中、かのんは自分を言い聞かせるように話す。
「大丈夫。きっと速人くんは来てくれる……約束したんだもん!!」
「かのんサン……」
「ま、自由に信じるのが1番だな。」
人を信じるにはいいが、盲信しないこと———と言ってもコイツらにはあまり意味がなさそうなので言わないでおく。
そんなこんなで目的地である代々木へと到着する。
「さ、着いたぞ。」
「ありがとう才さん。」
かのんは礼を述べる。そんな俺は去り際に1つ彼女たちにアドバイスする。
「1つだけ言っといてやる。ステージで楽しんだやつが報われる……これは確実さ。」
「ステージで———楽しむデスか?」
「ああ。じゃ、いい結果を楽しみにしているぞ。」
「「はい!!」」
クーカーのいい返事を聞いた俺はそのまま黒い自家用車を彼方へと走らせる。
「もう審判は降っているんだ———せっかくなら楽しんだほうがいいだろうに。」
—————※—————
フェス会場の控え室へと入ったかのんたち。
さっそく、可可はその部屋で1番輝いているアイドル様を見つけてしまう。
「あぁ!!あれは……!優木せつ菜サマ!!」
「ほんとだ……」
藍色のはらりとした髪に、アイドルの偶像【アイドル】というべきその様子の優木せつ菜———まさに神に愛された女か。
そんな彼女に見惚れているのも束の間、背後から声がかかる。
「や、お二人さん♪」
「あ、あなたは……侑さん?」
「覚えててくれたんだ!」
背後から現れた侑はさっそく2人が話していた話題に参戦する。
「もしかして2人ともせつ菜ちゃんのファン?」
「はいデス!」
「そっか……じゃあ今度ウチの学校に——
侑が何か言いかけようとしたその時、控え室の手前で男の大声が響く。
流石に気になった侑はその場を後にしようとする。
「ちょっと見てくるね?」
「あ、はい……」
〜〜〜〜〜
「……?」
侑は騒がしい控え室入り口をチラッと覗く———見えたのは、何やらミリタリーな服を着た、眼鏡の男が2人の警備員と口論になっていた。
「ちょっと見るだけだから!!お願いしますよ!!」
「いやそう言われても……というより君ヘラクレスの人間でしょ?こんなところで油売ってていいの?」
「それはカンケーねー!!小生はスクールアイドルの裏方をちょっとでも生で見てみたいんです!!」
キモオタというに相応しい男。侑は側で見ながらも、同じスクールアイドルのファンとして彼を軽蔑してしまう。
普通ならここで傍観するのだが……「ヘラクレス」という単語が気になって、侑は控え室の出入り口を開け、その男に食ってかかる。
「ちょっと君!!」
「あ?———貴殿は……」
「いくらファンでもモラルは守らないとダメだよ!こんな応援はしてもスクールアイドルのみんなが困っちゃうよ!!」
「………」
男はしばらく考えたあと、ため息を吐いて侑に答える。
「全く……どうやら遊びの時間もここまでみたいですね。」
「え———どういうこと?」
「そこの警備員の方、早く逃げたほうがいい———まもなくここにテロリストが来る。」
「「え?」」
「早く。」
眼鏡を外した男……体格は中背で、侑が最近見た男たちとは少し見劣りするが、それに劣らない気迫がある。
その気迫にただ事のなさを感じた警備員はすぐさまその場を去ってしまう。
侑は突如として豹変した男に、訳もわからず聞いてしまう。
「一体どういうこと!?」
「あぁ……話せば長くなりますが、要は貴殿が私の前に現れた時———狼藉者が来るという予言を聞きましてね。」
「狼藉者って……君は一体
「!!」
【ポーズ!】
………
【リスタート!】
「!?!?」
「ふぅ……危なかった———」
侑は得体の知れないナニカが起こったと直感した。そしてそれはすぐ明かされることになった。
『まさか今のを邪魔されるのは想定外でした!!』
「あなたは……タイフォンの!!!」
「また会ったねボーヤ。」
ニコニコ顔が気色悪い羽田淳一こと仮面ライダーグレイブ。そしてアキこと仮面ライダーラルクが現れる。
「まさかあの警備員を逃した上に爆弾を瞬時に解除するとは……驚きです!!」
「まぁ、それが小生に与えられた力ゆえな。」
「しかし何もせず帰るのは癪なので、戦ってあげましょう!行くよアキ!!」
「ゼロワン……シンの仇、取らせてもらうよ!!」
「えっ…仇?」
シン……仮面ライダーランス。以前ゼロワンが撃破したのちに、彼方に飛ばされて行方不明———もといその動向は侑は知らなかった。
その疑問に男は答える。
「彼はヘラクレスに逮捕されたからな———そしてここで、この浦野冥斗(うらのめいと)が捕えさせてもらいましょう。」
