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八条学園騒動記

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第六百九十九話 エウロパ工作員の苦悩その十

「生み出したな」
「厄介な言語ですね」
「そして文化ひいては文明もな」
 こちらもというのだ。
「厄介だ」
「あまりにも独特で」
「それでだ」
 その為にというのだ。
「学ぶにあたってもな」
「難解であり」
「しかも腹が立つ」
「エウロパのどの国よりも古いからですね」
「それは中国にしても同じだが」
 それでもというのだ。
「中国は今は共和制でだ」
「皇帝の国ではなくなっていますね」
「しかも皇帝もな」
 この立場の者もというのだ。
「王朝によってだ」
「交代していますね」
「易姓革命の国だからな」
「家が変わっていますね」
「そうなっているからな」
「国家の歴史は長くとも」
「王朝自体はな」
 皇室はというのだ、即ち。
「変わっている」
「左様ですね」
「我がホーエンツォレルン家は二千年以上の歴史がある」
 神聖ローマ帝国の選帝候からのことである、この家の歴史はプロイセン王になる以前から存在しているのだ。
「だがな」
「中国の王朝はそれぞれ三百年ですね」
「間抜けな王朝は数十年で滅んだ」
 大尉は悪意を込めて述べた。
「晋だったな」
「その王朝はですか」
「馬鹿な内乱を起こしてな」
「そうしてですか」
「建国、中国を統一して数十年でだ」
「滅んだのですか」
「八王の乱を起こしてな」
 兵権と統治権を持った皇族達が互いに殺し合い戦い合った内乱だ、その前から宮廷の混乱があった晋はこれで決定的に崩壊してしまった。
「そうしてだ」
「滅んだのですか」
「それで徹底的に弱まってだ」
 それこそ国が崩壊するまでだ。
「そこを異民族に攻められてな」
「滅んだのですね」
「そんな間抜けな王朝もあった」
「内輪揉めとは連合らしい」
 上等兵も皮肉を込めて言った。
「これはまた」
「全くだな」
「はい、まことに」
「その内輪揉めをだ」
 大尉はさらに話した。
「行ってな」
「その晋とやらは滅んだのですね」
「一旦滅んで逃げてそこでまた国を築いたが」
 それでもというのだ。
「もう二度とだ」
「中国を統一しなかったのですね」
「そうだった、実に滑稽な話だ」
「確かに。しかし中国は皇帝であっても」
「連続はしていない」
 その家はというのだ。 
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