FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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FAIRYNAIL
前書き
そろそろ連続更新記録が途絶えそうだけど、結構頑張った方だと思うしヨシとしましょう←自分に甘い
「やだよ列車なんて~。走っていこうぜ、な!!その方が修行になるし!!」
ドラシールへ向かうためにまずはテッカという街へとやってきた俺たち。そこへは列車に乗るために来たんだけど、ナツさんが顔面蒼白でそのような提案をしていた。
「冗談じゃない、私の荷物を見ろ!!走ってなどいけるか!!」
「何持ってきてんだよそんなに・・・」
エルザさんは自身の何倍もあるような大きな荷物を荷車に入れてもっている。この人は毎回遠出の度にこれだけの荷物を持ってきているけど、この旅路ではそれは絶対に邪魔だと思う。
「諦めろ、たかが8時間だ」
「8時間も・・・」
「そんな・・・」
列車に乗るのは仕方がないことだと割り切っていた俺たちではあったが、グレイさんから発せられた言葉に顔を青くする。あの絶望の時間を8時間も味わわなければならないなんて・・・
「てかその前に出発時間まで3時間もあるんだけど」
「長いね~」
「ヒマだね」
「お腹すいたしレストランに行きましょ」
俺たち三人はこれから始まる恐怖の時間に頭を抱えているがルーシィさんたちはそんなこと気にする必要もないためそんなことを話している。すると、街の人たちがこちらを向いてざわついていることに気が付いた。
「さっきから妙にジロジロ見られてる気がするんだけど・・・」
「確かに・・・」
「どうしたんでしょうか?」
俺たちはこの街に来て時間も経っていない。しかも彼らの目は好奇心に満ち足りているものになっており、余計に意味がわからない。すると、その理由が気になったのかエルザさんが一人の女性の元へ質問しに向かう。
「イシュガル人が珍しいのか?」
この大陸とは別の大陸から来ていることもありそのことで注目を集めているのかと思った。しかし、問いかけられた女性はエルザさんを見て頬を赤くしながら問いかける。
「あ・・・あの・・・エルキスさん・・・ですよね?」
その問いを皮切りに後ろから一斉にサインを求める声が聞こえてくる。そのことに困惑したエルザさんは否定しながら逃げ出すが、その人たちはそんな彼女すら追いかけていた。
「エルキス?」
「何かしら?これ」
「エルザのそっくりさんでもいるのか?この街は」
「エルザ・・・さんというのですね、あの方は」
追いかけ回されているエルザさんのことを呑気に見ていると、後ろから不意に女性の声が聞こえ、俺たちは一斉に振り返りました。
「エルザがもう一人!?」
「どういうこと!?」
メガネをかけているもののその顔は間違いなくエルザさん。まるでドッペルゲンガーを見ているのではと思うほどの似ている彼女は俺たちに静かにするように指示します。
「ついてきてください」
エルキスさんというエルザさんそっくりな人に連れられてきたのはFAIRYNAILと掲げられた看板のあるギルド。
「フェアリーネイル?」
「俺たちのギルド名にそっくりだな」
「妖精の爪?」
「ここはタレントギルド、フェアリーネイルです」
困惑している俺たちに対しエルキスさんは笑顔で答える。彼女の発した聞き慣れない単語に俺たちは首をかしげた。
「タレントギルド?」
「役者さんのギルドなんですか?」
「歌手やモデル、もちろん俳優も。幅広く活動してるタレントギルドです」
「色んなギルドがあるんですね」
傭兵ギルドやトレジャーハンターギルドはフィオーレにもあったけど、タレントギルドなんて聞いたことがない。するとエルキスさんは俺たちを見て少し興奮しているようだった。
「こんな偶然もあるものなんですね。あなたたちギルド所属のタレントたちにそっくりです」
「確かに私とお前は似ていると言われれば似ている気がするが・・・」
「瓜二つだけど」
違いを見つける方が難しいのでないかと言うほどそっくりな二人。エルザさんだけはそれに気付いていないみたいだけど。
「せっかくだから少し中を見て行きませんか?」
「面白そうだな!!」
「イヤな予感しかしないわ」
エルキスさんの勧めによって中へと入っていく俺たち。最初に目に飛び込んできたのはソファにふんぞり返っている桜髪の男性。
「さっそく俺がいる!!」
「ホントそっくり」
「あの方はうちのトップスター、ナックさんです」
ナックさんはその姿勢のままマネージャーを呼んでいます。そこに走ってきたのはルーシィさんそっくりの女性。
「あたしマネージャー!?」
「ルーシャさんです」
自身の扱いに納得できていないルーシィさんだったが、ナックさんにずいぶんと怒られておりますます可哀想な気持ちになってきた。
「あ!!グレイさんがいますよ」
「彼はグレン、ポールダンサーです」
「ポールダンサー?」
またしても聞き慣れない単語に首をかしげていると、エルキスさんが丁寧に説明してくれて俺とウェンディは顔を真っ赤にしています。
グレイさんも赤くなっていたけど、彼は普段から裸なんだから気にする必要はないんじゃないだろうか?
