FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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水神竜の憂鬱
前書き
ウェンディの人魚の扉絵を見て前半部分の台詞は考えました。シリルは人魚になったらどうなるのだろうか・・・
街の中へと戻ってきた俺たち。その視線の先には先程俺たちを追いかけ回していたホテルの支配人カシマさんと本物であろうサメコさんが何やら話していた。
「やっぱり悪い奴には見えねぇな」
「そうですよね」
どうやらデートに遅れたらしくそのことでサメコさんが怒って話を聞いてくれないらしい。その様子を俺たちは建物の影から見ているが、誰にも襲われることはない。その理由は今の俺たちの姿にあった。
「俺たちも魚には見えねーと思うが」
「え?完全に魚じゃない?」
「そうですよ、どこからどう見てもお魚さんです」
俺たちは今、ジェミニの力を借りて魚の姿へと変身している。何でもジェミニはコピーが得意らしいけど、小さな生き物であれば簡単に変身できるらしく、後ろにいるエルザさんやナツさんもご満悦だ。
「どうせならもっと完璧にやれよ。これじゃ人面魚だ」
ただグレイさんだけは何か納得いかない様子。確かに顔は俺たちはそのものだけど、サイズも小さくなってて身体も魚だし、バレるはずないと思うけどなぁ。
「そうですよぉ・・・なんで私だけクラゲなんですかぁ・・・」
「ごめん、途中で魔力切れちゃって」
ただ、そんな中で一人だけ可哀想な状態になっているのがウェンディだったりする。まさか途中で魔力が尽きてしまい、慣れるのがクラゲというよくわからない状況。むしろクラゲの方が魔力使ってそうな気がするのは俺だけだろうか?
「きっとクラゲさん吹き飛ばした罰なんだぁ」
「だ・・・大丈夫ウェンディ!!クラゲでも全然可愛いよ!!」
泣きわめいているウェンディを一生懸命に宥める。しかし他の皆さんはそれに気を使ってくれる素振りもなく、情報収集のために散解してしまった。
「ウェンディ、泣かないで」
「私もお魚さんがよかったぁ」
情報収集のためにと街の中を散策することにしたが、ウェンディが泣き止まないため街の人に話を聞きに行くことができない。
「ちなみにどんな魚がよかったの?」
サイズは小さいがエルザさんがサメっぽかったりとみんな少しバリエーションが違う魚類になっている。少しでも気を紛れさせれたらと質問すると、予想外の答えが帰ってきた。
「人魚さんになりたかったぁ」
「え?人魚?」
人魚ってあの上半身は人間で下半身が魚のあれだよね?しかも上はビキニのあれって・・・
「エッロ」
「「え?」」
「ごめん、なんでもない」
ウェンディが人魚の姿を想像したらそんな言葉が出てしまった。てか人魚になったら周りは釘付けになるだろうけど、すぐに俺たちってバレちゃうから即却下だよ、ダメだよ俺だけに見せてよ。
ドゴッ
そんなことを考えていると、遠くの方から爆音が響いてくる。
「何?今の音」
「行ってみよう!!」
今の爆発音で正気を取り戻したウェンディ。俺たちはその音の正体が何なのか気になり、それを確認するためにその方向へと向かう。
「シリル!!ウェンディ!!」
するとその爆音に気が付いたのは俺たちだけじゃなかったようで、エルザさんもそちらへと向かっていた。
「あの方角、ナツたちが向かった方向だ」
「じゃあこの爆音の正体も?」
「いや、なんか違う気がする」
そもそもナツさんの魔法、こんな水中で使えるのか?すぐに消えてしまいそうな気がするけど・・・
「とにかく急ぎましょ!!」
「みんなもいるはずだよ~」
もしこの爆音が水神竜と関係しているなら、俺たちはそれを見てこれからの行動を考えなければならない。そう思い進んでいくと、覚えのある匂いが複数することに気が付く。
「この匂い・・・」
「ナツさんたちです」
水中でも匂いは探れるのかとその方向へと向かっていくと、視線の先にナツさんたちとバラバラになっている竜のような生き物が転がっている。
「え?あれが水神竜?」
「まさか・・・倒したのか?」
