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イベリス

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第九十八話 母の法事その三

「酷い行いよ」
「そうなってるのね」
「だって自分を振り返らないで」
「勝手に偉いって思い込んでるから」
 そうなっているからだというのだ。
「もう成長なんてね」
「しないのね」
「そんな人どれだけ長生きしてもね」
「同じね」
「老害って言葉あるでしょ」
「いるわね、タチの悪いお年寄り」 
 咲はそうした老人のことを思い出して愛に答えた。
「よくね」
「こうした人はどうせ若い頃から碌でもなくて」
「お年寄りになって」
「そのままでね」
 若い頃から酷いままでというのだ。
「全く成長しないで」
「老害になってるのね」
「こうなるから」
 歳を取ればというのだ。
「もうね」
「いいことなんてないのね」
「そうよ、こんな人を尊敬する人もね」
「いないのね」
「それで自分をこの世で一番偉いとか」
「そうも思うのね」
「それでね」
 そのうえでというのだ。
「全く成長しないのよ」
「幾ら生きても」
「そうなるから」
 だからだというのだ。
「本当にそんな人にはならないでね」
「わかったわ」
 咲は愛に真剣な顔で答えた。
「間違ってもね」
「そうならないでね」
「ええ、物凄い立派な人を尊敬して」
「お手本にしてね、それでね」
「いつも努力ね」
「自分を振り返りながら」 
 一体自分はどうかと、というのだ。
「善悪どっちも含めてね」
「そうして自分を磨いていくのね」
「例えば野球でイチローさんや大谷さんを尊敬したら」 
 メジャーでも知られる彼等をというのだ、二人共日本の野球の歴史を変えたと言われるまでの活躍をしている。
「凄い人に近付ける様にね」
「物凄い努力するわね」
「大谷さんみたいになろうと思ったら」
 それこそというのだ。
「そうはなれないでしょ」
「怪物クラスだからね」
 大谷翔平となると、とだ。咲も言った。
「あの人って」
「そう、だからね」
「凄い人を尊敬することね」
「大したことない人はね」
「尊敬しないことなの」
「私は大したことないのよ」
 全く、そうした言葉だった。
「だったらね」
「尊敬しなくて」
「それで他の人をよ」
「お父さん達もだからな」  
 父も再び言ってきた、横には母がいる。
「尊敬なんてな」
「しなくていいの」
「ああ、あとな」
「あと?」
「幾ら立派な仕事をしていてもな」
 こう咲に話すのだった。 
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