FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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アイリーン・ベルセリオン
前書き
もし尻流が流行ってる時にけつあな確定が来てたら絶対にネタにされてたんだろうなと唐突に思いました。
冷温「突然すぎて草」
尻流「絶対にやめてくれ!!」
変態「けつなあなだけどね」
波動「それは怒られるからやめとけ」
ウェンディside
「何なのこの繭!!全然取れない!!」
オーブを破壊されてしまった私は今、シャルルを捉えている繭を取るために必死になっています。しかし粘着力があまりにも強く、彼女を助けることができません。
「私のことはいいからさっきの奴追いなさい!!」
先ほどのディアボロスの人はオーブを壊すとここからすぐさま逃げていってしまいました。恐らく他のオーブを破壊しにいったと思うんだけど・・・
「でも・・・」
「あいつ、きっと他の街のオーブも壊しに行ったのよ!!それだけは止めないと!!」
シャルルにそう言われ、色々と考えてしまいます。アルドロンとこの街が密接に関係していることを考えると力を失ってしまうことによって与えられる影響は計り知れない。そのため、私はディアボロスの人を追いかけることにしました。
「あいつを倒せばこの繭取れるはずだから!!」
「うん!!必ず戻るからね!!」
私も繭に埋もれているような姿で走りにくいけど、とにかく追いかけないといけない。そう思った私は教会からできる限りのスピードで飛び出しました。
第三者side
その頃、二人の強者による戦いには一つの変化が訪れていた。
「くっ・・・」
キリンの放った棺桶を受けたラクサスは不思議な感じを覚えていた。まるでその中に引き寄せられるような、そんな感覚を。
「なんだ?その棺は」
思わず問いかけていた。それを聞いたキリンは不敵な笑みを浮かべる。
「この棺にあんたを入れるって話をしたが、あれは冗談だ。ここにはすでに魂が入ってる。王の魂がな」
何か裏がありそうな表情を見せている彼だったが、その理由が何なのかラクサスにもわからない。
(いや・・・関係ねぇ。破壊しちまえばいい)
考えるよりも先に行動に移す。ブレスを放った彼だったが、相手も同様にブレスを・・・それを雷のそれを放ったことでぶつかり合ったそれは相殺され、爆発を起こす。
「テメェも滅竜魔導士なのか?」
同様にブレスを放ってきたことで生じた疑問を問いかける。すると男は帽子を直しながら答えた。
「黄竜のキリン。俺たちは滅竜魔導士でありドラゴンイーターでもある」
「竜を喰う?」
「そう。俺が喰ったのは黄竜エレクシオン。そいつは"雷の竜王"と呼ばれていた」
「雷の王・・・」
「あんたと戦う日が来るのは運命だったのかもなぁ」
男が手を上に掲げると大量の雷が降り注ぎ、ラクサスへと突き刺さる。それは雷への耐性がある彼にもダメージを与えるほどの強力な雷だった。
二人の雷使いがぶつかり合うすぐそばで、これまた妖精とドラゴンイーターが激しくぶつかり合っていた。
的確に相手を捉えるべく、最短で剣を振るう緋色の剣士とそれを全身を刃へと変換しながら受け止め、さらにはカウンターを繰り出している。そして彼女の蹴りは鍛え抜かれたはずの女性の剣を真っ二つにへし折った。
「言ったじゃろ、ワシに斬れぬものはない」
得意気な表情を見せているキリア。それに対し剣を折られたはずの女性はなぜかわかっていた。
「例え何を斬られようが、仲間の絆だけは斬れぬぞ」
その言葉と同時に折れたはずの刃が生えてくる。いや、生えてきているのではない。彼女の魔力が刃として生成されているのだ。それを見たキリアは何が起きているのかわからず困惑している。
「ドラゴン退治の仕事だったからな、ウェンディに付加魔法かけてもらっておいたのだ。滅竜剣ベルセリオン!!貴様で試し斬りをさせてもらうぞ」
その剣に驚いた表情を見せたキリアだったが、それがすぐに笑顔へと変わる。
「いいじゃろ、その剣もワシが斬ってやろう!!」
その剣ごと斬ろうとしたキリアだったが、エルザはそれを正面から受け止め、跳ね返す。それにより体勢が崩れた彼女目掛けてその剣を振るうと、彼女は高々と打ち上げられる。そして地面へと叩きつけられた彼女は白目を向いて完全に意識を失っていた。
