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仮面ライダーAP

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特別編 仮面ライダー羽々斬&オリジンモンスターズ 最終話

 新世代ライダー達と始祖怪人達の死闘は、ついに終焉を迎えた。
 実態としては「相討ち」と呼ぶに相応しい決着を迎えたケースも多かったが、この戦いを見届けた誰もが、「仮面ライダーの勝利」を確信している。それは、直に彼らの強さを体感した始祖怪人達も同様であった。

「……強え、な。お前達のような人間達ばかりなら……お前達のような人間が、あの時代にも大勢居れば。俺達改造人間なんざ……初めから必要なかったのかも知れねぇな」
「だったら……もう、いいだろうッ……! もう、終わりにしろッ……!」

 かつてはミサイルイナゴと呼ばれ、恐れられていた橋部一雄。憑き物が落ちたような彼の言葉を耳にした芦屋隷は、ボロボロになりながらも降伏を勧告していた。

「まさか……肉体を捨てて怪人となったボク達が、鎧を着ただけの……生身の人間に、敗れることになるなんて、ね……」
「芦屋博士のおかげでパワーアップした、僕達のスーツは伊達じゃなかった、ということさ……!」

 アルコサソとしての力を失った、アシュリー・フォール。彼の前で膝を着いている久我峰美里は、息を荒げながらも自分達の勝利を確信していた。

「……違うな。どれほど強力な外骨格だろうと、その性能に胡座をかくような使い手では遠からず限界が来るものだ」
「所詮……人が造るものだからな。俺達の装甲服も、お前達の身体も」

 だが、サザエオニヒメこと福大園子と、トライヘキサことジョン・ドゥは、美里の言葉を否定する。装甲服の性能ではなく、それを纏う人間の力が、この結果を齎したのだと彼らは理解しているのだ。

「俺達の攻撃を見切れるようになるまで、お前達の命を繋いでいたのは紛れもなくそのスーツだが……お前達自身の努力と成長が間に合わなければ、宝の持ち腐れで終わっていたところだ」
「やけに……私達のことを、買うのですね」

 水見鳥清音は野戦服の上着を羽織った格好のまま、紅衛校の言葉を訝しんでいる。一方、放送局の裏手でも似通った会話が紡がれていた。

始祖怪人(われわれ)を倒したからには、妥当な評価だろう。ボディの老朽化を言い訳にするつもりはない。……お前達は確かに、私達を打ち破ったのだ」
「だったら……もう終わりにしろ。戦いはもう……いや、ずっと前から終わっていたんだ」

 地に倒れ伏したプラナリアンこと波田水過を見下ろす一二五六三四は、憐れむような眼差しで彼と視線を交わしている。
 さらに放送局内のニューススタジオでも、同様のやり取りが続けられていた。

「……脆弱な肉体じゃあ、恐怖に打ち勝てねぇ惰弱な精神しか宿らない。だから人間はその弱い身体を捨てて、強靭な精神を獲得しないと……無益な争いを繰り返してしまう。俺達はずっと……そう信じて戦ってきた」
「それは徳川清山の洗脳だ! 奴の改造手術で……!」

 Dattyこと間柴健斗の言葉に、悲しげな声を上げる南義男。彼の叫びは、この荒れ果てたスタジオ内に虚しく響き渡っていた。

「……いいえ、違います。私達始祖怪人が造られた当時は、清山様の技術はまだ脳改造にまで着手できる段階ではなかった。私達はずっと、私達自身の意志で戦って来たのです」
「自分自身の意志で選んだ道だからこそ……俺達に負けた事実も、受け止められると?」

 ハイドラ・レディとしての力を喪失し、ただの無力な女と成り果てた加藤都子。彼女の傍に立つ森里駿は、憐れむように彼女を見下ろしている。

「そうだ。そしてお前達の成長を見て、ようやく理解した。生身という弱い肉体だからこそ、その弱さに由来する恐怖に抗おうとする。そこには……俺達すらも凌ぐ、強靭な精神というものが在る。俺達が、人間としての己を捨ててもなお得られなかったものが……今、お前達の手にあるのだ」
「貴様達が、得られなかったもの……か」

 かつてはブレイズキャサワリーと呼ばれ、恐れられたブリード・フラナガン。哀れな敗残兵と化している今の彼を、東方百合香はどこか物憂げに見据えている。

「だが、お前達は……あの日の私達と、同じだな。賽の目が出てしまった後になって、現れる。運命を変え得る強さを持っていながら……その分かれ目に間に合うことがない」
「何を言っている……?」