【バグルドライバーE(エル)!】
「天の声さん、行きますよ……!」
【————あぁ。】
冥斗と名乗るその男は白いガシャットを起動させる。
【仮面ライダークロニクル!】
「変……身!!」
【ガシャット!】
【バグルアップ!】
【天を掴めライダー!刻めクロニクル!今こそ時は、極まれりィィィィ!!】
エグゼイドに酷似したその姿だが、頭部に王冠のように伸びる五本のアンテナを装着した白き仮面ライダー。
その名も————
「仮面ライダーウラノス———天の支配を代行する者。」
「「……!!」」
「悪いが———一瞬で決着させてもらいましょう。」
【ポーズ!】
時が……静止する。
「確かに反則といえばそうなのでしょうが……仕方ありませんな。」
【ガチャーン!】
腰に装着していたバグルドライバーE(エル)、白いバグヴァイザーのようなそれをビームガンモードへと変更する。
【キメワザ!】
【CRITICAL JUDGEMENT!】
白い光弾がラルクとグレイブに振りまかれる———当然、静止している時の中で避ける術はない。
【神の一撃!!】
「時は動き出す……」
【リスタート!】
侑の前には突如として、目の前にいたグレイブたちが爆発する光景が映し出される。
まるで自分の前に異世界が広がっているかのような……そんな不思議な感覚だろうか。
仮面ライダーウラノスと名乗る彼はジリジリと淳一とアキに近寄る。
「さて……おとなしく捕まってもらおうか。」
「ぐっ———こんなところで…!!」
「————」
露骨に嫌悪するアキと真顔でいる淳一……刹那、ウラノスの動きが止まる。
「侑殿!伏せろ!!」
「えっ…?」
【JACKING BREAK!】
突如として炎の壁が敵と味方を分つ。その爆炎たるや視界を曇らせ、逃亡するにはまさに絶好であった。
「逃げたか……って、侑殿は!」
「うっ…」
バタッ
侑はその場に倒れ込んでしまう———原因は明らかに腹に刺さった針。
と、その時……
「侑ちゃん…?侑ちゃん!?!?!?」
歩夢の目が変わった。
————※————
「「「はあああああ!!!!」」」
一斉にダークキバへと攻勢を仕掛けたセイバー・バルカン・ライブ。
しかし……突如王によって放たれた赤黒い衝撃波が彼らを吹き飛ばす。バルカンとライブは先に立ち上がり、自分の銃型ドライバーで銃撃を始める。
だが、ダークキバは自身のマントでその銃弾を完全に無効化してしまう。
「何…!?」
「どうなってんだ!?」
「いいだろう?このマントは大抵の攻撃を無力化できる……お前たちの銃弾では俺は傷一つ付かん。」
「んなの反則だろ!!」
「ではこちらの番だ……」
ダークキバは地面から紋章を模った緑の結界をものすごい速度で銃撃した2人に飛ばす。
「危ねぇ!」
「!!」
バルカンはライブを弾いて、自らのみがその結界に背後から拘束されてしまう。その結界から流れるエネルギーがバルカンを苦しめる。
「ぐぅぅぅぅ……!」
「ほう、まさか初対面の奴を庇うとはお人好しだ。」
「バカ……やれ———速人!!」
「?」
そう、計画通り———とは流石に言えないが、バルカンが攻撃を受けている間にセイバーは距離を詰めて火炎剣烈火を振り下ろそうとする。
だが……その剣は火炎ごと人差し指で止められてしまう。
「なっ…!」
「俺は油断しない主義なんだ……舐めプする【アイツ】とは違ってな?」
「うわっ!!!」
結界から引き寄せられたバルカンが、そのままセイバーへと直撃させられ、バルカンの石頭がセイバーを襲う。
「この石頭が…!」
「仕方ねぇだろ…!」
言い合うのも束の間、ダークキバは背中に掛けていた黄金の柄に結晶でできた剣———ザンバットソードを携える。
「確かにマントで攻撃を防がれるなら、剣による近接戦が最も有効打になる———いい判断だ。しかし……俺も、近接戦の方が得意なんだ。」
「「……!!」」
ジリジリと迫るダークキバ……ところが、そこにライブの弾丸がヒットする。
マントを展開していないがその弾は頑丈な装甲が弾いてしまう———が、足を止めることには成功する。
「ほう?」
「2人だけに戦わせない……!」
「————なるほど。しかし同じことだ。」
ライブは蝙蝠の如く飛び上がったのち、空中からライブガンを連射する。しかし当然のようにダークキバは、その光弾をノーガードで受けまくる。
「煩わしい……はっ!」
「!!」
ダークキバは紋章型の結界を空中のライブへと向かわせる。
回避しようとするライブ……しかし結界はその逃げ回る小さな蝙蝠をどこまでも追尾する。
「追尾機能付きか…!」
