| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

八条学園騒動記

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第六百九十九話 エウロパ工作員の苦悩その四

「市民とやら一人一人もですね」
「豊かだ」
「そんな国になっていますね」
「それで皇室まで持っているとなるとな」
「忌々しいことこの上ないと」
「私は思う、しかも独自の文化いや文明がだ」
 大尉はこちらの話もした。
「エウロパでもだ」
「有名ですね」
「茶道に折り紙、華道に日舞とな」
「武道もありますね」
「剣道だの柔道だの合気道だの弓道だのな」
「侍も忍者も力士もいますね」
「我が騎士道にもだ」
 大尉はエウロパ軍人が誇りとするそれの話もした。
「対するものがあるしな」
「武士道ですね」
「これもな」
「腹立たしいと」
「そうだ、しかも公家の蹴鞠や和歌もあるしな」
「俳句というものもありますね」
「こんな国があること自体がだ」 
 最早とだ、大尉は言い切った。
「忌々しい、この国を何時か凌駕したい」
「大尉としては」
「そう思うからな」 
 だからだというのだ。
「今こうしてだ」
「日本においてですね」
「活動出来て嬉しい、任務を命じられた時はだ」
「日本での諜報活動をですね」
「冷静に敬礼をして応えたが」
 それを命じた上官に対してだ。
「内心嬉しくて仕方なかった」
「そうでしたか」
「それで日本に来たがな、君と共にな」
「従兵として」
「全く、苦労が絶えないな」
「そうですね、何かと」
「連合はエウロパとは全く違う国だが」
 それでもというのだ。
「日本はな」
「特に違いますね」
「特異点と言っていいまでにな」
 そこまでというのだ。
「違う国だ」
「それが日本ですね」
「衆愚の国と言うとそれまでだ」
 エウロパでは連合をこう呼んでいる、市民の国でも大衆の国でもなくそうした国だというのである。
「しかしな」
「衆愚は衆愚でもですね」
「顔を見れば愚か者の顔しか見ない」
「連合の他の国と同じく」
「そうだが」 
 それでもというのだ。
「文化いや文明だな」
「日本は」
「それが違っていてな」 
 それでというのだ。
「特に言語がだ」
「違いますね」
「バスク語も難しいという」
 この国の言語もというのだ。
「そうだな」
「実はバスク出身の同期がいますが」 
 上等兵は自分の縁から話した。
「実際バスク語はです」
「違うな」
「はい、私は学はないですが」
 士官学校を出た大尉に高卒の者としてこう話した、実際にはそれ程レベルの低い学校を出てはいない。
「それでも同期にいまして」
「バスク人がな」
「その同期から聞いたのですが」
 生のバスク語をというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