俺たちが離れていたものの数分のうちにそんなことになっているのかと思っていたが、何か違和感がある。その正体はグレイさんが凍らせている女性にあった。
パキィンッ
グレイさんの氷を破りナツさんたちへと敵意を向けている女性。それに気が付いたエルザさんは速度を上げると、なんと人の姿へと戻っていた。
「あれ?俺も戻ってる?」
すると俺もなぜか人間の姿に戻っており、動きを止めてしまう。急に止まったことで背中に小さな衝撃が走りそちらを見ると・・・
「なんで私たちだけ戻ってないのぉ?」
なぜかいまだにクラゲのままになっているウェンディが再び涙を流していた。
「え?なんで俺たちは戻ってるのに?」
「私も勝手に戻ったわ」
「ウェンディは戻らないよ~?」
クラゲのウェンディを色々揺すってみるが元に戻る気配がない。というか俺たちも気が付いたら戻ってしまったため、戻り方がわからない。
ガァン
俺たちがウェンディを戻そうと躍起になっていると、大きな音がしてそちらへ意識を向ける。そこでは女性相手に剣を振り下ろしたエルザさんのそれを頭で受け止めている男が立っていた。
「マッドモール!!」
「それがし、キリア殿の帰りが遅くて心配したっちゃ」
マッドモールと呼ばれた男には傷が付いていない。これには俺たち全員が驚いていた。
「奴の仲間か!?」
「つーかエルザの剣を頭で受け止めたぞ!!あいつ!!」
「こやつに防げぬ物はない。最強の鎧をまといしドラゴンイーター」
「鎧竜マッドモール。よろしくっちゃ」
そう言って鎧の男は手を小さく上げて答えるが、見た目にはまるですごい奴には見えない。てか鎧竜って言ったか?まさかあいつも滅竜魔導士なのか?
「正直ワシ一人で十分なんじゃが」
「スカリオン殿が戻ってこいと言ってるっちゃ」
「そうはいかぬのぅ、ここに水神竜が現れるかもしれぬのじゃ。それにこやつら・・・久々にうまそうな獲物じゃ」
下なめずりしながら俺たちを見回す女性。どうやらこの人たちも水神竜を狙っているらしい。ということは、この人たちが先日来た人間ってことか。
「こいつら何者だ?」
「さぁな。水神竜を狙ってるらしい」
臨戦態勢に入った俺たち。すると今度は俺たちの真上が眩しいほどに光輝いた。
「今度は何よ!!」
「あぁ・・・」
その光が何なのかと視線をそちらへ向けると、俺たちの周囲にあったはずの海の水が割れるように捌けていく。
「水が・・・」
「海が割れ・・・」
「何なのこれー!?」
辺りなら水がなくなると上空に水の球体に覆われている人影が現れ、その人の周りからも水がなくなると姿が確認できるようになった。
長い髪をした男性の頭には二本の角が生えており、その顔にはタトゥーが彫られている。
「水神竜様ぁぁぁぁぁ!!」
「私の海が騒がしいな」
支配人のカシマさんは顔を押さえながら叫ぶように彼の名前を呼ぶ。冷静にこちらを見下ろしている男性を見て、俺たちは目を見開いた。
「水神竜!?」
「人間!?」
水神竜と呼ばれた男性はどこからどう見ても人にしか見えない。
「水神竜・・・様・・・」
周囲の水がなくなったことにより魚の姿である支配人は息が絶え絶えになっている。しかし水神竜と呼ばれた彼はそれに構うことなく話を続ける。
「ドラゴンの血を求めし者たちよ、今すぐこの地を去れ」
冷静沈着な男性の一言。しかしそれには鎧の男と目付きの悪い女性は反論した。
「やっと出てきたのぅ、この時を待っておったぞ」
「キリア殿、無策で勝てる相手じゃないっちゃ」
「いいや、ワシに斬れぬものはない」
水神竜に対して強気な女性はすぐにでも突撃していきそうだったが、今度は二人の身体に異変が起きる。
「これは・・・」
「なんだ!?」
「あいつらの身体が・・・」
「灰!?」
二人の身体が灰になって消えていく。その姿を見ると以前対峙した天使たちの最後を思い出してしまい身体が震えたが、どうやら彼らの場合は違ったようだ。
「スカリオンか!?余計なことを!!目の前にいるのじゃ!!水神竜が!!帰ったらただじゃおかぬぞ!!スカリオン!!」
「では、バイっちゃ」
仲間の魔法のようでそのまま灰となって姿を消す二人。残された俺たちは互いに顔を見合わせていた。