 タパルドこと、速猟豹風。彼女をはじめとする始祖怪人達の脳裏に過るのは、47年前に某国で起きた惨劇の記憶であった。その暗澹たる悲劇を知らない道導迅虎は、何事かと眉を顰めている。

「気が遠くなるほど……遠い昔のことよ。あなた達が知る必要はないわ」
「もういい……もう喋るな、ソコロフ。続きは病院で聞いてやる。傷が治ったら、そこから先は拘置所だがな」

 ケルノソウルとしての力を使い果たし、ただのプリヘーリヤ・ソコロフとして倒れ伏している1人の少女。ジャック・ハルパニアはそんな彼女をこの場から連れ出そうとしていたが、ソコロフは片手でそれを制止している。

 一方、ニューススタジオからさらに上の階にある廊下では、立ち上がった明日凪風香が間霧陣に手を貸そうとしていた。

「ふっ……面白い奴らだ。この期に及んで、俺達を人間のように扱うとはな。ただの人として接されたのは……もう、何十年振りになるだろうか」
「言葉と心が僅かでも通じ合うなら、どんな姿でも……どんな力があっても、俺達は人間同士だ。そこを譲るつもりはない」

 だが、間霧は風香の手を振り払い、手助けを拒もうとする。その意図が読めず、風香は怪訝な表情を浮かべていた。もう戦いを続行出来る力は微塵も残っていないというのに、これ以上抵抗して何になるのか――と。

「……お前達は一つ思い違いをしているようだから、教えておいてやる。俺達は、明智天峯達とは違うぜ」
「なに……!?」
「俺達は皆、自らの信念を以て自らの意志で、人間の身体を捨てたのさ。この期に及んで、人間の法に則るつもりなんざ毛頭ねぇ」

 一方、割れたガラス壁から墜落した戦馬聖を追い、1階に降りていた忠義・ウェルフリットも。対面した戦馬の言葉に不穏な気配を覚え、眉を顰めていた。

 屋上で力尽きたエインヘリアルこと山城一も、鳥海穹哉に対して同様の内容を語っている。穹哉も忠義や風香達と同様に、始祖怪人達の動向を訝しんでいた。

「……冷戦の時代でも、アフガンの戦地でも。我々は皆、地獄という言葉でも足りない『惨劇』を毎日のように見てきた」
「東西の代理戦争と……2001年から始まったアフガニスタン紛争のことか」
「そのような時代にも負けまいと、懸命に生きていた者達が皆……愚者の都合一つで、『生贄』にされる。それが……あの世界の『日常』だった」
「……!? おい、待てッ!」

 穹哉の予感は、最悪な形で的中しようとしていた。山城は言葉を紡ぎながらも、屋上の淵に向かって動き始めたのである。
 力をほとんど使い果たした状態でありながら、彼は地を這ってでも奈落に進もうとしていた。その後を追うには穹哉の消耗があまりにも激しく、彼はほとんど身動きが取れずにいる。

「それから何十年も経つというのに……脆弱な肉体に囚われた愚かな人間共は、それでも過ちを繰り返している。我々シェードという……万国共通の大敵が現れてもなお、だ」
「どこへ……いや、何をするつもりだ!?」
「だから我々は……この命を賭して、お前達の前に現れたのだ。この時代、この世界を脅かす……純然たる絶対悪。最後の『怪人』としてな」
「最後の、怪人……!?」
「……我々は人では無い。故に、お前達が悔やむことはない。お前達がお前達の信念に従ったように……我々もまた、我々の理念に殉ずるのみなのだから」
「ま……待てッ……!」

 やがて、淵に辿り着いた山城は穹哉の方へと振り返り、ふっと笑みを浮かべる。自分を打ち倒した「勝者」を見詰める、称賛の眼であった。
 だが、彼が――彼らがこれから行おうとしていることは、穹哉達警察官にとっての「勝利」からは程遠いものである。それを理解しているからこそ、彼は嗤っているのだ。

「この決着は……気に食わんか? それなら……我々が『勝者』だ」
「……!」

 山城だけではない。他の始祖怪人達も皆、自身に打ち勝った新世代ライダー達の奮闘を讃える一方で、警察官としての「敗北」を突きつけようとしている。

 そしてライダー達にはもう、それを阻止出来るほどの力は残されていなかった。最後の最後で、始祖怪人達はある意味においては「勝利」してしまうことになる。

「あ、天塚……! 奴ら、自爆する気だッ……!」
「……!? なん、だって……!?」

 その「企み」に気付いたライダー達の1人である、マス・ライダーこと山口梶は、仰向けに倒れたまま掠れた声を絞り出していた。
 そんな彼の悲痛な叫びを近くで耳にしたのは、同じく満身創痍となっていた――仮面ライダー炎こと、天塚春幸だった。

