超地球救済戦記!断罪王Ω〈オメガ〉~戦争もやめねぇ!環境破壊もやめねぇ!バカで愚かな人類は身長170センチ以下の無職童貞ニートの俺が全員滅亡させる‼~
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第二百八十七話 打ち上げ その1
第二百八十七話 打ち上げ その1
『パブリックブレイク現象』とは。
ストレスの積み重ねによって、普通の社会人がある日、突然、発狂して怪物や異能者になってしまう現象の事である。
政府は、このパブリックブレイク現象で怪物もしくは、異能者になってしまった人間を、『パブリックモンスター』と命名した。
人気アイドル『アスベスト』のライブ中に起きたアイドルファンのパブリックモンスター達の暴走。
そして、俺はPGS(パブリックガーディアンズ)のカイトとリンカと協力して、誰一人死亡者を出さずに、暴走したパブリックモンスターを人間に戻すことに成功した。
そして、その偉業をたたえるように、俺の背後で、PGSを管理する政府長官・宮本テツヤが拍手をしていた。
「あんたは、確か...政府長官の宮本テツヤ...」
白の長髪にグレーのスーツ、そして、スーツ越しからでもわかる鍛えられた肉体。
(前から思っていたが、政府長官の割には若く見えるな...)
「はじめまして、山神ムサシ君。君の噂はカイト君やリンカちゃんから聞いているよ...」カイトとリンカは自らのリーダーである宮本テツヤの存在を確認した瞬間、テツヤに向かってひざまつく。
「まぁ、二人とも、そんなにかしこまらなくてもいいよ、顔を上げなさい」
テツヤの言葉にカイトとリンカがゆっくりと顔を上げる。
「山神君、これは提案なんだが、私はぜひ、君をPGSに迎え入れたい」
「俺を...PGSに?」
「ああ、特別観客席から見せてももらったよ、先程の偉業を...大勢の暴走したパブリックモンスター達を一瞬で人間に戻したのをね...」
「あれは、リンカやカイトの協力があったからです、俺だけの力ではありません...」
「だからこそ、君がPGSに入隊してくれれば、先程のように効率よく、暴走したパブリックモンスターたちから人間たちの命を守れるようになる...」
「俺はPGSに入隊するつもりはありません...俺はあんた達、政府が配給を停止させたモンスターエリアの炊き出しボランティアに参加してました...だから俺はPGSを信用できない。どうして、モンスターエリアへの配給を停止させたんですか?」
「ふむ、いきなり話題が変わったが、まぁいいだろう、君は、モンスターエリアへの配給停止の理由をアズマから聞いていないのかね?」
「聞きましたよ...アズマはモンスターエリアの住人の一部が、指名手配中の反政府組織セイバーズのメンバーをかくまっていることが、食料配給の停止だと言っていました!でもアズマは暴走したパブリックモンスターだけでなく、暴走していないパブリックモンスター達もたくさん殺した!」
「アズマの自分勝手な行動は我々にも予想できなかったことだ、だから、我々はその謝罪として、モンスターエリアに住んでいたパブリックモンスター達の人間社会への移民を認めた」
「あなた達、政府が、モンスターエリアへの食料配給を停止しなければ、あんなにたくさんの血は流れなかったはずだ!」
工藤リンカが大地の断罪剣・ガイアセイバーの刃先を山神ムサシの首元に突きつけて忠告する。
「そこまでにしておけ、いくらなんでも無礼が過ぎるぞ...」
「リンカちゃん、断罪剣を下ろしなさい」
リンカは渋々、断罪剣ガイアセイバーを地面に向かって勢い良く叩きつける。
