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星河の覇皇

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第八十三部第四章 戦線崩壊その三十七

「しかしだ」
「それは自分から死にたがる様ではないですね」
「そうしたものではないですね」
「我々の戦いは」
「左様ですね」
「そうだ、決してだ」
 それこそというのだ。
「無駄死にはしてはならない、ではな」
「撤退の準備をですね」
「これまで以上に速め」
「そしてですね」
「そのうえで」
「一気に退く、だが」
 それでもというのだ。
「この際損害を受けている艦艇からだ」
「先にですね」
「先に撤退させますね」
「そうしますね」
「無傷な艦艇でだ」
 それでというのだ。
「後詰を行う、そしてだ」
「この艦もですね」
「残りますね」
「後詰に」
「この艦は無傷だ、そしてだ」
 司令はさらに言った。
「司令官が真っ先に逃げるなぞだ」
「問題外ですね」
「それこそ」
「その様な事態は」
「司令はこうした時はだ」
 撤退の時はというのだ。
「やはりな」
「こうした時こそですね」
「後詰になり」
「そしてですね」
「撤退を指揮されますね」
「そうする、ではいいな」
 こう言ってであった、そのうえで。
 この司令は撤退を急がせた、彼等にしても必死であった。そしてそれは他のティムール軍の者達もだった。
 最高で軍、最低で艦隊単位で防衛ラインから次々と撤退していく。アブーはその状況を見てこう言った。
「やや遅いか」
「今の我が軍の動きは」
「どうしても」
「そう言われますか」
「幸い謎の魚雷攻撃は終わったが」
 それでもというのだ。
「しかしだ」
「正面からですね」
「まだ敵艦隊が来ている」
「だからですね」
「彼等の攻撃は激しい、そのことも考慮するとな」
 どうしてもというのだ。
「今はだ」
「撤退を急ぐ」
「そうせねばなりませんね」
「全軍を以て」
「そうであるべきですね」
「少なくとも遅れることはだ」
 それはというと。
「戦争では禁物であるしな」
「はい、それでは」
「この度もですね」
「撤退を急ぎ」
「そしてですね」
「一兵でも多く、一隻でも多くですね」
 幕僚の一人が述べた。
「無事に撤退させて」
「そしてですね」
「反撃の時に戦力にですね」
「是非なってもらいますね」
「この度の敗戦は確かに痛いですが」
「国境での敗戦と並んで」
「戦争の趨勢自体が決まってしまいかねません」
 他の幕僚達も言ってきた。 
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