「くっ・・・もう魔力が・・・」
勝利を納めた彼女はすぐ近くで戦っているラクサスの手助けに行こうとしたとした。だが、キリアとの激しい戦いにより魔力を大きく消耗していた彼女は動く力も残っておらず、その場に倒れ込むのだった。
シリルside
自分の身体へと戻ってきた俺はセシリーに持ってもらい、オーブを探すことために動き回っていた。
「俺たち今どの辺にいるのかわかる?」
「う~ん・・・」
レビィさんの馬車によって元いた場所から離れた位置に来てしまったため自分の現在地がわからない。そのためとりあえず一度上空に飛び上がり、どの街にいるのかを把握することにした。
「早くしないと全部のオーブが壊されちゃうよ~」
「あと2個だよね?震動の回数的に」
ここまで3回震動があった。それが全てオーブが壊されたと仮定するなら、残りはすでに半分を切っている。もしそれが壊されるわけにはいかない。
「ここからだと右肩の街が近いかな?」
「よ~し、じゃあ急ぐよ~」
どこの街のオーブが残っているのかわからないため、とにかく近い街へと向かうしかない俺たちはここからもっとも近い右肩の街へと向かうことにした。ローラー作戦になっちゃうけど、こればっかりは仕方ない。とにかく今は俺がやれることをやらないと。
第三者side
「やだ。俺知らない」
ウェンディと対峙しているネバル。彼はスカリオンから念話により撤退の指示を受けていたがそれに反旗を翻していた。
『ネバル!!』
「うるさい!!俺・・・マユマユ食べる!!」
「私はマユマユでもないし食べ物でもありませんよ!!いい加減にしてください!!」
自身を食べると宣う彼に怒りが頂点に達したウェンディはドラゴンフォースを解放し、自身の動きを制限していた繭を破壊する。
「ドラゴンフォース。それ・・・俺もできる・・・でも・・・第五世代のドラゴンフォース・・・少し違う」
『よせ!!ネバル!!それは禁止されている!!』
舌なめずりするネバルはスカリオンからの念話を無視して魔力を高めていく。その魔力の変化は目の前にいる少女もすぐにわかるほど大きなものだった。
「第五世代のドラゴンフォース!?」
手首についているリングを破壊しさらに魔力を高めていくネバル。その異常とも言える魔力の高さに少女は恐怖を感じ、後ずさっていた。
ドッ
筋肉隆々になったネバルが少女へと接近し拳を打ち込む。彼女はそれを両手でガードするが、彼は空いている左手で彼女の無防備になっている腹部を叩き上げ、少女の身体は宙へと舞い上がった。
男の手が入った部位の衣服が破れるほどの一撃。それを打ち出したにも関わらずネバルはすでに少女よりも上空へと飛び上がっており、両手を合わせ彼女の背中を叩き、地面へと打ち下ろす。
地面に打ち付けられた少女は咳き込みながらもすぐに起き上がり、敵の位置を確認する。ネバルはなおも追撃に向かってきており、少女はブレスで対抗しようとする。
「天竜の・・・咆哮!!」
「粘竜の咆哮!!」
ぶつかり合う両者のブレス。そのブレスは互角だったのか相殺されたかに見えたが、ネバルはそれをうまく使い少女の四肢を拘束する。
「全属性耐性上昇!!神の王冠!!」
無防備になっている自身を守るために防御力を上げたウェンディだったが、ドラゴンフォースを解放したネバルの攻撃はそれをもう上回るほどの威力。
それも一撃では終わらない。幾度となく無防備な少女へと攻撃を繰り返したネバルは、彼女のドラゴンフォースが解けたのを見てつまらなそうに攻撃を中断する。
「マユマユ死んだ?」
微動だにしない彼女の頬を掴むと苦しそうな声が聞こえ、彼は満足そうにしていた。
「よかった、まだ生きてる」
それに安堵した彼は彼女の拘束を解くと力なく地面に仰向けになっている少女を見下ろす。
「どこから食べてほしい?手?足?お腹?ねぇ?」
呼吸も絶え絶えで苦しい様子のウェンディは返事もできない。しかしそれがわかっていないのか、ネバルは怒り狂っていた。
「返事しろよマユマユ。オイィ!!」
自身の魔法を使い少女の口を塞ぐ。それにより呼吸ができなくなった彼女は懸命に足掻いていると、それを見て満足したネバルは口元の粘着を解く。
「ホラァ・・・今度はちゃんと返事しろよ?」