「話を戻そう、我々がモンスターエリアへの食料配給を止めたのはアズマの言った通り、モンスターエリアの住人の一部が反政府組織セイバーズに協力していたのが事実だ、しかし、モンスターエリアへの食料配給を続ければ、それはセイバーズの作戦と戦力増強に手を貸すことになる、そして、モンスターエリアの住人が新たにセイバーズに一員となれば、我々、人間社会へのリスクはますます大きくなる。我々政府は、人類の味方だ、人類を守る為なら、私は手段を選ばない、モンスターエリアへの食料配給の停止は、すべて人間社会をセイバーズの魔の手から守る為に必要なことだった」
「でも、あなたは、あの『新社会宣言』の日、セイバーズのリーダーと握手を交わし、モンスターエリアに住んでいたパブリックモンスター達の人間社会への移民を認め、全世界に発表した...」
「ああ、セイバーズのリーダー『フューラー』は総統とは名ばかりに、平和主義者だったからね、話し合いの大切さを改めて感じさせてもらったよ」
「宮本テツヤさん、あなたは、断罪剣の秘密について知っているんですよね?」
「ああ、もちろん、でもPGSではない君には教えられないな...」
「PGSに入隊しているヨシノも知らないと言っていました...本当は俺達、断罪剣士に知られちゃまずいことなんでしょう?」
「会社にも組織にも守秘義務というものが存在する、私に言えるのはそこまでだ」
「なら、どうすれば、教えてもらえますか?」
宮本テツヤの右手にはいつの間にか、見たことがない断罪剣が握られていた。
「そんな...テツヤさんも断罪剣士...!」
「ああ、私のこれは爆炎の断罪剣・グレンセイバーだ...君が私に勝てたら、断罪剣の真実を教えてやってもいい」
俺はテツヤさんに向かって生命の断罪剣ライフセイバーを構える。
しかし、テツヤさんから放たれた理屈では説明できない闘気が俺の全身に突き刺さる。
俺は秒で自分に勝目がないことを思い知る。
思い知る、自分がいかに格上の相手に生意気な口を聞いていたのかを。
思い知る、力の差も知らずに意見した自分自身の浅はかさを。
思い出せ、俺の敵は断罪剣士ではないことを。
「俺はテツヤさんとは戦いません、俺達、断罪剣士は協力するべきだと思っていますので...」
「それは、すばらしい考えだ...もし気が変わってPGSに入隊したくなったら、監視役のヨシノに相談するといい...私はいつでも君を待っているよ...」
山神ムサシは何も言わずに、宮本テツヤに一礼して、ライブ会場から去った。
ライブ会場の外では竹田が、ライブ中にサバを振り回していた迷惑ファン1号と、シャケを片手にライブステージに不法侵入しようとしていた迷惑ファン2号と、談笑していた。
「おそいぜ、山神ィ!」
「なんだよ、竹田、待っててくれたのか?それに、迷惑ファンの1号2号もどうして...」「お前に、お礼が言いたいんだってよ...」
「お礼?」
迷惑ファンの1号2号が俺に向かって頭を下げながら、謝罪する。
「ありがとう、俺たちを暴走したパブリックモンスター達から守ってくれて...」
「お前がいなかったら、俺たちは今ごろ死んでいたかもしれん...助かったよ...」
「お、そうだな」
俺はそれだけ言って竹田と共に学生寮に戻ることにした。
「竹田さ、俺さ、アイドルファンとかぶっちゃけヤベーやつの集まりだと思ってたけどさ、実際、話せばわかるもんなんだな!」
「ヤベーとかそういうのはどうでもいいんだよ、たとえ周りの人間から後ろ指さされても、熱中できる何かがある、それって素晴らしいことなんだよ」
竹田はそう言って、スーパーの敷地に入っていく。
「おい竹田ァ!お前またムァンビキするつもりなのか?」
「ああ。言ったろ?周りの人間から後ろ指さされても、熱中できる何かがあることが素晴らしいって!今がその時なんだよ‼」
「どうなっても知らねぇぞ!」
「賭けてもいい!今日もお前の部屋でうまい鍋食わせてやるからよォ!」
「なんで俺の部屋なんだよォ!」
次回予告 打ち上げ その2
後書き
次回もお楽しみに
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