とある星の力を使いし者
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第168話
マンションに着いた麻生は、今だ不機嫌に牛乳を飲んで椅子に座っている制理と、コーヒーを飲みながら対面する椅子に座っている桔梗の姿が見えた。
帰ってきた麻生を見て、制理は一瞬だけ視線を向けてそのままテレビに、視線を向け直す。
そんな制理を桔梗は少しだけ笑いながら言う。
「おかえり。
遅かったわね。」
「ちょっと面倒な酔っぱらいに掴まってな。
すぐに飯を作るから待っていてくれ。」
リビングに向かい、黒のエプロンを身につけ冷蔵庫の中を漁る。
思っていた以上に材料は残っていたので、何を作るか考える。
「何を作る予定?」
と、様子を見に来た桔梗が後ろから話しかける。
そのまま冷蔵庫の中を漁りながら答える。
「そうだな。
手早くカルボナーラのパスタにでもするつもりだが。」
「私はそれで構わないわよ。
それより、あの子また怒らせたの?」
あの子、とは制理の事だろう。
全く原因が分からない麻生だったが、桔梗ならわかるかもしれない。
材料を取り出しながら、帰るまでの経緯を教える。
聞いた桔梗は納得した声をあげる。
「何か分かったのか?
俺にはさっぱりわからない。」
「う~ん、答えられるけど答えないわ。」
それを聞いた麻生はむっ、と軽く眉をひそめる。
「どうしてだ?」
「彼女がちょっと子供っぽい所もあるけど、それに気がつかない恭介も悪い。
こういう事に関しては鈍感だからね、あなた。」
そんな言葉を言い残して、桔梗はコーヒーを補充してリビングに戻る。
どれだけ考えてもさっぱり分からない。
いっその事星にでも聞くか?、と本気で考えた。
(それは違うな。
こういうのは自分で考えてこそ、意味がある。)
もっともらしい事を考え、料理を再開する。
パスタを鍋に入れて茹でていると、不意に携帯が振える。
ポケットから携帯を取り出すと、画面に表示されたのは御坂美琴の番号だ。
麻生は通話ボタンを押す。
「何か用か?」
「っつーかメールの返事はいつになったら返ってくんのよ!?」
メール?、と頭を傾げて思い出した。
「あぁ、あったそんなこと。」
「ッ!?
ちょ、アンタ、投げやりにも程度ってモンがあるでしょう!!
一つメール送るのにどれだけ」
何か叫ぼうとしていたが、その時、彼女の声が遠くなったと思ったら、いきなり通話がプツッと切れた。
麻生の方の電波状況を確認するが、別に悪くはない。
(あいつの方で電波が悪くなったか。)
適当に考えて、ボールに卵とチーズと黒こしょうを入れ、しっかり混ぜ合わせる。
この家に様々な材料が置いてあるのは麻生が、買い物なので買ってきたからだ。
一応、材料があれば麻生は何でも作れる。
面倒臭がり屋なので、凝った料理は作らないが。
フライパンにオリーブオイルを引いて、厚切りベーコンを一口サイズに斬り、入れる。
これから炒めようと思った時、再び携帯が震えはじめた。
美琴か?、と思って画面を見ると美琴ではなかった。
小さな画面には、ついさぅき登録したばかりの番号、御坂美鈴の番号だ。
あの酔っぱらいのテンションで電話されると、非常に面倒だなと思いながら通話ボタンを押す。
どうでもいい要件なら、適当にあしらって切るつもりだ。
「何だ?」
思いっきり不機嫌そうな声で答える。
しかし、美鈴からはさっき会ったようなハイなテンションではなかった。
「あ、あはは。
元気、麻生くん?」
「うん?」
どこか緊張に耐えているようなそんな声。
とてつもないプレッシャーを感じ、それを会話で誤魔化しているようなそんな感じに聞き取れた。
「何かあったのか?」
「ちょっとね。
断崖大学のデータベースセンターに着いたまでは良かったんだけどね。
いきなり、爆発音が聞こえて照明も落ちて、バタバタと足音も聞こえて。」
これをちょっとの事ではない事は間違いなかった。
フライパンを熱していた火を止めて、美鈴の声に集中する。
「何だか中高生くらいの少年達に狙われているみたいなの。
それも金属音とか察するに、拳銃とか持っているかも。」
(爆発音に拳銃に中高年。
武装無能力集団の可能性が高いな。)
エプロンを脱いで、そのまま玄関に向かう。
桔梗と制理は不思議そうな顔をして、麻生を見ていたが無視する。
自分の靴を拾い、またリビングに向かう。
「美琴は呼ばないのか?
あいつが居れば、すぐに片が付くが。」
「それは駄目!
戦力になるとかそういう問題じゃない。
私の問題にあの子を巻きこんだら、その時点で私はもうあの子に顔を合わせられないわ!!」
「それでアンタが死んだら元も子もない気がするが。」
最後の言葉だけは美鈴に聞こえないように小声で言う。
親としてのプライドがあるのだろう。
自分が危険とはいえ、娘が強いからと言って巻き込んでいい理由にはならない。
まさに親の鏡だな、と少しだけ感心しながら、窓を開ける。
「今、アンタはどこにいる?」
「え?・・・・『サブ演算装置保管庫』って所だけど。」
「ならそこを動くなよ。
もし武装無能力集団がそこに入ってきてもだ。
俺が助けに向かうから待ってろ。」
「待っ・・・君にそこまで頼んでいない!
