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神々の塔

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第十一話 魔王と呼ばれる者達その十一

「ニコ狆先生というのを書いてた」
「忍者もんでか」
「その頃の日本が舞台でな」
 作品の描写からまさに大戦中であることがわかる、煙草の配給がどうとかそうしたことが書かれている。
「それでいいと思って女の人がおったら」
「その人が忍者やった」
「いや、その人のお父さんが忍者で」
 そうなっていてというのだ。
「忍術の道場の先生やったんや」
「そやったか」
「それで娘を欲しかったらな」
 それならというのだ。
「忍者になれってな」
「そう言うたんか」
「それで煙草の煙で姿消すとかな」
「そんな忍術かいな」
「そやってん」
 この作品ではというのだ。
「これがな」
「成程な」
「それで煙草のニコチンとな」
 これと、というのだ。
「その先生の顔が犬の狆そっくりで」
「それでニコ狆先生か」
「そうなってるんや」
「それはおもろいな」
「織田作さんはこうした作品も書いてたんや」
「夫婦善哉とか以外にもやな」
「大抵大阪を舞台にしていてな」
 この作家が大阪で生まれ育ってきた為だ。
「それでな」
「そうした作品もあったんやな」
「そやったんや」
「それはおもろいな」
「実際おもろいで」
 芥川は笑って答えた。
「織田作さんの作品は」
「そやねんな」
「そやからな」
 だからだというのだ。
「是非な」
「読むべきやな」
「読んで損はせん」 
 一切というのだ。
「娯楽小説やしな」
「織田作さんは」
「楽しめる、そもそも純文学もな」
「娯楽やな」
「面白く読むかええ知識を備えたり人生の糧をな」
「得るもんやな」
「そや、肩肘張って読むもんでもない」
 純文学といってもというのだ。
「楽しんでや」
「読むもんやな」
「堅苦しいのは哲学書だけで充分や」
 芥川はこうも言った。
「僕はあまり読まんけどな」
「哲学書はかいな」
「ああ、どうも苦手や」
「哲学書だからといってええか」
 ここでリーが言ってきた。
「それはや」
「全部が全部言えんな」
「ああ、あかん哲学書もあるわ」
「中には」
「読むに値せん様な」
 そこまでというのだ。 
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