「何だったのだ、今のは」
「灰の魔法?」
「仲間を灰に?」
「でも帰るって・・・」
「場所を移動させる魔法の一種みたいね。でも、ドラゴンイーターの魔法となると・・・灰竜?」
先程からちょくちょく出てくるドラゴンイーターという単語の意味がわからず首をかしげる。その辺も聞きたかったのだが、それよりも早く角の生えた男性が口を開いた。
「滅竜魔導士か、私を滅するために来たか?」
「いや、ちょっと違うな」
水神竜と呼ばれた男性は鋭い眼光でこちらを見つめている。それに対しナツさんはすぐに反応した。
「五人の竜を封じてくれっていう依頼でな。お前もその一人っぽいんだけど、お前がいい奴だったらどうしようかなって感じなんだ」
「ずいぶんざっくり話すのね」
「言いたいことはわかるけど~」
ナツさんが俺たちが考えていることをそれとなくだが話してくれる。ただ、あれで伝わったかは微妙な気がするけど・・・
「なるほど。エレフセリアめ、まだ諦めてなかったのか」
それを聞いた彼はため息をつきながら首を振る。その感じからは敵意があるようには見えなかった。
「エレフセリアを知ってるの?」
「100年も前から次々刺客を送り続けていればね」
今回の俺たちで99人目という話だったし、彼からの手がかりは水神竜についてだけ。そうなると彼は何人もの魔導士と相対してきたことは想像できる。そうなれば依頼主のことを知っているのも当然か。
「それでお前はいい奴なのか?悪い奴なのか?」
「そんなダイレクトに・・・」
ナツさんらしい問いかけにあきれた様子のルーシィさん。しかし今回は彼のその能天気さがよかったのか、水神竜は優しげな表情を浮かべていた。
「さぁ。どちらとも言えんが、少なくとも君たちに対して敵意はないよ。今のところは」
ウソをついているようには見えない水神竜。それを聞いたナツさんは残念そうに頭をかいている。
「まいったなー、100年クエストいきなり失敗じゃねーか」
「待って!!人間に対して敵意がないなら厄災じゃないってことでしょ?これってあたしたちの不戦勝にならないかな?」
「確かに!!倒す理由がねぇんじゃ封じようがねぇ!!」
俺たちの目的はあくまで五神竜を封じること。彼に敵意がないのならと考えていたが、それを否定したのは今回のターゲット。
「いいや、封じるべきだよ。私は封じられねばならない」
どこか寂しげな表情でそんなことを言う水神竜。それを聞いた俺たちは唖然としていた。
「君たちは今までの刺客とは少し違うみたいだね」
そう言うと水神竜は再びこの場所を海のように戻してしまう。それにより支配人は息を吹き返していた。
「ノーウェイ!!」
「カシマ。この者たちは私の客人だ。今後、手荒な真似はしないように」
「は!!はいー!!」
水神竜の言葉に敬礼するカシマさん。彼の言葉の意味がわからず俺たちは困惑していると、彼は踵を返し背中を向ける。
「ついてきなさい、私の神殿に案内しよう」
そう言われ俺たちは彼の後ろをついていく。その際いまだにクラゲのままから戻らないウェンディがなかなか進めずに困っていたので、彼女を抱えて俺は一番後ろをついていった。
第三者side
ガチャッ
部屋の扉が開く音がする。そこから出てきた赤髪の男は天井を見上げると、扉が閉まったことを確認し黒装束の男が彼の横に降り立つ。
「天使の目撃情報だ。しかもここからすぐ近くだぞ」
「ほう」
それを聞いた瞬間、わずかに見えている口元が緩んだことに気が付いた。それを見た青年はため息を漏らす。
「お前、本当に戦うの好きだよな」
「当たり前だ。そうじゃなければ、お前についた意味がない」
足早に廊下を歩いている二人。すると、後ろから二人を追いかけてくる足音がしたため黒装束の男は天井へと飛び上がり、息を潜める。
「カミュ!!」
「どうした?そんなに慌ててよぉ」
走ってきた黒髪の女性は彼に追い付くと乱れた息を整えてから話し始める。
「ちょっと!!部隊にも連絡しないでどこ行くつもりなの!?」
「天使のところだよ」
「カミュだけだよ!?一人で行動してるの!!」
彼女は彼が一人で行動していると思っているようで慌てた様子で彼を引き留めに来たのだ。それを聞いた青年は首元をかきながら、言い訳を考えている。
