おっちょこちょいのかよちゃん
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278 敵の世界の長との再戦
前書き
《前回》
三河口の所に急ぐかよ子達藤木救出班は本部から夕食の支給があった為に休憩する。そして食事と入浴を終えた藤木に対して「藤木に好意を寄せる」という洗脳から既に解放されたりえは藤木とは友達と思ってはいるものの、本当は杉山が好きだと告白する。それを聞いた藤木は絶望し、りえといるのが辛くなってしまう。そして三河口、湘木、そして冬田の元にレーニンが!!
古代中国のような御殿の付近にてにある集団が集まっていた。
「あそこかしらね」
「はい、間違いないですよ」
一人の男子高校生が剣を向けて確認していた。
「そっちにりえちゃんがいるって事だね?」
「行くわよ」
彼女らは囚われて行方不明となった杯の所有者の少女を奪還しに動く者だった。その杯の所有者の友人に護符の所有者の姉、そして異世界の剣の奪還に貢献した高校生達などで構成された者だった。
藤木は部屋を出て屋敷内を彷徨っていた。
(僕はもう、誰かを好きになっても嫌われるだけなんだ・・・。やっぱり卑怯者って言われるからそんな奴、好きになれるはずないんだ・・・)
藤木はふととある広間に来ていた。ここはりえと祝言を挙げた会場でもあった。
「う・・・」
藤木は泣き始めた。
「茂様、どうかなされたのですか?」
一人の遊女が入って来た。
「あ・・・」
「茂様、何かあったのですか!?」
「その・・・、僕、りえちゃんに急に嫌われちゃって・・・」
「え?そんな、茂様、お可哀想に・・・!!今、妲己様と紂王様を呼んで参ります!」
遊女がその場を離れた。だが、別の遊女を呼んで藤木を宥めた。
「婿である茂様を冷遇されるなんて嫁のやる事かしら?」
「今からでも私が代わりのお嫁に!」
「う、ごめん、皆に迷惑かけて・・・」
「気になさらないで下さい!妲己様が何とかしてくださいますよ」
その広間に妲己と紂王が入って来た。
「少年よ、安藤りえ嬢に嫌われたとな?」
「はい・・・、本当は僕の事が好きじゃないって・・・」
(そうか、やはりあの薔薇が枯れてしまったからか・・・。しかし、替えの物を調達するには遅い、か・・・)
「解った。安藤りえ嬢は私が始末しておく。嫁を変えてもよいぞ」
「え?できるんですか?」
「ああ、ここにいる遊女をいくらでもやるとも」
「・・・、はい」
妲己は広間を出た。
「茂様、今夜は私の部屋に・・・」
「いえ、私の所の!」
「お前ら、順番に泊めてやればよかろう」
「はい、そうでした」
藤木は遊女の部屋に連れて行かれた。
(あの少年も絶望か・・・。まさかこれを機に元の世界に戻ろうとすると思われるとこちらに不利なのだが・・・)
紂王はある懸念をしていた。
三河口、湘木、冬田の三人はある人物と相対していた。
「また会ったか、レーニン、・・・いや、杉山君」
「す、杉山くうん?!」
「よお、また会ったな」
「どうやら少しは強くなったみたいだな。本来ならば今お手合わせしたくはなかったが・・・」
三河口は威圧の能力を発した。
「ふ、俺があっけなくやられるとでも思ってるのか?」
杉山が対処した。
(そうか、あの時、俺の能力全てを写し取ったのか・・・)
「湘木、冬田さん、奴は俺達の道具を写し取って自分の技として使う能力を得ている。写されないようなに気を付けろ」
「おお」
三河口の威圧の能力を出し続ける。だが杉山もまた威圧の能力で引き続き迎撃する。
(そういえば・・・、前に黒手組と戦った時、俺や光江ちゃんの威圧の能力と奴等の機械の威圧の能力がぶつかり合った時、お互いの能力は正常に動作しなくなるようだったな・・・。だが・・・)
三河口は別の事を気にする。
(レーニンもまた別の能力を吸収してるだろ、例えば俺達が奪いに来るまで保管していた剣とかを・・・!!)
冬田が羽根で放水し、レーニンを押し流す。湘木も斧で水圧を放ち、加勢した。
(様子見・・・?しかし、杉山君の命を取るまでいくとこっちがまずくなる。だから戦闘不能にしても殺害はできん・・・!!)
「ふ・・・、この小僧といると能力が上手く作動せん・・・!!)