「ふぅっ、うっ、ぐぅうッ……!」

 先ほどまで他のライダー達と共に、黒死兵との死闘を演じていた若手の美男子警察官は、片脚を引き摺りながら「同期」の元へと歩み寄って行く。炎柄のライダースジャケットは薄汚れており、その額からは決して少なくない量の血が流れていた。
 脚の負担を一切考慮せずに出力全開の「爆炎脚」を繰り出していたせいなのか、鳥海穹哉と同様に片脚もへし折れてしまっている。芦屋隷の手によって極限までスーツを強化されていたことが、裏目に出ていたらしい。

 それでも何とか自分の近くに歩み寄って来た親友を見上げ、梶は最後の力を振り絞るように声を震わせていた。

「聞いてくれ、天塚ッ……! 俺の熱源探査システムによると、奴らは全員『同時』に自爆しようとしている……! 寸分の狂いもなく『同時』に、だ……!」
「同時だって……!? 本当なのか、山口!」
「あぁ……! だが、いくら奴らが最強の改造人間だからと言っても……あれほど損傷している状態なのに、自力でそこまで完璧にタイミングを合わせられるとは考えにくい……!」
「……ということは、全員の自爆装置を外部から一括で管理している『大元』がいる? ……まさか!」
「あぁ、きっとそのまさかだ……!」

 梶が被っているマス・ライダーの仮面。そこに搭載されていた熱源探査システムは、始祖怪人達が0.1ミリ秒の狂いもなく、「同時」に高熱を帯び始める瞬間を観測していた。
 仮面ライダーRCの打撃によって半壊している今の状態でも、その機能は辛うじて生きていたのである。

 始祖怪人達が全くの「同時」に自爆するつもりだとしたら、その起爆装置を一元的に管理している「頭脳部」があるはず。そんな機能を持ったコンピューターなど、一つしか考えられない。

 そして梶の仮面は、そのコンピューターから発信されていた「信号」もキャッチしていた。

「ガラクタ野郎を動かしていた、あの輸送車に積まれてるスパコン……! あそこから起爆装置を作動させる『信号』を発信してるんだ……!」
「だったら、あいつを止めればいいんだな……! 分かった、任せてくれッ……!」

 両腕の骨が砕けているため、LEPを積んだ兵員輸送車に視線を向けることしか出来ない梶。そんな彼の無念を汲んだ春幸は、片脚を引き摺ってでも輸送車に迫ろうとしている。

「死なせて、たまるかッ……! 俺達は仮面ライダーである前に、警察官なんだ……! 犯人を殺すために来たんじゃない、捕まえに来たんだ……! 絶対に、死なせるもんかよぉおッ……!」

 何度も転んでは血反吐を吐き出し、それでも息を荒げて必死に立ち上がり、春幸は進み続けて行く。兵員輸送車はもう、目の鼻の先であった。

「もう、少し……! もう、少っ……!」

 だが、後一歩というところで力尽きたように倒れ伏してしまう。
 彼はまだ前に進もうと指先を地面に引っ掛けていたが、そこから立ち上がるには、余りにも血を失い過ぎていた。

 ――そして。

「ついに……この時が来たようだな」

 戦いに敗れ、「覚悟」を決めた始祖怪人達は――己の内側(・・)から迫り上がって来る「灼熱」を感じながら。最後の力を振り絞るように、震える指先で胸元の無線機に触れる。
 そして、その指先で無線機の周波数を――二通り(・・・)の数字に揃えるのだった。だが、そこから発せられた通信に応答はない。

 それはもう、決して届くことのない最期の任務報告。もう繋がることのない、2人の男達に向けた無言のメッセージだった。

 所詮、幻に過ぎない。現実の光景であるはずがない。それでも死せる勇者(エインヘリアル)達は、確かに視たのである。

 かつて共に、激動の時代を生き抜き――ほんの一足早く、先に逝ってしまった男達の背中を。彼らは、最期に視たのだ。

 ――そうか、出迎えに来たのか。お前達はいつも、我々の先を行ってしまうな。いつもながら、せっかちな奴らだ。もう……我々の力は、必要ないのだな。それを、心から信じられる時代が……やっと、来たのだな。