「しばらくそれで遊んでおけ———俺は近接戦がやりたいんだ。」
ライブはその結界を撒こうと空を逃げ回る———しばらく攻撃はできなさそうだ。
気を取り直してザンバットソードとともにセイバーとバルカンへと近寄る。
「速人、お前の剣借りるぞ!」
「ちょっ、勝手に借りるなよ!」
バルカンはセイバーが縮めていた水勢剣流水を取り出して元の大きさへと変えて、自らの武器とする。
そして勢いのままにダークキバへと斬りかかる———が、ザンバットソードがそれを容易く受け止める。振り払うとほぼ同時に、美しい結晶の刀身がバルカンの胸部を薙ぐ。
「ぐっ…!」
「エルシャム王!!!」
那由多を斬られて自覚せずとも怒り心頭なセイバーが火炎を伴った烈火を振り下ろす。しかしこれも背中のマントが完全に無力化してしまう。
ダークキバはザンバットバットを一往復させ、その刀身を研いで、そのまま流れるようにセイバーの腹部を入れ違いで斬る。そして振り返って袈裟斬りをお見舞いする。
流石のセイバーも王の剣を喰らって、立ってなどいられない。
「さて……そろそろ技を披露してやろう。」
「ぐっ…!」
「速人から———離れろぉぉぉぉ!!!」
バルカンは手持ちの水勢剣で水流攻撃を仕掛ける……が、それを瞬時に読んでいたダークキバのマントによって最も簡単に弾かれる。
そして再び召喚した緑の紋章によって背後から拘束される。
「空で仲良く爆散するがいい。」
「まさか…!!」
バルカンを縛った結界はそのまま空高く飛び……一方の結界に追尾されていたライブへと———
「「うわぁぁぁぁぁ!!!」」
空でその二つの紋章はライブとバルカンを挟み、爆発させる————
「お前ら!!!!!」
「安心しろ、命まで奪っちゃいない。そしてお前も———」
黄金でできた黒いフエッスルをキバット2世へと咥えさせ、その口を一回タップする。
【ウェイクアップ・ワン!】
「はっ!」
「ぐはっ!」
ダークキバはセイバーを結界で拘束し、磔のようにする。
セイバーを囲うように四方八方に黒い紋章が現れる。そしてその紋章から……無数のザンバットソードが発射待機する。
その夥しさはこれまで幼少期から修羅場を潜ってきたセイバーの度肝を抜く。
「っっっ!!」ゾクッ
「俺に跪け……絶滅・ザンバット斬!!」
ダークキバの合図とともに大量のザンバットソードが発射される。本来剣は斬るものだが、こうなっては一本一本が最強の弾丸。
豪勢な技はまさに王に相応しいモノだ。
「うわあああああああ!!!」
ザンバットソードの集中砲火を浴びたセイバーは強制的に変身を解除させられる。
「くそっ……!」
「なかなか良い戦いだった。俺の威圧を受けて立っていられる時点でな。そんな猛者はこの世界にはそうそういない———あっぱれだが、敗北のペナルティは……」
ジリジリと迫るダークキバ……だが。
【ブレード!】
「おらっ!」
「お前……」
突如としてダークキバに斬りかかった人物それは……宮下陽人。
否、彼は……別人格 コルボ。
「お前は確か……もう1人の。」
「ほう?この俺を知ってるとは貴様…何者だァ?」
「あぁ知っているさ。色々とな、カルボナーラくん。」
「ごちゃごちゃうるせぇな!!」
コルボはなんとかダークキバの腹部にミドルキックをお見舞いする。当然ダメージはないが、それでもノックバックを与えた。
「お前……誰だ?」
「アイツがちょっと世話になったみてーだなセイバー。あのアホとは違って、俺は強えぞ。」
【バット!】
【Confirmed!】
ツーサイドライバーをブレードモードにしたコルボは、バットバイスタンプを押印。
黒い影とともに漆黒の蝙蝠たちが彼の体を包むように回る。
【Eeny, meeny, miny, moe♪】
「変身。」
【バーサスアップ!】
【Madness!Hopeless!Darkness!バット!】
【HAHA! 仮面ライダーエビル!】
【E-YEAH HAHA!】
蝙蝠の群れが一つの大きな存在となり、仮面ライダーエビルを形成する。顔の形は羽を閉じて逆さまにぶら下がっているコウモリになっている———ライブと対をなす、元来悪の属性を持つライダー。
「そうか、貴様直系か……また珍しいなぁカルボナーラくん。」
「馬鹿にすんじゃねぇ!」
振り回されるエビルブレードを未来でも見たようにスイスイ躱すダークキバ。
すぐさま赤黒い衝撃波でエビルを吹き飛ばして距離を取る。その衝撃波は近くの時計台を破壊して、時計を地に落とす。
そこで速人はあることに気づいてしまう。
「そろそろライブの時間か———だが……」
