イベリス
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第九十七話 東京のお盆その十三
「奥さんや娘さんに暴力を振るったりな」
「そんな人もいるのね」
「それで奥さんが実家に逃げたらな」
暴力に耐えかねてというのだ。
「クラブ持って来たりな」
「お酒飲んで」
「ああ、そんな人もいるんだ」
「それ犯罪よね」
「完全にな」
父も否定しなかった。
「その時は通報されなかったがな」
「そうだったの」
「親戚の人が来てな」
「場を収めたの」
「そうなったけれどな」
それでもというのだ。
「酒乱の人はな」
「そんなことがあるのね」
「だからな」
それ故にというのだ。
「酒乱でないことはそれだけでな」
「いいことね」
「ああ、咲もそうでなくてな」
それでというのだ。
「お父さんもいいと思っている」
「そうなのね」
「本当に酒乱はな」
「厄介ね」
「そうだ」
咲に強い声で話した。
「若しそうだったらそうならない位でな」
「止めておくことね」
「タレントさんでもいるからな」
「酒乱の人が」
「それで問題を起こしてな」
「干されたりするわね」
「横山やすしさんなんかな」
この伝説の漫才師はというと。
「酒でな」
「駄目になったのよね」
「ああ、それで亡くなったしな」
肝硬変になってしまってだ。
「本当に酒でな」
「身を滅ぼしたのね」
「あの人はな」
「そうなのね」
「大阪の人でもな」
横山やすしが大阪を拠点とする芸能事務所に所属し自宅も大阪にあったことからこう言った、尚出生地は四国であったという。
「こっちでも有名だったからな」
「お父さんが子供の頃も?」
「ああ、ただ子供の頃は有名でもな」
それでも言うのだった。
「問題起こしてな」
「お酒で」
「謹慎中飲酒運転で事故起こしてな」
息子の起こした事件で事務所にそう命じられていたのだ。
「それで事務所クビになって」
「駄目になったの」
「そこから色々あったけれどな」
支援者もいて芸能活動自体は何とか続いていたし選挙にも出たりしている。
「結局飲み過ぎてな」
「亡くなったのね」
「そうだったんだ、五十歳位だったか」
「まだ若いわよね」
「今人間八十年だからな」
「本当に若いわね」
「人間五十年はもう昔だ」
織田信長が言ったこの言葉はというのだ。
「もう八十年だ」
「そう考えると早いわね」
咲もそれはと答えた。
「本当に」
「それもこれもな」
「お酒のせいなの」
「控えないと十年で死ぬと言われてもな」
医師にそう言われていたというのだ。
ページ上へ戻る