「もうみんなこの事は知ってるんだから一人で行動する必要ないじゃん。メルディも心配してるよ」
その人物の名前を出されると彼は返答に困ってしまう。しかし彼は何を言えばいいのか思い付かず、沈黙してしまう。
「一人でどうこうできる相手じゃないのは、カミュも知ってるでしょ?」
「う~ん・・・」
悩んだ末に天井を見上げるカミューニ。それに釣られたリュシーもそちらを見るが、そこには何もない。
「何?どうしーーー」
彼がなぜそちらを向いたのかわからず視線を戻すと、そこにいたはずの人物がいないことに気が付く。
「あぁ!!カミュどこいったぁ!?」
慌てて通路を駆けていき曲がり角を見るが、そこにも姿はない。すると、外を勢いよく駆けていく赤色の髪が見えた。
「もう!!死んでも知らないからね!!」
窓が一つ開いていることからそこから飛び降りて逃亡したことは容易に想像できる。騙し打たれた彼女は聞こえているかも微妙な距離でそう叫ぶしかなかった。
「リュシー、行くぞ」
「わかってるってば!!」
「お・・・おう」
目上であるゴッドセレナに呼び掛けられても怒りのまま答えた彼女に、呼んだ本人もたじたじ。リュシーはもう一度外を見て、彼の姿が確認できなくなったところで諦めたのか、ゴッドセレナの方へと駆けていった。
シリルside
水神竜の後ろをついていく俺たち。竜の像が乗っているような建物に入ると、そこは海の中なのに普通に中は俺たちが生活できるような水のない空間となっていました。
「うお、すげー」
「ここ、空気がある」
「驚いたな、海の中にこんな場所が」
「何だろう、あの石像」
「人魚じゃないよね~?」
「半魚人かしら」
何かの神殿なのかと思えるような建物の内装に口々に皆さんがそう言う。ただ、俺とウェンディは気がかりが一つ。
「私・・・いつまでこのままなんでしょう」
「なんでウェンディだけ戻らないのかな?」
いまだにクラゲ状態から元に戻る気配がないウェンディ。そのことを不思議に思っていると、水神竜が指を鳴らすと・・・
ポンッ
クラゲになっていたままのウェンディが元に戻りました。俺の腕の中で。
「ふぎゃっ!?」
「きゃっ!!」
まさか急に戻ると思っていなかったため重さの変化についていけず倒れる俺。それを見た水神竜さんはやらかしたといった顔をしていました。
「すまない、急すぎたね」
「い・・・いえ」
「ありがとうございます」
申し訳なさそうな彼だったが、原因もわからないのにウェンディを元に戻してくれたことに感謝する。彼女は俺の上から退くと、笑顔で彼へと問いかけた。
「水神竜さんは魔法を解除する力を持っているんですね!!」
「いいや、この程度の魔法ならね」
「??」
何か含みのあるような言い方が気になったけど、それを詮索するのは野暮かと思い口を閉ざす。それなのに、彼は俺を見た途端血相を変えて駆け寄ってきた。
「わっ!!なんですか!?」
顔を間近に寄せてくる水神竜さん。キスされるのではないかと言うほど顔を至近距離にされたことで目を逸らそうとしたが、彼は俺の顔をホールドして逃がさないようにしている。
「ハヤアキツ?」
「「「「「??」」」」」
彼の言い放った名前に心当たりがなく、首をかしげる。しかし彼はそんな俺に構うことなく話を続けた。
「君、その魔水晶はどこで?」
「えーっと・・・お父さんからもらった・・・のかな?」
渡してくれたのはカミューニさんだけど、見つけたのは天海でそれに指示したのはヴァッサボーネで・・・なんかよくわかんなくなってきた。
「水神竜様!!なぜそのような者たちを神聖なる神殿へ?」
なんて答えればいいのかわからずにいると、彼の後ろからメガネをかけた女性が歩いてくる。その目はかなり高圧的なものに感じたが、それは明らかに俺たちへと向けられていた。
「彼女はカラミール。色々と私の世話をしてくれている。紹介しよう、イシュガルからやってきた魔導士たちだ」
明らかに怒っている彼女の問いに答えずマイペースな水神竜さん。話を振られた俺たちは慌てて返答する。
「ど・・・ども」
「俺たちは魔導士ギルド妖精の尻尾のーーー」
「結構。どうせエレフセリアの差し金でしょう?」