レーニンは急に衝撃波を放った。湘木と冬田の合体した水の攻撃が急に巻き返された。
「な・・・!!」
(やはり剣か、それとも別の能力を写し取っていたか!!)
三河口はそう察した。
「貴様らは反逆罪で死んでもらう!」
レーニンが無数の槍を四方八方に飛ばす。
「な!」
湘木が大木を出して楯とし、その動く枝で槍を弾き返した。しかし、数が多すぎてきりがない。
「く!」
三河口は武装の能力で返すが、これでは防御に精一杯である。
「ははは、それで守っても戦いは長引くだけだ」
「どうだ、前の俺より増しになったか?」
レーニンが杉山の姿に変わった。
「ああ、そうだな。だが、大将に近づけてもまだ認められる程ではない!」
「何!?」
杉山は衝撃波を三河口に向けて放つ。だが、三河口はそれらも武装の能力で防いでしまう。
「冬田、攻撃しろ!」
「あ、はい!」
水の攻撃を防がれて動けなくなっていた冬田に指示した。だが、レーニンおよび杉山は同時に武装の能力で防御した。
「防がれたか!」
「そういえば貴様、新たな武器を手にしたと聞くが、使用しないのか?」
「何の事だ?」
三河口はとぼけたが、バレていると解っていた。自身の従姉である護符の所有者ら本部守備班達と共闘した時に護符の能力で出された鎖鉄球の事である。アンドリューに西川純との戦いを突破するのに貢献し、ベニートという男ともその鎖鉄球で奮闘した。おそらくベニートを介してその事を知ったのではないかと三河口は推察した。
(だが、あれは『仮の武器』・・・。無闇には出したくない・・・)
三河口はできれば最後の切り札としてその武器は温存しておきたかったのである。
「なら私が否応なく使わせるほど貴様らを痛めつけてやろう」
レーニンの攻撃が激しくなった。
(だめだ、前に進めん・・・!!)
「ほう、どうやらもっといい餌が来てくれたようだ」
「は?」
その時、岩石が飛んできた。レーニンは武装の能力で弾こうとするが防ぎきれず、右肩に当てられた。
「もしかして・・・」
「大野くうん!?」
冬田は嬉々として西側を向いた。そこには杖の所有者・山田かよ子や大野けんいち、まる子ことさくらももこ、ブー太郎こと富田太郎などで構成された藤木救出班が駆けつけていた。
「よう、お前ら」
「杉山!」
「す、杉山君・・・!!」
杖の所有者は好きな男子に再会できたが共に知り合いの高校生と戦う事で食い止めねばという複雑な気持ちだった。
「やっと会えたね、杉山君・・・!!」
かよ子は杉山とは遠隔で幾度か会話しているが、本人と直接会うのは初めてだった。だが、見聞の能力を持っていないかよ子でも戦争主義の世界の長と合体した杉山には少し怯えそうになった。
藤木が去った後の部屋。りえは一人だけになった部屋にただ佇んでいた。
(藤木君を傷つけちゃったかしら・・・?でもっ、私は本当の事を言ったわっ、それでも藤木君が元の世界に戻りたいって思わせなきゃっ・・・!!)
その時、戸が開いた。
「藤木君っ・・・?」
しかし、入って来たのは藤木ではなく、妲己だった。
「安藤りえ嬢、お前は婿である藤木茂を泣かせたそうね」
「う・・・」
「お前はあの婿が気に入らないのか?祝言を挙げたというのに」
「そ、それは・・・」
(まずいわっ、既にバレたのねっ・・・!!)
りえは焦る。このままでは自分の命が消されてしまうと。
「それなら嫁は他の者に変えよう。もうお前は用済みだ」
その時、爆発音が響いた。
「な、何だ!?」
妲己もりえも何事かと思う。りえは窓を見た。
「あれはっ・・・!!」
りえはあるものを確認した。それには見覚えがあった。あれはアイヌの神、カムイである。
(ありさん達が来てくれたのねっ!)
りえは救援で希望が見えると思うのだった。
後書き
次回は・・・
「杖の通用具合」
羽柴家の次女・あり達はりえを奪還すべく紂王の屋敷を襲撃していく。そしてレーニンおよび杉山と交戦する三河口の所に辿り着いたかよ子は自分の進化した杖でレーニンとどれだけ対抗できるか試みる。レーニンはその杖の能力を吸収しようとする・・・!!
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