少女ラプソディー
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第一章
少女ラプソディー
佐藤和佳奈はこの時舞い上がっていた、誰が見てもそうだった。
足取りは軽やかでファッションも派手になっていた、そして語ることはいつも一つの話題ばかりだった。
「ねえ、昨日勇気君ってね」
「勇気君の横顔ってね」
「勇気君っただね」
「ええい、うざい」
友人達はキャピキャピと話す和佳奈に言った、和佳奈は癖のある長い赤髪を後ろで束ね大きな切れ長の目と濃い眉にやや面長の顔で小さな口と高めの鼻を持っていて背は一六六程でスタイルは中々のものだ。
その彼女にだ、友人達は言った。
「はじめての彼氏が出来てね」
「それで嬉しいのはわかるけれど」
「あんた最近そればかりでね」
「正直うざいのよ」
「幸せオーラ撒き散らして」
「リア充爆発しろよ」
「ちょっとは黙りなさいよ」
こう言うのだった。
「本当にね」
「嬉しいのはわかるからね」
「幸せだってのは」
「だからよ」
それでというのだ。
「もういいから」
「おのろけは他のところで言ってね」
「ブログでもツイッターでも」
「5ちゃんでもそう言えるスレッドあるでしょ」
「そこで独り言で言ってね」
「そうしてね」
「いや、そう言われてもね」
和佳奈は通っている高校のクラスメイト達に話した。
「今の私ってね」
「頭の中彼だけね」
「柳吉君だけね」
「そうだっていうのね」
「そうよ、何もかもがね」
彼の全てがというのだ。
「最高だから。生まれてはじめて人を好きになって」
「それで告白して」
「それで受けてもらって」
「交際して」
「彼のよさがどんどんわかってなのね」
「もう最高だから」
それでとだ、のろけきった顔で話した。
「私も言うのよ」
「今そうしてなのね」
「もう何処までも」
「のろけきって」
「それでなのね」
「そうよ、けれど皆がそう言うなら」
それならと言う時ものろけきった顔であった。
「ブログやツイッターとか立ち上げて」
「そこで言ってなさい」
「好きなだけね」
「個人情報は出さない様にして」
「それで掲示板のスレでもよ」
「書いてね」
「それじゃあそうするわね」
こう言って実際にだった。
和佳奈はブログを立ち上げツイッターで自分のアカウントを作成して5ちゃんでそうしたスレッドを見付けてだった。
個人情報を出さない様にして兎に角のろけを書きまくった、誰かが見てどんな突っ込みが入ってもお構いなしだった。
兎に角書いて書いて書きまくった、そして柳吉一七五程のすらりとしたスタイルで面長で黒髪をざんばらにしてだった。
小さな目と口を持ち優しい笑顔を浮かべている彼と一緒の時間を過ごした、彼は同じ高校の同級生で。
文芸部に所属していたが和佳奈は女子バレー部に入りつつだ。
文芸部にも入ってそちらでも彼と共に過ごす様になった、二つの部活を掛け持ちしてまでそうしてだった。
彼と一緒にいた、それでブログやツイッターやスレッドで言い。
学校では言うなと言われたので家でだった。
やたらと母や妹の実久に言うが姉を中学生にした様な彼女は。
ある日うんざりとした顔になってだ、姉に言った。
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