イベリス
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第九十六話 お盆になりその五
「誰かがいて」
「そこにいるのね」
「そうよ、お父さんとお母さんがいて」
「そのお父さんもお母さんもね」
「お祖父ちゃんとお祖母ちゃんがいて」
「それでさらにね」
咲に対して話していった。
「ご先祖様がいて」
「私達がいるのね」
「だからね」
「法事とかお墓参りはなのね」
「ちゃんとしないとね」
「駄目なのね」
「そう思ってるのよ」
こう言うのだった。
「私としては」
「ううん、そうなのね」
「咲ちゃんはそういうこと考えたことは」
「なかったの」
愛に正直に答えた。
「実はね」
「そうだったのね」
「けれど今お姉ちゃんとお話して」
それでというのだ。
「考え変わったわ」
「そうなのね」
「言われてみれば」
愛にというのだ。
「そうね」
「そうでしょ、だから私もね」
「法事出てるのね」
「お墓参りにもね、ただね」
ここで愛はこうも言った。
「死んでよかったとかね」
「法事とかお墓参りでそう思われたら」
「残念よね」
「行いが悪くて」
「それで生きてる時から死んでしまえばいいとか思われていてね」
それでというのだ。
「死んでね」
「法事とかお墓参りでもそう思われるのね」
「流石にこれはね」
愛はさらに話した。
「残念でしょ」
「そうよね」
咲もそれはと答えた。
「やっぱり」
「そうでしょ」
「ええ、親戚や子供や孫に」
「子孫の人達によ」
「そう思われたら」
それならというのだ。
「もうね」
「嫌よね」
「やっぱりあれよ」
愛は確かな声で言った。
「人はいい人だったってね」
「死んで思われることね」
「いい時に死んだか死ぬべきじゃなかったとか」
「そう思われることね」
「死んでよかったとかもっと早く死ねばよかったとか」
その様にというのだ。
「思われたらね」
「嫌ね」
「そう思わない?咲ちゃんも」
「それはね」
咲も応えた。
「言われたらね」
「そうでしょ」
「ええ、生きていてね」
そしてと言うのだった。
「評判よくて好かれていて」
「死んでからもでしょ」
「よく思われていたら」
それならというのだ。
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