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八条学園騒動記

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第六百九十九話 エウロパ工作員の苦悩その八

「ですます調やである調があるな」
「童話はですます調ですね」
「そうだな、そして候文もある」
「候ですか」
「何とかで候とな」 
 その様にというのだ。
「やけに堅苦しい文体でだ」
「書かれている文章ですか」
「そうだ、それでだ」
「難しそうですね」
 上等兵は話を聞いて言った。
「それはまた」
「今はもう使われていないが」
 それでもと言うのだった。
「昔の文学作品にはな」
「出ていますか」
「日本の文学は明治から変わるが」
「そうなのですか」
「江戸時代までは古典とな」
 そう区分されてというのだ。
「そこから現代文学とな」
「分けられるのですか」
「現代といっても千年以上あるが」 
 それでもというのだ。
「そう区分されていて文章もだ」
「変わっていますか」
「そして江戸時代はな」
 この時代はというのだ。
「その候文もだ」
「多いですか」
「そして明治以降でもな」
 この時代からもというのだ。
「文章が文語から口語になるが」
「文語、口語とは」
「これも文章の違いだ」
 日本語のとだ、大尉は話した。
「簡単に言うと文語は古典の言葉だ」
「あの尚更わかりにくい」
「源氏物語等のな」
 この作品のことはエウロパでも知られている、世界最古の長編恋愛小説として『忌まわしいが』という連合への敵視と共に紹介されている。
「そうした文章だ」
「そうですか」
「もっとも日本の古典もだ」
 これもというと。
「エウロパではラテン語等に翻訳されてな」
「出ていますね」
「他の連合の文学作品もな」
「同じですね」
「若草物語も紅楼夢もだ」 
 こうした作品達もというのだ。
「そうなっていてな」
「原文ではないですね」
「それで日本文学もだが」
 それでもというのだ。
「日本の文学作品はな」
「時代によってですね」
「文章がかなり違っていてな」
「その候文もあるのですね」
「それもその現代文学でもだ」
 この時代の作品でもというのだ。
「候文の作品がある」
「そうですか」
「芥川龍之介という作家の作品でな」
「芥川、知っています」
 上等兵はその名を聞いてすぐに述べた。
「自殺した作家ですね」
「そうだ、三十五歳でな」
「そうでしたね」
「その芥川の作品でだ」
「その文章の作品がありますか」
「これが読むとな」 
 大尉は顔をこれ以上はないまでに顰めさせて述べた。 
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