「まぁ、そうなるかな」
メガネをクイッと動かしながらこちらを睨んでいる彼女のタジタジの俺たち。水神竜さんが友好的なだけにますます彼女の圧力が目立ってしまう。
「どうぞ、水神竜様に挑むつもりなら今すぐにでも。あなたたちが敵う相手ではありませんから」
「まぁ待ってくれ、カラミール」
水神竜さんを相当敬っているのが見てとれる彼女の発言。しかしそれを彼は遮る。
「彼らとは"会話"ができそうなんだ。少し話をさせてくれないか?」
「・・・どうぞ」
「席を外してほしいってことなんだ」
どうやら彼女の圧力にタジタジなのは俺たちだけではなかったらしい。水神竜さんも強気な彼女に押されているような印象を受けたものの、彼女は彼の言葉は絶対なのか、踵を返しこの場から立ち去ろうとする。
「ふん。ちゃんとそいつらの始末しといてくださいね」
「「「「「始末・・・」」」」」
そう言い捨ててこの場からいなくなるカラミールさん。彼女がいなくなったのを確認してから、水神竜さんが口を開く。
「いやぁ、彼女は人間の娘なんだけどね。海で遭難してるところを助けたのがきっかけで住み着かれてしまってね。悪い子じゃないんだ」
乾いた笑いを見せる水神竜さんに俺たちは呆然としている。まるで自身の子供のように彼女のことを話す彼は、悪い人には見えなかったからだ。
その後彼は神殿内を案内してくれる。農園や医療施設、さらには以前のカラミールさんのような遭難者を助けるための監視塔もここは兼ねていることを聞き、俺たちは感涙してしまった。
「あんた本当に水神竜メルクフォビアなの!?」
「いい人過ぎる!!」
「街の人たちのことを考えて・・・」
「竜が遭難者助けるとか泣けてくるわ!!」
「感動した!!」
「そ・・・そこまでですか?」
俺たちの感動している姿にウェンディは付いて来れてないようで少し引いたように見ていた。でもまさかこの人がこんなにも人のために行動しているとは思っておらず、驚きもあったことからここまでの反応になってしまったのは言うまでもない。
「でも厄災なんてウソじゃないか」
「こんなにみんなのことを思ってるんだもんね~」
「そうね、全く害は無さそう」
「それは違うよ」
あまりのいい人っぷりに感動している俺たちを優しげな表情で見ていたはずのメルクフォビアさんだったが、ハッピーたちの言葉を聞くとそれが一変した。まるで勘定をなくしたような、狂気な瞳でこちらを見ていたのだ。
「こう見えてもね、昔は大勢の人間を殺してきた。それはもう虫けらのように」
その表情はあまりにも真を帯びており鳥肌が立つ。しかし彼のそんな表情はものの一瞬で崩れた。
「エレフセリアが私を狙うのは当然だよ。私が殺した人間の中には彼の友人や家族もいたかもしれない。弁明する気はない・・・当時の私にとって、それはごく自然な行為だった。強者が弱者を狩る、それが当たり前の時代だった」
「どこかで心境が変わったのか?」
エルザさんの問いに彼は思い出し笑いを浮かべながら答える。
「そうだね、きっかけはカラミールだった。実はね、彼女を助けるつもりはなかったんだ。海で見つけた餌程度にしか思ってなかった。それが妙に懐かれてしまってね。気が付いたら共存の道を進んでいたよ」
苦笑いを浮かべる水神竜さんだったが、俺たちはそれを聞いてますます敵対することはないだろうと思ってしまい、釣られて笑っていた。
「このままずっとこうしていたい気持ちもあるんだけど、そろそろ私はこの世界から消えねばならない」
このまま無事に解決できるかと思っていた矢先、そんなことを言い出す水神竜さん。人のために行動し、共存の道を進もうとする彼がなぜそんなことを言い出すのかわからなかった俺たちはそれに驚愕することしかできなかった。
後書き
いかがだったでしょうか。
水神竜編めっちゃ短くなる可能性があります。
カラミール可愛いからめっちゃ出したいのですが、イグニアとナツの関係性を変えると今後に響きそうな気がするのでその辺を対策するとかなり短くなってしまう気がする今日この頃。
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