「ひっ・・・」
怒りに満ちた男の表情を見て恐怖に怯えるウェンディ。悪魔のような形相で自身を見下ろすネバルに精神の限界を感じた少女は、ついに泣き出してしまった。
「あれ?マユマユ泣いちゃったぁ?」
その様子を面白おかしく見ているネバル。しかしあまりにも長い時間泣き続ける彼女を見て、彼は頭をポリポリとかいている。
「あら?大層な趣味をお持ちのようね」
そんな彼の後ろから聞こえてくる女性の声。それにネバルは振り返り、聞き覚えのあった声にウェンディの涙は止まる。
「いたいけな少女をいたぶるなんて」
長い緋色の髪をした見た目麗しい女性。かつて絶望と呼ばれた女王、アイリーンはまるで虫けらを見るような目付きで男を見下ろしていた。
その頃、二人の魂を賭けた雷の男の戦いは混線を極めていた。
「王に勝てるとでも思ったかぁ!?」
ラクサスの体内にある魔水晶。それは今彼が対峙しているキリンが食した雷竜王エレクシオンの心臓を加工したものだった。男はドラゴンの肉を喰らったはよかったが、心臓だけは金のために喰らうことができなかった。
そのことにより日夜心臓を失ったドラゴンの魂の叫びにうなされ続けてきた彼は、この日、その心臓の魔水晶を持つラクサスからそれを奪うことによりエレクシオンの願いを成就させようとしていた。
「今だ!!エレクシオン!!」
棺桶を放りラクサスを中へと閉じ込める。それを見たキリンは勝利を確信していた。
「今度はお前が喰え!!自らの心臓を!!ラクサスを喰って一つになれ!!」
棺桶の中から聞こえてくる悲痛な男の叫び。それにより彼はまもなく悲願が成就するものだと思っていた。
「今こそその時だ!!エレクシオン!!」
棺桶から光が放たれる。次第に中にある魔力の増幅が激しいのか、ひび割れがひどくなっていく。
「これがお前が求めていた・・・心臓を持つ男!!」
完全に壊れた棺桶。その中から出てきた男は血まみれになっており、その手には一つの魔水晶が握られていた。
「!?」
「言っただろ?俺の身体に埋め込まれてる魔水晶には何の未練もねぇと」
ラクサスの手に握られているのは自らの身体に埋め込まれていたものだった。彼は自身の身体に手を押し入れ、それを引きずり出したのだ。
「バカな!!それはお前の魔力の源のはず・・・それを取り出すなど・・・」
「あぁ。喰わせろ喰わせろうるせぇから、捨てることにした」
彼の手から落ちる魔水晶。しかし、彼の周りには別のあるものが舞っていた。
「お前は一つ大きな勘違いをしている」
「何!?」
「棺の中でエレクシオンの声を聞いた。長年・・・共にいたせいで情が沸いたんだろうな。お前がエレクシオンに。
だが、当のエレクシオンはお前のことなどなんとも思ってねぇ。誇り高き雷竜の王、本能のままに心臓を求め続けていた」
そう言っている彼の周りに纏わりついていた魔力が、差し出された手へと渦を巻くようについていく。その間も彼は言葉を続けていた。
「己が尊厳を守るため・・・己が肉体を蹂躙した者を滅するため、魂となりさ迷い続けた」
「俺を・・・殺す・・・ため?」
その言葉と同時に、彼の行動にキリンは驚愕した。彼の周りにあったエレクシオンの魂・・・魔力は喰らい始めたのだ。
「雷竜のごときこの魔力・・・」
その魔力を喰らった彼は全身から赤い魔力が溢れて出ていた。そしてその目は操られていたもののそれではなく、完全に自我を持っているように見える。
「雷竜王・赩御雷!!」
渾身の一撃が突き刺さった。赤い雷によりさらなるパワーアップを遂げた彼の拳を受けた男は力なく倒れる。
「エレクシオンの声がしたって?くくっ、全部冗談だ。そこに魔力があった。だから喰ったまで。ちょうどクソオヤジの呪縛からも解放されたかったしな」
そう微笑んだ彼はその場にしゃがみこむ。そして周囲を見回しながら、小さく呟いた。
「てか・・・ここはどこだ?」
ウェンディside
「誰?お前」
突然現れた緋色の人物にわからず困惑しているネバルさん。ただ、私は仲間に似ている彼女の登場に驚いています。
「アイリーンさん・・・どうしてここに・・・」
思わず問いかけていました。私の質問を聞いた彼女はフフッと小さく笑ってから答えます。
「ゴッドセレナとリュシーから天使討伐の手助けをお願いされたの。ここにはその調査の一貫で来たんだけど、懐かしい声がしたから遊びにきちゃった」
