魔法少女リリカルなのはStrikerS~赤き弓兵と青の槍兵
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本編
二十四話~壊される仮面
side はやて
「アインへリアルがか!?」
アラートが鳴って管制室に入ったとき、それまで指示を出していたグリフィス君からの情報だった。
「はい、どうやら戦闘機人の襲撃を受けたようで………」
「そうか………グリフィス君はこの状況をどう見る?」
「………計画の邪魔になりそうなアインへリアルを先に落としておきたかったのではないでしょうか。もし僕がスカリエッティの立場ならそうしたと思います」
グリフィス君の考えは最もだが、陣形が嫌な感じで拡散している今、隊長陣の投入はできない。
もちろん、最終兵器である士郎とランスの全力解放は色んなところの“目”がある今、簡単には許可できない。
前回の時はクロノ君が三提督に掛け合って何とかしてくれたけど……
「これ以上は六課の立場に関わる、か……」
「何がですか?」
「ううん、何でもないよ」
どうやら声に出していたようだ。緊急事態だからか、グリフィス君もこれ以上は突っ込んでこない。
だが、早めに叩いておかなければ大変なことになるのは事実。士郎は多数の殲滅が得意だ、と言っていたから彼に出てもらおう、と考えをまとめた時だった。
「戦闘機人たち、アインへリアルから撤収していきます!向かってるのは……市街地です!」
シャーリーの報告を聞き、モニターを見ると、
「かなりバラバラに動いとるな……」
これでは制圧に結構な人数を送り出さなければならない。だが、問題はそれだけではなかった。
「アコース査察官より直通連絡が来ています!」
この通信がとても良いものであり、また悪いものでもあったからだ。
side ヴェロッサ
「この洞窟がですか?」
僕が108部隊とフェイト執務官から得た情報をもとに当たりを付けた洞窟。そこに無限の猟犬を送り込んだが、過剰なセキュリティに侵入を阻まれた。
「僕の猟犬が一撃でやられるようなセキュリティだ。ここで間違いないだろうね」
「よく見つけましたね、ロッサ」
「……子ども扱いはやめてくれないかな?」
「貴方の優秀さはよくわかっていますよ」
「だといいんだけど……!」
そんな話をしていると迎撃のためにガジェットが大量に出てきた。しかも……
「かなり強力なAMFを張ってるね……」
「ならば力ずくで破壊します!」
「……相変わらずシャッハは頼もしいな……」
ただでさえ戦闘は得意じゃないのにこの強力なAMFだ。
正直シャッハ一人では荷が重い。だから僕は応援を頼むことにした。
side はやて
「こちらヴェロッサ。スカリエッティのアジトを発見した。応援をお願いしたい」
ついにスカリエッティの尻尾をつかんだようだ。こちらからも戦力を送りたいのだが……
「こっちも結構ヤバいことになってるんやけど……」
「かなり強力なAMFを出してくるガジェットが出てきた。シャッハと二人で迎撃はしているが状況が思わしくない。二人ほど高ランク魔導士を出せないかい?」
「二人か……」
悩んでいると、
「俺が出る」
いつの間にか管制室に来ていたランスが私の代わりに答えていた。
「ランス!?」
「戦闘機人なら心配いらねえ。チビ共で十分な相手だ。だから俺がこっちに出向く」
「………そうか。それならランスとフェイトちゃんを行かせる。ロッサ、それでええか?」
「ああ。ありがとう」
こちらが一段落した時、シャーリーが驚愕の声を上げた。
「あれは……この間の騎士!?」
ヴィータと戦ったという騎士が地上本部を目指して飛んでいた。
相手の戦力も最大限に出てきた。ここがこの事件の正念場や……!
side スカリエッティ
「さあ、見ているかい?私のスポンサーたち、それに管理局の諸君。偽善の平和を謳う聖王教会の諸君。今から見せるものが、君たちが忌避しながらも欲した絶対の力だ!」
外では手筈通りにゆりかごが起動している。
「古代ベルカの悪夢の英知、聖王のゆりかご。迎えるべき王を迎え入れ、世界を破壊したこの素晴らしき兵器は蘇った!」
さあ、始めよう!世界の変革を!