1人だけこの戦場から逃げ出すなんて馬鹿げている。かと言って、かのんと約束してしまった。自分がいないと彼女が歌えないかもしれない。
戦いとは別の理由が速人を追い詰めた……その時、脇から傷だらけの那由多が肩を叩く。
「行けよ。」
「は?」
「かのんたちのトコへ行けっつってんだよ!!」
叫ぶ那由多。その真剣な眼差しに速人の心はさらに揺れる。
「だが俺だけ逃げるみたいじゃねぇか……そんなみっともないことはできねぇよ。」
「逃げる?だからどうしたんだよ!!師匠も言ってただろ!?『逃げたい時に逃げればいい、自分が得な方を選べ』ってな!!そんなプライドのために……かのんたちとの約束を破るんじゃねぇぞ!!」
「那由多———」
「エルシャム王は俺たちが死ぬ気で食い止める!!だから行け!!」
そうだ———那由多は速人にとっていつでも頼りになる男。ひどく馬鹿だが、人一倍信頼のおける男だ。
困った時に頼りにしていると言ったのは自分じゃないか……速人は今までの自分を恥じた。
彼の黄金の左目が輝く。
「わかった。頼んだぜ……バカ狼!!」
「おう!」
速人はその場を一目散に退却する。
ダークキバはその光景を見て、仮面の中に隠れた口角が上がる。
「それでいい……それでいいぞ天羽速人!」
「訳のわかんねぇことを言ってんじゃねぇよ。」
「ははは…!俺はこの地上の統治を神に任された存在、彼らの行く末の1つや2つ理解している。」
「あ……?」
エビルはダークキバの話に理解が追いついていない……というよりも人間の理解の範疇を超えているというのが正解か。
しかしそんなこと王は気にかけない。
「俺が求めるのはリアリティのある、小説より奇なる物語。だからこそ……俺は【リアリティを演出】し続け、楽しむのさ。」
リアリティの意味……とは?
—————※—————
「よし、今度こそ……!」
原宿にて再びスカウト(?)されようとこれ見よがしにクレープを可愛く食べていた平安名すみれ。
しかし人の流れが一気に変わることを流行に敏感な彼女は読み取る。
「何……?」
その時……
『流れるまま向かった先に使命がある。』
「!?!?!?———気のせいかしら?」
誰かに喋られた。しかし辺りを見回しても誰もいないため空耳と判断せざるを得ない。
しかし……その言葉はすみれを確実に動かした。
「ま、行ってみましょう。」
クリームを鼻につけたまま原宿のど真ん中から走り去ってしまう……人の流れに乗って。
そんな人々を高層ビルから見下ろす1人の黒い服の青年と双子の子供たち。
「人がいっぱいー!!」
「どこに向かってるのかな?」
「どこだろうね?」
「「うーん……」」
すると白く輝く髪の青年は、双子たちに尋ねる。
『セフィオス、グリフォス。君たちは人間をどう思いますか?』
「うーん、みんな同じ!」
「でもちょっとずつ違う!」
セフィオスとグリフォスと呼ばれる双子は子供ながらもその超越的な視点で捉えていた。
その言葉に白髪の黒い青年は悟ったように彼らに話し始める。
『かつて父上と母上は人間に転生したことがあるそうです。だからこそ【人間という性質】を理解している。』
「「せーしつ?」」
『しかしその答えは真逆。母上は人間を狂的に愛し、父上は人間を苦しめている。』
「父上さまこわい……」
「こわい……」
ガタガタと可愛く震えるセフィオスとグリフォス。その姿を見て青年はアルカイックな笑顔で彼らにさらに問う。
『君たちは父上が怖いのですか?』
「「うん!」」
『では母上は?』
「母上さま優しい〜」
「けど何もさせてくれなーい。」
『人間たちもまた、その間で葛藤しているのでしょう。その中で過ちを繰り返し、時が流れるのです。』
青年———もとい、オーヴァーロード/ユオスは沈みゆく太陽を見ながら呟く。
『今、世界が大きな変化の岐路にあります。場合によっては……太古の時代、我々が世界を水で覆ったように、人間たちは自ら破滅の道へ向かうでしょう。』
「「………」」
『我々は人間という存在を吟味しなければなりません。人間が、我々に反逆する存在か、それとも我々に縋る存在か、はたまたそれ以外か……』
沈みゆく太陽。
それに取って代わるように街中にネオンライトが溢れ始める。ニセモノの光に塗れたそれを人々は太陽だと言い張る。
それはまさに偶像【iDOL】ではないか。
偶像という虚栄に縋ることが正しいのか、それとも破壊するのが正しいのか……それは『善悪両方を知る者』にしか決められない。
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