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仮面ライダーAP

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特別編 仮面ライダー羽々斬&オリジンモンスターズ 第10話

 
前書き
◆今話の登場ライダー

芦屋隷(あしやれい)/仮面ライダーZEGUN(ゼガン)
 自身が装着しているZEGUNスーツをはじめ、多くのライダープロジェクトに関ってきた科学者である金髪碧眼の美男子。年齢は27歳。
 ※原案はヲタク大王先生。
 

 

 ――2021年10月7日の夜。
 東京都港区、番場(ばんば)邸。

 警視総監・番場惣太(ばんばそうた)の自宅であるこの豪邸では今日、新世代ライダーの1人である鳥海穹哉(とりうみくうや)巡査長の誕生日パーティーが催されていた。

 ノバシェードの壊滅がほぼ確定となったこともあり、世界各地に散っていた新世代ライダー達は今日のために久々に全員が帰国・集結し、束の間の休息を満喫していた――その時だったのである。

 「最後の戦い」が、幕を開けようとしていたのは。

「鳥海君、君宛に誕生日祝いのハガキが来ているぞ」
「え……? 変ですね、番場総監のご自宅でパーティーをするって話はライダーの皆しか知らないはずなのに……」

 先ほどこの邸宅に届いたという、自分宛のハガキを持って来た番場の言葉に、穹哉は小首を傾げる。主催者である番場を除けば、今日のパーティーのことを知っているのは同じ新世代ライダーの仲間達だけのはずなのだ。

「……ッ!? ノバシェード……!? ふざけやがってッ!」
「ノバシェードだと!? おい鳥海、ちょっと見せてみろッ!」

 その答えが明らかとなったのは、ハガキに記載されていた差出人の名を目にした瞬間であった。そこに記されていた名は、この番場邸に集まった全員を戦慄させるものだったのである。

 ――鳥海穹哉、誕生日おめでとう。今年こそ「紛い物」は殺す。ノバシェード所属、始祖怪人(オリジン)一同より。

 ハガキに書かれたその一文は、事実上の宣戦布告であった。ハガキを見に集まった新世代ライダー達は口々に声を上げ、剣呑な表情を浮かべている。

「始祖怪人……! 清音(きよね)さんが南米で言ってた例の奴らのことか……!?」
「なんでノバシェードが俺達のことを……!?」
「ご丁寧に住所まで書いてあるぞ!」

 そんな中。新世代ライダー達にとっての「おやっさん」でもある年長者の南義男(みなみよしお)警部は、始祖怪人達が送り付けて来たハガキに「住所」が明記されていることに気付いていた。

「……!? ちょっと待ってくれ、この住所ってまさか……!」

 罠の可能性を承知の上で、そこに記されていた住所を目にした忠義(チュウギ)・ウェルフリットが声を上げた瞬間――全員の無線機に緊急通報が飛び込んで来る。
 それは、「ノバシェードの武装集団が突如襲来し、テレビ局を占拠した」という衝撃の内容であった。リビングのテレビも、すでにその事態を中継し始めている。どうやら放送局に残っていた多くの職員達が、人質に取られてしまっているらしい。

 約12年前――旧シェードの織田大道達によって占拠され、「仮面ライダーG」が叛逆を起こすきっかけとなった始まりの地。
 そのテレビ局が再び、怪人達に襲われてしまったというのである。

 そして番場邸に届けられたハガキには、そのテレビ局の住所が記されていたのだ。始祖怪人達から届けられたこのハガキは、犯行の予告状だったのである。

「番場総監、これは……!」
「……どうやら彼らも、最後の決着を望んでいるようだな。いつまでも頼り切りで済まないが……もう一度だけ、人類の自由と平和のために戦って欲しい。警察官として、仮面ライダーとして」

 かつての「先輩」である羽柴柳司郎と同じ、徳川清山の手で生み出された原初の怪人達。彼らは今も、清山や柳司郎が目指した思想に殉じようとしているのだろう。
 その半世紀近くにも及ぶ長き因縁との決着を、最も信頼出来る部下達に託し――番場は警視総監として、最後の出動を命じる。

「無論です、それが俺達の仕事ですから。……よし、行くぞ皆ッ!」
「おうッ!」

 そんな彼の決意を汲み、穹哉は気合を入れるべく赤い鉢巻を巻いていた。そんな彼をはじめとする新世代ライダー達は互いに頷き合いながら、番場邸の地下に隠された広大なガレージに向かい始めて行く。
 変身機能を搭載したデバイスを持つ者はその場で変身し、装着式のスーツを持つ者は素早く装甲を身に付けながら、地下のガレージを目指して走る。