「待っ――!」

 心の底では人でありたいと願っていた明智天峯達と、心の底から怪人であることを受け入れていた始祖怪人達。その違いが、命運を分けたのだろう。

 穹哉達は、「待て」と言い切ることすら出来なかった。

 仮面ライダーRCを失ったLEPによる、自爆システムが起動するのと同時に――全ての始祖怪人が、跡形もなく爆ぜて行く。
 数十年にも渡る喜びも、悲しみも、何もかも掻き消して。爆炎の向こうへと、消えて行く。

 ミサイルイナゴ、橋部一雄。享年72歳。

 アルコサソ、アシュリー・フォール。享年63歳。

 トライヘキサ、ジョン・ドゥ。享年55歳。

 サザエオニヒメ、福大園子。享年73歳。

 紅衛校。享年61歳。

 プラナリアン、波田水過。享年68歳。

 Datty、間柴健斗。享年77歳。

 ハイドラ・レディ、加藤都子。享年71歳。

 ブレイズキャサワリー、ブリード・フラナガン。享年66歳。

 タパルド、速猟豹風。享年73歳。

 ケルノソウル、プリヘーリヤ・ソコロフ。享年58歳。

 レッドホースマン、戦馬聖。享年75歳。

 カマキリザード、間霧陣。享年95歳。

 そして――エインヘリアル、山城一。享年117歳。

 彼らは最期まで。人ならざる怪物として、死することを選んだのである。
 まるで徳川清山と、羽柴柳司郎の後を追うかのように。

「ば、馬鹿野郎ッ……! それでも、それでも俺達にとって……お前達はッ……!」

 半壊した仮面の下で、苦悶の表情を露わにしながら。ケージこと穹哉は、悔しげに地面を殴り付けていた。

「ち……ちくしょうがぁあッ……!」

 立ち上がることも出来ないほどの重傷を負っている彼に出来ることは、それだけだったのである。それは、始祖怪人達の自爆を許してしまった忠義達も同様であった。

「くっ、そ……ぉ、おぉおッ……! 許してくれ、山口ッ……!」
「天塚ッ……!」

 兵員輸送車の目前で力尽きていた春幸は、地に伏していたおかげでLEPとRCの自爆に巻き込まれることなく、一命を取り留めている。
 だが、自爆の仕掛けを理解していながら阻止出来なかった彼の表情には、安堵の色など一欠片も無い。そんな彼の苦悩を慮る梶も、痛ましげに目を伏せている。

 ――かくして。始祖怪人達は新世代ライダー達に戦士としての「勝利」を明け渡し、警察官としての「敗北」を突き付けた。

 そして、組織の最高戦力だった彼らの全滅を以て、ノバシェードの壊滅は決定的なものとなったのである。だが、この戦いには生きた「勝者」など居なかった。
 新世代ライダー達は最後の最後まで、始祖怪人達に警察官として勝利することは出来なかったのである。この戦いの終焉をテレビやネットで見届けていた世界中の人々は、表面上だけの「仮面ライダーの勝利と生還」に沸き立っていたが――その当人達は皆、沈痛な面持ちで俯いていた。

 彼らだけではない。中継を通してライダー達を見守っていた番場惣太総監をはじめとする、彼らの理解者達も物憂げに視線を落としている。
 ワシントンから戦いの行方を見守っていた、インターポールのロビン・アーヴィング捜査官。研修先の島から始祖怪人達の死を目の当たりにしていた、番場遥花。その遥花の研修先に居た勤務医こと、南雲サダト。そして――遠い穏やかな地で、静かに暮らしていた吾郎と日向恵理。
 新世代ライダー達が味わっている苦悩と敗北感に理解を示していた彼らは、歓喜の声を上げる他の人々を他所に。中継映像に映されている彼らの姿に、労わるような眼差しを向けている。

 そして、苦い決着を迎えた彼らを優しく包み込むように――戦いの終わりを告げる眩い夜明けが、放送局のビルにも差し込んでいた。

 「仮面ライダー」と呼ばれる者達も、「怪人」と呼ばれる者達も居なくなる新しい時代。
 これは、そんな2022年に至る直前に起きていた、最後の戦いであった――。

 ◆

 ――遥か遠くのアジア大陸に在る某国の国境線付近に、今も残されている森林部。その奥深くには、16輪の花々がひっそりと咲き乱れていた。

 今となっては誰も居ない、ただ鬱蒼と生い茂る森だけとなっているその場所はかつて、「ツジム村」と呼ばれていた。
 反政府ゲリラを恐れた当時の国防軍の暴走により、滅ぼされてしまった悲劇の村として知られている。

 もはや、その悲劇の真実を知る者は数えるほども居ない。それでも、その地に咲く花々は、全ての戦いが終わった今も強く生き続けている。

 かつてこの地を襲った無念を噛み締め、全ての業を一身に背負い。激動の時代を「怪人」として戦い抜いた、16人の戦士達のように――。

 ◆

 ――穹哉さん! 本当なんですか、警察辞めるって……!