「あそかにいるジュビナもトップレスで踊るダンサーですよ」
「トップレス・・・」
「想像してんじゃねぇ!!」
魅惑的な単語に想像していたナツさんだけどグレイさんに怒られていた。俺も少し意識してしまったけど、隣から圧力を感じすぐに無へと返る。
「あそこにいるのはウェンディルちゃん、天才子役よ」
「て・・・天才ですか?」
自身にそっくりな人がそんな呼ばれ方をしていることもありウェンディは恥ずかしそうにしている。ウェンディルは鏡に向き合いながら様々な表情を素早く切り替えており、演技力の高さに驚かされる。
「向こうにいるのはシリエルちゃんです」
「あ、なんかイヤな予感する」
次は名前の感じからして恐らく俺のそっくりさんだろうと予測ができる。しかし嫌な予感しかしないのは気のせいだろうか?
「声優アーティストです」
仕事は聞き慣れないけど発声練習をしていることから声のお仕事であることがわかる。しかしその見た目が・・・どう見ても女の子・・・
「一応ああ見えても男の子なので、間違えないでくださいね。すごく怒るので」
エルキスさんのその注意を聞いてホッと一安心。まさか俺のそっくりさんは女の子なのかと思ったけど、見た目があれなだけでちゃんと男だったことに安心した。
「あら、歌なんてシリルじゃありえないわね」
「音痴だからね~」
「う!!うるさいなぁ」
シャルルたちがそんなことを言うので一応反論しておく。そもそもマーガレット祭の時に俺は歌ってるからそこまで音痴じゃない・・・はず。
「オイラたちはいないの?」
「それは厳しくない~?」
「さすがにエクシードはね・・・」
そんなことを話していたハッピーたちだったが、猫の声が聞こえてそちらに向くと、何やら見たことがある容姿の少女が二人。その手にはそれぞれ猫が抱えられている。
「アイドルのシャルロッテちゃんとセシリアちゃん。それと飼い猫のバッピーとビビー」
「オイラただの猫じゃん!!」
フリフリ衣装に身を包んでいるシャルルとセシリーのそっくりさん。彼女たちはその手にそれぞれ猫を抱いて頬をすりすりしていたが、それを見てハッピーが誰よりもダメージを受けている。
他にはガジルさんやレビィさん、ミラさんやリサーナさんたちのそっくりさんが多くおり、俺たちはある世界のことを思い出していた。
「すげーな」
「びっくりするくらいみんなそっくり」
「エドラスを思い出しますね」
「そこでもミラちゃんは変わらんかったしな」
「あっちよりもそっくりかも」
エルフマンさんのそっくりさんがヤバいけど他の人たちはみんなほぼ一致しててエドラスよりも似てる気がする。俺とウェンディは向こうじゃ大人になってたから、見た目はこっちの方が遥かに似てる。
「で、お前は?」
「私は舞台俳優です」
エルキスさんは舞台での役者を務めているらしい。それも街のあの様子から見て相当人気がある人なのだろうと思っていたが、彼女はなぜか自信無さげな反応を見せる。
「実は次にやる舞台の役がなかなか掴めなくて」
どうやら今までに経験のない役らしくスランプになって街になかなか出ていけなかったせいで、そっくりなエルザさんを見かけて街の人たちが興奮してしまったらしい。そんな彼女にエルザさんが得意気に何か話していたけど、ルーシィさんとグレイさんがその発言に呆れていることから、彼女お得意の勘違いなのは大体予想できた。
「いい加減にしろやジャーマネ!!」
エルザさんがエルキスさんの相談に乗っている最中、後ろで揉めていたナックさんがルーシャさんを連れて裏に下がっていく。
それを見て怒り心頭のルーシィさんがナックさんに文句を言いに向かったが、すぐに戻ってきた。顔を真っ赤にして。
「どうした!?ルーシィ!!」
「し・・・知らない!!」
ナツさんの問いに顔を隠しているルーシィさん。それを見ていたエルキスさんも顔を赤くしながら何か話している。
「あの二人ああ見えてあの・・・できてるんです。時々ギルド内でその・・・いけないことを・・・」
