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仮面ライダーAP

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北欧編 仮面ライダーRC&レジスタンスガールズ 第5話


 ――解放戦線の作戦会議室として利用されている、廃墟の一室にて。街の地図や幾つもの銃器が乱雑に置かれているテーブルを挟み、解放戦線のメンバー達と4人の男達が、真っ向から睨み合っていた。

「さて……結論から言うけど。あんた達の助けなんて要らないわ。死にたくなかったら、さっさと日本にでも逃げ帰ることね」

 無数の銃口に囲まれながらも、全く怯える様子がない4人の男達。彼らと向かい合っているニッテは、組織を代表して明確に「拒絶」の意を示している。
 むっちりとした太腿を持ち上げ、肉感的な足を組んでいる彼女は、冷酷な眼差しで男達を見渡していた。組まれた両腕が豊満な乳房をむにゅりと寄せ上げている。

 先ほど穹哉達を包囲していた解放戦線のメンバー達全員が、決して広いとは言えないこの作戦会議室に集結しているためか。シャワーを浴びる暇もなく戦い続けて来た美少女達の瑞々しい肉体に染み付いている、芳醇かつ濃厚な女体の香りが、この一室に充満していた。
 並の男ならこの香りに耐え切れず、理性を溶かされていたところだろう。だが、仮面ライダーとして幾つもの視線を潜り抜けて来た4人の猛者は、極上の美少女達に囲まれているこの状況下でも眉一つ動かしていない。

「……余所者が信用出来ないという気持ちは分かる。だが、この街の危機にノバシェードが関わっている以上、もはや君達だけの問題ではないんだ」
「余所者……そう、余所者だ。それも確かにある。だが、それだけが理由ではない」

 そのライダー達を代表し、穹哉が真っ先に声を上げる。だが、リーダーの傍らに立つヴィクトリアの声色は冷ややかだった。

「……ノバシェードは、旧シェードのせいで大勢生まれた改造被験者達が、迫害から逃れるために結成した自助組織を前身としている。それは、あんた達の方がよく知っているな?」
「あぁ。そして俺達新世代ライダーは、そのノバシェードのテロに対抗するために作り出された。……かつて旧シェードが、対テロ組織として作り出されたようにな」

 そんな彼女の意思を継ぐように、エヴァが静かに口を開く。その口振りから彼女達の胸中を察した忠義は、わざとらしく旧シェードの名を口にした。
 次の瞬間、周囲の美少女兵士達が色めき立ち、忠義に対して敵愾心を剥き出しにする。そんな彼女達の反応を一瞥した正信は、確信を得たように目を細めていた。

「……本当のところは、そこか。ノバシェードも仮面ライダーも、源流は日本政府にある。だから俺達も信用出来ない……と」
「私達が市長に保護されるまで、なぜ孤児だったのか分かりますか。皆、旧シェードに……日本政府が造った化け物共に家族を殺されました。そしてあなた達、仮面ライダーは……その旧シェードと同じ目的で、同じ国から生まれて来た……! そんなあなた達をどうやって、味方として迎え入れられるとっ……!」

 核心を突くような正信の言葉に、レオナがテーブルを叩いて怒号を上げる。その弾みで豊満な乳房がばるんっと弾み、より濃厚な汗の匂いがむわりと広がった。
 だが、彼女がぷるっと乳房を揺らして正信に掴み掛かるよりも先に、ヴィクトリアがその肩を掴んで制止する。振り上げられた拳は行き先を見失い、ゆっくりと降ろされていた。

「レン、そこまでだ。……少なくとも彼ら自身に、私達への害意はない。それは分かっていることだろう」
「……っ」

 ニッテをはじめとする、4人の主力メンバーだけではない。この作戦会議室に集まっている美少女兵士達全員も、本心では理解している。
 新世代ライダー達は改造人間であることを前提としていない、生身の警察官達が中心となっている遊撃要員であり、旧シェードとは似て非なる存在。このように対立する意味など本来は無いはずであり、むしろ共に手を取り合うべきなのだということを。

 だからこそ彼女達は皆、手を上げた穹哉達を撃とうとはしなかった。……が、それでも表立って割り切ることは出来なかったのである。
 ライダー達と協力しなければ、この街を救うことは出来ない。それが分からないほど子供でもなければ、簡単にそれを受け入れられるほど、大人でもないのだから。