 ――忠義……あぁ、その通りだ。俺の脚はもう……治らないらしい。日常生活は送れても、犯人を追って走ることは……もう出来ないと言われたよ。

 ――そんな……!

 ――結城丈二(ゆうきじょうじ)博士の改造手術に頼る手も、考えたことはある。……けど、やっぱり止めにしたんだ。

 ――どうして! 脚だけでも改造しちまえば、警察を辞める必要なんて……!

 ――つまらない意地にしか聞こえないかも知れないけどさ。俺は、生身(あり)のままの俺でいたいんだ。

 ――!

 ――俺の一生を賭けて……見せ付けてやりたいんだよ、「あいつら」に。何者でもない、生身の人間だからこその強さって奴を。

 ――穹哉さん……。

 ――あいつらは自分達を「勝者」と言ったが……死ぬことでしか勝ち取れないものがあるなんて、俺は認めない。俺は……何の特別な力も無いただの人間として、何としても生き延びて……あいつらを超えて見せる。

 ――分かりました。だったら……俺もちょっと、休暇を貰います。

 ――休暇? どうする気なんだ?

 ――決まってるでしょ、アメリカにいる光博士に会いに行くんです。彼女の力を借りればきっと、穹哉さんの脚を元通りに治せる方法だって見つかるはずです。いいや、絶対に見つけてみせる。

 ――忠義……。

 ――命ある限り、仮面ライダーは絶対に諦めない……でしょう? だから……どうか死なないでくださいね、穹哉さん。

 ――あぁ……分かってる。俺はまだ、逝けないよ。あいつらにも……「勝ち逃げ」されたくはないからな。
 
 

 
後書き


 今話を以て、特別編「仮面ライダー羽々斬&オリジンモンスターズ」は晴れて完結となりました!
 前章に当たる「ライダーマンG&ニュージェネレーションGライダーズ」の最終話で言及されていた、「ノバシェード壊滅までの2年間」の間に起きていた出来事。その中でも最も厳しい戦いを描いていた本章は、シリアスな題材が物語の主軸にあったこともあり、いささかビターな結末を迎えることになりましたが……読者の皆様、キャラ原案者の皆様、最後の最後まで応援誠にありがとうございましたっ!٩( 'ω' )و

 始祖怪人の面々は最後の最後まで怪人として戦い抜き、ある意味では「勝利」したまま戦いを終えた形となりましたね。作者としては、これが1番彼らに相応しい落とし所だったのではないかと思っておりまする(´-ω-`)
 ただ生き残ることだけが彼らにとっての勝利の形ではない……という点は、ツジム村を舞台にした前半シナリオの時点である程度仄めかしておりました。そういう価値観をどこかに持ってしまった時点で、彼らの運命はある意味決まっていたのかも知れませんな(ノД`)

 また、この戦いで深傷を負った新世代ライダー達の一部は、穹哉のように警察から退いてるんじゃないかなーと思っております。ラスボスを倒したヒーローは前線から身を引くもの……という作者の性癖が出た結果でございますな。
 特に彼らは拙作においては、G→AP→ライダーマンGを経た「最後の仮面ライダー」でもあるので、なおさらそういう拘りが強くなってしまったと言いますか。この辺の作風はAP本編の頃から全く変わっておりませんねー(´Д` )
 仮面ライダーも警察も辞めた後に始まる彼らのセカンドライフについては……原案者や読者の皆様のご想像に委ねたいと思います。荒事とは無縁な仕事で、穏やかに平和を満喫してるのかも知れませんな(´ω`)

 ではではっ、本章を最後まで見届けて頂きありがとうございました! いずれまた、どこかでお会いしましょうー! 失礼しますっ!٩( 'ω' )و


Ps
 シリーズ全体の最終局面へと向かう前に、大きく時間を遡ったエピソードを挟む……というシナリオ構成については、ちょっとだけMGS3→MGS4の流れを意識しておりました(´-ω-`) 
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