「言わなくていいから!!」
明らかに様子のおかしい二人。その直後にエルキスさんはエルザさんへの相談へとすぐに戻ってしまったため、気になった俺とウェンディはルーシィさんの手を引いて質問する。
「何を見たんですか?」
「いけないことってなんですか?」
「いいの!!二人はまだ知らなくて」
何を慌てているのかわからずウェンディと顔を見合せ首をかしげる。ただ、あまりにも言いにくそうだったのでこれ以上の追求は行わず、俺たちはもうしばらくギルドの中を散策させてもらってから列車へと向かった。
「いやー、面白ぇ奴らだったな」
「あたしは最悪よ、トラウマになりそう」
いまだに顔から火が出そうなほどのルーシィさんと誰よりもあの状況を楽しんでいたナツさんはそう言う。
「久々にジュビアの顔を見たけど、元気かな、あいつ」
「そっくりでしたもんね」
「さっきのはジュビナさんですけどね」
別人とは言え似てる人に出会えたことで少しギルドのことが気になってしまったのは俺たちも同じ。グレイさんはジュビアさんのことを考えているのか、かなり頬が赤くなっているようにも見えた。
「ところでエルザはエルキスと何の話をしてたの?ずっと二人で話し込んでたわよね?」
「・・・」
「エルザさん?」
「どうしました?」
「いや・・・まぁその・・・いろいろだ」
ギルドを出てからずっと様子がおかしいエルザさん。上の空ってわけでもないし、何かを隠しているような感じがする。ただ、それを追求する暇もなく列車が動き始めてしまい、俺たちは視界がぐらつき始める。
「く・・・やはり無理だ!!」
その突如絶叫するエルザさん。その様子にルーシィさんとグレイさんは困惑し、俺たちは耳に入ってくる情報を頼りに事態を把握することに努める。
「ど・・・どうしたの?エルザ」
「すまない・・・いえ、すみません」
そう言った彼女はメガネを取り出しそれをかける。その表情は先ほどギルドであった彼女のそっくりさんそのままだった。
「私・・・エルキスです。本物のエルザさんは・・・役を作れないなら自分が出演するって」
「えーと・・・」
「どんだけバカなの」
エルザさんの芝居は相当ひどかったらしく会場は罵詈雑言の嵐だったらしい。ただ本人はそれを歓声だと勘違いして一人満足し、後から来る列車に乗って合流した時には満足げな表情を浮かべていました。
ドラシールへと向かう道中、かなりの長時間列車に乗ると聞いていた俺たちだったけど、聞いていた時間よりも早く列車が止まり、酔いが覚めました。
「止まったぞー!!」
「やったぁ!!」
「わーい!!」
あまりの長時間の揺れで精神的に参っていた俺たちは涙を流しながら喜んでいる。ただ、どうやら目的地についたわけではないらしい。
「何!?二時間も停車するのか!?」
「長いね~」
「この大陸じゃ普通みたいよ」
「みんなのんびり屋さんなんだけね」
ここはレインヒルという街で少し大きいこともあり長めに停車することになっているらしい。ただ、これは俺たちにとってありがたい限りだ。
「ちょっと外の空気吸ってこよっ!!」
「俺も俺も!!」
「俺も行きます!!」
「私もー!!」
「出発には遅れるなよ」
この時間を利用して休まない手はない。本当はここから脱出した気分ではあるけど、その気持ちを殺しつつ俺たちは駅から出るのだった。
駅から出て外の空気を吸うついでに観光でもしようかと思っていた俺たち・・・だったんだけど・・・
「んん?」
俺は今一人で周囲を見回している。先ほどまで近くにいたはずのウェンディたちの姿が見えない。
「あれ?これって・・・」
この状況を以前にも経験したことがある。妖精の尻尾に入ったばかりの頃、グレイさんと二人で依頼に行った時にこんなことになった記憶がある。
「もしかしてウェンディたち迷子になった?」