本当に楽しそうな笑顔を浮かべながら答えるアイリーンさん。しかし、私たちの間にいる人はその様子が気に入らない様子。
「お前・・・ドラゴンの匂い・・・」
「あら、ずいぶん鼻がいいのね。ううん、というよりも・・・」
ネバルさんの正体を察したのか、アイリーンさんの目が細くなる。しばし睨み合った二人。そして風が吹き止んだと同時に彼女たちは動き、ぶつかり合いました。
なおも加速し続けるネバルさんとそれを全て捌いているアイリーンさん。二人の力は互角に見えました。しかし・・・
「くっ・・・」
さらに速度が上がったネバルさんの拳が彼女の顔へとヒットします。すると彼の身体からさらに巨大化していきます。
「何?あれ・・・」
ただでさえ人間を越えているスピードがさらに加速していきます。アイリーンさんはそれを何とか防いでいますが、反撃することができません。
「アイリーンさん!!」
防戦一方になっているものの全ての攻撃を寸前のところで防いでいるアイリーンさん。しかし、さすがの彼女でも徐々に力を増しているように見える相手の攻撃を捌き続けるのは難しい。
「私はどうすれば・・・」
私に何かできることはないか考えています。でもここは私がアイリーンさんに付加魔法をかければ・・・
『聞こえる?おチビちゃん』
「!!」
そう思っていたところ、突然頭の中に響いてくるアイリーンさんの声。彼女は戦っている中、念話を私へと送っているのです。
「アイリーンさん!?どうして・・・」
『話は後。私、久々の戦いで身体が思ったより動かないのよね。手を貸してもらえないかしら』
アルバレスとの戦いから一年が経っている。あちらは皇帝だったゼレフさんが抜けたことで国の建て直しが難航しているとの話を聞いたことがあったので、彼女が動きが悪い理由がそこでわかりました。
「はい!!すぐに付加魔法でアイリーンさんをーーー」
『いいえ。そうじゃないわ』
付加魔法をかけようとしたところを止められます。その判断の何が違うのかわからず、私は動きが止まってしまいました。
『一年前の戦いで私たちは心と身体が入れ替わったわ。その時のあなたの魔力が私の中に残ってる。つまりそれはあなたにも同じことが言えるはずよ』
「私の中にも・・・」
そう言われて胸に手を当てます。自分の中の魔力を感じようとしていると、確かに普段のものとは違う何かを感じます。
『それを解放して一緒に戦ってちょうだい。今のあなたなら、それができる』
その瞬間、戦いの最中にいる彼女がこちらに目配せしてきたことに気が付きました。ほんの一瞬でしたが、それは私への期待の現れであることがわかります。
「・・・はい!!」
私の中にあるアイリーンさんの魔力を捉え、それと私の魔力を融合させていきます。それにより次第に高まっていく魔力。
「私とあなたが繋がった記憶をこの身体に・・・付加!!」
普段の何倍にも感じられる魔力により服装までもが彼女と同じものに変化しています。
「あなたならできると思ってたわ」
そう言った彼女は嬉しそうに笑みを浮かべています。そんな彼女と戦っていたネバルさんの身体はますます巨大化しており、先ほど私が戦った時とは比べ物にならないほどの力になっています。
「アイリーンさんの魔力の全部ではありませんが、私にも付加できました!!滅竜魔法の母の魔力を!!」
一気に距離を縮め彼の腹部へと拳を叩き込みます。それでも余裕の表情を浮かべるネバルさんですが、彼が動くよりも先に彼の顔へと蹴りを入れます。
「はああああ!!」
漲る魔力。それによって動きが格段に良くなっており、次々に攻撃が入っていきます。私の連続攻撃を受けた相手はたまらずダウンしました。
「マユマユすご・・・い・・・スゴ・・・ゴゴ・・・」
「「!!」」
それでも戦う意志を途切らせない彼でしたが、何やら様子がおかしい。それは私にもアイリーンさんにもわかるほどの異変でした。
「これは・・・」
身体が異様な変化を続ける彼を見て何かに気付いたアイリーンさんが私の前に立ちます。そんな彼女が防御の姿勢を取るよりも早く、彼の膝が顔へと入りました。
「がっ・・・アイリーンさん!!」
その強烈な一撃で吹き飛ばされるアイリーンさん。その間にも変化を続けるネバルさんは人の姿から離れているように見えました。