この緊張が少しでも和らげばって思って・・・」
「状況を知った上で、放っておいて死なれたら目覚めが悪い。
もう一度言うがそこで待ってろよ。」
一方的に言って通話を切る。
途中から話を聞いていたのだろう。
桔梗が窓から外に出ようとする麻生に話しかける。
「出かけるの?」
「ああ。
悪いな、飯は作れそうにない。」
「途中まで作ってあるみたいだし、後はこっちでするわ。
気をつけてね。」
「桔梗さん、止めないの!?
恭介の言葉じゃ武装無能力集団が関わっているんだよ!
そんな危険な所に恭介を向かわせるなんて・・・・」
内容は全部聞いたわけではないが、武装無能力集団を聞いて制理は心配そうな顔をする。
学生であれば、武装無能力集団がどれだけ危険な集団である事を知っている。
そんな制理の頭を麻生は軽く撫でる。
「大丈夫だ。
必ず戻ってくる。」
「ぜ、絶対よ!
絶対に戻ってきてよ!」
それを聞いた麻生は少しだけ笑みを浮かべて、頷く。
制理の頭から手を離して、ベランダで靴を履いて、そのまま身を乗り出す。
その行動に驚いた制理は、思わずベランダに向かって外を見る。
すると、麻生は空中に浮いていてそのままどこかへ行ってしまう。
「大丈夫、恭介は武装無能力集団なんかには負けないわよ。」
「それでも心配です。」
「信じて待ちましょう。
今の私達にはそれしかできないわ。
コーヒーでも飲む?」
「きっつい苦いのをお願いします。」
能力を使って、空を移動する。
断崖大学は携帯で地図を出し、既に場所は把握してある。
ふと、下を見ると見知った顔の男が道を走っていた。
その道筋は断崖大学に向かっているように見える。
少し考え、下に降りる。
「当麻。」
「うおぉ!?
って、恭介かよ。
いきなり空から女の子が降ってきたかと思ったぞ。」
その人物とは上条当麻だ。
傍にはインデックスはいない。
「お前、どこに行くつもりだ。」
「どこにってこの先の大学で、何か爆発するような音が聞こえたから、何があったのか確認するためだよ。」
それを聞いて麻生は軽くため息を吐く。
「この正義馬鹿は、本当に・・・」
「うん?
そう言う麻生もどうして空から?」
「まぁいい。
それも含めて説明してやる。」
美鈴の電話で今断崖大学で何が起こっているのかを説明する。
「美鈴さんが武装無能力集団に。」
上条も大覇星祭で美鈴に会っている。
だからこそ、この状況が理解できないのだろう。
何故、彼女が狙われる必要があるのか。
「どうする?
これからお前が向かおうとしているのは、武装無能力集団との戦いだ。
異能も何もない、銃器による戦いになる。」
異能に対してなら幻想殺しは最高に相性いい。
しかし拳銃などの近代兵器は、最高に相性が悪い。
武装無能力集団となると喧嘩慣れしている。
上条一人では一対一でも苦戦する相手がいる可能性は高い。
それを分かっていながら、この事件は相性が悪いと分かっていてもこの男は。
「そんなの関係ないだろ。
俺も加われば捜査範囲は二倍になる。
美鈴さんを早く見つける事ができるかもしれない。」
「恐くないのか?」
「恐いに決まっている。
今も足が震えそうなのを我慢している。
でも、黙って見過ごす事もできない。
何より、一人じゃないからな。」
麻生は深いため息を吐く。
そして、上条を腰から持ち上げ、肩で担ぐ。
「えっ、恭介さん?」
「走るより、俺の能力で運んだ方が早い。
いいか?
絶対に右手で俺に触れるなよ。」
脚力を最大まで強化して、地面を蹴る。
そこら辺を走る車より早く移動しながら、断崖大学まで移動する。
車より速く走ったので、すぐに着く事ができた。
断崖大学の敷地に隣接している、メインとなる大学よりも、目的地であるデータベースセンターの方が二回りぐらい大きかった。
ドーム状のシルエットの中から、今も散発的な銃声や破壊音が聞こえてくる。
最初に大きな爆発があったせいか、結構な数の野次馬がきていた。
それに反して、警備員の数が少ない。
何かトラブルでもあったのか、警備員同士でほとんど口論になりかけている。
「潜入するのには好都合だな。」
「だな。」
肩から上条をおろし、その横を二人は駆け抜ける。
二人が駆け抜けるのを見た、警備員の制止の声が聞こえたが無視する。
上条は武装無能力集団の狙撃を恐れたが、中の捜索で手一杯らしく、狙い撃ちされる事はなかった。
ドアのガラスが全部砕けた正面入口へと突入する。
「当麻は美鈴の捜索を。
俺は出来る限り派手に動いて、敵の注意を引き付ける。」
「分かった。」
すると、どこから持ってきたのか麻生の手には二丁の拳銃が握られていた。
その銃はベレッタM92FS Inoxのカスタム品である。
バレルを6インチに延長し、象牙製のグリップに髑髏と2本のカトラスを埋め込んである。
いきなり物騒な装備を見て、上条は目を見開く。
「能力は使わないのかよ?」
「派手に能力を使えば、奴らは捜索に力を注ぐ。
相手に倒せそうな装備と戦力を見せつける事で、迎撃に人員を割かせる。
銃、使うか?」
一瞬、持っておこうかなと思った上条だが。
「やめておく。
下手に頼るより、こっちの方が咄嗟に判断できるだろ。」
パン!、と両手を合わして拳を強調する。
「美鈴の居る場所は『サブ演算装置保管庫』だ。」
それだけ言って、麻生は堂々と正面からホールを歩いて行く。
彼の役目は陽動。
それを分かっている上条は、別の道から美鈴を探す事にする。
後書き
この銃は知っている人は知っていると思います(笑)
感想や意見、主人公の技の募集や敵の技の募集など随時募集しています。
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