本当は俺が迷子になっているのは確定なのだが、やっぱり認めたくないためそんなことを言ってみる。でも今回は大した問題にはならないかな。だって駅に戻れば自然と全員帰ってくるだろうし。
「気が進まないけど、先に駅に戻ってーーー」
「だーれだ」
踵を返して元来た道を戻ろうとしたところで突然目を塞がれる。ただ、その声には聞き覚えがあった。
「ウェンディでしょ?どうしたの?」
どうやらウェンディが俺のことを見つけてくれたらしくて手を目から外しながら振り返る。そこには確かにウェンディの顔があった。すごい鬼の形相の。
「誰?ウェンディって」
「へ?」
そんなことを言い出す彼女は何かがいつもと違う。匂いも普段と違うし変装なのかメガネをかけ、帽子まで被っている。そこで俺はあることに気が付いた。
「もしかしてフェアリーネイルってところにいた子役の・・・」
テッカの街であったウェンディにそっくりな天才子役ウェンディル。その人なのかと思い問いかけると、彼女はキョトンとした後、すぐに俺のことに気が付いた。
「あんたはエルキスさんに連れてこられてた確か・・・シリル?」
「そうそう!!」
ウェンディの顔から"あんた"なんて言われると違和感があるけどここは気にしない。どうやら彼女は俺のことをギルドにいた俺のそっくりさん・・・シリエルだっけ?その人と勘違いしていたみたい。
「でもホントそっくりね、あんた」
「君もウェンディにそっくりだよ」
生き別れの姉妹なんじゃないかというほどウェンディとウェンディルは似ている。彼女も同様のことを思っているようで、俺のことをじっくりと観察していた。
「聞いてもいい?」
「何?」
あらゆる角度から俺のことを観察していた彼女は正面に戻ってくるとそんなことを言う。すると彼女は無愛想だった表情から一転、なぜか笑顔になって質問してくる。
「シリルは男なの?女なの?」
「へ?」
嬉々として問いかけてくる内容がそれなのかと思っていたが、あまりにも彼女が楽しそうに聞いてくるため困惑してしまう。この子は一体何を期待してるのだろうか。
「俺も男ですよ、男の子」
「男の娘?」
「イントネーション!!」
子のイントネーションがソフィアたちのそれと同じだったことで突っ込みを入れる。それを聞いたウェンディルは残念そうに肩を落としていた。
「なんだ・・・女の子だったらよかったのに」
「いやいや、何がよかったんだよ」
確かシリエルも男だとエルキスさんが言ってたけど、同性の方が間違いなくていいと思うんだが・・・
「だって・・・女の子のシリエル見てみたいじゃない?」
「あぁ・・・」
顔を赤くして頬を押さえながら楽しげに身体を揺らしている少女を見て一人の少女が脳裏をよぎる。もしかしてここのウェンディはソフィア側の人間なのか?外見がウェンディなだけに中身があいつと考えると残念で仕方ない。
「男の子のシリエルもいいけど、女の子になったらシリエルも味わってみたくて!!」
「はいはい・・・ん?」
なおも何か言っている彼女を置いて逃げようかと思ったけど、少女の放った言葉に違和感を感じ、立ち止まる。
「味わうって・・・何?」
明らかに普通人に対して放つような発言ではない単語が聞こえたため問いかけると、少女は首をかしげながら答えてくる。
「そりゃあ・・・」
耳元に手を当て囁いてくる少女。彼女の口から発せられた言葉に俺は顔を真っ赤にしてしまう。
「え?マジ?」
「まぁやっちゃうよね」
何を言ったかは皆さんの想像にお任せするとして、俺は最愛の少女と瓜二つの人物から発せられた言葉に赤面するしかなくなる。そんな俺たちのところに、一つの足音が近付いてくる。
「お待たせ~、って、その子は?」
声の主に視線を向けるとそこには俺と瓜二つの人物がこれまたメガネをかけ、変装している風を装いながらやってくる。
「エルキスさんが連れてきてた私たちのそっくりさん」
「あぁ、そんな子たちいたね」
シリエルは先ほどのウェンディル同様に俺のことを見回している。そんな彼に対し少女は問いかける。