 迷いを滲ませた表情で互いを見遣っている、解放戦線のメンバー達。そんな仲間達の様子を一瞥したニッテは、暫し逡巡した後――自分達が所有している数少ない軍用糧食(レーション)を、穹哉達の前に放り出すのだった。

「……それ食べたら、さっさとこの国から出て行って。そして、全部忘れて。私達が言ったことも、全部」
「……」

 それは、難しい立場に居る彼女達なりの「謝意」だったのだろう。乳房と桃尻をぷるんっと揺らし、椅子から立ち上がったニッテは穹哉達から目を逸らすように、Ak5の負い紐を掴み上げていた。

 自分達を助けに来た者達に対し、謂れのない罵声を浴びせ、拒絶してしまったことへの罪悪感。その感情を帯びた眼差しが、穹哉達自身に向かうことはなかった。
 だが男達は、そんなニッテの横顔で全てを察し、敢えてそれ以上は何も言わずに、黙って軍用糧食を受け取っている。

「……行くわよ、皆。そろそろ、『作戦』の開始時刻だわ」
「あぁ……そうだな。行こう、市長を救うためにも」

 その様子を見届けたニッテは、ヴィクトリアをはじめとする仲間の美少女兵士達を引き連れ――次々にこの作戦会議室を後にして行くのだった。
 何人かの兵士は申し訳なさそうに穹哉達を一瞥し、後ろ髪を引かれるような表情で会議室を去っている。正規の訓練を受けていない彼女達ならではの情愛の深さが、その貌に顕れていた。

 そして、この一室に取り残された4人の男達は。ニッテが残して行った軍用糧食の箱を見下ろし、戦う決意を固める。

「……ジャック。やはり彼女達は、自分達だけで市長を助けに行くつもりのようだな。子供が銃なんて持つべきじゃない……と綺麗事を言うのは簡単だが、彼女達が耳を貸すことは恐らくないだろう。この街を、ノバシェードから解放しない限りは……」
「あぁ。……子供らしい意固地、で片付くほど簡単ではないな。だからと言って、このまま帰るつもりなど毛頭ないが」
「彼女達はさぞかし嫌がるだろうが……ご機嫌取りまで命じられた覚えはないからな」
「じゃ、決まりだな。せっかくあの子達が恵んでくれたんだ、一仕事する前に腹拵えと行こうぜ! ……うげっ!?」

 何としても「仮面ライダー」としての任務を完遂し、この街と彼女達を救う。その決意を新たにした男達を代表するように、忠義は軍用糧食の箱を開いた――のだが。

 そこから漂う強烈な悪臭に、思わず頬を引き攣らせてしまうのだった。先ほどまでこの部屋を満たしていた美少女兵士達の濃厚な香りすら、一瞬で掻き消してしまうような臭いに男達の表情が即座に曇る。

 ――この国の軍用糧食は、世界一不味いということで大変有名なのだ。それでも彼女達はノバシェードの侵略に少しでも対抗するため、この悪臭に耐えて来たのである。

「……前言撤回。俺、遠慮しときます」
「お前が始めた流れだろうが……。いつ『次』があるか分からない状況なんだ、食えるうちに食え。日本に帰ったら、銀座の回らない寿司屋に連れて行ってやるから」

 そんな解放戦線のメンバー達の、ただならぬ信念の一端を垣間見た忠義は、先ほどまでの威勢をすっかり失ったように蓋を閉じようとしていた。
 その手をガッシリと掴んで阻止した穹哉は、彼女達と同じ「試練」を乗り越えるべきだと判断している。鼻を摘みながら。

「な、なぁジャック。これ……なんだか分かる? 固まった重油?」
「……ハンバーグ、だそうだ……?」
「なんでちょっと自信なさげなんだよ! 目を逸らすな! 腹から声出せ!」

 その隣で、食べ物なのかも怪しい物体を目の当たりにした正信は、目線を合わせようとしないジャックに食って掛かっている。不味い軍用糧食など散々食べ慣れているはずのジャックですら目を背けているのだから、相当である。

 そんな彼らの騒ぎ声が鎮まり、男達が憔悴し切った様子で会議室から出て来たのは――それから約10分後のことであった。戦う前からすでにグロッキー状態となっている彼らだが、それでも足を止めるわけには行かない。
 人間の自由と平和を守る。それが、仮面ライダーの使命なのだから。
 
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