side なのは
「迎えるべき王を迎え入れ、世界を破壊したこの素晴らしき兵器は蘇った!」
スカリエッティの言葉、そんなものは私の耳には入らない。なぜならば、
「いや、いたいよ…こわいよ…ママ、パパ、たすけて………」
スカリエッティから送られた映像に私に助けを求めるヴィヴィオがいたのだから。
「ヴィヴィオ……」
そんな中、震える私の肩に手を置く人物がいた。
「まずは落ち着け。冷静にならなければ救えるものも救えなくなるぞ」
「士郎君………」
それは士郎君の手だった。いつもと全く変わらないように見える態度。だが、触れられている手から伝わってきた。
士郎君は、怒っている……今までに類を見ないくらいに。
そんな士郎君に怒りをぶつけた人物がいた。
「どうして……」
「アルト?」
「どうして、衛宮さんはそんなに冷静なんですか!あんな、小さな子があんな目にあっているのに!衛宮さんにとってヴィヴィオはなんなんですか!」
「アルト!」
「なのはさんは黙っててください!答えてください!衛宮さん!!」
少しの間をおいて、士郎君は語った。
「娘だ」
「ならどうして!」
「私たちの任務はなんだ?ここで憤ることか?違うだろう。アルト・クラエッタ二等陸士」
「う……」
正論。まさしく管理局員としての正論ではある。だが……、私にはわかってしまった。それは仮面だ。本心を偽るための。
「わかったら未だ自分の殻に閉じこもっているヴァイス陸曹の代わり、と言う君の責務を果たすことだ」
「……了解、しました。衛宮三等空尉」
そういってアルトは駆けて行った。
そのあと、
「もう、やめてよ」
「なのは……?」
「そうやって嫌われ役になって」
止められなかった。みんなのために、士郎君が一人で傷つくのが耐えられなかったから。
「一人だけで傷ついて」
支えになる、と言って何もできていない自分が情けなくて、
「傷ついてないふりをする」
だから思いをぶちまける。
「私は、そんな士郎君を見てられない!」
「……なんのことだ?」
しらばっくれていても、もう私にはわかる。
はやてちゃんがマスターの時に見ていたという夢。きっとあれは、士郎君だ。
“正義の味方”を目指していた時の。私が見ていた夢もそうだろう。
「本当は士郎君、今すぐヴィヴィオのところへ行きたいはず!もう大丈夫、って言って抱きしめてあげたいはず!それなのに………」
だから私は彼の仮面を壊す。
「嘘ばっかりつく!自分は平気だって!悲しくても!辛くても!嘘ばっかりつく!」
「………なぜ君が泣いている?私のことなど気にする必要はない」
「気にしないわけないよ!!」
いわれて気が付いたが私は泣いていたみたいだ。涙が流れていくのも無視して士郎君の仮面を砕く最後の言葉を言い放つ。
「だって私は、士郎君が好きだから!!一人で悲しんだり、苦しんだりしないでほしいから!!ヴィヴィオと一緒に笑っていて欲しいから!!」
ため込んでいたものを全てぶつけた。私が全てを言い終わってから、士郎君がゆっくりと口を開いた。
「全く、緊急事態の時にそんなことを言われるとは思わなかったぞ。今のはスターズの隊長としてどうなんだ?」
その顔には先ほどまでの仮面はなく、普段の士郎君だった。
「そ、それは……」
「冗談だ」
「え?」
「助けに行こうか。私達の娘を」
「………うん!」
ようやく私の思いが届いた。仮面に隠され、剣で覆われた彼の心に。
side 士郎
驚いた。まさかこんなことを言われるとは。
「だって私は、士郎君が好きだから!!一人で悲しんだり、苦しんだりしないでほしいから!!ヴィヴィオと一緒に笑っていて欲しいから!!」
なのはが私を好きだ、と言ってくるとはな。
だが、今はそれよりも優先することがある。
それは………ヴィヴィオを助けることだ。
私達の娘を。
今はなのはと共に、ヴィヴィオを助ける…………
そのことにだけ集中しよう。
後書き
はい、ついになのはさんがぶちまけましたね。
一体士郎はどうするのか?
……それは事件解決後のお楽しみです(*´ω`*)
次回!
ついに動き出したゆりかご!
六課の面々はどう動くのか?
その中で一人迷うヴァイスは?
ご期待ください!
それでは( *・ω・)ノ
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