「もしかして私たちが話してるの見て妬いちゃった?」
どんな返答が来るのかと期待した表情の少女。それに対し少年は首を横に振る。
「いや、女の子同士で喋ってるのかと思ってた」
「どの面で言ってんだ!!」
今目の前にいる人物はどこからどう見ても少女にしか見えない。そんな相手にそんなことを言われたらさすがの俺も黙っていられない。
「あれぇ?もしかして男なんですかぁ?」
「見たまんまそうですけど!?」
「えぇ、ヒョロヒョロで女の子かと思いましたぁ」
「その言葉そっくりそのまま返してやる」
額を押し付け睨み合う俺たち。そんな俺たちにどっちもどっちよと言う声が聞こえてはいたけど、気にしない。気にしたらたぶん負けだから。
「こんな奴置いて行こ、ウェンディル。せっかくの休日だからね」
これ見よがしに少女の腰へと手を回す見たシリエル。しかし、少女はその手を払ってしまう。
「ウェンディル?」
「待たせた謝罪は?」
もしかしてフラれたのかと思ったけど、唇を尖らせている少女を見て俺も少年も何を求められているのかを理解し、少年は彼女のそれに重ね合わせる。
「・・・」
その光景を間近で見せられた俺はあんぐりと口を開けたまま固まっている。百合の花が咲いているように見える光景に驚いていたのではない、こんな人通りの多い場所で平然とキスしていることに驚愕しているのだ。
「あれ?もしかしてキスしたことないの?」
そんな俺の反応を見てマウントを取れると踏んだのか、シリエルがそんなことを言ってくる。
「はぁ!!キスくらいしたことあるし!!」
ウェンディとキスなんて何度でもしたことがある。ただこんな昼間の道のど真ん中でやってたから驚いただけだ。
「人前のキスで恥ずかしがってるようじゃ、彼女さんが可哀想だね」
「じゃあね、ヘタレさん」
ニヤリとイヤらしい笑みを浮かべてその場を跡にするシリエルとウェンディル。取り残された俺は先ほどの彼らの会話のことを思い出し、ある決心を固めた。
「聞いてよエルザ!!ナツったらねー!!」
列車へと戻ってきた俺の耳にすぐに届くルーシィさんの声。何かに怒っているようでその原因が何なのか気になり見に行くと、ジャージ姿になっている彼女が目に入る。
「ウェンディ」
「あ!!シリル!!どこ行ってたの!?」
ウェンディも同じようなジャージを上に羽織っており、なんか肌が焼けているところがあるように見える。
「どうしたの?」
「ナツさんがね・・・」
ルーシィさんをナンパしてきた男たちを追い払おうと魔法を放ったら彼女たちも巻き込んでしまったらしい。なのでウェンディに治癒の魔法をかけながら、俺は決心したことを実行に移すために少女の顔を見る。
「何?シリル」
あの二人みたいに皆さんが見ている前でもキスしてみせる・・・そんな対抗意識のみで固めた決意だったけど、いざ少女の顔を見るとなかなか恥ずかしくて勇気が出ない。
「その・・・えぇっと・・・」
全員に心臓の音が聞こえているのではないかと言うほどバクバクしているのが自分でもわかる。後ろは揉めているようなのでたぶんこっちは見ていないとは思うけど、それでもこれは恥ずかしくて踏み出せない。そう思っていると・・・
「「うぷっ」」
列車が動き出してしまい俺たちは乗り物酔いを発動させ、座席へと倒れ込む。
「お久しぶりです!!グレイ様!!」
勇気が出ず最後の一押しができなかった後悔を抱えながら意識が薄れていく中、懐かしい声が聞こえてくる。しかしそちらに俺たちは顔を向けることができないまま、気を失うのだった。
後書き
いかがだったでしょうか。
シリルが成長すると見せかけてやっぱりヘタレってお話です。
ウェンディルとシリエルをどうにかうまく使えないかと思ってたらなんか悪者みたいになっちゃいましたが、まぁ彼らは今後出てくることもないでしょうしいいでしょう←ヤケクソ
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