「何・・・この力・・・暴走してる?」
目を切らなかったはずなのに気付いた時には間合いに入られていてガードするのがやっと。そして体勢を整えてから彼を見ると、その顔に浮かぶ鱗を見てようやく気が付きました。
「もしかしてこれが・・・第五世代ドラゴンフォースの代償!?」
その身体と顔はすでに人とは言い難く、完全にドラゴンのものへとなっています。その進行が進むに連れ、彼の力は増幅し、制御ができていないのがよくわかります。
「そんな・・・アイリーンさんの魔力をもっても押し負ける!!」
ガードするので手一杯で反撃することができない。そんな私と彼の間に、血まみれになっている女性が入ってきて一瞬ですが引き離してくれました。
「何やってんのよ、おチビちゃん。まだ私の魔力の1%も使えてないじゃないのよ」
「アイリーンさん・・・」
すでにボロボロの彼女は立っているのもやっとでまともに動けるかわからない。それだけ相手の力が群を抜いているのがわかります。
「目の前の敵を倒すにはどうすればいいですか!?」
「そうね・・・殺すには・・・」
「違います!!私たちは誰も殺しません!!倒すためにはどうすればいいのか知りたいんです!!」
そう言った私の顔をアイリーンさんは目を見開いて見ています。それを聞いた彼女は小さく笑った後、彼の方を見ました。
「"倒す"と"殺す"は同義じゃないのね?了承したわ。ただ、彼はもう倒れることはない」
「え?」
「あそこまで竜化が進んでしまった滅竜魔導士はもう元には戻らない」
雄叫びを上げながら突進してくるネバルさん。その姿は完全に人とは一線を画しており、小さなドラゴンを彷彿とさせています。
「そんな・・・」
「殺すしかないわね」
そう言った彼女は私の手を握り空へと掲げます。私の中にある彼女の魔力が高まっているのがわかります。
「フフッ」
「すごい魔力・・・ダメです!!アイリーンさん!!」
完全に彼女は彼を殺しにかかっている。それも私の魔力も合わせていることでその威力は計り知れないものになるのは予想ができました。
「これで終わりよ」
「ダメェ!!」
決死の叫びもむなしく振り下ろされた魔力。それは街の建物のほとんどを残骸にするほどの力があり、最悪の事態が予測できた私は震えていました。
「うぅ・・・う・・・」
その瓦礫の中にいるネバルさん。うめき声を上げている彼は元の人の姿へとなっています。
「生きてる!!」
「分離付加術よ。かつてメイビスからフェアリーハートを取り出したりしたのに使った」
「まさか・・・彼の魔力を分離させたんですか!?」
「そう。これで彼は死んだ、魔導士としてはね」
得意気な表情を浮かべるアイリーンさん。彼女の殺す発言に戦いていた私は安堵の息を漏らします。ただ・・・
「もう魔法が使えないということですか?」
魔力が分離されたということは魔法が使えないことを意味する。そう思った私は問いかけると、彼女はやれやれといった表情を見せました。
「一時的な魔力欠乏症にはなるだろうけど、魔力自体が消え去ったわけじゃない。いずれ彼の中の魔力も回復するでしょうね」
「すごい・・・竜化してる滅竜魔導士を元に戻すなんて・・・」
尊敬の眼差しで彼女を見上げます。ただ、彼女は何かを思い出しているようで、怖い顔をしていました。
「アイリーンさん」
「何でもないわ」
何事もなかったかのように笑顔を作るアイリーンさん。すると彼女は私の方へと向き直りました。
「そうだ、せっかくだから白魔導士攻略の魔法をあなたに教えないとね」
「え?」
突然そんなことを言い出した彼女に首をかしげます。そんな私に彼女は小さく頷いてみせます。
「分離付加術。白魔導士を二人に戻すのよ」
彼女が何を言っているのかいまだにわからない私は呆然としていることしかできません。しかし彼女から明かされた真実を聞いた私はただただ驚愕していました。
後書き
いかがだったでしょうか。
この作品で100年クエストをするにあたっての問題点その1・アイリーンが生きている。
そのためアイリーンが出てくるところがネックだったんですが、それとなく乗り越えられそうな目処が立ったのでやり始めた感じです。
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