 そして、ガレージに繋がる巨大な自動ドアが、ゆっくりと左右に開かれた頃には――すでに新世代ライダー達は、ヒーローとしての姿に「変身」していた。
 ドアの先で「主人」を待ち侘びていた愛車に静かに歩み寄り、乗り込んだ彼らは。静かに――それでいて力強く、ハンドルを握り締め、エンジンを始動させる。

 やがて、彼らを地上に送り届けるための扉が開かれると――新世代ライダー達を乗せたマシンGチェイサーとマシンGドロンは一気に発進し、夜景に彩られた大都会の道路へと矢継ぎ早に飛び出して行くのだった。

 次々とガレージから発進し、現場に急行して行く新世代ライダー達。力強さに溢れたその背を見送る番場は、彼らの勇姿に愛娘の恩人――「仮面ライダーAP」の影を重ねていた。

「……昭和だろうが平成だろうが、令和だろうが。時代が望む時、『仮面ライダー』は必ず蘇る。そうだろう? 南雲君」

 番場遥花を含む改造被験者達を柳司郎の攻撃から救うため、最後の戦いに立ち上がった南雲サダト。
 新世代ライダー達の背に彼の面影を見出し、番場は独り拳を震わせるのだった。

 ◆

 始祖怪人、そしてノバシェードとの決着を付けるべく、闇夜のハイウェイを疾走する22人の新世代ライダー達。
 彼らを乗せたマシンGチェイサーとマシンGドロンは、常軌を逸した速度で「事件現場」のテレビ局を目指している。だが、彼らの行く道には他の車両が全く見当たらない。

 番場の迅速な指揮により、すでに彼らが通るハイウェイには厳重な交通規制が敷かれていたのだ。
 最短経路で現場を目指すライダー達の進路を切り拓き、超高速でハイウェイを駆け抜けて行く戦友達を見送る現場の警察官達。彼らは皆、その眼差しで彼らを鼓舞している。

 ――奴らに目に物見せてやれ、と言わんばかりに。

「……」

 そんな中――最後尾を走るGチェイサーに跨っていた、仮面ライダーZEGUN(ゼガン)こと芦屋隷(あしやれい)は。自身が手掛けたライダープロジェクトのスーツを纏う仲間達の背中を、神妙な眼差しで見つめている。

 彼の脳裏には――刑務所内で死刑執行を待つ日々を過ごしていた、明智天峯と交わした言葉が過っていた。
 生前(・・)の彼と頻繁に面会していた隷は、「仮面ライダー」と「怪人」としてではなく。同じ人間同士として、最期の時間を共有していたのだ。

 ――我々3人が装着していたあの外骨格は、本来ならば「APソルジャー」の発展型としてロールアウトされるはずのものだったのです。

 ――「APソルジャー」……仮面ライダーAPが誕生したきっかけでもある、旧シェードの残党が推進していたライダータイプの量産計画か。

 ――えぇ。その研究が行われていた施設はすでに壊滅していますが、まだあそこには多くのデータが残置されたままとなっています。

 ――そこにあるデータを回収すれば……君達が装着していたスーツの構造を解析し、僕達の装甲服にも応用出来る……と。だが、何故そんなことを僕に?

 ――私達は……少なくとも自分の中では、身も心も「怪人」になったつもりでいました。けれど、それでもあなた達は……最後まで、人として向き合ってくれた。

 ――それは……そうだろう。ただの人間なのだからな。僕達も、君達も。

 ――ありがとう、芦屋博士。

 天峯達の死刑が執行される前日に交わした、最期の遣り取り。その時の憑き物が落ちたような天峯の穏やかな声色は、彼らが世を去った今も隷の脳裏に深く焼き付いていた。

(明智天峯……君は、君達はやはり「人間」だったよ。僕達のような、正義のためとあらばどこまでも残酷になれる人間よりも、よほど「人間」だった)

 そして「遺言」通りに旧シェードの地下施設を調査した隷は、天峯達が使っていた外骨格の設計データを入手。
 その情報を解析した彼は、自身のZEGUNスーツを含む新世代ライダー達の装甲服へとデータを応用し、劇的なパワーアップを齎すことに成功したのである。

 生身の人間が運用出来る限界までスーツの性能を引き上げた今ならば、羽柴柳司郎と同格であるとされる始祖怪人が相手であろうと、決して引けを取ることはない。

 天峯達が「ただの人間」として隷達に託した想いが、力のみを追求する改造人間を超えた瞬間。人間は始祖怪人の主張を退け、脆弱な肉体と精神の克服を証明することが出来る。

(……逝ってしまった君達にはもう、見届けることは出来ないが。せめて僕らが君達に代わって、証明して見せるよ。脆弱な肉体だからこそ奮い立つ、人間の勇気というものを)

 その明暗を左右する結果が、この戦いの先にあるのだと信じて。隷は天峯達が遺した人間の意地に賭けて、勝利を誓い。Gチェイサーのハンドルを、固く握り締めるのだった。
 
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